2010年07月08日 かぼちゃ [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] 混沌の痕(Chaos Scar)の梗概
Dungeon #171から連載されている短篇連作キャンペーンの混沌の痕(Chaos Scar)は各シナリオが一日のセッションで終わるくらいの分量になってて助かるので、せっかくだから息切れするまで訳した梗概を公開していくことにしたですぅ(カテゴリ名は仮)。
だいたい第一段落が概要、第二段落が最初の描写になってるですぅ。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Aeryn Rudel『泥中の杖(Stick in the Mad)』Dungeon #171(1レベル)
『泥中の杖』は混沌の痕(Chaos Scar)の王の長城(King's Wall)近くを舞台とした、1レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。PCたちは長い時の流れで廃墟となった砦に住みついた邪悪なブリーワグの部族と戦うことになる。かつてゴライアスのソーサラーが住んでいた砦には、強力な魔法のアイテム、スタッフ・オヴ・アーセン・マイトが眠っている。スタッフは傷ついて魔力を流出させてしまった。漏れ出した力は小さな元素の渾沌への小さなポータルを作っている。泥の流れがポータルを通じてどんどん流れ込んで遺跡の地下に溜まり、ブリーワグにうってつけのぬかるみを作った。
天から巨大な隕石が降って混沌の痕を穿ったとき、他の多くの土地と同じようにヴォランの砦も破壊された。沼は干上がり、荒野の中に乾燥した遺跡を残した。ヴォラン自身は滅びを逃れたが、彼の名声と遺産は歴史の中に消えた。そして現在、隕石の邪悪な呼び声に導かれたブリーワグの部族が、砦の遺跡を発見して移住している。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Rob Heinsoo『奴隷商のねぐら(Den of the Slavetakers)』Dungeon #171(1レベル)
『奴隷商のねぐら』は混沌の痕(Chaos Scar)を舞台とした1レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。隻腕のノールが行なっている奴隷狩りの裏には真に邪悪な目的がある。トログの地下教団が死の儀式を行なうために犠牲者たちは集められた。洞窟の奥にある寺院の女司祭、ハーフリングのモルガナは、隕石のかけらを使って谷にある岩から変異したホムンクルスたちを創造している。洞窟の中央にある茸の茂る深みでは、マイコニドたちが寺院を襲撃したPCたちが狂信者の儀式をやめさせて帰還する時に隕石を奪う準備をしている。
谷のくぼ地はなだらかに降っていく広い洞窟に繋がっている。君たちはこの洞窟に最近出入りした多くの足跡には目もくれず、ひと組の足跡――ブーツの足跡と、ちょうど子どもかハーフリングくらいの小さな足跡――を追う。洞窟はなだらかに下へと続き、広い回廊が姿を現した。
2010年07月09日 鯵 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Greg A. Vaughan『灰色の兄弟(The Brothers Gray)』Dungeon #172(1レベル)
『灰色の兄弟』は混沌の痕(Chaos Scar)の王の長城(King's Wall)近くを舞台とした、1レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。『灰色の兄弟』でPCたちは廃棄された鉱山の採掘場へ向かい、そこでハーフリングの賊3人と戦う。もし君が混沌の痕キャンペーンをプレイしていなくても、既に遊んでいるキャンペーンでこのシナリオを荒野に近い廃棄された採掘場に置き換えて使うことができる。
木々越しに炎が瞬いている。今にも崩れそうな採掘場が谷に寄り添って建ち、てっぺんの骨組みと荷物の引き上げ小屋はかつて水車の動力となる水を注いでいた池がある広い岩棚の上にある。崩れかけた階段は建物の外壁沿いに続いている。その下には、焚き火の周りに寝袋がいくつか広げられていた。3人の粗野な男たちが座り込んで話をしている。
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2010年07月10日 梅不調 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Rob Heinsoo『死を呼ぶ顎(Death in the Pincers)』Dungeon #172(1レベル)
『死を呼ぶ顎』は混沌の痕(Chaos Scar)の王の長城(King's Wall)近くを舞台とした、用1レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。序盤は混沌の欠片(Chaos Shard)によって変異したドレイクとの戦いで、中盤からは魔法的な土地で宝の詰まったドレイクの死体を横取りしようとするジャイアント・アントとの戦い、そして最後はドレイクの代わりにキャラクターたちを食べようとするジャイアント・アントとの戦いへと移り変わる。このシナリオは混沌の痕が舞台だが、どんなキャンペーンのどんな場所にでも置き換えることができる。
ここは。この天井が高く横にも広い洞窟は急角度に傾斜している。そして暗く、足跡は見えない、しかし君たちが本で読んだだけだとしてもわかる、人間ほどの大きさをした爬虫類の足跡を入り口の掘り跡と泥の中に見ることができた。君たちは最初それが洞窟の出口に見えたが、それは宝石で出来た15フィートの絶壁だとわかる。登るのは簡単そうだが、小さな宝石とたくさんの骨がごちゃごちゃに積み重なり、君たちを歩きづらくしている。崖の上ではかすかな紫色の光が動き回っていた。
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2010年07月12日 いまさらデビルサバイバー [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Aeryn "Blackdirge" Rudel『穢れたらせん(The Tainted Spiral)』Dungeon #173(1レベル)
『穢れたらせん』は混沌の痕(Chaos Scar)を舞台とした1レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。シナリオの舞台は混沌の欠片(Chaos Shard)と呼ばれる巨大隕石の欠片が穿ったらせん状の洞窟網で、隕石が地表に衝突して壊れたときに飛び散ったものだ。隕石そのものと同じように、混沌の欠片は邪悪な混沌と悪の力で悪のクリーチャーを引き寄せている。混沌の欠片が存在することで世界と彼方の領域を隔てる障壁は弱まり、この世の裂け目を通じて穢れた異形のものどもが欠片の囁きを聞きつけて現われた……。
青みがかった明るい光はこの広い洞窟にあるふたつのクリスタルの塊から出ている。にごった小さな水たまりが片隅に、そして闇の中へと向かう狭い横穴が洞穴の北にある。照明が明るいおかげで君たちは猟奇的なさまをはっきりと見ることができた。人型生物の死体が6つ洞穴の中央に折り重なっている。この距離からでも君たちは死体のところどころが喰われていると証言することができる。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Peter Lee『失われた書庫(The Lost Library)』Dungeon #173(2レベル)
『失われた書庫』は混沌の痕の縁からは離れた洞窟が舞台である。シナリオは、古くから谷にあった秘術の書庫を最近になって発掘したコボルドの部族にPCたちが遭遇することから始まる。キャラクターたちが書庫を調べると、ソーサラーが放棄した書斎への入り口を発見する。『失われた書庫』は2レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。
君たちが角を曲がると、自然な壁面の通路は急に巧みな造りの石細工へと変わった。洞窟を塞いでいた岩盤は崩され今は床に散らばり、部屋へ近づくと柔らかな青い光で照らされている。荒らされた2本の本棚が部屋の壁に倒れかかっていた。その中身は床にうず高く積もっている。
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2010年07月13日 ウーパークィーンのきゅうでん [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Robert J. Schwalb『偶然の遭遇(A Chance Encounter)』Dungeon #174(1レベル)
