ネコぶんこ


2019年08月19日 [長年日記]

§ [Ludus] Open Game Licenseことはじめ

序言

このエントリは、Open Game License(OGL)というライセンス下で何か作るときにどうすればいいのか、何をしていいのか、逆に何をしていけないのかを解説するためのものですぅ。

具体的には某Dで始まるRPG“第5版”用サプリメントやアドベンチャーをOGLで作るとき、どうすればいいかという内容ですぅ。

ただし、このエントリは法律の専門家が書いたものではなく、その内容に一切の保証はない、あくまでも私がどう解釈し、制作しているかを書いたものとして受け取っていただきたいですぅ。具体的にいうと、自分のやっていることがどうしても心配なら、米国法に詳しい専門家(弁護士とか)に訊ねてほしいということですぅ。

これは、私の同人サークル『うなぎむら』はOGLの作品を出したとき等に、「OGL作品をやってみたいけど、どういうライセンスなのかがよくわからない」という意見を目にしたことなどもあって、いつかは手をつけねばならぬ、しかし面倒だと行きつ戻りつしていたのを、コミケでOGLなサプリメントの物理本(Gears & Gigantes)を出したこともあり、せっかくだから最後までやろうと意を決して書くものですぅ。

Systems Reference DocumentとOpen Game License

“第5版”にはルールブックとして売られているものから抜粋し、広く一般に公開されているSystems Reference Document(SRD)という文書(2019年08月18日現在)があるですぅ。

このSRDには種族、クラス、装備、呪文……といったプレイヤ用のルールブックにある情報と、魔法のアイテム、モンスタ……といったGM用のルールブックにある情報が含まれており、これらの内容はOGLのライセンス下で利用できることになっているですぅ。

要約すると「“第5版”には製品から抜粋されたSRDという文書があり、それはOGLの下で利用できる」ということですぅ。

Open Game Licenseを読む

孫子のすぐれエイ「知彼知己彼ヲ知リ己ヲ知レバ百戦不殆百戦殆ウカラズ」ではないけど、SRDをどう使うかの前に、まずはOGLを読み、どういうライセンスなのかを知る必要があるですぅ。

“第5版”のSRDに適用されるOGLは文書の冒頭、Legal Informationに掲載されている、Open Gaming License Version 1.0aですぅ。

これに何が書かれているかというと、1.に用語の定義、2.にライセンスが適用される範囲と制限、通知義務、3.にOpen Game Content(OGL下のコンテンツ、OGC)を使用するとOGLに合意したとみなされること、4.にOGCを使った対価としてあなたのOGCもOGLで提供されること、5.にOGCを提供するならオリジナルについて明記し、権利について表明すること、6.に15.のCOPYRIGHT NOTICEを改変して著作権表示に自分の名前を加えること、7.に商標など、OGCから除外されるProduct Identityを定義可能なこと、8.にOGCの範囲を明記すること、9.にライセンスの更新について、10.にライセンスのコピーについて、11.に商業や広告に際してOGC寄稿者の名前を勝手に使えないこと、12.にOGLに従えない場合、OGCを使用できないということ、13.にライセンスの終了について、14.にライセンスの改訂について、そして15.が著作権表記……となっているですぅ。

ここではくどくどとOGLの翻訳文は書かない(面倒だし、この手の文書は原文で判断されるため)で、以降は読者の皆さんが各自でOGLを読んだことを前提に書くですぅ。

そのへん要約すると、OGLの要点はおおむね下記の通りといえそうですぅ。

  • SRDなど、OGLが適用されているOGCを使うとその派生物もOGLが適用されたOGCになる。
  • OGCの範囲は限定できる。

この通り、再利用できる部分の定義さえきちんと行なえば、自分の権利を守れる、割と柔軟なライセンスだということがわかるですぅ。

そして、SRDを読めばわかるけど、WotCはOGLの前にProduct Identityをびっしりと記載していて、これらはOGLな作品を作るときに使用できない言葉になっているですぅ。私がGears & Gigantesやこのエントリで某Dで始まるRPGや“第5版”など、持って回ったいい回しをせざるを得ない理由がこれですぅ。

日本語の話

さて、英語圏はともかく、日本では日本語が主に使われているということを考えると、OGLなサプリメントやアドベンチャーを作るにしても、日本語を使いたいですぅ。

幸い、OGLは派生物の翻訳を認めているので、OGCとして提供されているものを日本語に翻訳して提供するのは権利的にもクリアー……だけど、ここでひとつ注意したいことがあるですぅ。

それは、“第5版”でOGCなのは英語で書かれたSRDのみであり、日本語版ルールブックはOGCではないということですぅ。

つまり、SRDを引用し、そのときに和訳するのは(それが商道徳上どうかという点はともかく)ライセンス上問題ないが、SRDの範囲内に相当する日本語版ルールブックの内容を引用するのは問題ありということになりますぅ。

それではよいOGLライフを

というわけで、ザッザッダアとOGLをどう使えばいいか紹介しましたぁ。以下は恒例の要約ですぅ。

  • Open Game License下のコンテンツ、Open Game ContentはOGLの条件を満たせば自由に引用できる。
  • OGCを引用した作品にはOGLを明記せねばならない。
  • OGCの範囲は注意書きやProduct Identityで制御できる。
  • SRDから引用するときの翻訳は(商道徳はともかく)問題ないが、日本語版ルールブックから該当範囲を引用するのはだめ。
  • “第5版”のサプリメントやアドベンチャーを作る場合、あの言葉やあの言葉は使えないのでよく確認すること。

というわけで、駆け足のOGL講座は終わりですぅ。これを読んだ人がOGLなサプリメントやアドベンチャーを作り、日本でもOGLがメジャーになってくれると、書いた者としてはそれ以上に嬉しいことはないですぅ。

宣伝

私のサークル、『うなぎむら』では、BOOTHでOGLなサプリメント、アドベンチャーをダウンロード販売してるですぅ。

また、5e.nekohaus.netでは、SRDをHTML化して公開しているですぅ。