2025年11月22日 [長年日記]
§ [CoC] シナリオ:METAMORPHOSE
今回も新クトゥルフ神話TRPGの小シナリオですぅ。クラシック版でもプレイ可能ですぅ。
このシナリオを使ったリプレイの公開やプレイ配信などは好きに行なっていただいて構わないですぅ。その時はご一報いただけると嬉しいですぅ。
キーパー向け情報
某地方都市の某大学の学生
探索者たちは一花がヘルプに呼んだDJやVJ、裏方要員である。
一花はVJとして参加し、自分が流す曲の段取りについては未発表のシークレットとしているが、彼女が書いた曲とPVは1970年代のアングラ演劇華やかなりし頃に和訳された戯曲『黄衣の王』にインスピレーションを受けた『King in Yellow』で、これは演者を依代に黄衣の王を降臨させる儀式になってしまうものだ。
準備期間中に事情を探り、イベント当日にパニックを集束させればシナリオは終了となる。
NPC紹介
シナリオの導入
探索者たちは成宮一花や馳栄勝に学園祭で行なうレイヴのスタッフとしてスカウトされ、学生たちがよく使う大学近くのファミレスで顔合わせと打ち合わせを行なう。2人の他には残り3人のDJ、VJ担当者と、5人の裏方がいる。
DJ、VJで呼ばれた探索者たちは、内容はお任せで尺は30~60分、機材は主催が準備している物以外は自分で持ち込むようになど、ステージでやることを詰めていく。
裏方で呼ばれた探索者たちは、機材の搬入や搬出、持ち込み機材を扱ううえでの段取り、屋外でやるため会場内外の人の流れの制御などの話を詰めていく。
こうして打ち合わせは進むが、一花は「アタシの出番は主催者権限のサプライズってことで。大丈夫大丈夫」と自分のパートで何をやるかは話さない。
打ち合わせの中で〈心理学〉に成功すれば、一花の様子にイベント前の興奮とも異なる、一種の狂気に近い何らかが混じっていることに気づける。これはキーパーがプレイヤーたち〈心理学〉を行なうように告げてロールさせること。
一行は数時間の打ち合わせをした後、一花は「これから2週間、ゲストの中でもヘルプで来た人は今日から参加で全員集まれる日は少ないけど、グループメッセや会える人で打ち合わせして詰めていきましょ」と締めくくる。
1.成宮一花との打ち合わせ
一花とは、学園祭までの暇な時間の合間に3回打ち合わせの時間を取ることができる。この打ち合わせの時に探索者が〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉に成功すれば、彼女の家を訪問することができる。
2.成宮一花の家
一花の家は大学から歩いて10分ほどのマンションだ。玄関には暗証番号によるセキュリティがあるタイプだ。
中はワンルームタイプで、よく掃除されている。レコードやCDが詰まった棚があり、音楽用の機材が整理されて置かれている。部屋の中央にあるテーブルの上にはノートパソコンと、1冊の古ぼけた薄い本が置かれている。
この本について一花に訊ねれば、「クラブで会ったおっさんに貰ったんだ」、「演劇の脚本で、そこから新曲とPVを思いついたの」などと話をしてくれる。本は以下のデータを参照すること。
『黄衣の王』
日本語、翻訳者は不明、1970年
英語版の『黄衣の王』を翻訳した日本語版の演劇脚本。アングラ演劇華やかなりし時代に翻訳され、マイナーな劇団によってどこかの小劇場で上演されたという噂がある。
正気度喪失:1D10
〈クトゥルフ神話〉:+1%/+4%
神話レーティング:15
研究期間:1週間
呪文:なし
この本には印象的な意匠の印が描かれている。これはハスターを象徴する黄色の印であり、本を読んだ探索者は混沌とした渦巻きが何らかの形を取っていくようなイメージが頭の中に流れ込み、0/1D6正気度ポイントを失う。
この本の印を見た探索者は眠りにつくごとに0/1正気度ポイントを失う。これは〈正気度〉ロールに成功するか、狂気に陥るまで続く。
探索者が動揺する様子を見せると「ね? 凄いでしょ?」と一花は満足そうに魅力的な笑みを見せる。一花に本が欲しいと言うなら、ハードの〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉に説得すれば「惜しいけど、まあこれくらいでなら」と5000円で売ることを了承する。イクストリームで成功した場合、ただで貰える。
3.事前の対策
探索者たちが一花の様子がおかしく、その対策としてイベント前に何かを行ないたい場合の例を以下に紹介する。
一花の新曲とPVは彼女のノートパソコンに保存されている。これはパスワードで保護されている。彼女が食べ物を取りに行った時やトイレに行く時に隙を見てデータを削除することを試みるなら、ハードのDEXと〈図書館〉の組み合わせロールに成功すれば、データの保存場所を発見して削除することができる。ハードのDEXと〈コンピュータ〉の組み合わせロールに成功すれば、ネットにアップロードされているバックアップを発見して、それを削除することができる。この2種類の判定は一花がいない時にいずれか1回しか行なえない。どちらかが残っている場合、一花はバックアップからデータを復旧させる。
