ネコぶんこ


2012年07月24日 エルヴィッサがどうやって生計をたてているかについては、ぼくらの誰一人、詳しいことは知らず、誰一人、そもそも知りたいかどうか確信がもてない。 [長年日記]

§ [CoC] 『『クトゥルフ神話TRPG』第7版の内容(Inside Call of Cthulhu 7th Edition)』

Call of Cthulhu is getting the first major overhaul of the rules in 20 years in the upcoming 7th Edition. At a seminar at Continuum, July 21, 2012, developers Paul Fricker (author of the monograph Gatsby and the Great Race and the scenario Dockside Dogs, contributor to Cthulhu Britannica) and Mike Mason (editor of Cthulhu Britannica and the defunct Whisperer magazine) shared some of the changes we can expect.

Inside Call of Cthulhu 7th Edition

2012年7月24日

シェーン・アイビー筆

クトゥルフ神話TRPGはルール20周年を迎え、最初の総点検を行なって来るべき第7版に備えている。2012年7月21日に開かれたContinuumのセミナで、デベロッパのポール・フリッカー(モノグラフGatsby and the Great RaceとシナリオDockside Dogsの著者で、Cthulhu Britannicaへの寄稿者)と、マイク・メイソン(Cthulhu Britannicaの編者で今は亡き『Whisperer』誌の編集者)は私たちに訪れる変化のいくつかを紹介した。

君はYog-Sothoth.comで完全な録音を聞くことができる。ここにはその概要がある。

これは終わりではない

これは始まりなのだ。ポールとマイクは、彼らが話すものは彼らが望む形にしてケイオシアムに入稿したものだが、それはケイオシアムの手の内にあることを宣言した。

ケイオシアムのダスティン・ライトも別の電子メールでその点を強調した。おそらく多くのルールが、出版にあたって変更されることになるだろう。と。

ダスティンはケイオシアムがクトゥルフ神話TRPG第7版を2013年に発売予定だと発言したが、明確な日付は未定である。

概要

ポールとマイクはクトゥルフ神話TRPG第7版のコア・ルールに、プレイヤー・キャラクターが使うルールをプレイヤー用の本として、“簡略化した”版のコア・ルールもまとめている。

彼らはルールを徹頭徹尾、再検討して再執筆した。彼らは第6版よりも順序だったものとしてすべてを再編成し、彼らは時間をかけてシナリオやキャンペーンの本で初めて姿を見せた多くの独立したルールと章を進化させ、汎用性のあるルールとして構築していった。

ポールとマイクはルールを解体して再び一から鍛えなおそうとしつつも、プレイヤーがこれまでクトゥルフ神話TRPGが築いてきた30年の成果を捨てなくてもいいように、ゲームには旧版との互換性も持たせている。

「それはほとんど同じゲームだよ」マイクは改訂版について話した「そして君はほとんど同じようにロールするが、それらのロール方法と君がロールできるかどうか解釈する方法が違うんだ」。

能力値と技能

第7版の能力値は厳格なパーセンテージ表記の数値になる。君はもうINTが12だから〈アイデア〉ロールがINT×5や60%だというのではなく、君はINTが60%なので、それが君のロールする基準になる。

技能は完全に調整され、それらの多く、特に戦闘技能は強化された。〈格闘〉技能ひとつで〈こぶし/パンチ〉、〈キック〉、〈組みつき〉、〈頭突き〉、そして近接戦武器の技能になる。〈火器〉技能ひとつで、〈拳銃〉、〈ライフル〉、〈ショットガン〉などになる。〈言いくるめ〉はなくなり、〈誘惑〉と〈威圧〉が導入される。このルールは昔のキャラクターを新しいルールに導入するためのものでもある。

重要なこととして、第7版のルールではキーパーとプレイヤーに対して何のために技能ロールを行ない、成功か失敗することでどんな結果になるか明言するように求めている。それはクトゥルフ神話TRPGでおおむね役立つ助言だが、重要なのはマイクとポールがルールに組み込んだことだ。

このシステムでプレイヤーは技能や能力値ロールでの失敗を“提案”でき、失敗した時により酷いことになるのを承知で再挑戦ができる。君が技能を提案し、それに失敗することは君が望む結果を得られないのではなく、君がちょっとした新たな脅威や危険な厄介ごとに巻き込まれるかもしれないことを意味している。プレイヤーが失敗したロールについて提案する価値があるかどうか決断するとき、鍵となるのはプレイヤーとキーパーの対話だ。

