ネコぶんこ


2019年08月07日 [長年日記] 編集

§ [Ludus] Gears & Gigantes特設サイト開設

コミケまであと二日、私が旅立つまであと二十四時間を切った段になって、ようやくGears & Gigantes特設サイトができたのでお知らせするですぅ。サポートなどがあれば継ぎ足していく予定ですぅ。


2019年08月15日 [長年日記] 編集

§ [Ludus] コミケよりの帰還

というわけで、コミケお疲れ様でしたぁ。Gears & Gigantesのほうはほぼ完売(関係者への献本分でなくなりそう)したので、再販するか電子化するかなど、今後について現在検討中ですぅ。


2019年08月19日 [長年日記] 編集

§ [Ludus] Open Game Licenseことはじめ

序言

このエントリは、Open Game License(OGL)というライセンス下で何か作るときにどうすればいいのか、何をしていいのか、逆に何をしていけないのかを解説するためのものですぅ。

具体的には某Dで始まるRPG“第5版”用サプリメントやアドベンチャーをOGLで作るとき、どうすればいいかという内容ですぅ。

ただし、このエントリは法律の専門家が書いたものではなく、その内容に一切の保証はない、あくまでも私がどう解釈し、制作しているかを書いたものとして受け取っていただきたいですぅ。具体的にいうと、自分のやっていることがどうしても心配なら、米国法に詳しい専門家(弁護士とか)に訊ねてほしいということですぅ。

これは、私の同人サークル『うなぎむら』はOGLの作品を出したとき等に、「OGL作品をやってみたいけど、どういうライセンスなのかがよくわからない」という意見を目にしたことなどもあって、いつかは手をつけねばならぬ、しかし面倒だと行きつ戻りつしていたのを、コミケでOGLなサプリメントの物理本(Gears & Gigantes)を出したこともあり、せっかくだから最後までやろうと意を決して書くものですぅ。

Systems Reference DocumentとOpen Game License

“第5版”にはルールブックとして売られているものから抜粋し、広く一般に公開されているSystems Reference Document(SRD)という文書(2019年08月18日現在)があるですぅ。

このSRDには種族、クラス、装備、呪文……といったプレイヤ用のルールブックにある情報と、魔法のアイテム、モンスタ……といったGM用のルールブックにある情報が含まれており、これらの内容はOGLのライセンス下で利用できることになっているですぅ。

要約すると「“第5版”には製品から抜粋されたSRDという文書があり、それはOGLの下で利用できる」ということですぅ。

Open Game Licenseを読む

孫子のすぐれエイ「知彼知己彼ヲ知リ己ヲ知レバ百戦不殆百戦殆ウカラズ」ではないけど、SRDをどう使うかの前に、まずはOGLを読み、どういうライセンスなのかを知る必要があるですぅ。

“第5版”のSRDに適用されるOGLは文書の冒頭、Legal Informationに掲載されている、Open Gaming License Version 1.0aですぅ。

これに何が書かれているかというと、1.に用語の定義、2.にライセンスが適用される範囲と制限、通知義務、3.にOpen Game Content(OGL下のコンテンツ、OGC)を使用するとOGLに合意したとみなされること、4.にOGCを使った対価としてあなたのOGCもOGLで提供されること、5.にOGCを提供するならオリジナルについて明記し、権利について表明すること、6.に15.のCOPYRIGHT NOTICEを改変して著作権表示に自分の名前を加えること、7.に商標など、OGCから除外されるProduct Identityを定義可能なこと、8.にOGCの範囲を明記すること、9.にライセンスの更新について、10.にライセンスのコピーについて、11.に商業や広告に際してOGC寄稿者の名前を勝手に使えないこと、12.にOGLに従えない場合、OGCを使用できないということ、13.にライセンスの終了について、14.にライセンスの改訂について、そして15.が著作権表記……となっているですぅ。

ここではくどくどとOGLの翻訳文は書かない(面倒だし、この手の文書は原文で判断されるため)で、以降は読者の皆さんが各自でOGLを読んだことを前提に書くですぅ。

そのへん要約すると、OGLの要点はおおむね下記の通りといえそうですぅ。

  • SRDなど、OGLが適用されているOGCを使うとその派生物もOGLが適用されたOGCになる。
  • OGCの範囲は限定できる。

この通り、再利用できる部分の定義さえきちんと行なえば、自分の権利を守れる、割と柔軟なライセンスだということがわかるですぅ。

そして、SRDを読めばわかるけど、WotCはOGLの前にProduct Identityをびっしりと記載していて、これらはOGLな作品を作るときに使用できない言葉になっているですぅ。私がGears & Gigantesやこのエントリで某Dで始まるRPGや“第5版”など、持って回ったいい回しをせざるを得ない理由がこれですぅ。

