ネコぶんこ


2011年12月16日 お堅い学術研究向けとされているネットワークでゲームを発見し、それによってコンピュータ文化の奇妙な、また創造的な一面に初めて気づく――そんな経験をした人は少なくない。 [長年日記]

§ [TRR] 2011年08月14日『逢魔時』

朱春峰(男・300歳余・青龍4/白虎1/異邦人7):万の勝利を得るまで祖国へ戻らぬと誓い、日本へやってきた仙人。その正体はかつて鄭成功と轡を並べ清と戦った明帝室の一員。東方不敗と呼ばれたこともあるらしいが、本人は否定している。プレイヤは森聖氏。

“葛葉”土御門晴明(男・15歳?・朱雀2/陰陽師9/退魔僧1):表の顔は葛葉の号で浮世絵を描く少年絵師。しかし、その実体は肉体を乗り換え無窮の時を生きる高名な陰陽師。今回はついに蘆屋道満と数百年ぶりの再会、再戦を果たす。プレイヤは荒原の賢者氏。

伊藤伊吹(女・17歳・白虎3/玄武3/神職6):江戸市中のさる寺に勤める巫女。親の代からそういう仕事で、何事にも動じることなく淡々と“仕事”を行なう。理解できない物事はおおよそを異邦の文化習俗として納得するため、非常に順応性が高い。プレイヤは隠者氏。

古石屋の化け物騒動からしばらく経ったある日、春峰は田沼屋敷へ呼ばれた。庭先で彼を待っていた田沼は、近頃幕府を悩ます御落胤、天一坊についてひとくさり愚痴を述べた。
「闇から闇。とできるなら楽だが、後見の天満屋から金を借りている者たちも多くてのう」
「他意はないが天一坊とやらに興味がわいてきましたな」
「そうかそうか」

伊吹は引き続き赤川大膳について調べながら、飛び出そうとする半之助をはぐらかす日々を送っていた。彼の家から奪われた守り刀に何やら仔細ありそうなのだが、まだ材料が足りない。

それに、“カインの血”の行方も気になる。

葛葉はその寓居で、かつてその業を競い合っていた蘆屋道満のことを想っていた。古石屋の地下蔵に仕掛けてあった呪符は、確かに彼の手によるもの。ならば。

久しぶりに昔馴染みと遊べそうだと、彼は微笑んだ。

早々に合流した春峰と伊吹の調査により、将軍家御落胤を名乗る天一坊という少年は、上方に突如姿を現わして大坂町奉行や京都所司代といった幕府の要職と接見し、彼らから絶大な信頼を得て江戸へ向かうよう推挙されていることが判明した。

これには天満屋丹兵衛の顔、そして天一坊の右腕として働く山内伊賀亮なる浪人の政治手腕が大きく貢献しているらしい。さらに天一坊自身も天稟というべきか、魔物めいた魅力を備えており、俗人は接見した途端その高貴さにあてられてしまうという。

葛葉は葛葉で道満のことを占うと、彼が化成の世に復活していることまでは確定。天満屋丹兵衛という闇の元締めに雇われ、江戸を訪れていることまでが判った。

誰ともなく伊吹が勤めている寺近くの茶店に集まり相談をしていると、とりあえず某藩の抱屋敷へ忍び込み、将軍からの沙汰を待つ天一坊の顔を拝むということになる。

そっと屋敷へ侵入ると、蟲物の気配がちらほらと。中でも一番大きいのは、大食風の装束に身を包んでいる天一坊その人のものだった。どこぞの藩から来た使者に対し二言三言声をかけて微笑んだだけで、彼らがまったくの言いなりになっている。
「ありゃ間違いないな」
「ああ。だが、やつの中に命が視えない」

今襲撃しても奴の命は取れない。ということで、英傑たちは撤退した。葛葉が調べていたことと合わせれば、およその見当はつけられる。

かくして、葛葉こと安倍晴明は蘆屋道満がねぐらにしている荒れ寺へ向かった。今にも崩れ落ちそうな三門を潜ると一転。中には禁苑を思わせる雅な情景が広がり、和様の金堂に蓬髪僧形の青年が寝転んでいる。
「久しぶりだな、道満ちゃん」
「ちゃんはやめろ、ちゃんは」

言いながら道満はのそりとその場へ起き上がると晴明と久闊を叙し、話題は天満屋へと移っていく。
「ああ、あれなら僕がやった。今の世は何かと金が要るからな」
「昔も公家のためにまじないやってたんだ。俺たちはどの時代でも変わらんよ。解除は?」
「はは、世知辛い。一番堅いのを頼まれたんで、軍荼利明王の法で僕の命と天一坊の命を繋いだ」
「するとお前を倒さないといけないわけか」

