ネコぶんこ


2013年02月28日 実際、より創造的な素材をあたえるほど、受け手はより多くを望むものなのである。 [長年日記]

§ [Promiscuus] 『“ゾンビ化”複製細胞は触媒や電解質として生きたものを上回るかもしれない(‘Zombie’ replica cells may outperform live ones as catalysts and conductors )』

ALBUQUERQUE, N.M. — “Zombie” mammalian cells that may function better after they die have been created by researchers at Sandia National Laboratories and the University of New Mexico (UNM).

Sandia National Laboratories: News Releases : ‘Zombie’ replica cells may outperform live ones as catalysts and conductors

ニューメキシコ州アルバカーキ――哺乳類の細胞が死んだ後も生きていた頃の様子をよりよく保存できる“ゾンビ化技術”がサンディア国立研究所とニューメキシコ大学(UNM)の研究者たちによって開発された。

技術の概要は細胞をシリカ溶液でおおい、構造のほぼ完全な複製を作成するというものだ。この工程は微小なものから大規模なものまで、さまざまなものの生産工程を単純化できる可能性がある。

米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載された論文によれば、この研究は哺乳類の細胞に含まれるナノ単位のオルガネラと他の微小な構成体をもろい鋳型として使いシリカで被覆した。そして研究者たちはそれのタンパク質を焼き取るために細胞を熱した。その結果得られるシリカ構造は、内部外部ともに生きた細胞の特徴を忠実にとどめており、生きていたころよりもより大きな圧力と温度に耐えることができるため、いくつかの用途ではそれらが生きていたころよりも便利に利用できると、サンディアの材料科学者で主任研究員のBryan Kaehrは語る。

「ナノメートル単位で構造を構築するのはたいへん挑戦的なことだ」とKaehrは語る。「私たちは粒子や線を作ることはできるが、任意の三次元構造はまだ作ることができない。この技術の場合、私たちはそれらの構造を構築する必要はなく――自然が私たちにそれをしてくれる。私たちは求める組織を持った細胞を探し、それを私たちの技術を使ってコピーするだけでいい。また、私たちは化学処理や表面加工を行ない、細胞の群れを望ましい形で発生させるようにできる。

UNM教授でサンディアの特別研究員のJeff Brinkerは「この工程はナノ単位から大規模なものまで、構造の特徴を三次元的な収縮への安定性と同時に摂氏500度(華氏932度)以上の熱さえ耐えられるくらい、強固で忠実に複製する。これらの精密な構造が頑強であることは素晴らしいことだ」と補足した。

より丈夫なナノ単位の製品を作成する原型として、変わってはいるが単純な手順に使えるかもしれない。

細胞にはたいへん幅広いタンパク質、脂質や細胞足場があり、その内部には触媒、管、吸収剤など役に立つナノ組織が存在するからだと、先述したトルーマン奨学金によるサンディアの特別研究員Kaehrは語った。

細胞の中で放出される触媒はそれらが化学的に作用するために特定の形状を保持している酵素である。機能するには組成が重要なため、それが放出された形で触媒を安定化させるのは重要だとKaehrは語った。熱硬化したシリカは安定しており、タンパク質は作用するかたちのままである。

UNMの博士研究員Jason Townsonは、ケイ酸化をもっともすぐに利用できるのは標本のために有機物の構造を保存する単純な方法としてかもしれないと語った。

「これまで、内部構造の保存とそこからの標本化は細胞をホルムアルデヒドやその他の防腐剤で固定していた。だが、これらの方法は大きな労力が必要だった、」Townsonは続ける。「この方法は単純だ。保存された細胞が腐敗してだめになることはない。そして成果物を切開すると、私たちは細胞に含まれるDNAの副溝まできちんと保存されていたことに驚いた。

細胞をさらに高い温度(摂氏400度以上)で加熱すると細胞の有機物が蒸発する――タンパク質が――そしてシリカはマダム・タッソー館に展示された歴史人物の蝋人形のように、三次元構造を保持する。違いをいうなら有名な犯罪者の顔を作る代わりに、硬化したシリカによる細胞は内部のミネラル化された構造がナノからミリメートル長の単位にわたる複雑な特徴を保持しているということだ。