『偶然の遭遇』は混沌の痕(Chaos Scar)を舞台とした1レベル・キャラクター5人向けの単体の戦闘遭遇である。冒険者たちは脱出しようと馬が必死にもがく穴に沈んだ馬車を発見する。黄色い服を着た従者たちも馬車を持ち上げようと奮闘しているが、滑り方と馬の悲鳴が無駄であることを示している。英雄たちが手を貸すと、彼らはその善意が冷たい鋼と激しい悪態、三つ巴の戦いによってあがなわれるとわかる。
混沌の痕から遠くない村で、プンという平凡な商人は愚かな取引をした。珍しいガラスの箱を汚い冒険者から買い取ったのだ。それはその売り手が持ってきた他の宝石や道具より珍しいものだった。冒険者はいくらかの金貨を得て裕福になり、プンは箱のことをほとんど忘れて彼の仕事をしていた。だが、その夜から不安になる像が彼を悪夢へといざない、彼のすり減った心が完全に壊れるまで悪化し続けた。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Stephen Radney-MacFarland『欠片の呼び声(Sliver's Call)』Dungeon #174(2レベル)
『欠片の呼び声』は混沌の痕(Chaos Scar)の王の長城(King's Wall)付近を舞台とした2レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。キャラクターたちは、長い間行方が知れない宝を探している秘術学者たちの競争に巻き込まれる。彼らはお互いにそれを発見するよう混沌の隕石(Chaos Meteor)の欠片から発せられるサイオニックの力による影響を受けている。
富と冒険の予感は数世紀にわたって混沌の痕へ多くの者を呼び寄せたが、まったくもって騙されやすい強欲者を呼ぶ邪悪で蠱惑的な声もある。五年前、ハーフエルフのウィザード、カゾーボンはありえそうにもない場所でそんな声を聞いた。かの有名な秘術を学ぶ白蓮の学府(White Lotus Academy)で学んでいた頃、魔法使いは学府の失われた秘密の図書館(Lost Secrets Library)の片隅でギスゼライのメモリー・クリスタルにつまづいたのだ。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Cal Moore『ガラスの森の神殿(The Shrine of Glass-Spire Forest)』Dungeon #175(2レベル)
『ガラスの森の神殿』は混沌の痕(Chaos Scar)を舞台とした2レベル・キャラクター5人向けの脇道シナリオである。このシナリオは技能チャレンジとふたつの遭遇から成り、君は混沌の痕キャンペーンか単体の短編シナリオとしてプレイすることができる。
千の物語を生んだ長城の向こうには、多くの不思議な場所がある。だが冒険者たちが“ガラスの森(the glass forest)”と呼ぶ場所ほど奇妙ではない。雄大な谷から帰ってきたわずかな旅人たちはその不思議な土地で東への風が吹くと、まるで千の風鈴が動くかのように音が響き渡ることについて話す。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Aeryn "Blackdirge" Rudel『死霊のはらわた(Dead By Dawn)』Dungeon #176(2レベル)
『死霊のはらわた』デーモン・プリンスのオルクスを熱心に崇拝していた寺院を舞台としている。悪徳のこびりついたデーモン・プリンスの寺院は混沌の欠片(chaos shard)の邪悪な力によって強化され恐るべき新たなる力を与えられた。欠片は夜な夜な、あたりの森を誘惑する暗黒の力で満たす。勇敢な冒険者たちの一団がうち捨てられた寺院を発見した今こそ、破片の誘惑が今までになく高まる時だった。『死霊のはらわた』は2レベル・キャラクター5人向けの脇道シナリオである。
森の木々は突然途切れ、草むした寺院がそびえる広い空き地に変わった。窓の無い壁にはひびが入り崩れているが、尖った屋根、悪魔のような彫刻と花飾りはほとんど無傷だ。寺院の正門ではふたつの大きく堅牢な扉が開いており、先には暗闇だけが覗いている。見るからにうち捨てられ荒れ果ててはいるが、沈む太陽の弱まった光がよりいっそう建物の静かな悪意をにじませている。
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2010年07月14日 「夢は、ゆっくりした氷のように育つ」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Rodney Thompson『四つ辻(The Crossroads)』Dungeon #176(2レベル)
混沌の痕との境界、文明の外縁部は大きな危険と隣り合わせである。そこは一番近い開拓地と秩序の要塞からも遠く離れ、後ろ暗い素性の者たちが物や腕を売ることができる。同様に混沌の痕はそれらの物や腕を探している者たちが――無法の地ではあるが――あまり多くの危険を冒さずに訪れることのできるくらいの距離にある。『四つ辻』は混沌の痕で起こる2レベル・キャラクター5人向けの脇道シナリオである。
痕に住むホブゴブリン、オーク、ノール、その他もろもろの種族は生け捕りにした捕虜を四つ辻に連れてきて彼らをさらし台についた檻に押し込め、彼らが飢えと渇きでゆっくりと苦しみながら死ぬのに任せる。邪魔者への非情な仕打ちを行なうことで、さらし台は混沌の痕へ向かおうとするあらゆる者たちへの警告として機能している。
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2010年07月15日 「ヒデオは真暗闇でも射るのよ。禅ね。そうやって練習してるんだもの」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Mike Mearls『混沌の痕の城塞(The Keep on the Chaos Scar)』Dungeon #176(混沌の痕の拠点)
あちらこちらに文明と飢えた闇の間隔が詰まった場所があり、いくつかの法と正義の砦が建っている。現在の住人から安息の城塞(Restwell Keep)と呼ばれているものも、そんな建物である。はるかな昔に忘れ去られた領主が建造した頃からずっと、“安息”は混沌の痕を見張る場所だった。そこはホブゴブリンの司令官の要塞、盗賊団の隠れ家、そして今は怪物がうろつく荒野において君たちのキャラクターが休息と安全を得られる文明の前哨地として用いられる。
数年前、安息の城塞は“強運の六刃”(the Six Blades of Fortune)として知られた悪の冒険者たちが拠点として使っていた。“刃”たちが混沌の痕でモンスターと戦うときは、弱い冒険者たちからも略奪し、ときには商隊から略奪するときもあった。彼らは略奪を拠点から離れた場所で行なうだけで満足していたため、そのうち城塞は文明の前哨地になっていった。放浪者、難民、その他逃げ場を求める人々は城塞の中に落ち着いた。
これは今までのようなシナリオではなくて、混沌の痕でキャンペーンを行なう時に拠点として使える場所の紹介ですぅ。
城塞はその後、エラティスのパラディンであるドライスデール卿(Lord Drysdale)が悪の冒険者を追い払い、悪とはいえ住民を守護していた“強運の六刃”に代わる城主になっているですぅ。ただ、住民からの利益があれば小うるさい事は言わなかった無法者の時代とは違い、エラティスの布教や規則の制定などで息苦しくなったと感じる住人もいて、内部の不安要素も少なくはないですぅ。
内部には厩舎(1日2sp)、鍛冶屋(あるじのベルゲン(Bergen)は10レベルまでの魔法の武器、防具を作成可能)、市場、下宿(1週間10gp)、金貸し(1週間10%)、宿屋(個室1gp、大部屋1sp)など、拠点として一通り必要なものが揃っている感がありますぅ。
それにしても中の物件といい旅の僧侶といい『国境の城塞(The Keep on the Boderlands)』へ捧げられたオマージュという印象が強い設定ですぅが、混沌の痕(Chaos Scar)自体が『国境の城塞』でPCたちが向かう混沌の洞窟(Caves of Chaos)へのオマージュなのではないかということに思い至った今日この頃ですぅ。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Robert J. Schwalb『森に潜む目(Eyes in the Forest)』Dungeon #177(1レベル)
