ネコぶんこ


2018年11月16日 [長年日記]

§ [DnD][5e] 『ラヴニカへようこそ(Welcome to Ravnica)』

ジェームズ・ヘック

D&Dファンの皆様、マジック:ザ・ギャザリングの世界へようこそ。また、マジック・プレイヤーの皆様、D&Dの多元宇宙へようこそ。Guildmaster's Guide to Ravnicaは最新のD&D用セッティングの本で、マジック:ザ・ギャザリングとD&Dのクロスオーバで最初のハードカヴァだ。ここにあるこの次元の基本的なことと、本の内容で、君はするりと君の初キャンペーンを都市の次元ラヴニカで始めることができる。

D&Dから:何がおなじみで、何が新しい?

私はD&Dプレイヤであり、たとえゲームが私が始めるよりも長く周囲にあったとしても(だが、まだそう長くない)、マジック:ザ・ギャザリングの新参者だ。私はGuildmaster's Guide to Ravnicaの読者のうち多くが、マジック:ザ・ギャザリングの伝承に初めて触れるD&Dプレイヤだと予想(私は推量する勇気を持っているだろうか?)している。

君が最初に認識するのは、このGuildmaster's Guide to RavnicaがとてもD&Dの本であるということだ。ラヴニカは他のゲームから借りられたセッティングで、美的なものの由来がマジックにある(たとえばモンスタの攻撃の名前がマジックのカードから借りられているなど)かもしれないが、それは決してダンジョンズ&ドラゴンズの主題と仕組みの心臓部からはぐれたものではない。君が自分のD&Dで新たな呪文システムとマナの使い方を学ばなければならないのかと心配しているなら、その恐れを楽にしてほしい。

セッティングとしては、ラヴニカはその別次元な自然、その都市環境、絶えず確執があるギルドなどのため、Planescapeキャンペーン・セッティングのシギルの街が想起させられる。それは魔法と魔法から派生した技術が当たり前な社会でもあり、そこはエベロン・キャンペーン・セッティングとの比較が避けられない。Planescapeとエベロンのアドベンチャーは、いくつかの道具立てを変更すれば、都市次元ラヴニカにぴったりと合うようになる。同様に、君がウォーターディープの都より幻想的な部隊を探しているなら、Waterdeep Dragon Heistもラヴニカに適合させることができる。

ラヴニカは10の強力なギルドの対立と同盟によって輪郭づけられている。マジック:ザ・ギャザリングで、これらのギルドはどれも2色の組み合わせによって表現されていた。たとえばボロス軍は赤と白で表現され、一方でゴルガリ団は黒と緑で表現されていた。マジック:ザ・ギャザリングで、5色のマナはゲームの中心的な仕組みを超え、抽象的な属性システムのような、キャラクタの哲学や動機の背骨でもある。マジックのヘッド・デザイナ、マーク・ローズウォーターによる『パイの戦い』の記事は、ゲームのカラー・パイをよく概説している。

マジックから:どう適合させた?

マジック:ザ・ギャザリングは、ゲームプレイがその伝承と完全に分離されているという事実にもかかわらず、信じられないほど豊かな物語を持っている。そしてGuildmaster's Guide to RavnicaがD&Dの本であることから、マジックのファンは彼らの期待に応えられるラヴニカの伝承を待っている。部外者の展望でよければ、私はその通りで――そして簡単に見渡せるものになっていると言おう。Guildmaster's Guideでゲームに導入されるラヴニカの伝承ははっきりして明確なものだけではなく、キャラクタ作成の章では君のキャラクタがどのギルドに所属しているかを選んで決める、楽しくて魅力的な工程もある。自分たちがホグワーツでどの寮にいるか決めるのが好きな人々は、このシステムにくらくらするだろう。

ほとんどのマジックの物語はプレインズフォーカーの体験を通して語られるが、マジックの伝承をD&Dの文法に翻訳することで、路地裏レベルの行動が導入される。マジックのもっとも有名なキャラクタたちはD&Dの文法だと非常に強いため、これに衝撃を受ける人もいるかもしれない。1レベルのD&Dキャラクタは、マジックだと《栄光の探求者》のようなものに相当する。ほどほどの総呪文コスト、ほどほどのステータス、そして本当に話すほどの特徴がない、単純なカード。プレインズウォーカーや高コストの名のあるクリーチャーのように名のあるマジックのキャラクタは、少なくとも5レベル以上でありそうだ。プレインズウォーカー次元間を渡り、信じられないほど専門的な訓練を必要とする比類なき能力を持つため、プレインズウォーカーは10レベル未満だといけないだろう。

幸い、ラヴニカは次元の根底を揺るがすことができる強大なキャラクタに成長していく低い位階のキャラクタを、特に適切に取り扱うことができる。君が1レベルでラヴニカのキャンペーンを始めるなら、君にジェイス・ベレレンほどの力量を持つ魔術師をプレイする道はない。とにかく、まだだ。1レベルのキャラクターは彼らのギルドの有象無象、社会からの追放者、あるいはその他の下級民だろう。アベンジャーズよりむしろ、ジェシカ・ジョーンズのような“路地裏”のスーパーヒーローを考えよう。君はレベルを上げ、ラヴニカで力と権力を持つ存在――おそらくはプレインズウォーカーでさえ――になることを切望する存在だ。

