2010年08月07日 「あんたたちふたりは凄腕のはずだろ」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Robert J. Schwalb『見つめる柱(The Pillar of Eyes)』Dungeon #180(4レベル)
混沌の痕の城壁からそう離れていない場所に普通の平原とは違う、歪んだ石柱に囲まれた恐ろしい土地がある。それらは無数のこちらを見つめる眼球のようだ。多くの探検家たちは奇怪なモノリスを探索し、何人かはそのごつごつした外見の下で力が蠢いていることを確信したが、見つめる柱は今まで、推測と驚異をかきたてる古々しい謎の構造物のままだった。しかし……最近の研究によって石はそれに囲まれたところに住む者たちを凶暴にさせている疑いが出てきた。『見つめる柱』は4レベル・キャラクター5人向けの混沌の痕用シナリオである。
ああ、壁の向こうには多くの不思議がある。私は自分でもそのいくつかを見てきた。私は驚異と、それと共にある恐怖を他にも見てきた。だが非常な危険や莫大な財宝が眠る場所には、私や数少ない偉大な先人たちが最高の努力をそそいだにもかかわらず、閉ざされたままの秘密もある。そんな場所のひとつに“見つめる柱”がある……。
2010年08月13日 「ぼくこそが死者にして、その地」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][DarkSun] 『“テーマ”(Themes)』
“テーマ”は経歴、なりわい、または原型と呼べるものでいくつかの異なるクラスや役割のキャラクターをまとめている。ちょうど種族やクラスが君のキャラクターが世界でどんな立ち位置なのかを助けるように、“テーマ”は君の物語とアイデンティティを洗練させるのに役立つキャラクター第三の構成要素として加えられる。君がエルフのローグだとして、君はデューン・トレーダー(Dune trader)のエルフのローグなのか、ノーマッド(Nomad)のエルフのローグなのか、それともヴェイルド・アライアンス(Veiled Alliance)の密偵であるエルフのローグなのか? それぞれの“テーマ”は同じコンセプトのキャラクターに異なる物語を提供する。“背景”が君のキャラクターがどこで・どのような成長をしたか描写するとすれば、“テーマ”はどうして・どのように君のキャラクターが英雄になったのか描写する。
今日の『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』のプレビューで、我々はダーク・サンのキャラクター・テーマ――特にアンウェルカム・ゲストについて詳しく見ていこうと思う。
「貴族、奴隷、聖堂騎士、商人――すべては魔王によって脅かされている。我々が暴政の束縛を捨て去りたいのなら、我々はまず互いに敵対することをやめなければならない」
――ティア人の剣闘士にして革命家、ノリ
『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』の第3章ではキャラクター作成にあたっての新しいオプション、君のキャラクターの“テーマ”が紹介される。“テーマ”は経歴、なりわい、または原型と呼べるものでいくつかの異なるクラスや役割のキャラクターをまとめている。ちょうど種族やクラスが君のキャラクターが世界でどんな立ち位置なのかを助けるように、“テーマ”は君の物語とアイデンティティを洗練させるのに役立つキャラクター第三の構成要素として加えられる。君がエルフのローグだとして、君はデューン・トレーダーのエルフのローグなのか、ノーマッドのエルフのローグなのか、それともヴェイルド・アライアンスの密偵であるエルフのローグなのか? それぞれの“テーマ”は同じコンセプトのキャラクターに異なる物語を提供する。“背景”が君のキャラクターがどこで・どのような成長をしたか描写するとすれば、“テーマ”はどうして・どのように君のキャラクターが英雄になったのか描写する。
この章では以下の項目を扱う。
- 君が“テーマ”を選ぶことや“テーマ”がどう働くかというルールも含まれた、キャラクター・テーマの基本。
- すべてについてパワーが取得でき何種類かの“テーマ”のパワーを持っている、アサシャン・ミンストレル(Athasian minstrel)からワイルダー(Wilder)までダーク・サンのキャンペーン用キャラクター・テーマ10種類。
- たとえばキャラバン・マスター(caravan master)、ジャスット・ダンサー(jaszt dancer)、レインブリンガー(rainbringer)、そしてヴェイルド・ガーディアン(veiled guardian)などが含まれた、すべての“テーマ”に対してふたつが用意された“伝説の道”。
英雄の“テーマ”
純粋に肉体的な力、精神の鍛錬、または自在な秘術の業などの資質によって、アサスに住む者の多くは英雄となる可能性を持っている。傭兵、暗殺者、砂漠の野盗、逃亡奴隷、宮殿の密偵、予言者、隠者、など――冒険への呼び声に従ったアサスの住民は世界の砂漠や都市で彼らの運命と対峙する。深紅の太陽のもとで生きるごく少数の利他主義者、だが、なぜ君はそうしているのだろう? 君は適切な報酬だけを基準に戦う打算的な傭兵だろうか? 復讐の念や愛する者をさらった奴隷商を追うことが君に活力を与えるのだろうか? 君は荒野で最も恐るべき戦士として名を上げたいのか、財宝を集めて楽しみたいのか? あるいは君はとても希少な(そして恐らくしごく単純な)生き物、世界を少しでもよくしようと戦う英雄なのだろうか?