このシステムで技能や能力値ロールで失敗したとき、失敗したらより酷い結果になることを承知で“ごり押し”で再挑戦を行なうことができる。君が技能でごり押しした場合、再挑戦での失敗は君が望むものをえられないというだけではなく、新たな脅威や危険な厄介事に直面することを意味している。失敗したロールをごり押しする価値があるかどうかを決める鍵は、プレイヤーとキーパーの対話になるだろう。

すべての細々したペナルティはなくなる。その代わりに成功は3段階となり、キーパーは通常通りの技能の成功率か、半分の成功率か、1/5の成功率か、どれが必要になるか宣言する。それぞれの値は簡単にプレイ中参照できるように、技能と能力値ごとにキャラクター・シートに記録するようになるはずだ。

興味深いのは、かつての抵抗表がなくなることだ。その代わり、対抗ロールでキーパーは相手がどれくらい良い結果なのかを参照して難易度を設定する。君の敵が40%の技能か能力値を持っていたとすれば、君のロールは通常通りの技能成功率を求められるだろう。敵がそれをおよそ90%持っているなら、君は勝つために1/5の成功率でロールをしなければならない。

〈幸運〉ロール

技能や能力値を“提案”するだけが失敗を成功に変える方法ではない。第7版で、〈幸運〉ロールは君が技能や能力値ロールの結果を変化させるために行なえる要素となる。

君が60以下をロールする必要があるとき、63を出したとしよう。君は成功に向けて確率を動かすのに、3点の〈幸運〉を消費できる。しかし、これで君の〈幸運〉点は3点低くなった――君が〈幸運〉ロールしなければならないとき、その成功率はやや下がってしまった。

第7版のルールでは〈幸運〉ロールにより明確な機能を与えるつもりだ。ポールは「これはプレイヤー・キャラクターにはどうしようもない外的要因だ。君が古い屋敷にいるとして、君は上の階から物音を聞く。『僕は急いで台所に向かう。そこにナイフはあるかな?』これが〈幸運〉ロールだよ」といった。

重要なこととして、使った〈幸運〉点は自動回復しない。君はプレイの合間でのみ、新たに導入されるコネクションでそれらを回復させることができる。

コネクション

コネクションとはキャラクターにとって重要なものだ。コネクションは何だっていい――人でも、場所でも、物でも、概念でも。ポールは「それは君が愛する年老いた母親かもね」といった。「それは君が生まれ育った家かもしれない。それは君の愛犬かもしれない。君がそうしたいなら、それは君の相棒である38口径のリボルバーかもしれない。主への信仰かもしれない。概念でもいいね。君のキャラクターにとって重要なものならなんでもいい」

君はコネクションとふれあうことで〈幸運〉点を回復させられるが、1回のゲーム・セッションでそれぞれのコネクションを1回づつしか使えない。君がコネクションとの交流で回復させられる〈幸運〉はゲーム・セッションの長さにもより、1時間のプレイにつき1点だ。あるいは1回限りの独立したゲーム・セッションでは、一律5点になる。

キャラクターは最初に各自3つのコネクションを持つ。君はプレイする中で、ほとんどは破滅的な正気度の喪失による不定の狂気により追加で得ていくことになる。不定の狂気となることで、おそらくは鼠への恐怖、あるいは何らかの精神障害という形でコネクションが増加する。君はそのコネクションを使って狂気を強調したプレイを行ない、〈幸運〉点を得ることができる。

しかし君が持てるコネクションの上限は5つだ。そしてひとたび君が5つ持つようになり、さらなる狂気を得た場合、それは新たなコネクションを加えるのではなく、古いものを堕落させるか歪めることになる。こうして君の正気が崩れることで愛する年老いた母親へのコネクションは醜悪なものへ歪められるかもしれない。

狂気

狂気は伝統的なクトゥルフ神話TRPGのゲームではしばしばこっけいなものとしてプレイされるが、ポールとマイクは第7版の狂気を馬鹿げたものではなく、より暗い雰囲気をまとったものにしたがっている。同時に彼らは狂気に陥ったキャラクターに起こることをよりはっきりと体系化しようとしている。

不定の狂気となることは、その最初の狂気による短い間の人事不省から君が立ち直った後に新たなコネクションを得るだけではない――ポールとマイクはそれを狂気による狂乱と呼んだ。君はSANを喪失するどんなときにでも、君はさらに人事不省や狂気による狂乱に陥ることがある。