Guildmaster's Guide to Ravnicaは、ちょっとしたもうひとつの歴史でもある。というより、この本を使った君の冒険によって、もうひとつの歴史が紡がれる。この本は最後のラヴニカのセット、『ドラゴンの迷路』が終わったところに注目していて、最新のラヴニカの物語である『ラヴニカのギルド』の事件はまだ起こっていない。私は君が好きなようにマジックの正史を破壊するよう訴えかける。もし君の物語にニコル・ボーラスの野心が関係しないなら、たとえば、簡単に彼を絵から取り除こう。彼はラヴニカへ興味を失ったり、他のプレインズウォーカーに襲撃され、逃亡と再編成に数年が必要になったりだ。「Chapter 4: Creating Adventures」では君がラヴニカ独自の要素を使い、君のグループが楽しく主役になれる物語を祝福のうちに進めるよう、調整されている一方、君に必要に応じて正史から離れる自由を与えている。

君はまた、マジックのアーティファクトやクリーチャーがD&Dの文法に翻訳されているのを見て楽しめる。《最下層民の盾》や《ラクドスの儀式刀》などのカードが、君のキャラクタがその冒険で発見できる魔法のアイテムとしてお目見えする――が、そのどちらのアイテムもものすごく珍しいものだ。これらのカードの仕組みがどうD&Dのゲームの仕組みに翻訳されているかを見るのは楽しみで――私が考えるにその翻訳はかなりいい感じだ! 同様に、ラヴニカのギルドのリーダーすべては、《死盟の天使》や《変転充填魔》など大量のクリーチャーのように、完全なステータスを持ったモンスタとして、巻末に収録されている。

君がプレイしていて気がつくかもしれないことのひとつに、D&Dの魔法システムはマジックの世界設定とはとても異質なものだということがある。マジック:ザ・ギャザリングの“魔法のシステム”は文字通りカードゲームそのもので、そのシステムはまだD&Dのセッティングでは機能しない。君のキャラクタは、いわばプレインズウォーカーのデュエルを行なっているマジックのプレイヤーのデッキに入っているカードの1枚なのだ。おそらく、誰かがマジック:ザ・ギャザリング味のD&Dによりふさわしくはまる新しい魔法のシステムを開発するだろう。おそらくそれはカードとマナさえも使う! もし君が奮起するなら、君の経験をコメントとして残してほしい!

D&Dでマジック:ザ・ギャザリングの世界をプレイするうえでのおすすめ書籍

君がジェイス・ベレレン、ニッサ・レヴェイン、サヒーリ・ライ、などのプレインズウォーカーたちの世界に飛び込みたいな、Guildmaster's Guide to Ravnicaのリード・デザイナであるジェームズ・ワイアットがデザインを主導した、マジックのもっとも有名なセッティングのいくつかをD&Dのキャンペーンに適合させたフリーPDFシリーズ、『Plane Shift』がある。

どの『Plane Shift』のPDFもマジック:ザ・ギャザリングのartbookを補完するようになっている。たとえば、『Plane Shift: Innistrad』はThe Art of Magic: The Gathering - Innistradで触れられた伝承とイラストを補完している。これまで、6つの『Plane Shift』シリーズが作られた。

  • Plane Shift: Amonkhetは、古代エジプトの神々とファラオに着想を得たセッティングだ。
  • Plane Shift: Dominariaは、マジック最初のセッテイングだ。この世界は時空のつづれ織りが引き裂かれる亀裂で荒廃し、そして今ちょうど、この魔法的黙示録から癒されはじめている。
  • Plane Shift: Innistradは、たっぷりと気前よくコズミック・ホラーが浸蝕したゴシック・ホラーのセッティングだ。D&Dのゴシックの古典Curse of Strahdをイニストラード・セッティングに適合させる助言も含まれている。
  • Plane Shift: Ixalanは南および中央アメリカの神話と伝説に着想を得たセッテイングだ。海賊と戦い、自称征服者たちを妨害し、ずる賢いマーフォークと取引しよう。『魂を喰らう墓』を置くには完璧な場所だ。これ用のアドベンチャー、X Marks the Spotもフリーで公開されている。
  • Plane Shift: Kaladeshは、スチームパンクと植民地化されなかったインドの夢から着想を得たセッティングだ。ここでは魔法は珍しいが、魔力を元にした技術のエーテルはありふれている。Embers of the Last Warや他のエベロンのキャンペーンはここに移植することを考えよう。
  • Plane Shift: Zendikarは――十分適切に――D&Dブランドから着想を得たハイ・ファンタジィの冒険だ! 財宝で満たされた古代の廃墟は収穫の時を迎えている。Tales from the Yawning Portalからこの世界にアドベンチャーを適合させよう!

最後に、D&D用のラヴニカが動いているのを見るには、Saving Throw Show Twitch channel過去のエピソードをYouTubeで確認できるルベン・ブレスラー(@moxreuby)によるゲーム配信.『Ravnica: The Broken Pact』をチェックしよう。

スペシャル・サンクスは、数ヶ月前に私をマジック:ザ・ギャザリングの伝承にいざない、この記事を書くにあたってラヴニカについての知識かなり借りることになった、サイモン・アーヴィングに。

ジェームズ・ヘックはD&D Beyondのリード・ライタで、Waterdeep Dragon Heistおよび『 Critical Role Tal'Dorei Campaign Setting』の共同執筆者、Worlds ApartのDM、およびウィザーズ・オブ・ザ・コースト、D&D Adventurers League、およびKobold Pressのフリーランス・ライタである。彼はワシントン州シアトルに、パートナーのハンナ、そして彼らのホーンド・チーター・メイとノーブル・パンサー・マジパンと暮らしている。君は普段彼がTwitterで時間を浪費している様子を@jamesjhaeckで見ることができる。

DDBに掲載されたラヴニカの紹介記事を翻訳したですぅ。1レベルPCが単純なクリーチャーだというのには異論がある(『Plane Shift』で、プレインズウォーカーとは物語の要請によってなるものだと書かれていた)ものの、両ゲームのユーザにとって参考になるいい記事ですぅ。