日本語の話

さて、英語圏はともかく、日本では日本語が主に使われているということを考えると、OGLなサプリメントやアドベンチャーを作るにしても、日本語を使いたいですぅ。

幸い、OGLは派生物の翻訳を認めているので、OGCとして提供されているものを日本語に翻訳して提供するのは権利的にもクリアー……だけど、ここでひとつ注意したいことがあるですぅ。

それは、“第5版”でOGCなのは英語で書かれたSRDのみであり、日本語版ルールブックはOGCではないということですぅ。

つまり、SRDを引用し、そのときに和訳するのは(それが商道徳上どうかという点はともかく)ライセンス上問題ないが、SRDの範囲内に相当する日本語版ルールブックの内容を引用するのは問題ありということになりますぅ。

それではよいOGLライフを

というわけで、ザッザッダアとOGLをどう使えばいいか紹介しましたぁ。以下は恒例の要約ですぅ。

  • Open Game License下のコンテンツ、Open Game ContentはOGLの条件を満たせば自由に引用できる。
  • OGCを引用した作品にはOGLを明記せねばならない。
  • OGCの範囲は注意書きやProduct Identityで制御できる。
  • SRDから引用するときの翻訳は(商道徳はともかく)問題ないが、日本語版ルールブックから該当範囲を引用するのはだめ。
  • “第5版”のサプリメントやアドベンチャーを作る場合、あの言葉やあの言葉は使えないのでよく確認すること。

というわけで、駆け足のOGL講座は終わりですぅ。これを読んだ人がOGLなサプリメントやアドベンチャーを作り、日本でもOGLがメジャーになってくれると、書いた者としてはそれ以上に嬉しいことはないですぅ。

宣伝

私のサークル、『うなぎむら』では、BOOTHでOGLなサプリメント、アドベンチャーをダウンロード販売してるですぅ。

また、5e.nekohaus.netでは、SRDをHTML化して公開しているですぅ。


2019年08月26日 [長年日記] 編集

§ [Ludus] Open Game License(System Reference Document 5.1)で何作ろう

続きというかなんというか

Open Game Licenseことはじめ』では、“第5版”はOpen Game Licenseに認められた範囲であればSystem Reference Document 5.1を自由に使えることを紹介したですぅ。