『森に潜む目』は混沌の痕(Chaos Scar)を舞台とした1レベル・キャラクター5人向けの単体の戦闘遭遇である。渾沌の痕は誘い込まれたあらゆる大胆で無鉄砲な者たちの危険に対する勇気を試す。何人かは成功し、多くは待ち受けているモンスターや罠の犠牲になる。キャラクターたちが自らの冒険に乗り出そうとしたとき、彼らは別の英雄志願者たちが残した痕跡に行き当たる。キャラクターたちがそれを追うなら、彼らは過酷な谷で生き残るために必要な力と勇気を持たない者に訪れる末路と出会う。
白い母馬が空き地で草を食んでいる。彼女は動くときに脚を引きずっていた。君たちは彼女の横腹に血がにじみ脚には脚の矢傷からもにじんでいることに気づいた。
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2010年07月16日 「“夜の街”は、戻るような場所じゃないよ、凝り性さん」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Jennifer Clarke Wilkes『輝く石の洞窟(Glowstone Caverns)』Dungeon #177(4レベル)
輝く石の洞窟(Glowstone Caverns)は渾沌の痕(Chaos Scar)にあるゴブリンの巣穴だ。渾沌の痕に存在するほとんどのもの同様、すべてが見た目どおりに単純というわけでもない。任務は簡単。巣穴のゴブリンを皆殺しに。これ以上直接的な表現があるだろうか? しかしこれは君がいつも目にするゴブリンではない。奇妙な何かがかじり痕の部族(the Gnawstubble tribe)をとらえ、彼らは周囲を疫病のように脅かそうとしている。『輝く石の洞窟』は4レベルキャラクター5人向けの短編シナリオである。
たくましい感じのゴブリンふたりは、君たちに背を向けて長い作業台へ向かい、大きな肉切り包丁で名状しがたい何かを叩きつける。ぼろを着たゴブリン何人かが彼らを手伝い、大皿に盛って炉に向かう。右側にはぐちゃぐちゃのごみ溜めがある。臓物、革と金属のかけら、壊された箱、そして無残な死体がふたつほど。
2010年07月17日 「憎む、たって、誰を憎めばいいんだ。教えてくれよ」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][DarkSun] 『アサス8つの特徴(Eight Characteristics of Athas)』
深紅の太陽の下に茫漠たる荒野とぎらつく都市、そこではぼろのサンダルを履いた英雄たちが古代の魔法と恐るべきモンスターたちと戦っている。ここはアサス(Athas)、ダーク・サン・キャンペーン・セッティング(Dark Sun)の世界、蛮性と荒廃が支配する死した惑星である。今回のダーク・サン・キャンペーン・セッティングのプレビューで、我々はこの、不毛で生命が今にも消えそうな、これから君が血と栄光で描かれた物語を描く世界の、8つの鍵となるイメージを紹介する。
『私は火と砂の世界に住んでいる。深紅の太陽は地を這い、空を飛ぶ生物すべてを焼き、砂嵐が不毛の大地で緑を探す。ここは血と塵の土地、獰猛なエルフの部族ははぐれた隊商を襲うために塩の平原を往き、神秘的な風が吹いては泥砂海(Sea of Silt)はのろまな旅人たちを窒息させ、独善的な王はまばゆい宮殿とぎらぎらした墳墓を建設するために臣民の命を浪費する。この壊れた荒野はアサス、そしてそれは私の故郷』
――旅人の手記
アサス8つの特徴
ダーク・サンという世界の設定はいくつかユニークな点がある。ダンジョンズ&ドラゴンズというゲームでおなじみの要素は無くなるかその方向性を変えている。アサスはきらびやかな騎士とローブをまとったウィザード、深き森と多彩な神格の世界ではない。アサスを砂で覆うことで伝統的なファンタジーと物語の構成から外れた野蛮で雄大なものが引き出される。深紅の太陽の下で生き残ることはしばしばそれ自体が冒険になる。アサスの新しい住民は世界、人々、そしてモンスターについてよく学ばなければならないが、以下の8つの特徴はダーク・サン・キャンペーン・セッティングで最も重要な要素の要約である。
ダーク・サン・キャンペーン・セッテイングとは
最初のダーク・サンのキャンペーン・セッティングは、ダンジョンズ&ドラゴンズ第2版のために、トロイ・デニングとティム・ブラウンが、TSR社から1991年に出版した。有名なファンタジー・アーティストのジェラルド・ブロムの強烈なイラストは、ダーク・サンの新しさを問答無用でダンジョンズ&ドラゴンズというゲームに叩きつけ、ファンタジー・ロールプレイングを伝統的な中世の雰囲気から開放した。トロイ・デニングは5部作の小説シリーズ、『五面のプリズム(Prism Panted)』でティア(Tyr)の革命と魔王(Sorcerer-King)の失墜の物語を書いた。30以上のゲーム・サプリメント、シナリオ、そしてボックス版セットでセッティングはサポートされ、さらに小説、短編集、そしてDragon Magazineの記事もあった。
このダーク・サン・キャンペーン・セッティングの新版で時間はカラク王(King Kalak)が倒された直後、自由の光がひとつの都市国家でかすかにまたたいて古代の邪悪がふたたび動き出したときに戻る。君は第2版のダーク・サン製品をオンラインや古本屋で見つけられるが、新版のセッティングはキャンペーン世界最初の物語に立ち戻った再創造である。かつての版で描かれた人、場所、そして事件は今回の版では異なる(か存在しない)こともある。そして、この版のダーク・サンは第2版に存在しなかったダンジョンズ&ドラゴンズ第4版の多くの要素――たとえば、新しいキャラクター種族とクラス――を導入させる。
1.砂漠の世界
アサスは暑く、終わりのない砂の海、命のない塩の平原、石ばかりの岩場、岩の荒地、茨の叢林、そして悪徳に覆われた渇ききった惑星である。夜が明けた瞬間から、オリーブ色の空から深紅の太陽が照りつける。気温は通常午前の半ばまでにはセ氏38度を上回り、午後遅くにはセ氏54度以上に達する。風はふいごを吹くようで、過酷な暑さを和らげるものではない。そよ風で立ちのぼる塵と砂はすべてを黄土色の細かい砂で覆う。
この人を拒む世界で、都市や村はいくつかのオアシスや緑なす平野の中にだけ存在する。ほとんどの土地は年単位で雨が降ることはなく、肥沃な土地でさえ、雨は毎年おとずれる長い炎暑と旱魃の数ヶ月の前の数週間に湿った霧が落ちる程度である。これら文明の孤島の外に広がる世界は遊牧民、略奪者、そして飢えたモンスターが放浪する荒野である。
アサスは最初から砂漠ではなく、焼けただれた風景には惑星に川や海が豊富だったことを物語る滅びの残骸も点在している。乾いた水路にかかる古い橋やがらんどうになった石造りの波止場はもはや存在しない世界を物語っている。
2.野蛮な世界
アサスに生きるものたちは野蛮で短気だ。血に飢えた略奪者、貪欲な奴隷商、そして残酷な蛮族の群れが砂漠と荒野を支配している。都市はもう少しまともだが、それぞれは不死の支配者に掌握され苦しんでいる。アサスでは奴隷制は普通のことで、多くの不幸な人々は鎖に繋がれ、残忍な親方の下で骨を折って働く。毎年、何百、いや数千におよぶ奴隷が血まみれの闘技場で殺されている。ほどこし、同情、親切――これらの概念も存在するが、それは珍しく貴重なものだ。愚か者だけがそのような美徳を望む。
3.金属は貴重
ほとんどの武器や防具は骨、石、木、その他いろいろな素材でできている。鎖帷子や板金鎧は魔王の財宝にしか存在しない。鋼の刃などは非常に貴重で、多くの英雄たちは生涯を通じて目にすることもない。
4.秘術魔法は世界を穢す
古代の戦争で秘術魔法が濫用されたことでアサスは荒野となった。秘術魔法を発動させるためには、近くの生態系から力を得なければならない。植物は黒い灰へと変わり、すさまじい痛みと破滅が動物と人々を襲い、大地は不毛になり、そこで何かが育つことは二度とない。世界を保護して痛みを与えないよう、注意して呪文を発動させることはできるが、穢すことで優しくするよりもさらに多くの力を得られる。結果、アサスではソーサラー、ウィザード、その他秘術魔法をあつかう者たちは保護する者も穢す者も同じように罵られて迫害される。最も強い呪文使いだけが復讐の心配をせずに秘術呪文を発動させることができるのである。
5.都市を支配する魔王
莫大な力を持つ恐るべき冒涜者(defiler、訳注:世界を穢すことで力を得る秘術使い)はひとつを除いた都市国家を支配している。彼ら強力な呪文使いは何世紀も玉座に座り続け、魔王が存在する前の世界を知っている者は誰もいない。何人かは神を名乗り、他の者たちは神のしもべを自称する。何人かは残忍な暴君で、他の者たちは少しましな暴君である。
魔王は貪欲な教団や官僚、野心的な聖堂騎士、王の力を喚起できる下位の冒涜者を使って支配を行なっている。都市国家の中ではティアだけがかすかに自由を掲げているが、強力な軍は常にそれを消そうとくわだてている。
6.神は沈黙せり
