ネコぶんこ


2014年02月10日 [長年日記]

§ [DnD][4e][LnL] 『そうしたこと、そうしなかったこと(What Worked, What Didn't)』

マイク・ミアルス

今週は、何ヶ月もプレイテストされてきたD&D Nextのルールからいくつか抜き出して話をしよう。ゲームにおけるルールの意義は、最初から明白なときもある。ルールが評価されるのは時間が経ってからのこともある。あるいは構想段階でうまくいっていても最終的にゲームから外されるルールもあり、こうした過程に隠れた意図を調べるのは興味深いことだ。

有利と不利

このルールを導入してプレイを行ない、そして得られたプレイテストの投票に私たちは驚いたが、それは私たちが早いうちから有利がどういう前提にあるのかを理解していたということだと主張したい。このルールをデザイン・チームが最初に提案したとき、それはよい考えだとほぼ全員が感じていた。私たちが有利についての話を続けるにあたり、どれくらいのプレイヤーがそれを好んでいたかを性格に把握できるプレイテストからのデータが山ほどあったのはすばらしいことだった。

私たちはそのときにそれを完全には理解していなかったが、有利と不利は余計なものごとを減らすことに大きく貢献した。私たちが把握していたことのすべては、人々が速く、より速いゲームを望んでいるということで、有利と不利についてとても肯定的な反応は、来たるべきD&D NextのRPGシステムを作成する道標として貢献してくれた。

武器パワー

あるとき、私たちは武器の特徴がある意味で呪文と似ていると感じ、それぞれの武器でひとつ以上の特殊な武技を使えるようにした。たとえば、フレイルなら相手に足払いをして、武器落とし攻撃を仕掛け、あるいは間合いを生かした攻撃ができる。話の上では、それはいい考えのようだった。実際には、それはシステムを肥大化させて私たちが望んでいるよりも多様な複雑性を持ってしまった。すべてのプレイヤーへゲームに出てくる武器すべてがどういう挙動をするか理解するよう強いるのが悩みの種である。それは誰もが同じくらいの時間をかけて武器の一覧を読み込むものだと想定しているからだ。

結局、こうした類の能力は特技とクラス特徴というより穏当な形で実装された。一部のプレイヤーはこうした複雑さを望むが、誰もがそうではない、この指針が私たちが行なうデザインの多くを導いてきた。

精神集中

私は多くのDMがD&D Nextを行なうとき、このルールを見逃していることに気づいた。君が精神集中呪文を発動したら、以前発動した他の精神集中呪文すべては終了する。このルールは術者が強化呪文の重ねがけをしたり複数の制御系呪文で戦闘を完封してしまうことを防ぐためにある。それは術者がより戦略的に行動することを推奨している。

精神集中が風変わりなルールである理由は、私たちの大目標は複雑さの軽減だが、これはゲームをより複雑にすることにある。だが、こうやって少しの複雑さを加えることは、制御や強化効果の極端な重要性を減らすことなどで術者と非術者の間にあるプレイスタイルの差を均すことを促がし、ゲーム全体の複雑性を小さくすることに役立つ。これらの効果はいずれもゲームの流れを遅くして、テーブルの周りで複雑性を増しているからだ。これらを術者ひとりにつきひとつだと制限すれば、テーブルを一度にどれだけの複雑な呪文が襲うかを管理する助けになる。それは複雑性をゲームの小さな面ひとつに封じ込め、残りの部分を速く簡単に動かせるようにするのである。

自動成功

私たちは何度か、ある種の判定でキャラクターが自動的に成功する確実なルールを導入する試みを行なった。これらのルールは大きな反響を呼び、いくらかのDMはそのテーブルでうまいプレイをしてくれた。残念ながら、それがすべてのプレイ・スタイルとかみ合うわけではなかった。それに加えて、このルールはパーティがあるひとりの専門化に判定を任せるあらゆる局面で破綻してしまう傾向があった。

私はこの分野で私たちが探っていたのは自動車メーカがコンセプトカーで行なっていることと似ているように感じた。たくさんの刺激的なものと車ができることを見せはするが、それらは必ずしも多数派の人々が必要とする自動車のために最高のオプションではないということだ。しかし、私たちはこれらの作業で多くのことを学び、自動成功についての考えは難易度システムの中で生かされることになった。かつての版では10以下の難易度についてもガイドラインがあったが、私たちはそれを取り除いた。経験則として平均的な人物が半分以上の確率で成功するような作業には、難易度を与えるつもりもない。D&D Nextでは、はしごを登るようなことで判定は行なわせない。

同時にプレイテストが私たちに何を見せてくれたかといえば、それは破滅的な失敗や信じられない成功という形で、プレイヤーとDMがランダム性を少しは愛しているということだ。このフィードバックは私たちが後になるまで受動知覚をゲームに導入しなかった理由の大きな部分だ。そうなっても、ふたつの静的な結果を比較して自動成功か失敗を出すよりはむしろ、罠や隠れているクリーチャーが受動知覚に対抗する判定を行なうことをルールは要求している。

私がこうして解説してきた例をひとつの結論で結ぶとするなら、会話型RPGのルールはこうした個別のシステムを越えてゲームに影響を与えられるということだ。以前、私たちがプレイテストで目標にしていたことに、ルールのリズムと流れ――ルールがテーブルにもたらす感覚――があり、それをどうやって掘り下げていたか解説した。私たちは決定の速さ、より速いゲームのプレイ、そして危険と報酬の重要視について一貫して賛成のフィードバックを見た――これらのすべてがダンジョンズ&ドラゴンズを進化させるために私たちが注目したものだ。

マイク・ミアルス

マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。