ネコぶんこ


2010年08月31日 「――しかし我我は糸に絡め取られている。巣から逃れて客観視することは出来ない。だから、我我は地道な行為を丹念に繰り返し、内側の糸へ内側の糸へと徐徐に場のレヴェルを上げて行くしか、中心に至る道はないのだ――」 [長年日記]

§ [DnD][4e][DarkSun] 『アサスの地図:ティア(Atlas of Athas: Tyr)

アサスの文明に残された場所は峻険な残響山脈と不毛の泥砂海に挟まれた広大な平原と砂漠である。この広い地域で最も古い都市の周辺がティア地方(Tyr Region)――今日のダーク・サン・キャンペーン・セッティングプレビューで紹介する地域である。

最近、ティアは近隣への影響力や強大な力を失っている。(実際、ティアは動乱に手一杯で、現在は非常に弱体化している。)この地方の国境地方の向こうには荒涼とした荒野が広がっており、一部の者はティア地方がアサス最後の生活できる土地であると信じ、世界に残っている人々すべてがここに住んでいると思っている。

『残響山脈と微砂の海の間で、旅人は隠者、スリクリーン、放浪民の部族、孤立した村々、そしてアサスにまだ残る7つの都市を見つけることができる。人は全ての種族とクラスの人々に出会える。ヒューマンの貴族と奴隷、エルフの野盗、ハーフジャイアントの傭兵、そして非常に珍しいハーフリングの旅人にさえ。この地方はアサスのるつぼで、そこで異なる文化を持つ多くの人々は融和か衝突を強いられる』

――旅人の手記

魔王は誰もが覚えているほど非常に長い間ティア地方を支配していた。数世代に渡り、誰も彼に力で挑むものはおらず語らうものもいなかったが、最近になってティアの魔王、カラク(Kalak)が槍に貫かれすべては変わった。カラクの死とティアの開放は新たな時代の一歩で、長年脅かされることのなかった玉座を揺るがせた。ティアが自由を手にしたという噂は野火のように七都市(the Seven Cities)へと広がり、革命の思想が彼らの領地まで広がらないことを望む魔王たちに考える時間を与えた。

まず、ダーク・サン・キャンペーン・セッティングの第5章では砂漠のあらましを説明する。すべての砂漠がただ砂だけで成るわけではない、この項では世界の大多数を占める地形と状況についての導入を行なう。

次に、この章ではアサスの中でも特記に値する場所を紹介する。これらには、ティア(Tyr)、バリク(Balic)、ドラジ(Draj)、グルグ(Gulg)、ニベネイ(Nibenay)、ラーム(Raam)、そしてウリク(Urik)からなるティア地方の有力な都市国家群、七都市も含まれる。ティアについては大幅に紙幅を割いて記述しているが、それは現在の状況が世界を変革する方法を探す英雄たちに多くの機会を与えるからである。

さらに、この項では二枚舌湾(Estuary of the Forked Tongue)、尾根森(Forest Ridge)、象牙の三角地帯(Ivory Triangle)、残響山脈(Ringing Mountains)、王たちの道(Road of Kings)、泥砂海(Sea of Silt)、南方荒原(Southern Wastes)、砂舞台(Tablelands)、そして西方後背地(Western Hinterlands)など、ティアに近いアサスの主要な地勢を解説する。

ティア

「本当か? カラクは死んで? 奴隷は自由だと? 通りでは魔法が荒れ狂ってる? わしらは十分に知っているわけだが、にわかには信じられんわい」

――さすらいの隠者、シャーヒーン

アサスに住む者のほとんどが知るかぎり、ティアは常に存在していた。確かにそこは砂漠の時代(Desert Age)を通して存続し、魔王が失墜してさえも、これから何世紀も生き抜いていけるように見える。そして、そこは長い歴史のなかでずっと奴隷制のある都市国家だった。

しかしすべては変わった。

他の都市国家の宮廷では、カラク王が倒されたという噂はささやかれるに留まるが、ティアでその影響は、通りのあちこちにあふれ出ている。多くの者がカラクの後釜に座ることをたくらみ、聖堂騎士や他の有力者たちは都市国家が自由を手にした人々によって無秩序の中へ崩れ去ってしまわぬよう腐心しながら争っている。貴族と商人たちは権力を求め、一般人と開放奴隷たちは公然と祝勝に酔い、そこかしこで街の権力者や身分制度について議論している。