大古、惑星が緑に包まれていたとき、プライモーディアルは残酷な力で神々を倒した。現在、アサスは神格の存在しない世界である。そこにクレリックはなく、パラディンもなく、預言者も宗教結社もない。古代の遺跡にある古いほこらと破壊された寺院が、かつて神々がアサスの民と語らった証拠である。今はもう砂漠の風しか囁くものはいない。
信仰の影響がないため、他の力が世界では重要になった。サイオニックの力はアサスでよく知られて広く訓練されており、知性の存在しない砂漠のモンスターですら凶悪なサイオニックの力を持つこともある。シャーマンとドルイドは世界にある原始の力を使い、それはしばしばエレメンタルの力として現われる。
7.獰猛なモンスターが世界を徘徊する
砂漠の惑星には相応の厳しい生態がある。アサスにはウシ、ブタ、そしてウマは存在せず、その代わりに人々はフロック(flock)やエルドゥ(erdlu)を飼い、カンク(kank)やクロドゥ(crodlu)に乗り、イニックス(inix)やメキロット(mekillot)に荷車を引かせる。ライオン、クマ、そしてオオカミなどの野生生物は存在しない。それらの代わりにイド・フィーンド(id fiend)、バーズラグ(baazrag)、そしてテンボ(tembo)などの恐るべきものたちがいる。おそらくアサスの厳しい環境は耐え抜くにたる頑丈で凶暴なクリーチャーをはぐくんでいるのか、古代の魔法が生命のみなもとを穢しモンスターを歪めたなれの果てのモンスターがこの死した世界に闊歩しているのだ。いずれにせよ、砂漠は危険で、愚か者か狂人だけがひとりでそこへ旅に出る。
8.おなじみの種族は君が期待するものではない
ありがちなファンタジーの固定観念はアサスの英雄たちにあてはまらない。多くのダンジョンズ&ドラゴンズのセッティングで、エルフは知恵と慈悲深く、彼らの故郷である森を悪の手から守る森の住人である。アサスでは、エルフは遊牧民のような種族で牧夫、略奪者、行商人、そして盗人の種族だ。ハーフリングも人好きのする川の民ではなく、彼らは他種族嫌いで彼らの山や森へやって来たよそ者を狩りたてて殺す首狩り族で人食いだ。一般的に残忍な傭兵として魔王の親衛隊や執行者になるか多くの都市国家で騎士になると知られているのは――ゴライアスやハーフジャイアントである。
金曜日の予告:都市国家の壁の中、あらゆる人は社会の中で特定の身分を持つ。
以上、8月にキャンペーン・セッティング本体の『Dark Sun Campaign Setting』、モンスター本『Dark Sun Creature Catalog』、シナリオ『Marauders of the Dune Sea』、そしてサイオニック本『Psionic Power』と関連書籍が一気に発売されるダーク・サンの紹介記事『Eight Characteristics of Athas』の訳ですぅ。ダーク・サンという世界の要点をうまくまとめてると思ったので紹介してみましたぁ。
個人的に目を引いたのは、4eにあたって大幅に年代を進めたフェイルーン、舞台設定を据え置いたエベロンとはまた違うアプローチ、世界を巻き戻しての再創造(reimagining)だったことですぅ。
今までも旧版の設定や固有名詞を換骨奪胎して世界を再構築してきた4eだけに、ダーク・サンがどう料理されるか楽しみですぅ。もちろんこれは私がここのとこ(ずっと)エヴァ狂ってることも関係ありそうですぅが。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Robert J. Schwalb『谷のエルフたち(Elves of the Valley)』Dungeon #178(1レベル)
『谷のエルフたち(Elves of the Valley)』は渾沌の痕(Chaos Scar)の王の長城(King's Wall)に近い森を舞台としている。冒険者たちは悪魔的な存在によって堕落したフェイの盗賊団と戦う。拡大する悪を倒すため、冒険者たちは盗賊団と戦わなければならず、魔法のかけられた木々を抜け、闇で汚染された森の中心へ向かう。君が渾沌の痕キャンペーンをプレイしていないなら、君はシナリオを辺境の開拓地からさほど遠くない荒野で行なうことができる。『谷のエルフたち』は1レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。
君たちが悪意に満ちた森を抜けてがれきが散らばる広い空き地に出たことに気づいた。空き地の中心にある黒い皮とむきだしの枝を持つ大木が邪悪を放出している。とげまみれのつるが合間なくもつれ、樹の周りを埋めつくしている。空き地の向こうでは、草ひとつない丘の上にルーン文字ののたくる古い石碑が立っている。
2010年07月18日 「訓練を忘れるな、ケイス。それだけが頼りだ」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Aeryn "Blackdirge" Rudel『這いずるものの神殿(The Crawling Fane)』Dungeon #178(3レベル)
『這いずるものの神殿(The Crawling Fane)』は3レベル・キャラクター向けのシナリオである。それは渾沌の痕にある荒廃したドワーフの神モラディンの寺院が舞台である。シナリオでキャラクターたちは異質な神に仕える狂った危険なドウェルガルのクレリックの陰謀と巨大な蟲と這いずるモンスターと戦う。英雄たちは古のドワーフの英雄が使った武器を奪還し、モラディンの寺院を復興し、そして新たに渾沌の痕へ出現しようとする大いなる悪を阻止するのだ。
君たちの前には渾沌の痕の荒涼とした風景からは浮いた、長い間うち捨てられた廃墟がある。その屋根は抜け、かつては頑丈だったであろう壁も今は雑草が茂るがれきに過ぎない。正門の両脇に、どちらも風化と浸食で本来の姿を知るのが困難となった2体の石像がそびえている。この嘆かわしくも忘れ去られた建物が、かつてはモラディンの聖なる信仰の場だったことを想像するのは困難だ。
§ [Promiscuus] 渚にて
2010年07月19日 「言葉をもっておゆき、盗っ人」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Corwin Riddle『堕ちたる鉄槌(The Hammer Falls)』Dungeon #179(2レベル)
『堕ちたる鉄槌』は渾沌の跡(Chaos Scar)を舞台とした2レベル・キャラクター5人向けの短編シナリオである。キャラクターたちは力のために地獄へ魂を売り渡したドゥエルガルの一族が占拠する廃棄された鍛冶場へ向かう。その中で、ドゥエルガルは隕石の欠片によって穢された溶岩の川に隠された秘密を発見するため一心不乱に働いている。
君たちが鍛冶場に近づくと強烈な硫黄の悪臭が漂ってきた。工房が長い間使われていなかったのは痛み崩れていることからも明らかだ。壁の上のほうは崩れ落ち、さびた道具が入り口の周りに散らばっているが、蒸気と煙は壊れた煙突から出ており、金床の上で響くかすかな槌音が壊れた壁の向こうから聞こえてきた。
§ [DnD][4e][ChaosScar] Scott Fitzgerald Gray『砕かれた泉(The Splintered Spring)』Dungeon #179(3レベル)
『砕かれた泉』は3レベル・キャラクター向けのシナリオである。それは地底湖とその上層を舞台とする。不気味なクモの異常発生は王の長城(King's Wall)付近の土地で魔法のアイテムが盗まれる原因となっている。キャラクターたちが調査をすると、ドルゴーント率いるファウルスポーンの一党が隠れ家――渾沌の痕に惹かれた異形の教団の前哨地――に潜んでいることがわかる。
進路からの微風はかすかな水気を含んでいる。隆起した岩のとげが川床を囲み、立ちのぼるもやもやとした霧が君たちの視界を阻害する。地表から噴き出ている力強い地底の泉はその周りに冠のように立つ岩の破片に囲まれている。泉からは細い流れが勢いよく小さな湖へと注ぎ込んでいる。湖には表面が数フィートの岩が小島のように点在している。クモの足跡はこれらの小島のうち最も近いものにまっすぐ向かって消えている。
2010年07月20日 「どうやって泣くんだい、モリイ。眼が囲いこまれてるじゃないか。知りたいもんだ」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][ChaosScar] Gareth Hanrahan『ゴブリンの穴へ(Down the Goblin Hole)』Dungeon #180(2レベル)
若い頃“切り裂きの”ウルゴグ(Urgog the Mangler)が邪悪なゴブリンの指揮官で略奪者だったが、それは何年も前の話だった。彼は姿を消し、人々は彼が喧嘩か老衰で死んだものだと思っていた。だが渾沌の痕の近くで起こっているいくつかの出来事は人々が思っているようにウルゴグが死んではいないということを示している。『ゴブリンの穴へ』は2レベル・キャラクター向けのシナリオである。
「お前さん嘘つきのごろつきをどうしよう?