英雄には自由に行動できることと世界を変えたいだけの願望というふたつが必要になる。無数の動機が可能性としては存在するが、以下10種類の英雄の“テーマ”はよい開始場所を提供する。君は“テーマ”をひとつだけ取得できる。“テーマ”を選ぶさいに君がすべきことのすべては、君が君のキャラクターを作成するときにひとつを選ぶということだ。君が必要としないなら君は“テーマ”を選ぶ必要はない。君が“テーマ”を選んだなら、それは君に以下の利益を与える。
- 君は自動的に“テーマ”によって取得できるパワーを得る。
- 君が適切なレベルに達したとき君はさらに“テーマ”のパワーを取得することができる。
- 君は“テーマ”を前提条件とした特技や“伝説の道”を取得することができる。
この章で紹介される“テーマ”は以下の通り。
“テーマ” | 説明 |
---|---|
アサシャン・ミンストレル(Athasian minstrel) | 芸人、助言者、または暗殺者 |
デューン・トレーダー(Dune trader) | 貿易商家の代理人 |
エレメンタル・プリースト(Elemental priest) | 原始精霊を信仰する者 |
グラディエイター(Gladiator) | 闘技場で戦ってきた戦士 |
ノーブル・アデプト(Noble adept) | 特権階級や生きる中で学んだ者 |
プライマル・ガーディアン(Primal guardian) | オアシスや森の守護者 |
テンプラー(Templar) | 魔王の代理人 |
ヴェイルド・アライアンス(Veiled Alliance) | ひそかに魔法を実践する者 |
ウェイストランド・ノーマッド(Wasteland nomad) | 砂漠の斥候や野盗 |
ワイルダー(Wilder) | サイオニック能力に恵まれた英雄 |
アンウェルカム・ゲスト
「非才な芸人に宿を与えてもらえませんか?」
前提条件:アサシャン・ミンストレルの“テーマ”
ティア地方の人々はむやみに芸人を信じないことを学んだ。平凡な吟遊詩人、優雅な踊り子、そして甘い声の唄い手は恨み骨髄に徹した競争相手から送られた殺し屋かもしれない。しかし、慣習では芸人を迎えることを拒否してはいけないことになっている。家の者はどんな疑いがあろうとそのような客を歓待せねばならない。それでも、偏執狂的な貴族は彼らの飲み物に入れられる毒や背中に刺されるナイフを恐れてこれらの芸人を締め出すかもしれない。
芸人が入ることを拒んだ者たちは彼が危険にさらされているからそうするが、新参者に対する悪意が無い場合でも、拒絶されることは芸人にとって耐えがたい屈辱で、そのような無礼は何もないところに敵を作る。
アンウェルカム・ゲストは優秀な芸人で目標の家にもぐりこんで殺しを行なうのにじゅうぶんな間合いを得るまで彼女の遊芸者としての身分を利用する。アンウェルカム・ゲストは毒を扱う名人で、蟲の毒や腐敗毒を隠し持って使う機会をうかがっている。一部のアンウェルカム・ゲストは単独行動をするが、多くは旅芸人の一座に入っており、それはしばしば殺人者、泥棒、そして破壊活動家で満ちている。バードは最高のアンウェルカム・ゲストとなりうるが、ローグ、ファイター、そしてアサシンもこの道で何かを見出すかもしれない。
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月曜日の予告:「アサスは他のまともな世界の野蛮な影である。すべての種族はより立派な祖先のまったくもって野蛮な末裔だ。あらゆる生命体の本質ははるかな昔に消滅した先祖より悪く、ずるく、そして恐ろしくなるために捻じ曲がってきた」
2010年08月17日 「おまえなんか、必要ない」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][DarkSun] 『キャラクター・オプション(Character Options)』
