ネコぶんこ


2018年05月15日 [長年日記]

§ [DnD][5e] 『新たなダンジョン・マスターに捧ぐD&Dでの即興(Improvisation in D&D for New Dungeon Masters)』

ミヒャエル・シア

2018年03月23日

ダンジョン・マスターが素晴らしいD&Dのゲームを行なうために必要な技術は、たくさん思い浮かぶ。それはルールへの熟練や鋭い戦闘、戦術眼かもしれない。それは歴史、宗教、そして政治も含めた世界を無から構築することかもしれない。ゲームのリアリティは非常にさまざまだ。私たちが素晴らしいゲームを行なうために必要なのはそれらの腕前ではない。しかし、ある技能はものすごいD&Dのゲームを行なうときに輝く。

即興。

ゲームは決して計画通りには進まない。プレイヤーは私たち自身が考えもしなかった直感に突き動かされる。彼らは私たちがまったく考慮していなかった決断をする。彼らは精密に地図の書かれた西から、まったくまっさらな東へ頭を向ける。彼らは私たちがでっちあげたNPCに恋をして、もっとも重要な依頼を与えるNPCをドッペルゲンガーと思って崖の上から蹴り落とす。こうした現場での変化に対応し、ゲームを難なく運営し続けることが、平凡なDMと偉大な者の違いである。

私たちはゲームを軌道修正し、彼らが行くと想定した方向へ進行させることを強いたくなるかもしれない。しかし、それは間違いになりうる。ゲームを“押す”のは、1つに、プレイヤーが物語を導く力を取り外すことになる。2つに、私たちが想定していないところへ進むのは、楽しみだからだ。物語が卓を囲む誰の思惑も越えて拡大するとき、魔法のような気持ちになる。その魔法を編むことは私たち次第で、私たちは即興という呪文を使える。

即興について語るといっても、面白い声を出したり、キャラクターに没入することの話ではない。それらは腕を磨けば確かに楽しいことだが、それらは私たちが語るものの中心ではない。語るべきは物語を進め続けるために必要で、予想外の事件やキャラクターがする決断に関係なく、それらが楽しみでありつづけるための技術だ。私たちはキャラクターに他の道へ行くよう強要せず、彼らの選択に基づいた適応をする。

即興は一生を通して伸びる技能だ。始めたばかりでも、40年間D&Dを続けていても、私たちは常にこの技能を伸ばすことができる。小技を得る。新たな技術を学ぶ。プレイヤーと新たな道を繰り返し見つけ出し、ゲームで発生する前には考えもしなかった大胆な考えを思いつく。より多くの即興でより上手くなり、それをするほどにより自信をつけ、私たちはそれを行なう。実行は良い即興の基盤になる信頼を構築する。

ルールへの熟練を投げる

D&Dのゲームを始めた君は、自分がゲームすべてのルールに圧倒されているのに気づくかもしれない。D&Dは運用が複雑なゲームだ。ルールの最終的な決定権者の役割を引き受けるかわりに、プレイヤーに助けを頼もう。サンダーウェイヴのダメージがどれだけか忘れてしまった? 自分でなんとかするよりは、むしろそれを調べてくれと頼んでみよう。プレイヤーがルールの質問に答えてくれるのをよりあてにするほど、彼らはDMのことを敵として考えず、DMは他のプレイヤーのように、物語の進展を見るためにそこにいるのだと理解する。

しかし、これはD&Dを運用する基本を理解することから君を解放するものではない。ルールに熟練する必要はないが、ゲームを難なく運ぶ程度には習熟するほうがいい。君がグループのためにそれを始める前に、終わりまで読む充分な時間を取り、ゲームがどう動くかを理解しておこう。

やらせることを学ぼう

即興でよくなるものの多くは、想定を捨てることから始まる。ゲームを計画して準備するために座るとき、私たちは頭の中でどうなるか想定していく。そして、卓についてみれば、計画した通りにはならないものだ。あまりに強くこの想定にしがみついてしまうと、私たちは物語の強制力によって驚きの機会を逃してしまう。私たちはビデオゲームを作っているのでも、映画を撮っているわけでも、小説を書いているのでもない。私たちはそこで展開する物語を体験しているのだ。