そいつはゴブリンの穴に投げ込もう!
お前さん呪われた魂をどうしよう?
そいつはゴブリンの穴に投げ込もう!
おお、ゴブリンの穴、ゴブリンの穴、
地獄はゴブリンの穴の底にある!」
2010年07月21日 「ぼくにも心はわからない。きみは間違ってたよ、ケイス。ここで生きるのも生きる事なんだ。違いなんてない」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][DarkSun] 『アサスという世界(The World of Athas)』
深紅の太陽の下に茫漠たる荒野とぎらつく都市、そこではぼろのサンダルを履いた英雄たちが古代の魔法と恐るべきモンスターたちと戦っている。ここはアサス(Athas)、ダーク・サン・キャンペーン・セッティング(Dark Sun)の世界、蛮性と荒廃が支配する死した惑星である。今回の『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング(Dark Sun Campaign Setting)』のプレビューで、我々は誰もが……彼らがその身分を望むかどうかに関係なく、その中のどれかに所属することになるアサスの社会秩序を紹介する。
『アサスは終わりのない荒れ野だが、そこには威厳と厳格に彩られた美しさがある。夜明けが鮮やかな緑で泥砂海を照らすとき、あるいは日暮れに橙色の炎がメキロット山脈(Mekillot Mountains)に広がるとき、世界の自然は美しく我々をの荒々しい心をかきたてる。それは槍や短剣を取れ、街を出よ、荒野に何が潜むか見届けよという呼び声だ』
――旅人の手記
第1章:アサスという世界
砂、岩、太陽、焼けつく暑さ――これらはアサスをに満ち満ちている要素である。世界に住むあらゆるものは常に食料を手に入れ水を得るために動いている。狩人は毎日良い得物を見つけられずに過ごすかもしれないし、牧人は彼らの家畜を放牧するのに適した土地を転々としなければならない。アサスの知られている土地すべてで水は不足し、人々は命をつなぐ井戸や泉の所有権という富へ近づくものを用心深く排除する。
都市の住民は砂漠に住む遊牧民や村人よりはまともな生活を享受しているが、それには大量の労働者――彼らの多くは奴隷である――が農場で都市の人口を支えるために苦役をする必要がある。強大で邪悪な魔王は都市国家を支配し、反乱を押さえつけて長年にわたり君臨している。貪欲な貴族、腐敗した聖堂騎士、冷酷な商人、そして乱暴な兵士たちの群れが魔王の支配から利益を得て支持するかたわら、一般人は不当な法と過酷な税の重圧に苦しんでいる。奴隷は彼らの苦役と引き換えに明日の食料と水を得ることでしか生き残ることができない。大部分の人々にとって、生きる事は荒れ果てた荒野で苦労して生き残るか自由を売って他と比べれば安全な暴虐の都市国家に住むかの選択である。
これがアサス、冷酷と暴虐の世界である。それでもそこは未開の美と蛮性の輝きに彩られた――英雄たちの世界――だ。
『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』の第1章ではアサスとその地の英雄たちを探っていく。それは以下の項目を含む。
- アサスの英雄たち(Heroes of Athas):この無慈悲な世界を旅する勇猛果敢な英雄について。
- アサスの文明(Athasian Civilization):アサスの文化、政治、そして経済の概要。
- 力の秘密(Secrets of Power):歴史、魔法、そしてその他の学問を学んだ者だけが知ることがら。
社会秩序
都市国家の城壁の中、あらゆる人は社会秩序の中で特定の身分に属している。魔王が支配し、貴族と聖堂騎士――支配者に仕える司祭や戦士――がそれを支える。商人と職人は、彼らが雇った戦士と同様、物乞い、農民、牧人、そして労働者たちよりは少し高い身分を享受する。奴隷は社会で最も低い身分で苦役をし、彼らは強制労働、見世物の闘奴、または単なる生贄にその一生を捧げる。
一方、村や荒野の遊牧民の部族に所属する者は自由と能力を重んじており、彼らは、これはおそらく正しい認識だが、都市の住民には両方が不足していると思っている。(もちろん、非常に大きな部族は首領や他の者より多くの富や地位を持つ構成員もいる。)だが、自由につけられた値段は高い、アサスの荒野では井戸を使用する権利すら危ういのだ。
魔王(Sorcerer-Kings)
魔王は大昔に得た妨げるものがない秘術の力でなりあがった都市生活の中心を支配する者である。ティア(Tyr)を除くすべての都市国家を、数世代に渡って支配し続けている。すべての魔王は恐るべき冒涜者(Defiler)であり魔法を使って彼や彼女の不死にも近い命を維持している。いくつかの都市――特に有名なのはドラジ(Draj)やグルグ(Gulg)――の人々は魔王を神格化している。支配者への崇拝と服従は通常の場合義務であり、聖堂騎士はこの国教を強要することが責務である。
彼か彼女の都市で、その魔王は絶対の権力を持っている。ほとんどは媚を売る官僚と威圧的な衛兵によって警備を固めた宮殿におり、高位の側近と用心深い護衛の行列を連れずに出てくることはめったにない。王の力なくして、一般市民が守られ、与えられ、保護されることはない。魔王は神経質に秘術魔法の秘密を守っており魔法使いの競争相手が彼らの都市に存在することを許さない。
『ダーク・サン・クリーチャー・カタログ(Dark Sun Creature Catalog)』より:
グルグの住民は他のどの都市国家に住む市民より幸福で満足しているようだ。“森の女神”ララリ・ピュイ(The Forest Goddess Lalali-Puy)、彼ら最愛の酋長、は彼らを敬意、感謝、そして愛という鎖で結びつけた。
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聖堂騎士(Templars)
魔王の権威を直接執行するのが聖堂騎士である。司祭、官僚、そして弟子といった彼らの支配者に忠実な者だ。魔王は彼や彼女の都市を守り育てることができるが、聖堂騎士は日々に必要な、法の執行から礼拝までを管理する。聖堂騎士の一部は彼らのあるじに与えられた魔力を使うが、たとえ彼らにそんな力がなくとも、すべての聖堂騎士は魔王の意思を執行する。彼らは法を破った者を罰し、お気に入りの市民に対する告訴をもみ消し、彼らが苦しめたい人々を拘留して虐待し、そして国のために物資を略奪することができる。彼らは一般人に恐れ嫌われており、どんな都市国家でも、聖堂騎士の組織は腐敗と裏切りが満ちている。彼らがどんなに問題を起こしたとしても、魔王は聖堂騎士が起こす問題にほとんど介入しない。
貴族(Nobles)
