2010年07月21日 「ぼくにも心はわからない。きみは間違ってたよ、ケイス。ここで生きるのも生きる事なんだ。違いなんてない」 [長年日記]
§ [DnD][4e][DarkSun] 『アサスという世界(The World of Athas)』
深紅の太陽の下に茫漠たる荒野とぎらつく都市、そこではぼろのサンダルを履いた英雄たちが古代の魔法と恐るべきモンスターたちと戦っている。ここはアサス(Athas)、ダーク・サン・キャンペーン・セッティング(Dark Sun)の世界、蛮性と荒廃が支配する死した惑星である。今回の『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング(Dark Sun Campaign Setting)』のプレビューで、我々は誰もが……彼らがその身分を望むかどうかに関係なく、その中のどれかに所属することになるアサスの社会秩序を紹介する。
『アサスは終わりのない荒れ野だが、そこには威厳と厳格に彩られた美しさがある。夜明けが鮮やかな緑で泥砂海を照らすとき、あるいは日暮れに橙色の炎がメキロット山脈(Mekillot Mountains)に広がるとき、世界の自然は美しく我々をの荒々しい心をかきたてる。それは槍や短剣を取れ、街を出よ、荒野に何が潜むか見届けよという呼び声だ』
――旅人の手記
第1章:アサスという世界
砂、岩、太陽、焼けつく暑さ――これらはアサスをに満ち満ちている要素である。世界に住むあらゆるものは常に食料を手に入れ水を得るために動いている。狩人は毎日良い得物を見つけられずに過ごすかもしれないし、牧人は彼らの家畜を放牧するのに適した土地を転々としなければならない。アサスの知られている土地すべてで水は不足し、人々は命をつなぐ井戸や泉の所有権という富へ近づくものを用心深く排除する。
都市の住民は砂漠に住む遊牧民や村人よりはまともな生活を享受しているが、それには大量の労働者――彼らの多くは奴隷である――が農場で都市の人口を支えるために苦役をする必要がある。強大で邪悪な魔王は都市国家を支配し、反乱を押さえつけて長年にわたり君臨している。貪欲な貴族、腐敗した聖堂騎士、冷酷な商人、そして乱暴な兵士たちの群れが魔王の支配から利益を得て支持するかたわら、一般人は不当な法と過酷な税の重圧に苦しんでいる。奴隷は彼らの苦役と引き換えに明日の食料と水を得ることでしか生き残ることができない。大部分の人々にとって、生きる事は荒れ果てた荒野で苦労して生き残るか自由を売って他と比べれば安全な暴虐の都市国家に住むかの選択である。
これがアサス、冷酷と暴虐の世界である。それでもそこは未開の美と蛮性の輝きに彩られた――英雄たちの世界――だ。
『ダーク・サン・キャンペーン・セッティング』の第1章ではアサスとその地の英雄たちを探っていく。それは以下の項目を含む。
- アサスの英雄たち(Heroes of Athas):この無慈悲な世界を旅する勇猛果敢な英雄について。
- アサスの文明(Athasian Civilization):アサスの文化、政治、そして経済の概要。
- 力の秘密(Secrets of Power):歴史、魔法、そしてその他の学問を学んだ者だけが知ることがら。
社会秩序
都市国家の城壁の中、あらゆる人は社会秩序の中で特定の身分に属している。魔王が支配し、貴族と聖堂騎士――支配者に仕える司祭や戦士――がそれを支える。商人と職人は、彼らが雇った戦士と同様、物乞い、農民、牧人、そして労働者たちよりは少し高い身分を享受する。奴隷は社会で最も低い身分で苦役をし、彼らは強制労働、見世物の闘奴、または単なる生贄にその一生を捧げる。
一方、村や荒野の遊牧民の部族に所属する者は自由と能力を重んじており、彼らは、これはおそらく正しい認識だが、都市の住民には両方が不足していると思っている。(もちろん、非常に大きな部族は首領や他の者より多くの富や地位を持つ構成員もいる。)だが、自由につけられた値段は高い、アサスの荒野では井戸を使用する権利すら危ういのだ。
魔王(Sorcerer-Kings)
魔王は大昔に得た妨げるものがない秘術の力でなりあがった都市生活の中心を支配する者である。ティア(Tyr)を除くすべての都市国家を、数世代に渡って支配し続けている。すべての魔王は恐るべき冒涜者(Defiler)であり魔法を使って彼や彼女の不死にも近い命を維持している。いくつかの都市――特に有名なのはドラジ(Draj)やグルグ(Gulg)――の人々は魔王を神格化している。支配者への崇拝と服従は通常の場合義務であり、聖堂騎士はこの国教を強要することが責務である。