一般的に私たちが戦いが始まると想定しているとき、それは起こるが、キャラクターはそのかわりにどうやって潜在的な脅威との対話や、その他いくつかの方法で対立構造を破壊する方法を見つけようとする。キャラクターが小さなホブゴブリンの野営地に走り込むと言った。私たちは彼らが入って何体かのホブゴブリンと戦うことを想定するが、そのかわりに、彼らが戦団に加わるよう雇われた傭兵のふりをしたならばどうだろうか? 彼らが素晴らしい〈隠密〉判定の連続で野営地に忍び込んだとしたら? 彼らが大きなたき火で野営地の衛兵を誘い出したとしたら? 私たちにとって想定外だったかもしれないが、全員が面白い物語にたどりつくことができた。ただ対立を強制し、戦いを最初の場所で想定通りに戦闘を起こせば、私たちはそれに失敗するだろう。

キャラクターが探検するために面白い状況を構築し、彼らがそれにどう接するか想定を捨てて臨むのは、即興DMのための大いなる一歩だ。

質問して答えを聞こう

即興演劇を研究する人たちは多くの即興術が効くことから始まるといっている。プレイヤーが何を言い、それがどのようにゲームを買えることができるか聞いていないなら、私たちは即興をすることができない。ゲームを進めるもっとも簡単な小技の1つは、プレイヤーが答えるための質問をし、その答えをゲームの進行に使うことだ。

ここにいくつかの例を挙げる:

「マオ、君はどんなものがこの骨董屋で魅力に感じた?」

「ワーリン、君がチョルトの密林を旅するうちに、どんな面白い事件があった?」

「タイサブリ、君が街のドックで最初に気づいた3つのものは何?」

「デーヴァ、君はなぜドワーフの仲間をアンデッドの騎士から守ろうとする?」

君はこれらの質問のすべてが、より多くのものを引き出してキャラクターの操縦を助けると気づくだろう。それらはあまり一般的ではないか、制限がある。私たちはローグのマオがこの店に何かを求めていることを知っているが、何なのかを知らない。私たちはデーヴァが彼女の友を助けると知っているが、なぜ彼女がそうするかわからないかもしれない。「君はどうする?」など、前後関係なくあまりに漠然とした質問をするかわりに、これではあまりに重々しく物語を進めているように感じられるかもしれないが、楽しい道の下で物語を導いていけるかは私たち次第だ。

質問は、私たちをゲーム内のキャラクターに巻き込ませる。それは私たちがゲームを展開し、プレイヤーの望みを聞くことを手伝う。質問をしてその答えを聞くことは、私たちが頭の中に持っている物語から抜け出すのを手伝ってくれ、また、彼らが世界を旅するように私たちがキャラクターの物語を認め、理解し、受け入れられるようにしてくれる。

「そう、そして……」

即興演劇でもっとも一般的な話の種の1つは「そう、そして……」を巡る考えだ。この即興の技術は2人の間で考えを投げ合って絶えず受け入れ、その考えに「そう、そして……」と言っていく。時にキャラクターが不可能なことを試したいとき「いや、しかし……」がより適切だが、これはD&Dでうまくいく方法で、DMは選択肢を提供することもできる。多くのとき、これはプレイヤーの質問から始まるかもしれない。

「牢獄の鉄格子を抜け出せる?」

「いや、しかし君は鍵を持った衛兵が寝入り、彼のベルトの上にある鍵束がちょうど手に届く範囲だと気づいた」

これはD&Dの心臓部にある行き来する物語構築だ。DMは状況を描写し、プレイヤーは彼らが何をしたいか描写し、そしてDMはどのようにすればそれが可能なのかを描写する。「そう、そして」と「いや、しかし」を導入することで、ゲームに交渉が組み込まれる。危険を承知の上で目的を目指すキャラクターはどんな奴だろう?

本を読む

脳に偉大なフィクションを満載するのは、私たちの即興能力を向上させる。本、映画、TV番組、ビデオゲーム、これらのすべてはD&Dのゲームに素晴らしいインスピレーションを与えてくれる。しかし、即興のゲームではD&Dの本そのものが、ものすごい価値を持つ。モンスター・マニュアルには、正確な瞬間に君のゲームへ落とせる素晴らしい物語、フック、そして考えが詰まっている。君が他のD&Dの本で隅から隅まで読んでいないものがあれば、それを読もう。ダンジョン・マスターズ・ガイドには、インスピレーションを与える考えでいっぱいだ。特に、ゲームを準備している間、DMGのランダム表は素晴らしいインスピレーションを与えてくれる助けになる。ランダム表は型どおりの考えから脱却することができ、自分のゲームに対する斬新な考えを与えることができる。君が出版されたアドベンチャーを行なっているなら、前もって伏線を張れるようにそれを通読し、アドベンチャーの想定と異なる動きをするキャラクターを快適だと感じてほしい。

