2010年07月28日 「具合が悪そうだぜ、凝り性のお友達」 [長年日記]
§ [TRR] 2010年07月25日『邪魅の抱擁』
朱春峰(男・300歳余・青龍1/白虎1/異邦人1):万の勝利を得るまで祖国へ戻らぬと誓い、戦国日本へやってきた仙人。国性爺の戦友で、“東方不敗”のふたつ名で呼ばれたことも? (おそらく)明人で朱姓なのが意味深な剣士。現在は田沼家の用心棒。武士道から騎士道まで幅広く扱う。プレイヤは森聖氏。
“葛葉”土御門晴明(男・15歳?・朱雀2/陰陽師1):表の顔は葛葉の号で浮世絵を描く少年絵師。しかし、その実体は肉体を乗り換え無窮の時を生きる高名な陰陽師。土御門家とは微妙な関係らしい。幕府嫌いだが、妖異から衆生を護ろうとしている天海に力を貸すこともある。プレイヤは荒原の賢者氏。
伊藤伊吹(女・17歳・白虎1/玄武1/神職1):江戸市中のさる寺に勤める巫女。親の代からそういう仕事であるからか、妖異との戦いを使命と感じているからか、割と戦いに手馴れている。しかし、今回はそれが仇になる場面も。プレイヤは隠者氏。
物語は、春峰がかつて稽古をつけていた田村新之助に呼ばれたことから始まった。新之助は婿入りした田村家で子を授かり、幸せな暮らしを過ごしているはずだったが、どことなく覇気が無く言葉の歯切れも悪い。それはともかく、内職が忙しく物騒な時勢に家族に目を配れないことをした新之助に用心棒を頼まれ、もう少し家族と過ごせと諭しながらも春峰は仕事を請ける。
一方、寛永寺の地下では晴明と天海が密議を交わしていた。ここのところ御家人の子息を狙った殺しが多発しており、それに妖異の疑いがかけられている。幼子を脳天から叩き斬るという残虐な手口は妖異であるにせよないにせよ、尋常ではない。病死で誤魔化せている間に根を絶つよう、天海は晴明に頼んだ。
伊吹は使いの途中、よくなついてくる玉千代という少年を見つけた。しかし、それはいつものようにはしゃいでいる彼ではなく、脳天から血を流して赤黒い水溜りの中で息も絶え絶えになっている姿だった。
生温く、腥い風が吹いた。
伊吹はとっさに血溜りへ駆け寄って《起死回生》で玉千代を助け起こす。しかし、血まみれになっているところを見回りの辻番に発見され、人殺し扱いされてしまった。取り囲まれ一触即発の事態になるが、玉千代がか細いながらもいぶきに助けられたことを証言し、その場は収まった。
その頃春峰と晴明は目的地に向かう途中でばったり出会い、さらに辻番と口論になっていた。お互いの目的地が辻番が流行り病のために封鎖していると主張している木戸の中だったため、何か怪しいものを感じながら走って辻番を撒く晴明と、その後を追う春峰。
三人が潜入して探索すると、やはり流行り病の裏では天海の情報通り御家人の子息が斬殺されていた。しかも、住人が互いに顔を立てて騒ぎにならないことを狙ってかひとつの町内で。
春峰は田村家で手伝いをしながらそれとなく家族に聞いてみると、新之助は多くの内職を掛け持ちし、夜明け前に家を出て帰るのは日暮れ時。いくら子息の将来のためとはいえ、多すぎるほどの仕事を抱えている。
一方、怪事の裏で蠢く妖異を探る晴明は、西国にいる山中の気を人に当てるミサキ、そしてそれを元に鳥山石燕が描いた邪魅という妖異に辿りついていた。
晴明の言葉にひっかかるものを感じた春峰が彼を探していると、陰陽師と巫女が殺しの現場で調査をしているところに出くわす。
生温く、腥い風が吹いた。
その風に煽られて海月のような妖異がふうわりと浮かび上がり、はらはらと街に降り注ぐ。すると、人々は些細なきっかけで争いを始め、緊張した雰囲気がより陰鬱なものとなっていく。とりあえず出てきた妖異のいくつかは退治した英傑たちだが、根を絶たねばならない。晴明は残るふたりに田村新之助が怪しいと告げて去っていった。
数日後、春峰が田村家で茶を啜っていると、珍しく新之助が早い刻限に帰ってきた。たまには息子の初丸と遊んでやるというのであるが、ただならぬ気配を感じた春峰は後をつける。
家の裏手にある広場で遊んでいる初丸に近づく新之助。しかし、差し伸べたはずの手には刀を持ち、わが子の脳天に《疾風怒涛》の勢いでそれを振り下ろそうとしていた。
しかし、その刀は土を耕すにとどまった。様子を窺っていた晴明が《破邪顕正》で隙を作り、初丸を抱えていたのだ。その場に集ってくる妖異の気配に伊吹も駆けつけ、春峰は弟子に呼びかけるが、新之助は木偶のように刀を構えて三人に向かってくる。
息子を殺すという最後の一線を踏み越えることが無かったため、新之助は正気に戻せると踏んだ英傑たちは集中して彼を叩き、気を失わせる。
生温く、腥い風が吹いた。
新之助がその場に倒れると、彼の背中から出来損ないの獣のような姿をした妖異、邪魅が現われた。邪魅は言う、心の底では自分に成り代われるわが子を疎んでいたこの男の心に風を吹かせ、余分なモノを取り払っただけでここまで堕ちた。それすら英傑は救い、助けるのかと。
「うるせえ死ね」
邪魅が操るあやかしの風を白虎のふたりが互いにかばい、軽減しながら、春峰の一閃を晴明が《広大無辺》で増幅し、《起死回生》でふたたび操られた新之助を取り巻きの妖異もろともなぎ払い、伊吹の《拍手》にひるんだ邪魅を晴明の《五行呪:木行》が街の澱んだ気もろとも吹き散らした。
後日、伊吹のもとには正式に謝罪の使者がやってきた。寺方と揉め事を起こすことを嫌った上の事情などもあったようだが、玉千代と初丸も元気な顔を見せていた。
晴明は天海と話し合い、妖異のことは闇に葬り、無いものには証も立てようがないため新之助のことも一切不問にするという結果に落ち着かせた。彼に操られている間の意識が無いのは幸いだったかもしれない。
そういうわけで、新之助は息子の初丸を迎えに行く途中で過労がたたって倒れ、そこを春峰たちが介抱したということになった。このことで彼も無理をしていたことを素直に認め、内職を減らすことを約束したという。春峰は彼の快気祝いで家に招かれた折、そのことを聞いたのだった。
邪魅ハ
魑魅乃
類なり
妖邪の
悪気なるべし
――『今昔画図続百鬼・明』
いつもの面子では初プレイの『天下繚乱』でしたぁ。3人だったのでやや心配だったですぅが、カバーリングと軽減特技の応酬で一度も覚悟状態にならなかった春峰の仙人プレイなど、初期キャラでもダメージコントロールに長けたパーティの底力を見せられたですぅ。