彼か彼女の都市で、その魔王は絶対の権力を持っている。ほとんどは媚を売る官僚と威圧的な衛兵によって警備を固めた宮殿におり、高位の側近と用心深い護衛の行列を連れずに出てくることはめったにない。王の力なくして、一般市民が守られ、与えられ、保護されることはない。魔王は神経質に秘術魔法の秘密を守っており魔法使いの競争相手が彼らの都市に存在することを許さない。
『ダーク・サン・クリーチャー・カタログ(Dark Sun Creature Catalog)』より:
グルグの住民は他のどの都市国家に住む市民より幸福で満足しているようだ。“森の女神”ララリ・ピュイ(The Forest Goddess Lalali-Puy)、彼ら最愛の酋長、は彼らを敬意、感謝、そして愛という鎖で結びつけた。
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聖堂騎士(Templars)
魔王の権威を直接執行するのが聖堂騎士である。司祭、官僚、そして弟子といった彼らの支配者に忠実な者だ。魔王は彼や彼女の都市を守り育てることができるが、聖堂騎士は日々に必要な、法の執行から礼拝までを管理する。聖堂騎士の一部は彼らのあるじに与えられた魔力を使うが、たとえ彼らにそんな力がなくとも、すべての聖堂騎士は魔王の意思を執行する。彼らは法を破った者を罰し、お気に入りの市民に対する告訴をもみ消し、彼らが苦しめたい人々を拘留して虐待し、そして国のために物資を略奪することができる。彼らは一般人に恐れ嫌われており、どんな都市国家でも、聖堂騎士の組織は腐敗と裏切りが満ちている。彼らがどんなに問題を起こしたとしても、魔王は聖堂騎士が起こす問題にほとんど介入しない。
貴族(Nobles)
アサスの社会での貴族はふつう魔王から与えられた世襲の称号に従って農地や水の管理をする。彼らは自分たちの財産を維持するために私兵を雇って秩序を維持し必要ならば侵入者を撃退する。多くの貴族の家は労働者、兵士、そして闘奴用の大きな奴隷小屋を持つ。貴族同士の競争は、貴族と聖堂騎士のものと同じくらい多く、激しい。いくつかの都市では、貴族の家長は魔王に助言をする評議会を作る。いつでも、あるじが一声発すれば財産、生活やその他を、貴族は没収されることがある。
商人(Merchants)
アサスの商人は豪商、交易民、そして独立商人(または、後述する自由民)を包含する。
豪商(または、商家と彼らはしばしば呼ばれる)は自由民の身分で大商店、物資取引を行なう出張所、そして都市国家から厳しい荒地を通る通商路を経営する者たちである。彼らは都市の市民ではなく通常の権力構造から外れているが、彼らの富と影響力はもっとも有力な貴族のそれに拮抗する。商家はそれぞれ家族や商人仲間と小規模な護衛の兵士と奴隷で商品を別の土地へ移動させている。勇敢な砂漠貿易商や大きな隊商はあちこちに商品を運ぶ。豪商はさまざまな都市国家で大商店を経営して特権への見返りとして魔王に税を払う。最も貪欲な聖堂騎士でさえ適切な理由なくして商家の一員をわずらわせるようなことはしない。そうすることは聖堂騎士ひとりの個人的な優位どころか都市国家全体の繁栄を危険にさらすのだ。
交易民は商家によく似た流儀で商売をする。多くのエルフの部族はこの種の商人である。いくつかは商家と同盟するが、他の者たちは強大な豪商と争う。商家と違って、交易民はめったに本部や出張所を作らない。その代わり、彼らは永遠の隊商として旅をしながら、あらゆる土地で売買をする。
交易民の市――特にエルフが行なうもの――は違法物品や珍品とめぐり合う良い機会である。そのような市場は他の方向にも後ろ暗いと評判で、見かけ倒しの品を売り、信頼を得て、すっかり奪いつくしてしまう。商人の部族は聖堂騎士たちが詳細な調査を行なうかもしれないことをあまりに多く行なうことは避けようとする。共同体がある部族と過剰に対立したとき、部族は移動して数年その場所を避ける。
奴隷(Slaves)
奴隷は都市人口の大きな比率を占める。いくらかは奴隷の身分として生まれ、他は奴隷商に襲われて捕らえられ売られた部族の民や村人である。聖堂騎士や貴族も債権者や犯罪者を奴隷身分に落とす権力がある(彼らを奴隷にすることがあまりに危険だと判断される不穏分子は処刑されるが)。