即興のメカニクス

私たちがD&Dのゲームを行なうとき、技能判定、有利、不利、そしてインスピレーションといった重要なメカニクスは状況を即興で造り、キャラクターに潜在的な行動を促すのを助けるように働く。これらのメカニクスは即興される状況を促進して手助けするために働く。これらは質問し、オプションを提供する考えとも一緒に働く。

君がこれらのメカニクスをまだよく知らないなら、何分かかけてD&Dのプレイヤーズ・ハンドブックか、D&D Beyondを読んでおくこと。

ゲームを行なうとき、私たちはキャラクターが目標を達成するための障害に勝とうとする状況を描写する。時に、キャラクターのやりたい行動が特に簡単なら、キャラクターはそのままそれをできる。しかし、それらが挑戦的なら、私たちはそれがどれくらい困難かに基づいた挑戦を難易度として設定できる。簡単だが失敗しがちな行動は10、そして本当に難しい挑戦は20だ。キャラクターが撮りたい行動と状況の難しさに従い、われらDMはこの難易度10から20の間を選択する。眠っている衛兵のベルトから鍵を盗むのは13だろう。牢獄の鉄格子を曲げるのは20だろう。

特に戦闘において、いくつかの状況では、私たちはプレイヤーに取引をもちかけることができる。ある技能判定に成功すれば、彼らは攻撃をする際に有利を得ることができると。たとえば、キャラクターが石のテーブルに飛び乗ってオーガの頭上に飛び込む、難易度13の〈軽業〉判定に成功する気があるなら、彼らは最初の攻撃の際に有利を得ることができる。失敗したなら彼らはテーブルの上を滑り、オーガの足下で伏せ状態になる。

こうした類いの取引は、DMからプレイヤーでも、プレイヤーすらDMでも、どちらででも有効だ。プレイヤーが驚くべきことをなしたいなら、私たちはそれを達成すれば彼らに有利を与えるよう、難易度を与えることができる。同じように、状況に若干の興奮をくわえるために、私たちはプレイヤーに彼らの行なえる潜在的なオプションに難易度を与え、成功するならば有利を得られ、失敗したなら不利を受けるというようにもできる。

最後に、プレイヤーがキャラクターに合った行動をしたり、物語を前に進めようとしたとみたら、私たちは彼らにインスピレーションで報いることができる。インスピレーションは後から働く変則的な仕組みだが、それは彼らのキャラクターに忠実な選択をして物語を前進させ続けるプレイヤーへの報酬として非常によく役立つことができる。私は個人的に、キャラクターが危険をおかすかそれを望んだとき、インスピレーションを与えた。

生涯の探求は続く

この記事は偉大な即興DMに必要なものの上っ面をかろうじてひっかいた。それを上手にするには、実践と実行あるのみだ。それが働くとき、私たちのゲームは本当に魔法のもの――私たちの誰もが考えてもみなかった、しかし共に構築できた――になる。将来の記事では、卓での即興に役立つ道具を含む、D&Dのゲームに役立つ道具のいくつかについて話そう。

著者について

マイク・シアはライター、技術者、ダンジョン・マスター、そしてウェブサイト『Sly Flourish』の運営者だ。マイクはフリーランスとしてウィザーズ・オブ・ザ・コースト、Kobold Press、Pelgaane Press、そしてSasquach Gamesで働き、『Lazy Dungeon Master』、『Sly Flourish's Fantastic Locations』、そして『Sly Flourish's Fantastic Adventures』を執筆している。マイクはバージニア州北部に彼の妻ミシェルと、彼らのダイアワーグ、ジェブと一緒に住んでいる。

DnD者以外もRPG者ならマスト読むべしレベルでアドリブ、即興についてを鬼のように客観視して言語化し、定型的な方法論にまとめてくれているコラムが『D&D Beyond』に掲載されていたので、少し時間が経ってしまったけど翻訳したですぅ。

RPGのアドリブや即興に即興演劇のメソッドを借りているところは多けれど、ここまで自家薬籠中の物にしてRPGへ寄せた話をできているのはそうそうないですぅ。