今回は、じゃあ具体的にSRDには何が含まれていて、何ができそうか、そのあたりを確かめてみたいですぅ。

SRDの中身

SRDの中身は以下のようになってるですぅ。

Races
ルールブックに載っている全種族のデータが掲載されているですぅ。ただし、副種族(Subrace)は各種族ひとつだけなので、ルールブックを使って作った何かを安易にそのまま流用しようとするのは危険ですぅ。
クラス
ルールブックに載っている全クラスのデータが掲載されているですぅ。ただし、特定のレベルで取得する道(Path)や領域(Domain)といったサブクラスは、各クラスひとつなので、ここも種族と同じく注意すべきところですぅ。
Beyond 1st Level
成長に必要な経験点の表、マルチクラス関係のルール、属性、言語、インスピレーション、背景(サンプルとしてAcolyteのデータ)……といった、雑多なルールが詰め込まれているですぅ。ここで注意すべきは、SRDに収録されている背景は侍祭(Acolyte)だけなところですぅ。
Equipment
装備は珍品奇品(Trinket)以外、だいたいルールブックの通りですぅ。
特技
特技の説明と、サンプルとして《Grappler》が収録されているですぅ。
Using Ability Scores
能力値と修正値、有利不利、習熟ボーナス、能力値判定、各能力値の使い方、セーヴィング・スロー……と、ルールブックにも書かれている冒険の諸々が収録されているですぅ。
Time
冒険中の時間管理についての諸々が収録されているですぅ。
The Environment
冒険のネタになる環境要因、食糧と水、休憩などについてですぅ。
Between Adventures
冒険の合間の行動について一通り書かれているですぅ。
The Order of Combat
戦闘の始め方、ターンの回し方などについての部分ですぅ。
Actions in Combat
ターンに何ができるか、アクションについての解説、攻撃の流れ、隠蔽、騎乗戦闘、水中戦闘などについての解説ですぅ。
Actions in Combat
ターンに何ができるか、アクションについての解説、攻撃の流れ、隠蔽、騎乗戦闘、水中戦闘などについての解説ですぅ。
Spellcasting
呪文発動についてのルールですぅ。
Spell Lists……
呪文リストと各呪文の詳説が、ルールブックとほぼ同じように載っているですぅ。ただし、発明した術者の固有名詞などが使われている呪文は名称が修正されているので、使う時には一度見直した方がいいですぅ。
Traps
GM用ルールブックの罠について記述された部分が掲載されていて、難易度やダメージを決める基準の表とかを使えるようになってるですぅ。
Diseases
GM用ルールブックの病気について記述された部分が、例示と共に掲載されているですぅ。
Madness
GM用ルールブックの狂気について記述された部分が掲載されているですぅ。
Objects
GM用ルールブックの物体や構造物についてのルールが掲載されているですぅ。
Poisons
GM用ルールブックの毒についてのルールが例示と共に掲載されているですぅ。
Magic Items
GM用ルールブックの魔法のアイテムについてのルールが、収録されているアイテムと共に掲載されているですぅ。ここも自作に流用できるかどうかは一度確認してからが吉ですぅ。知性あるアイテム、アーティファクトについては断片的なルールなのには注意したほうがいいですぅ。
Monsters
モンスタのデータ書式について、そしてモンスタのデータが収録されているですぅ。ここで注意すべきは、ルールブックにはいるけどSRDには収録されていない種が結構いること、そして、収録されているやつも一番ベーシックなやつ(術者タイプや隊長系はいない)しか収録されていないことですぅ。
Appendix PH-A: Conditions
状態についての補遺がそのまま収録されているですぅ。
Appendix PH-B: Fantasy-Historical Pantheons
ケルト、エジプト、北欧のパンテオンが収録されているですぅ。
Appendix PH-C: The Planes of Existence
物質界、そして内方次元界、外方次元界……と、“第5版”での次元界についてざっと説明されているですぅ。
Appendix MM-A: Miscellaneous Creatures
野生動物系のデータですぅ。
Appendix MM-B: Nonplayer Characters
NPCのデータですぅ。

……とまあだいたいこんな感じで、PCの能力値決定、GM用のプレイエイド類諸々、版元が独自性を主張する種族なんかを抜いた要素が凝縮されているですぅ。

そして、これをどうやって活用しようかというのが今回のテーマになるですぅ。

アドベンチャー

ルールブックほどではないけど豊富なモンスタ、そして環境要因や罠、財宝にできる魔法のアイテムの書式やルールが引用可能な状態で準備されているので、SRDから引用した素材を使ってアドベンチャーを作るのは鉄板な選択肢のひとつですぅ。また、ここで自作や改造したデータをOGCにしておけば、他の人も流用可能になって感謝もされるですぅ。

サプリメントやデータ集

SRDの書式を使ってルールブックに混ぜられる種族、クラスやサブクラスを作るのもいいし、特技や背景も、新たなモンスタや神格のデータを提供してもいい……と夢は広がるですぅ。ただし、追加データは公式性がかなり重要なので、サードパーティから出すなら、アクを強くして既存のゲームをオーバーライドするくらいでないとだめそう、というのが私の実感ですぅ。

スタンドアロンなルール

SRDに欠けているPC作成やプレイエイドを独自に補完し、単体でRPGのルールを作成することももちろん可能ですぅ。今度日本語版が出る『Pugmire』はそういう形式のルールですぅ。

どこまでをOGCにするか

と、SRDを使えばまあまあ色々なことに利用できるというのがわかっていただけたはずですぅ。

ただ、これを読む人が実作して公開するぜーとなったとき重々注意したほうがいいのは、引用したOpen Game Contentがそうなるのはもちろんのこと、自分が作った範囲をどこまでOGCにするかですぅ。ばんばん引用してくださいという人も、不本意に引用されたくない人も、その辺の線引きをきちんとする(紙幅があるなら「作中で引用したものと第n章がOGC」という章を作るのが一番楽……か?)と、余計な面倒がなくていいはずですぅ。

宣伝

私のサークル、『うなぎむら』では、BOOTHでOGLなサプリメント、アドベンチャーをダウンロード販売してるですぅ。

また、5e.nekohaus.netでは、SRDをHTML化して公開しているですぅ。