アサスの社会での貴族はふつう魔王から与えられた世襲の称号に従って農地や水の管理をする。彼らは自分たちの財産を維持するために私兵を雇って秩序を維持し必要ならば侵入者を撃退する。多くの貴族の家は労働者、兵士、そして闘奴用の大きな奴隷小屋を持つ。貴族同士の競争は、貴族と聖堂騎士のものと同じくらい多く、激しい。いくつかの都市では、貴族の家長は魔王に助言をする評議会を作る。いつでも、あるじが一声発すれば財産、生活やその他を、貴族は没収されることがある。
商人(Merchants)
アサスの商人は豪商、交易民、そして独立商人(または、後述する自由民)を包含する。
豪商(または、商家と彼らはしばしば呼ばれる)は自由民の身分で大商店、物資取引を行なう出張所、そして都市国家から厳しい荒地を通る通商路を経営する者たちである。彼らは都市の市民ではなく通常の権力構造から外れているが、彼らの富と影響力はもっとも有力な貴族のそれに拮抗する。商家はそれぞれ家族や商人仲間と小規模な護衛の兵士と奴隷で商品を別の土地へ移動させている。勇敢な砂漠貿易商や大きな隊商はあちこちに商品を運ぶ。豪商はさまざまな都市国家で大商店を経営して特権への見返りとして魔王に税を払う。最も貪欲な聖堂騎士でさえ適切な理由なくして商家の一員をわずらわせるようなことはしない。そうすることは聖堂騎士ひとりの個人的な優位どころか都市国家全体の繁栄を危険にさらすのだ。
交易民は商家によく似た流儀で商売をする。多くのエルフの部族はこの種の商人である。いくつかは商家と同盟するが、他の者たちは強大な豪商と争う。商家と違って、交易民はめったに本部や出張所を作らない。その代わり、彼らは永遠の隊商として旅をしながら、あらゆる土地で売買をする。
交易民の市――特にエルフが行なうもの――は違法物品や珍品とめぐり合う良い機会である。そのような市場は他の方向にも後ろ暗いと評判で、見かけ倒しの品を売り、信頼を得て、すっかり奪いつくしてしまう。商人の部族は聖堂騎士たちが詳細な調査を行なうかもしれないことをあまりに多く行なうことは避けようとする。共同体がある部族と過剰に対立したとき、部族は移動して数年その場所を避ける。
奴隷(Slaves)
奴隷は都市人口の大きな比率を占める。いくらかは奴隷の身分として生まれ、他は奴隷商に襲われて捕らえられ売られた部族の民や村人である。聖堂騎士や貴族も債権者や犯罪者を奴隷身分に落とす権力がある(彼らを奴隷にすることがあまりに危険だと判断される不穏分子は処刑されるが)。
裕福なアサスの民は財力を誇示することも兼ねて安価な労働力として奴隷を持つ。多くの奴隷所有者はやっていることについてほとんど良心の呵責がなく、他人を奴隷にしたほうが彼らが自由のまま飢えているよりはよいと主張する。奴隷の扱いは彼が使えるかどうかと彼のあるじの財産による。信頼できて忠実な奴隷はよりよい扱いを受ける。裕福なあるじはしばしば彼らの奴隷を使い捨てるが、より貧しいあるじは彼らの出費を気にして奴隷をより気にかける。高潔な人々はたまに奴隷制を終わらせるか少なくとも標準的な適切な処遇を保障すべきだと改革運動を行なうが、奴隷たちに冷淡で残忍にあたるのは当然のことである。多くのアサスの土地で、奴隷の命はあるじのもので、彼らは望むがままにそれを殺すことができる。
それぞれの奴隷は彼や彼女の才能に合わせた居場所を与えられる。ほとんどは農民、作業員、召使いである。戦闘能力に優れているなら兵士や闘奴になる。(再興の兵士奴隷は生まれたときからそのために訓練されている。)いくらかの奴隷には家族の楽人か道化として目をかけられる才能を持つ。手に職のある奴隷は快適な生活を楽しめるが、彼らは常に寵愛を失う危険にさらされている。ほとんどの奴隷は長く続く自由を得られない。
自由民(Free Citizens)
聖堂騎士、貴族、商家の配下、さらに奴隷でもない都市住民は市民である。独立商人と職人がこの身分の大半である。
傭兵、吟遊詩人、モンク、司祭、サイオニック能力者、そして冒険者や他の普通ではない力を使う者もここに分類される。気まぐれな聖堂騎士や貴族が彼らを有罪と言っていないときだけ、彼らは自由である。そうされたとき、自由民は奴隷になる。だが、この運命は通常の場合力のない市民だけに降りかかる。彼らはたったひとりの奴隷を得るために数人の兵士を失う危険を冒したくはないので、自衛できる者は聖堂騎士によってめったに悩まされない。
村人(Villagers)
容赦のない砂漠に、村は価値のある資源、重要な交易の拠点、または防衛の要衝くらいにしか存在しない。鉱山の村、略奪する部族の拠点、そして商人の取引所はすべて村と考えられる。自治村、特にそれらが脱走奴隷や特定の種族によって建設されたところは、混沌とし、多彩な場所である。彼らには強いか魅力的な指導者がおり都市国家では顔をしかめられる行ないを許可する(たとえば原始の魔法を使うこと)。もちろん、荒野の危険が訪れれば、どんな村でも消えたり一夜で捨てられる。
いくつかの村は鉱物や食料といった資源を提供するために都市国家、商家、または貴族によって運営される荘園である。荘園は創設者によって税のかけ方(そしてそれによる抑圧と腐敗)が異なる。これらの場所は自治村より秩序だっている。どこも有能な地頭が、常備軍、そして呪文使いかサイオンを護衛としている。
放浪民(Nomads)
移動生活をするあらゆる人が放浪民と考えられる。彼らは資源を追って移動する。一部の放浪民の部族や一団は多様な種族で、他の者たちは単一の種族である。いくつかの部族は後援者、たとえば都市国家からの支援を享受(そして労働を提供)しているが、ほとんどは独立して放牧、狩猟、または略奪によって生き残っている。ある部族はこれらの方法すべてを行なうかもしれない。
移動しながらの生存は簡単ではない。一部の部族、特に略奪者によるそれらは、彼らが定住した土地の住民や旅人から必要なものを略奪することに躊躇しない。奴隷の部族は彼らを支配していた遠くの都市国家の財産や商隊をゲリラ戦で襲撃し、そして野盗は彼らより弱いとみれば誰からでも奪う。他の部族――牧人、狩人、商人、またはごみあさりによるもの――は盗みをするより取引を行なう。惣村のように、放浪民の部族は武に秀でるか魔法が使える強力な指導者がいる。伝統的に魔法の使用が禁じられていないかぎり都市国家の境界内での殺人など、権力に反抗する行ないとともに、ほとんどの放浪民はそれを黙認する。
隠者(Hermits)
選んでか命令によってか、隠者は荒野で孤独に生きる。そういう者は通常ひとつの場所に住んで土地が与えるもので生き残る。彼や彼女の家は隠され、それは水源の場所でもある。
一部の隠者は通りすがった旅人と接触したがらないが、他は無害であるか役に立つかもしれない来客を歓迎する。多くの隠者は社交辞令を忘れてしまった愛すべき変人だが、一部は狂っているかまぎれもなく危険である。少数は本当に聡明であったり力を持っており、これらの隠者は秘密を共有するに値する――充分な埋め合わせができるのならばであるが。
月曜日の予告:お前が学ばない限り、最良の判断はお前が出会う者すべてがお前から奪い、お前を奴隷にし、お前を食うと思うことだ。
2010年07月23日 「世の中は変わってない。世の中は世の中」 [長年日記] 編集
