2025年11月01日 [長年日記]
§ [CoC] シナリオ:廃屋の宝探し
今月の小冒険は趣向を変えて新クトゥルフ神話TRPGですぅ。
このシナリオを使ったリプレイの公開やプレイ配信などは好きに行なっていただいて構わないですぅ。その時はご一報いただけると嬉しいですぅ。
キーパー向け情報
S県の山奥にある資産家の
戸村重蔵は金に飽かせてさまざまな薬種や珍品貴品を買い、蔵にしまい込んで研究をしていた。なかでも彼の興味を惹いたのは、抜け荷で日本に持ち込まれた“ミルラ”である。それは人の形をほぼ留めているミイラだが、彼は自分の研究を書き留めていた帳面には“ミルラ”と書き記していた。
重蔵の手に入れたミイラは古代エジプトでヨグ=ソトースを信仰する魔術師キムトが、精神を転移させてさまざまな次元を旅した後に帰ってくるための依代として保存していたものだ。重蔵はそのようなことはまったく知らず、副葬品の古文書と共に研究していたが、いかんせん幕末から明治初年で資料も少なく、しかも田舎の素人趣味であったため、副葬品の古文書を不完全に解読するだけで終わり、クトゥルフ神話に繋がるような事象は発生しなかった。
その後、戸村家の主だった者たちは都会へ出て、屋敷は近くに住む分家の者たちが年に何度か管理する程度になっている。
そして現代、戸村家の末裔で某大学の文学部に通う
そこで明日香は探索者たちにS県の山奥にある実家を調査してミルラを見つけ、一儲けしないかと誘ってくる。
しかし、明日香がミルラと考えていた物はミイラであり、しかも“彼”はヨグ=ソトースの導きによる旅から休憩して自らの体に宿り、一時の安息を謳歌している。
戸村家の屋敷を探検し、ミイラをどうにかすればシナリオは終了である。
NPC紹介
キムト:56歳(ミイラになった時の年齢)、古代エジプトの魔術師でヨグ=ソトースの信奉者。数ヶ月前に戸村重蔵が保存していたミイラの中に戻り、屋敷の中にある書物で日本語を学び、乾燥したミイラの保存に適さないこの地から旅立とうと《時空門》を作ろうとしている。じゅうぶん理知的であり過度な残虐性もないが、POWを得るために人間を生贄にすることへの罪悪感はない。
シナリオの導入
探索者は学友や知人である戸村明日香から古ぼけた和綴じの本を見せられる。彼女はある部分を指でなぞり「ここには『人の躰ほど大きなミルラを入手せり』って書いてるの。ミルラって言ったらお香やアロマオイルの材料よ。私の家にはそんなのが無いから、山奥にあるご先祖の家にまだあると思うの。見つけて一儲けしない?」と儲け話をもちかけられる。
分け前について話すと「私の家の物だから私が6割、君たちが4割を山分けでどう?」と言うが、ハードの〈説得〉などで成功すれば5割と5割、イクストリームならば4割と6割まで譲歩する。
彼女は何かと忙しいため探索者たちに同行はできないと言うが、探索者たちがどうしてもと頼んだり、人数が少なかったりする場合は同行させてもよい。その場合、探索者としてのデータはキーパーが作ること。
1.戸村家のふるさとへ
戸村家があるのはS県の山奥だ。バスはあるものの1日に数本。免許を持っている探索者がいるなら、レンタカーを借りた方が快適に旅ができる。
現在戸村家の屋敷を管理しているのは、都会に出なかった分家筋の者が管理している。主に掃除などをしているのは戸村ちよ子という70代の老婆で、明日香は彼女に話を通しているので、探索者たちは鍵一式を貸してもらうことができる。
間取りを訊ねるなら、母屋の他に重蔵の代に建てられた離れと、蔵があると教えられる。
ちよ子は探索者たちが戸村家へ向かうことについて、常に心配したような雰囲気で応対する。事情を訊ねるなら、最近屋敷の近くを夜に通りがかると光が見えたりガタガタ音がしたりすることがあるので、悪い連中が住みついてるのかもしれないと話し、くれぐれも注意しなさいと忠告する。
2.母屋
母家は調理場なども兼ねた広い土間と、10畳ほどの部屋がいくつかある。たまにちよ子たちが掃除をしているが、それでもかなり埃っぽい。