薄笑いして晴明が身構えると、道満も笑みを返して構える。
「そういうことだね。久しぶりに面白いことになってきた。ああ、それから」

お連れさんもまとめてかかって来て構わないよ。道満はそう宣言すると背中から翼を生やすと天狗へと変じ、真言を紡いで不動明王に従う矜羯羅童子を己の前に立たせる。
「あれだけ外法に手を染めるなって言ったのに」
「修行してたら勝手に成ったんだ。しょうがないだろう」
「呑まれるなよ」

晴明が打った式を飲み込まされた童子は一瞬で空へ散じたものの討ちかかる春峰の一撃を道満は耐えきり、攻勢に転じ大元帥明王の秘法を放つ、が。

「回避」
「回避」
「避けた」
「道満は《大元帥明王呪》のペナルティで倒れました」

道満がその場へ大の字に寝転ぶと、辺りの幻も晴れて元の荒れ寺が姿を現わす。
「大技志向全然変わってないな。出し惜しみしようよ」
「どうせ敗けるんだ。見せ技くらいはね。ともかく、これで天一なんとかの加護は解けたし、僕は金の分働いたぞ」
「えらく爽やかだなお前ら」
「物語にあるようなのは俺たちの間では挨拶くらいの意味だから」
「お蔭で合わせる顔がない人たちを大勢作ってしまった」
「帰りづらいよなあ」

そう言うと二人の悪友は笑い合う。

明日のあてはないが本気を出したのは愉しかった。そう言った道満に、晴明は声をかける。
「天海に口きこうか? あそこなら色々安心だろ」
「そいつは助かる。いいのかい?」
「あいつが困る顔はなかなか面白いからな」

天一坊にかけられたまじないも解けたが、彼の招待が判らない英傑たちは友誼のある者たちに聞きまわる。すると、意外な事実が浮かび上がった。

天一坊はサッスーン家が日本へと送り込んだ間諜だが、その正体は人ではない。

その正体はアラムートの山塞に築かれた庭園Gannahに潜み、そこに住まう者たちを糧とする、回教がかの地を席捲するより前の時代から波斯に存在する悪霊Ginniだった。その悪霊は後に欧州からの軍が異邦の夜に感じた恐怖も喰らい、“山の老人”という名を持つ閻羅王になったという。

実体無き恐怖を司る閻羅王ゆえ、その実体もまた曖昧。それが喰らった者たちはその中に取り込まれ、ひとりひとりが“山の老人”でありその手駒でもある存在になりはてる。その中の一柱こそ、天一坊を名乗るあの妖異である。

「ははあアサマイト」
「さらにどこかで聞いた気もする」
「参考にしていないとは言わない」

天一坊の招待が判り、それが完膚なき悪だとしても世間に立てる理屈は要る。
「田沼殿の手前もあるし。何か要るんだ」
「そんなの作ればいいって。どうせ天満屋は色々やってるんだし、何か後ろ暗いものは出てくるから」
「そういえば、半之助の守り刀見つけないと」
「そいつ見つけて半之助を証人にすればいいか」
「近場だし御前さまからも裏取ってもらおう。それにしても南朝が出てこなくて助かった」

春峰が再び忍び込んで半之助の守り刀を取り戻すと、確かに三葉葵が刻まれていた。証拠も出たので、英傑たちは三度屋敷へ忍び込んだ。

葛葉と伊吹が正面から乗り込むと、死んだ瞳の侍たちがわらわらと出てきた。いずれも天一坊に魅了されて操られ、天一坊と山内伊賀亮、赤川大膳を護るように展開する
「カビルの血はすでに私の中にある。“山の老人”の呪縛を絶ち、今こそ我が法にならん」
「この地にはこの地の法がある。去ね」

天一坊が舞うと地獄ジャハンナムの炎が喚起されるが、葛葉が足をひとつ踏み鳴らし、それを散らす。
いにしえの波斯アッシリアで化け物をどう退治してたか思い出したぞ」

ひとさしの法力比べが終わると、何かに思い当たった春峰が刃を抜き放つ。
「鉄の刃で死ぬまで殺すんだ」

「カインの血を吸収した天一坊は特技増えてます」

《生命力吸収※》
タイミング:常時
判定値:自動成功 難易度:なし
対象:自身 射程:なし

効果:旧き吸血鬼の力で生命の根源を吸収する特技。

このエネミーの物理攻撃によって実ダメージを受けたキャラクターは、シナリオ終了時までキャラクターレベルを1D6下げる。この攻撃でキャラクターレベルが0以下になったキャラクターは即座に死亡する。