§ [DnD][4e][DarkSun] 『アサスの種族(Races of Athas)』
ダンジョンズ&ドラゴンズのゲームではおなじみの種族の多くがアサスの荒野を歩いている。だが、これらの存在は数世紀にわたって彼らの残酷な故郷に適応し他の世界におけるそれからはほとんどかけ離れている。たとえば、アサスのエルフは星影の下で踊り彼らの周りではぐくまれる世界を賛美する気まぐれな森の住民ではない。アサスには語られるほどの森はなく、そこのエルフは砂漠や荒野をさまよい盗みをする放浪民や略奪者である。同様に、ハーフリングは社交的で元気なことで知られる温厚な河の民でもない。彼らは人を食らう荒々しい蛮族にして首狩り族、原始の戦士として知られている。他の種族は彼らの予想される役割に似た変化がある。
今日の『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』のプレビューで、我々はダーク・サンの種族を――特にハーフジャイアント・タグに注目して――掘り下げていく。
「お前が学ばない限り、最良の判断はお前が出会う者すべてがお前から奪い、お前を奴隷にし、お前を食うと思うことだ」
――ムルの傭兵、ザンダー
『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』の第2章では新しいキャラクター用種族、おなじみの種族への新しい演出、そして新しい種族固有の“伝説の道”が紹介される。それは以下の項目も含んでいる。
- ムル(Mul):ドワーフとヒューマンの混血であるムルは、前者の種族が持つ頑健さと後者の種族が持つ柔軟性を併せ持っている。ムルは驚くほど粘り強く持久力がある。
- スリクリーン(Thri-Kreen):荒野の虫のような狩人、スリクリーンは素早く鋭い戦士である。
- アサスの人々:世界にはたとえばエルフ、ドワーフ、そしてハーフリングなどおなじみのキャラクター用種族が異なった文化形態で住んでいる。
- 種族固有の“伝説の道”:ムル・バトル・スレイヴとスリクリーン・プレデターは典型的なその種族を代表するものである。さらに、新しいゴライアスの“伝説の道”、ハーフ・ジャイアント・タグは、アサス特有の伝説級ゴライアスのキャラクターへの選択肢だ。
種族固有の“伝説の道”
種族固有の“伝説の道”はキャラクター用種族の能力を体現した、模範的存在である。
ハーフ・ジャイアント・タグ
「おう、俺が邪魔だって? この路地は俺みてえなでかぶつには狭くてな。俺が思うにお前さんが通りたいなら俺の許しがいるみてえだ」
都市国家では、一部の奴隷となったゴライアスは執行者として働き、他の住民はハーフ・ジャイアント・タグが金品を求めてくるときに拒否するほど愚かではない。この暴漢の肉体的な力は他の奴隷より良い扱いを受けることを確実にし、ことによっては彼らの子たちは(親をなだめて忠誠を確実なものとするため)自由の身になる。
君が奴隷や傭兵など、君のもっとも得意なやり方である暴力と脅しで自らの暮らしを立てる。君はその巨体、不遜さ、そして都市国家のいかがわしい裏通りを生きた鋭い知恵で君が望むものを得る。君の噂を聞いた誰もが君が通るために道を開き、君の背の高さのおかげで、彼らはいつも君が来ていることを知る。
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金曜日の予告:「貴族、奴隷、聖堂騎士、商人――すべては魔王によって脅かされている。我々が暴政の束縛を捨て去りたいのなら、我々はまず互いに敵対することをやめなければならない」
2010年07月28日 「具合が悪そうだぜ、凝り性のお友達」 [長年日記] 編集
§ [TRR] 2010年07月25日『邪魅の抱擁』
朱春峰(男・300歳余・青龍1/白虎1/異邦人1):万の勝利を得るまで祖国へ戻らぬと誓い、戦国日本へやってきた仙人。国性爺の戦友で、“東方不敗”のふたつ名で呼ばれたことも? (おそらく)明人で朱姓なのが意味深な剣士。現在は田沼家の用心棒。武士道から騎士道まで幅広く扱う。プレイヤは森聖氏。
“葛葉”土御門晴明(男・15歳?・朱雀2/陰陽師1):表の顔は葛葉の号で浮世絵を描く少年絵師。しかし、その実体は肉体を乗り換え無窮の時を生きる高名な陰陽師。土御門家とは微妙な関係らしい。幕府嫌いだが、妖異から衆生を護ろうとしている天海に力を貸すこともある。プレイヤは荒原の賢者氏。
伊藤伊吹(女・17歳・白虎1/玄武1/神職1):江戸市中のさる寺に勤める巫女。親の代からそういう仕事であるからか、妖異との戦いを使命と感じているからか、割と戦いに手馴れている。しかし、今回はそれが仇になる場面も。プレイヤは隠者氏。
物語は、春峰がかつて稽古をつけていた田村新之助に呼ばれたことから始まった。新之助は婿入りした田村家で子を授かり、幸せな暮らしを過ごしているはずだったが、どことなく覇気が無く言葉の歯切れも悪い。それはともかく、内職が忙しく物騒な時勢に家族に目を配れないことをした新之助に用心棒を頼まれ、もう少し家族と過ごせと諭しながらも春峰は仕事を請ける。
一方、寛永寺の地下では晴明と天海が密議を交わしていた。ここのところ御家人の子息を狙った殺しが多発しており、それに妖異の疑いがかけられている。幼子を脳天から叩き斬るという残虐な手口は妖異であるにせよないにせよ、尋常ではない。病死で誤魔化せている間に根を絶つよう、天海は晴明に頼んだ。
伊吹は使いの途中、よくなついてくる玉千代という少年を見つけた。しかし、それはいつものようにはしゃいでいる彼ではなく、脳天から血を流して赤黒い水溜りの中で息も絶え絶えになっている姿だった。
生温く、腥い風が吹いた。
伊吹はとっさに血溜りへ駆け寄って《起死回生》で玉千代を助け起こす。しかし、血まみれになっているところを見回りの辻番に発見され、人殺し扱いされてしまった。取り囲まれ一触即発の事態になるが、玉千代がか細いながらもいぶきに助けられたことを証言し、その場は収まった。
その頃春峰と晴明は目的地に向かう途中でばったり出会い、さらに辻番と口論になっていた。お互いの目的地が辻番が流行り病のために封鎖していると主張している木戸の中だったため、何か怪しいものを感じながら走って辻番を撒く晴明と、その後を追う春峰。
三人が潜入して探索すると、やはり流行り病の裏では天海の情報通り御家人の子息が斬殺されていた。しかも、住人が互いに顔を立てて騒ぎにならないことを狙ってかひとつの町内で。
春峰は田村家で手伝いをしながらそれとなく家族に聞いてみると、新之助は多くの内職を掛け持ちし、夜明け前に家を出て帰るのは日暮れ時。いくら子息の将来のためとはいえ、多すぎるほどの仕事を抱えている。
一方、怪事の裏で蠢く妖異を探る晴明は、西国にいる山中の気を人に当てるミサキ、そしてそれを元に鳥山石燕が描いた邪魅という妖異に辿りついていた。
晴明の言葉にひっかかるものを感じた春峰が彼を探していると、陰陽師と巫女が殺しの現場で調査をしているところに出くわす。
