ネコぶんこ


2012年02月09日 彼は地元のゲーマー向けにミニコミ誌を作りはじめたが、大学に入る二年前には『ソース・オブ・ザ・ナイル(Sauce of the Nile)』という全国版ゲーム同人誌の制作を引き継ぎ、自分が作り上げた剣と魔法のゲーム「スペルバインダー(Spellbinder)」のルールを印刷した。 [長年日記]

§ [DnD] 『遍歴と漂着:すべての版に捧ぐ』要約(前篇)

このエントリは、先月の26~29日に開催されたDnDの大規模コンベンション、D&D Experience 2012で26日に行なわれた『遍歴と漂着:すべての版に捧ぐ(Charting the Course: An Edition for all Editions)』のセミナの前半部分をまとめたものですぅ。

セミナの概要を解説しておくと、これはDnD Nextを主導するモンテ・クック、マイク・ミアルス、ジェレミー・クロフォードの3名を迎えて新世代への展望を語るというもので、旧版を振り返りながらイベントの2週間前に発表されたDnD Nextの大枠をより鮮明に提示するものだったですぅ。なお、司会者はグレッグ・ブリスランドですぅ(文中敬称略)。

次代へ伝えたいものは?
プレイヤとDMの関係。もちろん、ファイアーボールも(モンテ・クック)。
プレイヤが想像力で世界を探検すること(マイク・ミアルス)。
つまり、世界と物語を作るための道具箱……それが魔法やよいゲーム・デザイン(ジェレミー・クロフォード)。
DnDの精髄とは?
まず、それはRPGとは何かということだ。そして、それはDnDとは何かということでもある。そしてそれは共通言語。恐怖のガゼボやヘッド・オヴ・ヴェクナのように、文化として共有された物語だ(マイク・ミアルス)。
デザイナには多様な人々の多様な欲望を実現できる、それぞれが異なるDnDをプレイ、運営できる懐の深いゲームを実現することが求められている。その手始めとして必要なのがゲームの核を抽出することで、それを多様なスタイルが求めるモジュールの基盤にする。コアだけでゲームをプレイしてもいいし、モジュールを導入して戦術性を強調したり、物語性を強調してもいい(モンテ・クック)。
デベロップメント・チームの役割は?
デザイン・チームに明確な目標を与えること。提案を実行した場合どうなるか、目標達成に妥当かそうでないかを調査して評価を与える。すべてのルールは短期的にも長期的にもこのふるいにかけられる。もちろん、レベル毎にモンスタが出すダメージなどの数値計算も行なっている(ジェレミー・クロフォード)。
モジュール・システムとゲーム・バランスの兼ね合いは?
モジュールは解体の手法よりに構築される。モジュールとして分解できうる要素はコア・ゲームの中にある。たとえば、ファイターはいくつかの核となる能力と概念からなっているが、これを別の能力と交換することでカスタマイズの幅を持たせる。2人のファイターの片方が複雑なものを使っていても、それは交換して得られたものなのでバランスは保たれる。そして、DMのためにもゲームのカスタマイズに使えるモジュールがある(ジェレミー・クロフォード)。
DMが「すごく戦術的なゲームをやるよ」と言えば、プレイヤはそれを指針にして合わせたキャラクタを作成できる(モンテ・クック)。
DMがキャラクタ重視のゲームをやりたい時も、何が望まれているかを理解した上でプレイヤは戦術重視のキャラクタを作ることができる(マイク・ミアルス)。
もっと社会的な駆け引きを楽しみたいなら、DMはそれをサポートするモジュールを導入できる。より戦術的な戦闘を行いたいなら、そのグループはDMとプレイヤのやりたい事を反映してそのモジュールを導入できる(ジェレミー・クロフォード)。
君は大規模戦闘を大局的に眺めるか、個人の視点から見るか、どちらにする? 物語によってモジュールからルールを導入してキャンペーンをカスタマイズできる(マイク・ミアルス)。
ロールプレイ、戦闘、探索はどうサポートされる?
それら3つをサポートできるなら、ゲームで重要な90%は網羅できたことになる。カスタマイズはテーブル単位で行なう。DMはプレイヤと共同で彼らのゲームを作るために選んでいく(マイク・ミアルス)。
これらの選択はクラスをデザインする助けにもなった。これらの戦闘で重装で戦闘向けのファイターと探索を主にするローグはそれぞれの役割をまっとうできる。バードだって楽しめる。プレイヤーが戦闘の中や外で行ないたいことにそって、それをよくサポートするクラスがある(モンテ・クック)。
ローグは探索能力に長けているかもしれないが、カスタマイズでより“不器用な”ローグを許容するかもとしれない。君がプレイしたいキャラクタを作るためにコア・クラスから少しの要素を交換すればいい(マイク・ミアルス)。