アサスの冒険者たちは残酷な魔王から無情な荒野まで、多くの危険に直面する。それでも大いなる運命を求める者たちは途方もない危険を打ち破らなければならない。冒険者は時おり彼らが護った者たちから感謝される。それ以外の時、英雄は恐れと疑いの元であり、アサスはめったに信頼や希望で報いることはない。
アサスの英雄的な冒険者として、君には他者に欠けている長所がある。君は自らの能力を伸ばし技能を磨くことで一般人から抜きん出ている。君には都市国家の法の外で生きる能力があり、荒野でなんとか生き延びるかごみごみした都市の雑踏で敵を避けることができる。そして今日の『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』のプレビューで、我々は君にダーク・サンの冒険者――特に、ダーク・サンのウォーロック――の新しいオプションをお届けする。
『アサスは他のまともな世界の野蛮な影である。すべての種族はより立派な祖先のまったくもって野蛮な末裔だ。あらゆる生命体の本質ははるかな昔に消滅した先祖より悪く、ずるく、そして恐ろしくなるために捻じ曲がってきた』
――旅人の手記
『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』の第4章では、君のキャラクターをよりダーク・サンの設定向けに作成できる多くの要素が紹介される。君はページをめくることで以下の項を見つけることができる。
- 秘術魔法:穢し(defiling)と保護(preserving)を含めた、アサスでどう秘術魔法が働くかのルール。
- 荒削りな素質(Wild Talents):キャラクターにちょっとしたサイオニックの力を持たせる追加ルール。
- 新しい作成オプション:荒ぶるバトルマインド(wild battlemind)、闘技場のファイター(arena fighter)、万霊のシャーマン(animist shaman)、そして魔王の契約のウォーロック(sorcerer-king pact warlock)がダーク・サンの設定に沿った新しいクラスの作成オプションである。
- 神話の運命:歴史の流れを変えるほど長く生き残れたキャラクターは彼らのおこないに値する運命を得る。英雄は光と希望をもたらすアヴァンジョン(avangion)になるだろうし、破壊をもたらすドラゴン・キング(dragon king)になるかもしれない。
- 特技:この項目はアサスで見られる種族のための特技を含む。また第3章で紹介されるキャラクターの“テーマ”を補助するための特技も紹介される。さらに、多くの特技によってアサスの闘技場で使われる特殊な武器も開放される。
- 儀式:アサスに独特な驚異と過酷な土地で必要とされる新しいものや修正された儀式。
- 装備:新しい装備で君のキャラクターは深紅の太陽の下で生き延びることができるだろう。
ウォーロックの魔王の契約
アサスでは、多くの聖堂騎士が秘術の力と引き換えに魔王と契約を結ぶ。魔王の契約は魔王が役に立つと考えた個人に与える訓練と魔法による変異をあらわす。この契約を結んだウォーロックは魔王があやつる力を引き出すことができる。
この契約のウォーロックはほとんどが魔王に仕える聖堂騎士だ。彼らのほとんどは、魔王の命令に従うということになっている兵、代理人、または下僕といった聖堂騎士の身分である。したがって、魔王の契約のパワーは味方を助けて近接戦闘に向いたものである。魔王はまれにその力を聖堂騎士以外の有望な弟子や特権を持つ貴族に与えるが、それはまれな例である。
新しいクラス特徴
君が妖かしの契約を選ぶとき、たとえば『プレイヤーズ・ハンドブック』やサプリメントの『秘術の書』の代わりに、君はもうひとつの選択肢として魔王の契約を選ぶことができる。
魔王の契約:君は魔王への忠誠を誓った。引き換えに、君の主人は妖しげな儀式によって君を秘術呪文使いへと変化させた。君がこの新たな力で行なうことは君次第――魔王は君を監視したり君の力を奪うことはできないのだから。だが、すべての魔王は疑り深く冷酷であるため、君がひとたび逆らえば、君は危険に身をさらすだろう。