ゲームでの狂気については、彼らはあえて医学書の緊張型分裂病などよりはフィクションを参考にして、よりプレイを面白くする精神疾患にしようと試みた。狂気による狂乱は状況次第だ。このルールはキーパーへのガイドラインも含んでいる。

〈アイデア〉ロール

〈アイデア〉ロールはゲームに健在だが、それは少し違った使われ方をする。ポールはそれを指し「それは『マイク、ロールしてくれ。ありゃ、君は失敗したね。〈アイデア〉ロールもしてくれよ。おう、君はそれも失敗した。まあいいや、私はどのみちここで君に話さないと、それでは』じゃない」といった。

プレイヤーが手詰まりだと感じたとき、プレイヤーは常に手がかりを得るための〈アイデア〉ロールを要求できる。〈アイデア〉ロールに成功すれば彼らは手がかりを得られる。それに失敗しても彼らは手がかりを得られる――が、それらを得る方法は彼らを危険な状態へと追い込む。

シナリオのデザインに関する本では、〈アイデア〉ロールをしなくても手がかりを準備するための助言をキーパーに行なう。

戦闘

戦闘ルールはかなり大きな見直しが行なわれたようだ。伝統的な攻撃ロールと防御ロールの応酬は消えた。攻撃は対抗技能ロールになった。戦闘参加者のロールが等しく引き分けの結果だった場合――両方成功、両方失敗、両方1/5で成功など――は、通常ならどちらも若干のダメージを受ける。どちらかに偏った結果の場合、たとえば、君は1/5成功したが君の敵は失敗したようなとき、それは君がより小さな、君の敵は大きなダメージであることを意味する。

組みつきも別々の技能やサブシステムではなくなる。ポールは「君がやりたいだろうことについてのルールはあるが、一般的な〈組みつき〉技能があるわけではない。それは目標がある〈格闘〉だ」と説明した。

〈回避〉技能はいまだ健在だが、主にそれは遭遇している状況から逃げ出すことに役立つ。君は攻撃か回避ができるが、両方はできない。

キャラクターは第7版で少し強くなった。死はHPの値と同じ負のヒット・ポイントになったときに発生する。11HPあるなら、0ではなく、-11点になったときに君は死ぬ。道中で君は力を奪われ慢心総意かもしれないが、死の前にはより大きな余裕がある。

コア・ルールブックにはキーパーがどれくらいの速さでキャラクターを殺すか考えるための助言もついている。君は目標が何でそれがどうやって君のシナリオのデザインに影響するか考えることを推奨され。

キャラクターの動機

命をかける危険に対するプレイヤー・キャラクターの動機については、第7版で慎重な注意がされている。プレイヤー用の本ではキャラクターが共闘するための探索者組織の構築、彼らか超自然的恐怖を探索する一般的な動機、そして次の人材を持ち込む方法について1章を割いている。それにはいくつかの実例もある。

より個人的なものとしては、もちろんコネクションもキャラクターの動機として使うことができる。また、プレイヤー用の本にはゲームに適合したキャラクターをデザインする方法や、彼らを簡単に探索者とする方法の助言が含まれている。

コア・ルールブックには、シナリオの章にキャラクターへの動機づけをするためのシナリオを書くための助言が含まれている。

モンスター

ポールとマイクはクトゥルフ神話のモンスターは彼らの戦闘用ステータスは新ルールを反映させるために変更されるが、基本的に同じだと話した。

モンスターには彼らをプレイでどう活用し、シナリオとキャンペーンでの要求を満たすため彼らをどう改造するかについて、キーパーへの助言が含まれている。マイクとポールはキーパーの仕事が何がゲームの中で正しいかを決めることだと強調した。キーパーはプレイヤーが彼らが自分たちのキャラクターをどうプレイしなければならないか決断に迫られたとき、キーパーはゲームの所有権を持っておくべきだと。「君はキーパーだ」ポールはいう「それを君が望むやり方でやるんだ」。

マイクは長年続いたモンスターの分類がなくなると話した。「私たちは“下級の奉仕種族”や“上級の独立種族”などの記述を外した。それらは私に関係なく、そしてラヴクラフトとも関係ないと私が確信しているからだ。そこには種族を成文化させるためのある種階層的な構造があって……それは神話では意味をなさない。だから私たちはそれらを外し、今はもうミ=ゴはミ=ゴなのだ。

魔法

第7版のために彼らは長年蓄積されてきたが、ゲームには重要でなかった多くの呪文をシナリオからルールブックに混ぜ込んだ。(マイク:「私たちは魚の招来が好きでね」)