この効果による死亡を解除したキャラクターのキャラクターレベルは本来のものに戻る。

「あたらなければどうということはない」

葛葉の《地鎮祭》で地の利を得た英傑たちは、確かにあらゆる手段を使って攻撃を避けた。

春峰に至っては相手の関節を極めて破壊する天一坊得意の暗殺術を、攻撃を当てられてからも完全に相殺することで防ぎ、《生命力吸収※》を無効化する。

一方で、山内伊賀亮も《軍神の気》や《名将の指揮》で天一坊と大膳を補佐し、自らも《頭が高い!》で英傑たちを牽制して戦いを遅延させる。

そのせいもあり、傷が癒えず弱体化していた大膳が倒れた次は山内伊賀亮が討ち取られ、最後に残されたのは天一坊だけとなる。彼は起死回生を狙って伊吹にむしゃぶりついて血を啜るが、直後に九穴から炎を噴きだして悶絶した。
「この血は少し綺麗過ぎたようですね」

「麒麟児になった時取った《一蓮托生》忘れてた」
「それで死んだ」

ひとつかみの灰になるまで焼かれた天一坊は、吹き込んできた風に散らされ、跡形もなくなってしまう。

かくして天一坊は将軍との席捲直前に流行り病を得て身罷り、すべては闇の中に消えるのだった。

天一坊が滅んで数日後。街ではその真相を知りたい人々が読売をこぞって買い、版元は扇情的なネタを書き立てている。蔦屋も例外ではなく、葛葉から何か聞き出そうと彼の寓居を訪れていた。
「センセイもあの辺り調べてたらしいじゃないですか。何かないんですか」
「ころりか何かの流行り病だって。変なこと知ると死んじゃうよ」

などと問答を続けていると、蘆屋道満がやってくる。今から天海の依頼で小笠原島の探索に赴くという。彼も早速この時代に適応しているらしい。

それからさらに日が経って天一坊騒ぎも収束した頃、伊吹の寺をひとりの侍が訪れた。その周りでは、遊び人の金さんや町人姿の田沼などがひそかにその様子を見守っている。田沼の横に春峰が座り、それとなく話を振る。
「幕府の方はどうなりました」
「旗本徳田家の子息として養育し、折をみて適切な身分に遇する。ということになった」
「それはよい。もし何かあれば、まだ剣を振るうところだった」

しばらくすると、伊吹に連れられた半之助が侍の前に出てくる。侍は彼の顔をしげしげと眺めた後、感極まって落涙し、そのまましっかりと少年をかき抱いた。

黄昏をいふ百魅
の生ずる時なり
世俗小児を外
にいだす事を
禁む一説
に王莽時とかけり
これハ王莽前漢の代を
簒ひしかど程なく後漢
の代となりし故昼夜
のさかひを両漢の間に
比してかくいふなん

――『今昔画図続百鬼・雨

古戦場火』の続きで、真相の究明と証拠集めにスポットを当てた後編ですぅ。

葛葉がうまく引っ張ってくれたおかげでメモ程度にしか用意していなかった蘆屋道満が面白くなったり、伊吹の提案で旗本の徳田家と三男坊の徳田新之助がエンディングで登場したりと、大変プレイヤに助けられたセッションだったですぅ。

§ [Promiscuus] クリスマスプディング(仕込み)

材料

生地
パン粉:150g
砂糖:150g
ケンネ脂:150g
薄力粉:50g
卵:1個
具材
ドライフルーツ各種(今年はクランベリー、プルーン、レーズン、レモンピールを使用):350g
ラム:50ml

手順

  1. ドライフルーツ各種を刻んでボウルに入れ、ラムでふやかし具材の準備をする(画像)。
  2. 卵以外の生地材料を混ぜ合わせる(画像)。
  3. 具材、卵を生地と混ぜ合わせて整える。(画像)
  4. 1晩寝かせる。
  5. 火が通るまで2時間ほど蒸す(予定)。
  6. 数日間寝かせ、食べる直前に蒸して暖めなおす(予定)。
  7. ホイップクリーム、ブランデーバター(いずれも材料欄には記載せず)などを添えて饗する(予定)。

久方ぶりにクリスマスプディングを仕込んだので覚書程度のレシピを残すものですぅ。冬らしくずしりと重いものになりそうですぅ。

買い物に出かけたら牛の脂とパンの耳をただでもらってしまったので、材料費は1000円以下でなんとかなってしまったですぅ。