ハンド・オヴ・ブライト:君はハンド・オヴ・ブライトを得る。
残忍なあざけり:君は契約の恩恵として“残忍なあざけり”を得る。君は仕える魔王の魔力である“残忍な力”を利用することでパワーを強化できる。遭遇の開始時に君の“残忍な力”は未使用状態である。君は“残忍な力”を使用するかどうかパワーを使用するたび、攻撃ロールを行なう前かパワーの効果が適用する前に決めなければならない。
君の“ウォーロックの呪い”を受けている1体の敵のヒット・ポイントが0以下になった時、君の契約の恩恵は、君がこの遭遇で使用した“残忍な力”を、未使用状態に戻す。君の“残忍な力”が既に未使用状態の場合、呪われたクリーチャーのヒット・ポイントが0以下になっても君は2回使用できるようにはならない。君が“残忍な力”を使用できるのはいちどの機会に1回だけである。
お勧めのオプション
魔王は強靱な体力と強固な自我を部下に求めるため、この契約のキャラクターは【耐久力】か【魅力】を1番高い能力値にすべきである。【知力】は2番目に高くするのがよい、なぜなら魔王の契約はそこから利益を得るからだ。【耐久力】か【魅力】のうち、君が1番高い能力値に選ばなかったほう、それを3番目にするとよい。君が遠隔攻撃をするつもりなら【魅力】を選んで低い意思防御値を強化し、君がパワーを近接攻撃で使いたいなら【耐久力】を選んで高いヒット・ポイントと回復力を得るのがよい。
お勧めのクラス特徴:魔王の契約*
お勧めの特技:《否定のあざけり》*
お勧めの技能:〈看破〉、〈事情通〉、〈はったり〉、〈魔法学〉
お勧めの無限回パワー:エルドリッチ・ブラスト、ハンド・オヴ・ブライト*
お勧めの遭遇毎パワー:クルーエル・バウンティ*
お勧めの一日毎パワー:アッシェン・スカージ*
*印は『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』で新しく追加されたオプションである。
ハンド・オヴ・ブライト | |
Hand of Blight/荒廃の手 | ウォーロック/攻撃/1 |
君が広げた手の周りに黒い球体が音を立てて集まる。君はそれで近くの敵に一撃を加えるか、それを離れた敵に投げつけることができる。 | |
[無限回]◆[死霊]、[精神]、[装具]、[秘術] | |
標準アクション | 近接・接触または遠隔・10 |
目標:クリーチャー1体 | |
攻撃:【耐久力】または【魅力】対“頑健” | |
ヒット:1d8+【耐久力】または【魅力】修正値の[死霊]かつ[精神]ダメージ。目標は使用者の次のターン終了時まで戦術的優位を与える。 | |
21レベル:2d8+【耐久力】または【魅力】修正値の[死霊]かつ[精神]ダメージ。 | |
魔王の契約:君が“残忍な力”を使用した場合、目標は1d8の追加ダメージを受ける。 |
サンド・シェイプ | |
Sand Shape/砂変化 | ウォーロック/汎用/6 |
君は体を砂に変化させ、攻撃に抵抗したり個体の障壁を抜けることができる。 | |
[一日毎]◆[秘術]、[変身] | |
マイナー・アクション | 使用者 |
効果:使用者の次のターン終了時まで、使用者は実体を持たなくなり砂粒ひとつほどの隙間を通り抜けることができるようになる。使用者は攻撃を行なえず、何も拾うことができず、物体を操作することもできない。 | |
維持・マイナー:効果が持続する。 |
プライス・オヴ・ディファイアンス | |
Price of Defiance/抵抗の代償 | ウォーロック/攻撃/27 |
半透明の手が敵を握り、君の命令でそれを味方が待っている方へ向ける。 | |
[遭遇毎]◆[装具]、[秘術]、[力場] | |
標準アクション | 近接・接触または遠隔・10 |
目標:クリーチャー1体 | |
攻撃:【耐久力】または【魅力】対“頑健” | |
ヒット:3d8+【耐久力】または【魅力】修正値の[力場]ダメージ。目標は使用者の次のターン終了時まで動けない状態となる。使用者は使用者の味方1体と隣接するように目標を5マス横滑りさせる。その味方は目標に対する近接基礎攻撃を機会アクションとして行なうことができ、ダメージ・ロールに使用者の【知力】修正値に等しいパワー・ボーナスを得る。 | |
