ネコぶんこ


2013年01月14日 うらやましさとねたましさの相違を知ること [長年日記]

§ [DnD][4e][LnL] 『D&D Nextの目標、その2(D&D Next Goals, Part Two)』

伝説と伝承

マイク・ミアルス

先週、私はD&D Nextが目指す大目標ふたつについてあらましを解説した。今週はそれらの真意についてもう少し深く掘り下げたい。ふたつの大目標――D&Dの核となる要素を抽出することと、単純なものから複雑なものまで調節できるゲームを作成すること――は絶妙に絡み合っている。

まず、私たちはゲームを三段階のルールを用いて検討している。今週は基本ルールについて取り組もう。

基本ルール

基本ルールはゲームの出発点だ。基本ルールはゲームの絶対的な中心となる。それらはD&Dの美点を形成するものだ。それらのルールでゲームは完成するが、それらはダンジョン探検を運営するのに必要なルール以上は詳細に立ち入らない。キャラクターは能力値をロールし、(私たちは君がクラスから与えられるものを得て種族の修正を受けるかもしれない可能性も検討しているが)種族を選び、クラスを選ぶことで作成される。技能はゲームの一部ではないが、私たちは技能ダイスをクラスに組み込む(ファイターは彼らの技能ダイスをすべての【筋力】判定に使え、ウィザードはすべての【知力】判定に、など)ことで即興性を助け、判定を運用できるようにすることを検討した。すべてのクラスはあらかじめ専門分野を持ち、その利益はクラス特徴として表現される。専門分野は単純だが、ボーナス・ヒット・ポイントや呪文のように効果的なものだ。

君はAD&Dのキャラクター表現――マルチクラスはできないが、種族とクラスは選べる――ベーシックD&Dと組み合わせたものがコア・ゲーム・ルールと考えることもできる。

ゲームには今のところ――クレリックのための神格、ウィザードのための系統など――は存在しない。キャラクターを構築するためのオプションは象徴的なD&Dのクラスを表現するものになる。クレリックはアンデッド退散をし、メイスを構え、重装鎧を着て、回復ができるキャラクターだ。ウィザードはファイアーボールマジック・ミサイルを放つ。ファイターは重装鎧を着て良い武器を構える。ローグは抜け目なく、罠の扱いがうまく、器用に壁を登り、不意討ちや急所攻撃に長けているか、古くからのローグの能力を使いこなせる。新たなプレイヤーと帰ってきたプレイヤーが種族とクラスを見て彼らの頭にある姿とぴたり一致することこそ重要なのだ。

基本ルールの要となる強みはキャラクター作成に時間をとらず、クラスもあらかじめ単純だが強いオプションになっていて、簡単にゲームの準備とプレイができることだ。ベーシックD&Dのようにルールの自由度は高く、DMは細かいこともコア・システムで裁定することができる。

それがRPGの要になる概念である、君が可能であるかどうかにかかわらず何かに挑戦することを援助するなら基本ルールは成功するだろう。ベーシックD&Dのように、焦点は徹底的なルール化やキャラクター・オプションよりむしろ、RPGの要となる概念に絞られる。

理想をいえば、複雑なルールまで手を出さなくても、あるいは君が新しいプレイヤーに自分のキャンペーンでどのルールを使っているか解説しなくても、喧々諤々の議論は最低限にこれらのルールを使ってキャラクターを作成できるようになることだ。

ここにはコア・ルールが目指す基本の目標を並べてある。

  • 特に新しいプレイヤーとDMのため、簡単に理解できるものにする。想像の世界で、新しいプレイヤーのグループはカタンの開拓者のようなボード・ゲームを理解するのと同じ程度の時間でゲームをしながら気づいていくことができる。基本ルールは彼らが10歳で初めてのRPGに挑戦する場合でも、10年ぶりにゲームへ戻ってきたDMであろうと、新規プレイヤー勧誘の最前線にある。成人のD&Dファンには彼らの子どもにゲームを教える最高の手段がこれだと感じさせねばならない。
  • RPGならではのもの(限界を超え、限りない可能性を持ち、想像力に富んだプレイと、グループによって共有されるゲームによる楽しく行き当たりばったりな物語)に焦点を向ける。
  • キャラクター作成、アドベンチャーの読み込み、あるいはダンジョンの準備などすべての面でプレイをすぐ始められる。
  • DMにプレイ中に発生したさまざまなことを裁定する指針とコア・システムの使い方を教える。
  • 1時間で完全なアドベンチャーをプレイできるプレイの速さ。グループはその時間内で単純なダンジョンなら5~6部屋を踏破できなければならない。もちろん、君はより大きなダンジョンをより長いセッションのために構築できるが、重要なのは複雑さを減らすことでアドベンチャーをプレイするのに最低限必要な時間を減らすことだ。短時間で開始できてプレイも速いことは新たなD&Dファンを獲得することやより忙しい、てんてこ舞いの人でもゲームをやりやすくするための鍵になる。
  • 製品についてだが、君は1~10レベルまでの範囲でThe Temple of Elemental Evilの広さと規模を持つものを想像することができるだろう。ただし、私たちが特定の製品を計画する段階にないことは了解してほしい。だが、この例は目指すものを表現はしている。