〈目星〉で成功したら、埃の中を歩き回っている足跡のようなものを発見できる。ハードで成功すれば、1人がつけたものだとわかる。
3.離れ
この離れは重蔵が建てさせたもので、書斎のような用途に使っていた。中には書棚があり、大量の和綴じの本と少しの洋書が入っていたような痕跡がある。しかし、現在その半分ほどが文机の上や床に乱雑に放置されている。開かれたままのものもあるくらいだ。
この部屋で〈目星〉で成功したら、ここでも埃の中を歩き回っている足跡のようなものを発見できる。ハードで成功すれば、1人がつけたものだとわかる。
この部屋に入った時に〈アイデア〉ロールに成功すると、気持ち悪くなってくる何かが混じったかび臭さを感じ、0/1正気度ポイントを失う。
床の隅には積み重ねられた一群の書物があり、それらを調べて〈図書館〉に成功すれば、黄表紙のような読み物が主であることがわかる。
その他、この部屋にある書物を調べる〈図書館〉に成功すれば、重蔵の蒐集品の目録やそれを調査したことを自分なりにまとめた見解などの書き付け、本草学の文献であることがわかる。その中でも一際目を惹くのが『
『埃及の書について』を読み〈日本語〉に成功すれば、それがミルラはヨ■=■トー■なる神を信仰していたようであること、エジプトについて調べてみたが、ヨ■=■トー■という神は存在しないので、後に添付された偽書であろうと書かれている。この書き付けを読んだ者は、この世に存在しないはずの何かを感じ、1d4の正気度を消失する。
ここの書物を数時間かけて〈鑑定〉にハードで成功すると、ここにある古書はとても良くまとまったコレクションで、かなりの値段で売れることがわかる。
4.蔵
ここは戸村家が代々使ってきた蔵である。中にはいくつかの蔵や櫃があるが、その中身は家の者が都会に出るときに持ち出したのか、空の物がほとんどである。
蔵の奥には棚があり、重蔵の蒐集物が並べられている。同じ並びの壁際には人間がすっぽり入ってしまうくらいの大きさの櫃がある。これの蓋はかなり重く、STRロールに成功する必要がある。
櫃を開くと、中には“ミルラ”ことミイラが横たわっている。これを見た探索者は1/1D8正気度ポイントを失う。
STRロールに失敗した場合、中から蓋が開き、ミイラが現われる。これを見た探索者はあまりの異常さに1D4/1D10正気度ポイントを失う。
5.キムト
ミイラのキムトは黄表紙などで学んだ芝居がかった古風な日本語で探索者たちとコミュニケーションを取ろうとする。「せっしゃ、おぬしらの魂が持つ力が、欲しい」などである。キーパーはロールプレイが難しいと考えたなら、普通に会話して構わない。
キムトはこの場所から出ていくための《時空門》を作りたいために20のPOWを必要としており、探索者たちにそれを要求する。このPOWの喪失は永久的なもので、儀式には20時間かかる。探索者たちがこれを拒絶するなら、野犬などを狩って用立てるように要求する。それも許否した場合、キムトは力尽くでPOWを得ようと探索者に向かって戦闘を挑んでくる。データはミイラのものを使うこと。
キムトの入っていた櫃の中には粘土板製の古文書がある。これはキムトが自分の研究を書いていた書物で、以下のデータを持つ。
キムトの粘土板
中エジプト語、キムト著、紀元前1500年頃
ヨグ=ソトースを信奉していた魔術師が時空間を超越して旅をすることについて書いた研究書。キムトを葬った遺跡から副葬品として発見された。
正気度喪失:1D8
〈クトゥルフ神話〉:+2%/+8%
神話レーティング:10
研究期間:6週間
呪文:《時空門》、《門の観察》、《門の創造》
結末
“ミルラ”は手に入っただろうか、探索者は明日香にどう報告すべきだろうか。
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。
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