魔王の契約:使用者が“残忍な力”を使用した場合、使用者の味方による攻撃の後、使用者は使用者の味方1体と隣接するように目標を5マス横滑りさせることができる。その味方は目標に対する近接基礎攻撃を機会アクションとして行なうことができ、ダメージ・ロールに使用者の【知力】修正値に等しいパワー・ボーナスを得る。 |
金曜日の予告:残響山脈と泥砂海の間で、旅人は隠者、スリクリーン、放浪民の部族、孤立した村々、そしてアサスにまだ残る7つの都市を見つけることができる。人は全ての種族とクラスの人々に出会える。ヒューマンの貴族と奴隷、エルフの野盗、ハーフジャイアントの傭兵、そして非常に珍しいハーフリングの旅人にさえ。この地方はアサスのるつぼで、そこで異なる文化を持つ多くの人々は融和か衝突を強いられる。
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2010年08月31日 「――しかし我我は糸に絡め取られている。巣から逃れて客観視することは出来ない。だから、我我は地道な行為を丹念に繰り返し、内側の糸へ内側の糸へと徐徐に場のレヴェルを上げて行くしか、中心に至る道はないのだ――」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][DarkSun] 『アサスの地図:ティア(Atlas of Athas: Tyr)』
アサスの文明に残された場所は峻険な残響山脈と不毛の泥砂海に挟まれた広大な平原と砂漠である。この広い地域で最も古い都市の周辺がティア地方(Tyr Region)――今日の『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』プレビューで紹介する地域である。
最近、ティアは近隣への影響力や強大な力を失っている。(実際、ティアは動乱に手一杯で、現在は非常に弱体化している。)この地方の国境地方の向こうには荒涼とした荒野が広がっており、一部の者はティア地方がアサス最後の生活できる土地であると信じ、世界に残っている人々すべてがここに住んでいると思っている。
『残響山脈と微砂の海の間で、旅人は隠者、スリクリーン、放浪民の部族、孤立した村々、そしてアサスにまだ残る7つの都市を見つけることができる。人は全ての種族とクラスの人々に出会える。ヒューマンの貴族と奴隷、エルフの野盗、ハーフジャイアントの傭兵、そして非常に珍しいハーフリングの旅人にさえ。この地方はアサスのるつぼで、そこで異なる文化を持つ多くの人々は融和か衝突を強いられる』
――旅人の手記
魔王は誰もが覚えているほど非常に長い間ティア地方を支配していた。数世代に渡り、誰も彼に力で挑むものはおらず語らうものもいなかったが、最近になってティアの魔王、カラク(Kalak)が槍に貫かれすべては変わった。カラクの死とティアの開放は新たな時代の一歩で、長年脅かされることのなかった玉座を揺るがせた。ティアが自由を手にしたという噂は野火のように七都市(the Seven Cities)へと広がり、革命の思想が彼らの領地まで広がらないことを望む魔王たちに考える時間を与えた。
まず、『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』の第5章では砂漠のあらましを説明する。すべての砂漠がただ砂だけで成るわけではない、この項では世界の大多数を占める地形と状況についての導入を行なう。
次に、この章ではアサスの中でも特記に値する場所を紹介する。これらには、ティア(Tyr)、バリク(Balic)、ドラジ(Draj)、グルグ(Gulg)、ニベネイ(Nibenay)、ラーム(Raam)、そしてウリク(Urik)からなるティア地方の有力な都市国家群、七都市も含まれる。ティアについては大幅に紙幅を割いて記述しているが、それは現在の状況が世界を変革する方法を探す英雄たちに多くの機会を与えるからである。