どの呪文にも基本的な説明がある。が、それぞれにはそれをより強力にするためのガイドラインがある。高い〈クトゥルフ神話〉技能と低い正気度の術者、そして人外のモンスターは、魔法を使うことができる。しかし魔法がどの段階まで力を発揮するか決定し、プレイヤー・キャラクターがどこまで介入できるか決定するのはキーパーだ。

経験的ルールとして、魔法を使う代償は正気度で、それは君をさらなる愚考へ導かせる傾向があり、それは君の人格を再定義する新たなコネクション(“古代の魔道書にあらがえない”)をもたらすだろう。

まとめ

「これは君が知った通り、まだクトゥルフだ」マイクはいった。「そのプレイはある意味、よく知ったものだ。私たちがやったのはいくつかベルを鳴らして口笛を吹き、あまり鳴っていないと思ったものを少しいじっただけだ。それは同じゲームだ。私たちは新しいルールブックを書こうとはしなかった。私たちはルールブックを復活させようとしたんだ」

ポールは「サンディ・ピーターセンは偉大なゲームを書いた。私たちがやるのはそれを未来へ向かわせることだ」とつけ加えた。

ポールとマイクは第7版のゲームを8月のGenConと9月のConcrete Cowで行なう予定だ。

どう思われるだろうか?

来年予定だと発表されたクトゥルフ神話TRPG第7版の概要についてのトークが文字起こしされていたので、それを翻訳したですぅ。

パーセンテージ表記化をおしすすめたり表などを排除して直感的にプレイしやすくする一方、万能リソースとして〈幸運〉とそれを復活させるコネクションを設定しているですぅ。

ここでうまいのは正気度周りとは別の物理的な生き残りもある程度コントロールできるようにした上で狂気に陥るとリソースが増えるようにして、不幸の泥沼に落ちても死ぬに死ねないホラーものの登場人物を再現しているところですぅ。

この“死ぬに死ねなさ”はロールを行なうときの“提案”や、失敗しても手がかりは得られるけどトラブルが増える〈アイデア〉ロールなどでも一本筋の通った使い方がされていて、システム面からよりホラーらしくなっている感触ですぅ。

めがねさんのご指摘により、“技能と能力値”の失敗などについての記述を修正したですぅ。

2012年07月27日に追記したですぅ。

本日のツッコミ(全2件) [ツッコミを入れる]
§ めがね (2012年07月26日 22:31)

先ほどのコメントに不備がありましたので再度送信致します。<br>いきなり失礼します。翻訳お疲れ様です、とても参考になります。ありがとうございます。<br>さて、翻訳についての質問です。<br>まずは<能力値と技能>での以下の部分についての質問です。<br>---------------------------------------------<br>In their system a player can “push” a failed skill or characteristic roll, <br>getting a chance to try again by agreeing to more dire consequences for failure. <br>If you push a skill, failing the retry won’t just mean you don’t get what you want, <br>it means you also might encounter some new threat or dangerous trouble.<br> Player-Keeper communication is key when the players have to decide whether it’s worth pushing a failed roll.<br>---------------------------------------------<br>ここの分の訳案をまずは以下に示します。<br>---------------------------------------------<br>今回の彼らのシステムでは、プレイヤーはロール失敗後に「ゴリ押し」してみてもいい。<br>その代わり、再挑戦後に失敗したら普通の失敗より酷い結果になるだろうね。<br>だから「ゴリ押し」するなら、本来求めた結果が得られないだけじゃなくて、新しい脅威とか危険とかを招きそうだけどね。<br>「ゴリ押し」するメリットはプレイヤーとキーパーの交渉しだいかな。<br>---------------------------------------------<br>この章に続く、幸運の消費に関しての記述では“Pushing” a skill or characteristic isn’t the only way to turn failure to success.<br>とされています。私の解釈ではこの箇所から"push"は失敗したロールを成功に変える為の方法だと判断し、<br>上記の訳案の様に<br>「失敗後の再挑戦である」<br>「そのロールに失敗すると一回目の失敗より酷い結果が待っている」<br>「メリットはキーパーとの交渉による」<br>の三つを強調しました。<br>あくまで私の訳案が間違っている可能性もありますし、参考程度にしていただければ幸いと思い送信させていただきます。<br>長文・拙文失礼致しました。

§ ぱらでぃん (2012年07月27日 23:37)

ありがとうございますぅ。当該部分の訳を修正しましたぁ。