高レベルでのプレイは機能する?
ゲームはどの版でも特定のレベルで“壊れて”しまうが、それは壊れたのではなく、変化したのだと私は考える。私は第4版が高レベルでの変化と、その変化するものを明確にすることについて最善を尽くしたと思う。私たちはそれを未来にも持って行けるし、君が特定のレベルに達した時に開放されるクラスやキャラクタのオプション一覧も準備することができると思っている。城を建造したり、部下や家臣を持つような、他のオプションも持つことができる。私たちはそれを高レベルのキャラクタが得られるものに組み込める(モンテ・クック)。
私はモンテの異なる人々が異なるものを指して高レベルがゲームが壊れるという指摘は実に重要な点をついていると思う。彼らのキャラクタが真に強くなることに一部の人は興奮する。ここでの疑問は本当にそう変わらないといけないのか? ゲームは高レベルでどう変わるべきか? それはどう見えるべきか、そして私たちはそれらすべてを満足させるだけのオプションを作らねばならないのか? こういうことこそ私たちが高レベルのプレイを考えて答えを出そうとしている真の問題だ(マイク・ミアルス)。
モンスタについての話は?
低レベルの脅威でもすべてのレベルに顔を出せるようにしたい。オークは最初恐ろしく徐々にそうでは無くなるが、決して無関係にはならないように。成長して攻撃ボーナスが伸びるだけではなく、より面白いことができるようにしたい(モンテ・クック)。
これはまた、よい世界構築の道具をDMに与えることでもある。オークはあらゆる地域で常に恐れられている。たとえキャラクタが成長しても、DMがパーティをオークに遭遇させたいと思った時にすぐ使えるものを『モンスター・マニュアル』で得られるようにしたい(ジェレミー・クロフォード)。
プレイテストの所感は?
プレイテストのフィードバックは慎重に検討される。フィードバックによって得られたひとつの閃きがルールを作らせたとして、それが正しいものとは限らない。1つの新しいルールの代わりに複数のカスタマイズ用素材をDMに提供することもあるだろう(マイク・ミアルス)
内部でのプレイテストは9ヶ月以上をかけた。痛感したのは人の数だけDnDの経験はあるということだ。これはつまり、正反対のフィードバックを受け取ることもあるということだ。デザイナの仕事というのはこれに建設的な解決を与えることで、正反対の意見をどちらもつかむためにモジュールという方法がある。(ジェレミー・クロフォード)。
本当に重要な挑戦としてDnDのウィザード“らしさ”、DnDのレンジャー“らしさ”の追求がある。時間も限られていたので難しい挑戦だったが、いい仕事をした自負がある。プレイテストでは君たちの助けを期待している。DnDのレンジャーらしさはアラゴルンやドリッズドを見れば大体仕上がりがわかる……ああ、私はレンジャーといえばドリッズドよりアラゴルン派だ(モンテ・クック)。
そうした広い想定範囲に向け、どんなアドベンチャーをデザインする?
一般的な雰囲気のアドベンチャー――政治的陰謀劇や古典的なダンジョンものを用意することについて会議があった。いくつかはより狭い範囲を狙うものになるだろう。また、君たちはそれを砂場型アドベンチャー、つまり環境にきっかけを用意し、生き生きしたNPC、わくわくする場所、プレイヤとDMにとってのカンバスと絵の具にすることもできる。時にはそれが最高のやり方だろうが、必要とする人のためにたくさんの誘導を準備しておくことはなおよい。(ジェレミー・クロフォード)。
さて、あなたのテーブルでやりたいことは? どんなモジュールを導入する?
たぶんミニチュアを使うが、そこまで戦術的なものをやりたいわけではない。また、社会的なやりとりや探索をダイスのロールではなくプレイヤの説明によって進行させたい(モンテ・クック)。
コアだけの単純なものから始めて、キャンペーンの経過が次の始まりに繋がるような柔軟性の高いもの(マイク・ミアルス)。
セッションごとに大規模戦闘と通常規模の戦闘を行き来するように、ルールの柔軟性が高いもの(ジェレミー・クロフォード)。

ここで前半部分は終わり、一般参加者による質疑応答の時間に移るですぅ。その要約も近いうちに公開できると思うですぅ。

このエントリ執筆にあたっては『D&D XP Seminar Chat Streams』、『Seminar Transcript - Charting the Course: An Edition for all Editions』、Twitterの#DDXPタグなどを参考にさせていただきましたぁ。