さらに、この項では二枚舌湾(Estuary of the Forked Tongue)、尾根森(Forest Ridge)、象牙の三角地帯(Ivory Triangle)、残響山脈(Ringing Mountains)、王たちの道(Road of Kings)、泥砂海(Sea of Silt)、南方荒原(Southern Wastes)、砂舞台(Tablelands)、そして西方後背地(Western Hinterlands)など、ティアに近いアサスの主要な地勢を解説する。
ティア
「本当か? カラクは死んで? 奴隷は自由だと? 通りでは魔法が荒れ狂ってる? わしらは十分に知っているわけだが、にわかには信じられんわい」
――さすらいの隠者、シャーヒーン
アサスに住む者のほとんどが知るかぎり、ティアは常に存在していた。確かにそこは砂漠の時代(Desert Age)を通して存続し、魔王が失墜してさえも、これから何世紀も生き抜いていけるように見える。そして、そこは長い歴史のなかでずっと奴隷制のある都市国家だった。
しかしすべては変わった。
他の都市国家の宮廷では、カラク王が倒されたという噂はささやかれるに留まるが、ティアでその影響は、通りのあちこちにあふれ出ている。多くの者がカラクの後釜に座ることをたくらみ、聖堂騎士や他の有力者たちは都市国家が自由を手にした人々によって無秩序の中へ崩れ去ってしまわぬよう腐心しながら争っている。貴族と商人たちは権力を求め、一般人と開放奴隷たちは公然と祝勝に酔い、そこかしこで街の権力者や身分制度について議論している。
ティアの概観
ティアはアサスを変化させる陰謀の火薬庫である。その黄金塔と封印されたジッグラトは比類なき驚異として多くの異邦人を驚かせる。
人口:市壁の中におよそ15000人、そしてティア谷(Tyr Valley)にある貴族の荘園と村にそれと同じくらい住んでいる。ほとんどは人間で、人口の3分の2を占める。ドワーフ、エルフ、ゴライアス、そしてムルが残りの大半を占める。
水:17基の公共井戸はティアの地底にある、かつては近くにある残響山脈の湧水だった、アサスで最も深く最も古い帯水層のひとつに達している。ティアの守備隊はこれらの井戸を公平に守っている。(他から圧力をかけられた)ティチアン(Tithian)はすべての市民に1日あたり片手で持てる桶1杯の水を得る権利があると布告した。この法の目をかいくぐろうとする者は追放される危険がある。都市国家の中には王の庭園や神殿騎士の区画などに、多くの私有井戸もある。
物資:多種多様な生活必需品は隊商区と商業区や、兎穴街にあるエルフの市場で入手できる。ティアの闘技場近辺ではほとんど毎日、寄せ集めの露天市が現われる。
防衛:カラクが倒れてティア軍のほとんどは解散したが、聖堂騎士たちは現在それをティア守備隊(Tyrian Guard)として再編している。カラクに仕えていた戦士、貴族の派遣隊、革命の闘士、そして開放された剣闘士と奴隷からなる不安定な混成部隊で、守備隊は常備軍として品質がまちまちな5000人の戦士を抱えている。司令官は傭兵だったザルカーというムルである。守備隊に加え、多くの貴族や商家は大規模な私兵部隊を手元に置いている。
宿と酒場:隊商区と商業区には30以上の宿と同じくらいの酒場がある。兎穴街にはもっと多くの放棄された建物などのむさ苦しい空間が、無断居住者の居場所となっている。
ティア人の“背景”
カラク王の圧制が突然終わりティアとその市民は混乱と混沌の中にいる。ティア人のキャラクターは新しい機会に恵まれている――新しい危険にも。
技能:〈持久力〉、〈事情通〉
言語:エルフ語
潜伏中の間者:ティアが新たに自由を手にしたことで七都市が驚き足りなかったということはない。他の魔王は自由都市へ情報収集と内紛工作のために配下を派遣した。君はそのような間者である。君はティア生まれだろうか、他の都市国家から来たのだろうか? 君は誰に報告する? 君は革命をどう見る?