現在のデザインの目標

君が現在のルールの様子を見たなら、私たちにはまだ目標を達成するために行なう作業が残っていることがわかる。これらの目標はデザイナ間でさまざまな段階の合意がなされており、次の調査によるプレイテストのフィードバックで私たちがどれに取り組むかを確定させる。

  • テーブルでより円滑に進行されるように現在の練達システムはより単純化される。率直にいえば、武勇ダメージ・ダイスと武勇ダメージ・ボーナスはあまりに面倒なものだと私たちは考えている。現在の案は静的なボーナスを放棄し、ボーナス・ダメージのダイスを武器のダイスとして得ることで、両手持ち武器の力強さと、二刀流や複数回攻撃の華麗さをひとつのシステムに結びつけることだ。この変更に隠された利益は武勇キャラクターのダメージを全体的に下方修正することで、ヒット・ポイントを引き下げることができるとともに、高レベルのモンスターを他より強くできるということである。
  • クラス間のバランスを取る。すべてのクラスはすべてのレベルでお互いに有能と感じられなくてはならないが、特定の分野により長けていることは許容される。ローグは判定と罠の扱いが得意だ。ファイターは最高のACとヒット・ポイントを持つ。クレリックは最高の回復薬であり補助呪文使いだ。ウィザードは最高の範囲攻撃と制御効果を使う。私は精神集中のルールが呪文の重ねがけと強化呪文を抑止していることに、本当に満足していると認めよう。私の高レベル・プレイテストでバランスの問題が発生したのは5つの強化呪文で殺戮機械のキャラクターを作成することよりも、グリッターダスト/グリース/スティンキング・クラウド/ウォール・オヴ・ファイアを使うことで遭遇を冗談のようにしてしまう特定の呪文についてのものに限られた。私たちは精神集中をふたつの異なるルールに分割する見通しだ。ひとつのルールは精神集中とダメージによって呪文が終了するもの、そして分割されたルール(とりあえず維持と呼ぼう)は君が一度にひとつの呪文しか維持できないよう制限するものだ。これで私たちはもう少し精巧に呪文の相互作用を制御できるようになる。
  • 機会攻撃は単純化したい。近接した状態から脱出することに対するペナルティとして、そこから離れることなく集中させたい。個人的に、私はそれらに意図するルールと旧版ルールとの混同を減らすために名前を変更したい。完全に君が近接戦闘から離脱しようとした状況に限定させたベーシックとAD&Dの扱い方が私は好きだ。それがルールに隠された狙いなのだ。
  • 能力値をより強調する。現在の文章ではまだ能力値の重要性とそれらがゲームで中心的な役割を占めていることを表現するのに不充分だ。どんなキャラクターでも彼らがそれぞれ行なえる判定や対決の例が与えられるのを私は望む。
  • 意味がないオプションを削除して戦闘を単純化する。現在ルールには14のオプションがある。基本のゲームには攻撃、呪文発動、離脱、隠れる、疾走、捜索、そしてアイテムの使用しか必要とされない。私はコア・ルールをクラス独自の要素は抜きにして16ページほどまでに煮詰めたい。
  • 呪文から専門分野やクラス独自のものまでを選び、クラスのためにコア・オプションを構築する。これを強調するのは新たなプレイヤーにシステムの読み込みを要求することなく、単純なキャラクターを望む人が熟練者とプレイするときでも通用する良い選択をするためであることはいうまでもない。

第3回:移行

来週、私は標準的なゲームとベーシックD&Dと似たゲームからより多くのキャラクター・オプションを持つものへ円滑に移行することについて話す。

マイク・ミアルス

マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。