こうした場合、データを失った一花は激怒して状況証拠から探索者を犯人と決めつけ、イベントのメンバーから外すことを通告する。探索者がイクストリームの〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉に成功しなければ人間関係を修復できない。
コンピュータを操作してデータを洗い出す場合、探索者がハードの〈言いくるめ〉〈説得〉〈魅惑〉のいずれかに成功すれば、一花にパソコンが不調そうだと思い込ませることができる。こうした場合、彼女はパスワードを探索者たちに教え、イベントまでになんとかして欲しいと頼み込む。この場合は〈図書館〉ロールに成功すればデータの保存場所とネットのバックアップを発見できる。しかし、この場合でもデータを失った一花は激怒し、前述のような判定を行なう必要がある。
スタッフの栄勝たちや参加するDJ、VJたちに話を聞いても、一花は絶対繋げていけるからと自信を持ち、なおかつ主催者特権と言い張って自分の段取りを明かしていないことがわかる。
一花に『黄衣の王』を渡した者について話を訊くなら、ハイヴというクラブに出入りしているアキと名乗っている男だったと話す。この情報からハイヴのマスターに話を訊いても、そういう客はいたかもしれないが、こういう商売なので一々客の顔なんて覚えてられないと話し、捜査はここで止まらざるをえなくなる。
4.King in Yellow
イベント当日、客が温まってきたタイミングで一花がステージに上がり、VJを始める。場はさらに盛り上がり、最高潮に達そうとした時、彼女は『黄衣の王』からインスピレーションを得て書いたオリジナルの曲『King in Yellow』を流し、背後のモニタからは映像を流す。これが始まった瞬間、彼女の髪の色と服は黄色を中心としたさまざまな色に次々と変わり、顔は青白いマスクをつけたような姿になる。彼女の体を依代に黄衣の王が降臨したのだ。
この成宮一花の変貌により場はさらに盛り上がる。テンションの上がった者は次々と狂ったように踊り出し、彼らの姿も黄色がかかった幻想的な色になっていく。
一花のデータを破棄していた場合でも彼女は残された素材などから突貫でデータを作り直し、なんとか場を繋げられる、すなわち不完全な儀式が行なえる程度の曲とPVを完成されている。この場合、彼女は黄色いオーラのようなものを体中にまとう程度で済む。しかし観客はこれを演出の一環と思い、完全な儀式が行なわれたほどではないが大いに盛り上がる。
この段階でPAの栄勝が「やばい、こんなの一花さんとシークレットで詰めてた段取りにも無いですよ! 客もなんか様子おかしいし!」と探索者たちを探しては異常を告げに来る。
5.降臨そして伝染
完全な儀式が発動して一花に黄衣の王が降臨していた場合、彼女はマスクを外して会場の参加者やスタッフ全員に黄衣の王としての姿を晒し、彼らに1D3/1D10正気度ポイントを失わせる。これは彼女を目にした探索者も例外ではない。会場は熱狂とパニックが入り混じった状態と化す。
この狂乱によって踊り狂う参加者たちも次々とマスクをつけた黄衣の王の姿になっていく。この騒ぎに会場の外からも何事かと人々がやって来て、彼らも黄衣の王を見て狂乱していく。これは一花を止めない限り学園祭に来た者たちすべてを巻き込んだパニックとなっていく。
探索者たちが電源コードを引き抜いたり機材を破壊したりしても、なぜか音楽は鳴り止まず、空中にホログラムのようにPVが流れ続ける。
降臨した黄衣の王を退去させて事態を収拾するには〈近接戦闘(格闘)〉〈近接戦闘(絞殺ひも)〉などのマヌーバーで一花を拘束する必要がある。この際、一花のビルドは0として計算する。しかし、この状態の一花は黄衣の王としての攻撃方法を持ち、全力で探索者たちに抵抗する(ビルドが異なることによるDBの変化には注意すること)。拘束に成功すれば、黄衣の王の憑依は解ける。
一花の曲とPVが不完全だった場合、曲の最後に仮面を外した黄衣の王の姿がPVに映り、それを見た者たちは1/1D3の正気度を失う。
結末
完全な黄衣の王の降臨がなされてその事態が集束した場合、学園祭での一件は伝説のレイヴとしてその筋の者に語り継がれ、一花の名声は跳ね上がる。
黄衣の王の降臨を放置した場合、その狂乱は大学、街、そして世界へと、それこそスマートフォンで現場を映している者たちの電波によって伝播していき、世界はパニックに陥る。
一花の曲とPVが不完全だった場合、斯界での彼女の評価は若干落ちるが、彼女は諦めずに新たな表現を作っていくことだろう。
なお、イベントの機材を破損させた場合、一花と栄勝、探索者たちはしばらくの間賠償請求に悩まされることになるだろう。
本作は、「株式会社アークライト」及び「株式会社KADOKAWA」が権利を有する『クトゥルフ神話TRPG』シリーズの二次創作物です。
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