解放奴隷:カラクが死に、ティチアン王はティアの奴隷制を非合法とした。君は自由になった何千人もの奴隷のひとりである。君は君の自由が続くと思うか? 誰が君を所有していた? 君は以前の主人についてどう思う?
分別ある貴族:君は自分の快適で特別な人生を楽しんでいたが、君は自分の財産が恵まれない人々の努力によって稼がれていたことを知っている。君は虐げられた人々を助けたいが、君は自分の地位を保ち弱者の守護者でなくてはならないのか、それとも君は貴族の権力と影響力を侵す同じ貴族と戦わなければならないのか?
革命家:君はカラクを倒すため彼の支配が続く最後の時まで戦った。君が彼子飼いの貴族を見張ったにせよ、奴隷に革命を説いたにせよ、革命の中心人物のために連絡員をしたにせよ、君は王の失墜においてある役割を演じた。成功した今君は何をする? 君はどんな秘密を学んだ? 君は都市国家で権力に抗っている集団と接触するのか?
ティアを歩く
ティアは高い市壁とともに残響山脈のふもとにある丘陵地帯、肥沃なティア谷の中ほどに位置している。数マイル先からも、旅人は都市国家の市壁を越えてそびえる巨大な尖塔である黄金塔を見ることができる。塔からさほど離れていない場所には、砂漠の太陽を受けて輝く、いくつもの色で彩られたカラクのジッグラト、れんが造りの階段状ピラミッドが壁より高くそびえている。市壁は乾いた砂岩製で、数世紀を経た時間と定期的な修理でなめらかになっている。ティアの向こうには、落陽季になると山頂にわずかな雪がきらめく残響山脈が城壁のように迫っている。
多くの旅人は都市国家に入城するため東の隊商門(Caravan Gate)を通る。この建物はひと組の大理石造りの扉で、どちらも20フィートの高さと同じくらいの幅を持ち、貴重な鉄のちょうつがいで止められている。中に入れば、隊商通り(Caravan Way)として知られる大通りが隊商区(Caravan District)を抜けて都市の中心に続き、商業区(Merchant District)がそびえたつカラクのジッグラトの下に広がる。対になる貴族街(Noble District)を形作るゆったりとした石造りの豪邸は隊商区の南北に伸びていて、周囲にある日干しレンガ造りの建物で構成される地区と簡単に区別できる。
一般人と解放奴隷は、ジッグラトから少し離れた北側で無秩序に広がる無計画な建物の寄せ集め、兎穴街(Warrens)で肩を寄せ合って生きている。犯罪組織は兎穴街をうろつき、弱者から略奪している。最近解放された奴隷によって建造された緊急避難所がジッグラトの北側にある職人街(Artisan District)に出現している。安全と水の便は職人街ほど確実ではないが、何人かの人々が毎朝兎穴街からここに訪れる。この地区は現在ティアの闘技場で開かれる不定期戦への出場を待ちながら訓練をする剣闘士たちによって倍の人口になっている。
闘技場はカラクのジッグラトと黄金塔の間にある。新体制のもと、彼らのひいきの選手を求めて喚声をあげる観客の声はちょうど毎月10日に聞こえる。残りの期間、闘技場には無秩序な市がなだれ込んで露天、天幕、そしてじゅうたんの上ではみ出し者の商人が無数の商品やサービスを扱っている。
ティアはずっとふたつの顔を持つひとつの街だった。一般人、(今は開放された)奴隷、そして貴族からなる、大きな街、そして黄金塔がしろしめすきらびやかな王の庭園に囲まれた小さな黄金都市(Golden City)。多くの市民の建物は塔を囲み、それに加えて穀物、鉄の鋳塊、水、そして武器を納める巨大な倉庫がある。さらに、黄金都市には高級官僚と神殿騎士が住んでいる。