生温く、腥い風が吹いた。
その風に煽られて海月のような妖異がふうわりと浮かび上がり、はらはらと街に降り注ぐ。すると、人々は些細なきっかけで争いを始め、緊張した雰囲気がより陰鬱なものとなっていく。とりあえず出てきた妖異のいくつかは退治した英傑たちだが、根を絶たねばならない。晴明は残るふたりに田村新之助が怪しいと告げて去っていった。
数日後、春峰が田村家で茶を啜っていると、珍しく新之助が早い刻限に帰ってきた。たまには息子の初丸と遊んでやるというのであるが、ただならぬ気配を感じた春峰は後をつける。
家の裏手にある広場で遊んでいる初丸に近づく新之助。しかし、差し伸べたはずの手には刀を持ち、わが子の脳天に《疾風怒涛》の勢いでそれを振り下ろそうとしていた。
しかし、その刀は土を耕すにとどまった。様子を窺っていた晴明が《破邪顕正》で隙を作り、初丸を抱えていたのだ。その場に集ってくる妖異の気配に伊吹も駆けつけ、春峰は弟子に呼びかけるが、新之助は木偶のように刀を構えて三人に向かってくる。
息子を殺すという最後の一線を踏み越えることが無かったため、新之助は正気に戻せると踏んだ英傑たちは集中して彼を叩き、気を失わせる。
生温く、腥い風が吹いた。
新之助がその場に倒れると、彼の背中から出来損ないの獣のような姿をした妖異、邪魅が現われた。邪魅は言う、心の底では自分に成り代われるわが子を疎んでいたこの男の心に風を吹かせ、余分なモノを取り払っただけでここまで堕ちた。それすら英傑は救い、助けるのかと。
「うるせえ死ね」
邪魅が操るあやかしの風を白虎のふたりが互いにかばい、軽減しながら、春峰の一閃を晴明が《広大無辺》で増幅し、《起死回生》でふたたび操られた新之助を取り巻きの妖異もろともなぎ払い、伊吹の《拍手》にひるんだ邪魅を晴明の《五行呪:木行》が街の澱んだ気もろとも吹き散らした。
後日、伊吹のもとには正式に謝罪の使者がやってきた。寺方と揉め事を起こすことを嫌った上の事情などもあったようだが、玉千代と初丸も元気な顔を見せていた。
晴明は天海と話し合い、妖異のことは闇に葬り、無いものには証も立てようがないため新之助のことも一切不問にするという結果に落ち着かせた。彼に操られている間の意識が無いのは幸いだったかもしれない。
そういうわけで、新之助は息子の初丸を迎えに行く途中で過労がたたって倒れ、そこを春峰たちが介抱したということになった。このことで彼も無理をしていたことを素直に認め、内職を減らすことを約束したという。春峰は彼の快気祝いで家に招かれた折、そのことを聞いたのだった。
邪魅ハ
魑魅乃
類なり
妖邪の
悪気なるべし
――『今昔画図続百鬼・明』
いつもの面子では初プレイの『天下繚乱』でしたぁ。3人だったのでやや心配だったですぅが、カバーリングと軽減特技の応酬で一度も覚悟状態にならなかった春峰の仙人プレイなど、初期キャラでもダメージコントロールに長けたパーティの底力を見せられたですぅ。
2010年07月29日 「また脳死だぜ、五秒間」 [長年日記] 編集
§ [NOVA] “凍土を喚ぶ者”ロストワン(消費経験点200点)20100123版
“
聖母殿では救世主の遺志により封印されていたが、数年前に浄化派の天閣というバサラにより開放され、トーキョーN◎VAで彼と戦闘を繰り広げる。そして死に際の天閣から、戦うために造られた存在は開放されたとき何のために戦うのかという命題を突きつけられた。
この命題を“考えた”ことは、あまたの宗教家から蒐集された情報で脳電位など身体的条件を常に解脱状態へと調整している彼(彼女?)という器に罅を入れた(たとえば禪の公案は、悟っているならそのまま答えを口にできる筈である。もっとも、薬物投与や電流刺激など外部からの調整で人為的に得られた修行なき解脱こそ禪で魔境と忌まれる状態なのかもしれない)。形而下のステータスを調整しても、形而上の何かが備わっていないことを自覚したのである。そのため、戦いが終わると器に満たすべきものを探す放浪の旅に出ることになる。
これは余談であるが、彼女(彼?)に接触したあるオカルティストは、アレイスター・クロウリーがトート・タローから外した四大と空、時を象徴する三人目の魔術師、マグス・ドラコニス(りゅう座の魔術師)として生み出されるはずの存在ではなかったのかと推測している(また、変動を象徴する火の力が反転したためにそれが失敗し、ひいては地球を永久凍土に包む一因になったのでは、とも)。
調息で精神を集中し、敵の足元に星幽門を開いて黒い氷柱を急速に成長させる術を使う。
この数年は世界を放浪していたが、『Dragon Slayers』で聖母の召喚と己の自由意志をもって北米の“要塞都市”スミソニアンに潜入。仲間たちと協力してあるものを開放し、いずこかへと去った。
能力値:【理性】9/15、【感情】6/15、【生命】3/9、【外界】3/9
技能:〈運動〉2♠♣♡♢、〈交渉〉1♤♣♡♢、〈自我〉6♠♣♥♦、〈知覚〉1♠♧♡♢、〈コネ:イータ〉2♤♣♥♢、〈コネ:陰と陽の輪舞〉1♠♧♡♢、〈社会:N◎VA〉2♤♧♥♦、〈社会:アストラル〉2♠♧♥♢、〈社会:ストリート〉1♤♣♡♢
特技:〈※蘇生〉1♤♧♥♢、〈拡大〉1♠♧♡♢、〈変化〉2♤♧♥♦、〈透過〉2♠♣♡♢、〈元力:火炎(負)〉4♠♣♥♦、〈元力:大地(正)〉4♠♣♥♦、〈元力:虚無〉4♠♣♥♦、〈元力:時間〉10♠♣♥♦、〈使魔:杯の女王(ミストレス)〉1♤♧♥♢
装備:剣(30)、増幅杖+コンバットアシスト(6+6)、武(1)、シュッテ(1)、呪影陣(8)、IANUS(-)、ディクショナリ(5)、スリーアクション(3)、アイアンウィル(3)、インデックス(5)、ドラッグ・ホルダ(3)、ナイトヘッド(3)、ラッキー7(6)、ディスパッション(6)、魔術回路×3(3×3)、AI(0)、大魔法(10)、マンション(イエロー)(-)
プレアクト購入:法衣(ガードコート相当)、リンクス、ポケットロン、銀の眼、シティコンダクター
〈変化〉予定装備:ニルヴァーナ(5)、ブレインハード(13)、イリュージョン(8)、ブーストハート(9)、アルジャーノン(9)、呪爆符(12)、クラリック(5)、気合(4)、プシュケー(17)、瑞雲大吟醸・宇宙桜(7)、コヒバ(9)
数年ぶりに使用できたキャストですぅ。前回は傲慢だったけど今回は非常に角が取れていたとの言葉を参加していた当時のRLに頂きましたぁ。またそのうち使いたいですぅ。
マイナーでスリーアクション、プロットを見ながら〈変化〉でドラッグを作成して投与しながら、〈自我〉+〈運動〉+〈通過〉+〈元力:火炎(負)〉+〈元力:大地(正)〉+〈元力:虚無〉+〈元力:時間〉の達成値+13、ダメージ刺+24で殴り、味方に達成値が必要なときは〈元力:時間〉で+10するというたあいもない構成ですぅ。
心残りはアンチスペルを買う覚悟が無かったことでしたぁ。
Before...
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