作成の工程は比較的単純で、採取した哺乳類の浮遊細胞をペトリ皿に入れてケイ酸を加える。

メタノール、副生酸、細胞間脂質の作用――細胞を無傷のままで保護する皮膜の形成――により、シリカが人間の体温ほどで流れ込むのに充分なほど軟化して透過性を得る。

ケイ酸はまだ部分的に未解明な理由により、詰まらずに流入して細胞内に存在するマイクロからナノメートル単位のすべてのオルガネラに実質的な防腐処理を施す。

細胞を熱していない場合、シリカは生きた細胞のタンパク質周辺に一種の透過性の被覆を形成する。これは自然には存在しないような温度や圧力のもとで触媒を活動させるために充分な助けとなるかもしれない。

「私たちが細胞の構造を安定させるためにいちどシリカを使ってもそれはまだ反応することができ、より重要なこととして、その反応は高温で作用するのに充分な安定性があった」とKeahrは語った。「この方法は軟らかで価値のありそうな生体物質を採取し、それを化石へと変化させて半永久的に私たちの標本棚で保存する手段でもある」

通常、有機物を保存することはそれの冷凍保存を意味し、それは大きな労力が必要だったと彼は語る。その代わり、「私たちは急速な化石化を行なう。原形質型細胞を時の試練に耐えうる硬い構造へと素早く変化させる」

実験では細胞を逆鋳型として使い、摂氏900度の真空中で細胞のタンパク質を熱することで、多孔性炭化構造を得られることが可能だということが判明した。言葉を換えれば、空気中で木が燃えると残った構造がわずかなすすになるのと同じように、ゾンビは熱することで高品質の炭素構造になる。続いて基礎になったシリカの支えが分解し、細胞の電気抵抗は約20倍減少した。こうした材料は燃料電池、汚染除去やセンサ技術でかなりの有用性がある。

このように驚くべき結果を細胞をケイ化することで達成することができたのは、軟らかな細胞の構造が“高温と圧力が必要な処理工程の材料を貯蔵する”ことが可能だからだと技術紙は報じている。

他の多孔性材料構造はシリカではなくチタンを使い、有機鋳型技術を使って作られている。Kaehrは、他の金属酸化物でも可能性はあると語った。これらはより複雑な構造の用途や触媒として利用することができる。

この研究はKaehrのものも含むいくつかの科学的グループが行なっており、ゲル状の構造を構築してシリカでそれを複製してゲルを焼き、大きなスポンジを作成していた。

「現在の私たちは生物学的形状を変化させて(熱で)石灰化させることで、不規則な構造を得ることが初めて可能になった」とKaehrは語った。

Kaehrが科学文献に提示したミイラ細胞とゾンビ細胞の一番の違いを要約するとこうなる。「ツタンカーメン王はミイラになった」彼は語る「生前の彼とよく似ているが、その工程にミネラル化(化石化の工程)はなかった。私たちのゾンビ細胞は化学と生物学を橋渡しし、自分たちの精密で完全な過去の似姿を作るだけではなく、未来の研究もできるものを作った」

この研究はアメリカ合衆国エネルギー省科学局が支援した。共著者はBrinker、サンディアと統合ナノテクノロジーセンターのBrian Swartzentruber、そしてUNMのRobin Kalinich、Darren Dunphyと研究生のYasmine Awadである。

数日前にMail Onlineの「'Zombie' cells are created in lab... and they outperform their living counterparts」を翻訳した記事が出回っていたけど、元になった発表は細胞をシリカで被覆してナノ部品の鋳型にしたり、触媒が高温高圧下でも作用する技術開発についてのものだったですぅ。

それにしても、まずMail Onlineがタンパク質が摂氏400度でも触媒として作用したところを細胞が生きているというところまで面白おかしく拡大解釈して、それが翻訳でまた大げさな見出しがついているのはいつも通りすぎるですぅ。