黄金塔、ティアで最も荘厳な建造物は、珍しい金色の御影石で造られらせん状の通路で結ばれた何十もの部屋を持つ。近くには中心の塔を小さくしたような監視塔が建ち、急角度の橋でふたつの建物を繋いでいる。噂によれば、穢しの魔法で古代の精霊を黄金塔に縛り、攻撃を受けたときの備えとしたクリーチャーが残っているという。カラク王が倒れて以来、塔に入ろうとする試みはすべて失敗している。
最後に、都市の地下には下ティア、地下墓地をはじめとした2千年以上におよぶ都市建設史の残滓が地上と同じだけ広がっている。埋まった通り、つぶれた中庭、そして砕けた遺跡がティアの地下の闇に広がっている。地上の建物にある秘密の地下室はこの地下道と忘れられた街からなる危険な領域への通路となる。
ティアの闘技場
ティアの闘技場は黄金都市の壁とカラクのジッグラトの間にある。黄金都市の城壁の中ほどに、王と上位の神殿騎士のためにしつらえられた叡覧席がある。闘技場の反対側には、試合場からジッグラトの頂上まで続く大階段がある。カラクを戦神として描いたモザイク画が闘技場側の階段を飾っている。
観客席の下にある空間は牢と通路で繋がれた迷宮で闘技場で試合場に出ることを予定された囚人とモンスターを閉じ込めている。闘技場の北側から市壁の闘技場門(Stadium Gate)までは大通りが延びている。この門には大きく口を開いた竜のような彫刻が施され、試合場で戦うまで牢に閉じ込められる山や砂漠で捕獲されたモンスターを搬入するのに用いられている。
試合の興行主は高位の聖堂騎士で、毎月10日と祝祭日に試合を行なう。試合への参加は自由だが、実際はほとんどの参加者が、剣闘士を後援する貴族や商家といった資金源を持っているか費用を自弁する本職である。闘技場で戦わせるために奴隷が使われることはもはやない。死はカラクが支配していた頃よりはるかに珍しく、今ではほとんどの試合は剣闘士が降参するか試合が続行できないほど傷ついたら終わる。どんな剣闘士でも倒れた相手にとどめの一撃を行なえばティアから追放される。だが、砂漠のモンスターとの戦いや野生の敵との戦いでは常に死の危険がある。
試合がない日、闘技場は即席の市場として雑多な露天、革の天幕、そしてじゅうたんが並んで商人が商品とサービスを売る場所として利用される。売り手は彼らの並べるものが荷車2台分より広さを取らなければ場所代を払う必要がない。ティチアン王は解放奴隷たちの圧力によって元奴隷たちが負債を抱えることなくサービスを提供できるようこの布告を行なった。
闘技場での戦い
プレイヤー・キャラクターは1試合ごとに参加費の25gpを支払えば闘技場の試合に参加することができる。彼らは戦闘、競争、もしくは障害走の個人戦か団体戦に参加できる。君は闘技場の試合を通常の遭遇とまったく同じように、クリーチャーとその他脅威のレベルをパーティのレベルの4レベル以内にして作成する。試合に勝って得られる賞品は通常の遭遇を解決して得られる財宝より2レベル低いものになる。
月曜日の予告:『かすかなそよ風が積もった銀の砂を舞わせて表面を霧のようにする。たちこめた塵と空の間がわからなくなり塵の水底となる。風がより強く吹くとき、しばしば泥砂海は沸騰する塵の雲海となり、そのへりは深紅の太陽に染められる』
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