裕福なアサスの民は財力を誇示することも兼ねて安価な労働力として奴隷を持つ。多くの奴隷所有者はやっていることについてほとんど良心の呵責がなく、他人を奴隷にしたほうが彼らが自由のまま飢えているよりはよいと主張する。奴隷の扱いは彼が使えるかどうかと彼のあるじの財産による。信頼できて忠実な奴隷はよりよい扱いを受ける。裕福なあるじはしばしば彼らの奴隷を使い捨てるが、より貧しいあるじは彼らの出費を気にして奴隷をより気にかける。高潔な人々はたまに奴隷制を終わらせるか少なくとも標準的な適切な処遇を保障すべきだと改革運動を行なうが、奴隷たちに冷淡で残忍にあたるのは当然のことである。多くのアサスの土地で、奴隷の命はあるじのもので、彼らは望むがままにそれを殺すことができる。
それぞれの奴隷は彼や彼女の才能に合わせた居場所を与えられる。ほとんどは農民、作業員、召使いである。戦闘能力に優れているなら兵士や闘奴になる。(再興の兵士奴隷は生まれたときからそのために訓練されている。)いくらかの奴隷には家族の楽人か道化として目をかけられる才能を持つ。手に職のある奴隷は快適な生活を楽しめるが、彼らは常に寵愛を失う危険にさらされている。ほとんどの奴隷は長く続く自由を得られない。
自由民(Free Citizens)
聖堂騎士、貴族、商家の配下、さらに奴隷でもない都市住民は市民である。独立商人と職人がこの身分の大半である。
傭兵、吟遊詩人、モンク、司祭、サイオニック能力者、そして冒険者や他の普通ではない力を使う者もここに分類される。気まぐれな聖堂騎士や貴族が彼らを有罪と言っていないときだけ、彼らは自由である。そうされたとき、自由民は奴隷になる。だが、この運命は通常の場合力のない市民だけに降りかかる。彼らはたったひとりの奴隷を得るために数人の兵士を失う危険を冒したくはないので、自衛できる者は聖堂騎士によってめったに悩まされない。
村人(Villagers)
容赦のない砂漠に、村は価値のある資源、重要な交易の拠点、または防衛の要衝くらいにしか存在しない。鉱山の村、略奪する部族の拠点、そして商人の取引所はすべて村と考えられる。自治村、特にそれらが脱走奴隷や特定の種族によって建設されたところは、混沌とし、多彩な場所である。彼らには強いか魅力的な指導者がおり都市国家では顔をしかめられる行ないを許可する(たとえば原始の魔法を使うこと)。もちろん、荒野の危険が訪れれば、どんな村でも消えたり一夜で捨てられる。
いくつかの村は鉱物や食料といった資源を提供するために都市国家、商家、または貴族によって運営される荘園である。荘園は創設者によって税のかけ方(そしてそれによる抑圧と腐敗)が異なる。これらの場所は自治村より秩序だっている。どこも有能な地頭が、常備軍、そして呪文使いかサイオンを護衛としている。
放浪民(Nomads)
移動生活をするあらゆる人が放浪民と考えられる。彼らは資源を追って移動する。一部の放浪民の部族や一団は多様な種族で、他の者たちは単一の種族である。いくつかの部族は後援者、たとえば都市国家からの支援を享受(そして労働を提供)しているが、ほとんどは独立して放牧、狩猟、または略奪によって生き残っている。ある部族はこれらの方法すべてを行なうかもしれない。
移動しながらの生存は簡単ではない。一部の部族、特に略奪者によるそれらは、彼らが定住した土地の住民や旅人から必要なものを略奪することに躊躇しない。奴隷の部族は彼らを支配していた遠くの都市国家の財産や商隊をゲリラ戦で襲撃し、そして野盗は彼らより弱いとみれば誰からでも奪う。他の部族――牧人、狩人、商人、またはごみあさりによるもの――は盗みをするより取引を行なう。惣村のように、放浪民の部族は武に秀でるか魔法が使える強力な指導者がいる。伝統的に魔法の使用が禁じられていないかぎり都市国家の境界内での殺人など、権力に反抗する行ないとともに、ほとんどの放浪民はそれを黙認する。
隠者(Hermits)
選んでか命令によってか、隠者は荒野で孤独に生きる。そういう者は通常ひとつの場所に住んで土地が与えるもので生き残る。彼や彼女の家は隠され、それは水源の場所でもある。
一部の隠者は通りすがった旅人と接触したがらないが、他は無害であるか役に立つかもしれない来客を歓迎する。多くの隠者は社交辞令を忘れてしまった愛すべき変人だが、一部は狂っているかまぎれもなく危険である。少数は本当に聡明であったり力を持っており、これらの隠者は秘密を共有するに値する――充分な埋め合わせができるのならばであるが。
月曜日の予告:お前が学ばない限り、最良の判断はお前が出会う者すべてがお前から奪い、お前を奴隷にし、お前を食うと思うことだ。