ティアの概観

ティアはアサスを変化させる陰謀の火薬庫である。その黄金塔と封印されたジッグラトは比類なき驚異として多くの異邦人を驚かせる。

人口:市壁の中におよそ15000人、そしてティア谷(Tyr Valley)にある貴族の荘園と村にそれと同じくらい住んでいる。ほとんどは人間で、人口の3分の2を占める。ドワーフ、エルフ、ゴライアス、そしてムルが残りの大半を占める。

水:17基の公共井戸はティアの地底にある、かつては近くにある残響山脈の湧水だった、アサスで最も深く最も古い帯水層のひとつに達している。ティアの守備隊はこれらの井戸を公平に守っている。(他から圧力をかけられた)ティチアン(Tithian)はすべての市民に1日あたり片手で持てる桶1杯の水を得る権利があると布告した。この法の目をかいくぐろうとする者は追放される危険がある。都市国家の中には王の庭園や神殿騎士の区画などに、多くの私有井戸もある。

物資:多種多様な生活必需品は隊商区と商業区や、兎穴街にあるエルフの市場で入手できる。ティアの闘技場近辺ではほとんど毎日、寄せ集めの露天市が現われる。

防衛:カラクが倒れてティア軍のほとんどは解散したが、聖堂騎士たちは現在それをティア守備隊(Tyrian Guard)として再編している。カラクに仕えていた戦士、貴族の派遣隊、革命の闘士、そして開放された剣闘士と奴隷からなる不安定な混成部隊で、守備隊は常備軍として品質がまちまちな5000人の戦士を抱えている。司令官は傭兵だったザルカーというムルである。守備隊に加え、多くの貴族や商家は大規模な私兵部隊を手元に置いている。

宿と酒場:隊商区と商業区には30以上の宿と同じくらいの酒場がある。兎穴街にはもっと多くの放棄された建物などのむさ苦しい空間が、無断居住者の居場所となっている。

ティア人の“背景”

カラク王の圧制が突然終わりティアとその市民は混乱と混沌の中にいる。ティア人のキャラクターは新しい機会に恵まれている――新しい危険にも。

技能:〈持久力〉、〈事情通〉

言語:エルフ語

潜伏中の間者:ティアが新たに自由を手にしたことで七都市が驚き足りなかったということはない。他の魔王は自由都市へ情報収集と内紛工作のために配下を派遣した。君はそのような間者である。君はティア生まれだろうか、他の都市国家から来たのだろうか? 君は誰に報告する? 君は革命をどう見る?

解放奴隷:カラクが死に、ティチアン王はティアの奴隷制を非合法とした。君は自由になった何千人もの奴隷のひとりである。君は君の自由が続くと思うか? 誰が君を所有していた? 君は以前の主人についてどう思う?

分別ある貴族:君は自分の快適で特別な人生を楽しんでいたが、君は自分の財産が恵まれない人々の努力によって稼がれていたことを知っている。君は虐げられた人々を助けたいが、君は自分の地位を保ち弱者の守護者でなくてはならないのか、それとも君は貴族の権力と影響力を侵す同じ貴族と戦わなければならないのか?

革命家:君はカラクを倒すため彼の支配が続く最後の時まで戦った。君が彼子飼いの貴族を見張ったにせよ、奴隷に革命を説いたにせよ、革命の中心人物のために連絡員をしたにせよ、君は王の失墜においてある役割を演じた。成功した今君は何をする? 君はどんな秘密を学んだ? 君は都市国家で権力に抗っている集団と接触するのか?

ティアを歩く

ティアは高い市壁とともに残響山脈のふもとにある丘陵地帯、肥沃なティア谷の中ほどに位置している。数マイル先からも、旅人は都市国家の市壁を越えてそびえる巨大な尖塔である黄金塔を見ることができる。塔からさほど離れていない場所には、砂漠の太陽を受けて輝く、いくつもの色で彩られたカラクのジッグラト、れんが造りの階段状ピラミッドが壁より高くそびえている。市壁は乾いた砂岩製で、数世紀を経た時間と定期的な修理でなめらかになっている。ティアの向こうには、落陽季になると山頂にわずかな雪がきらめく残響山脈が城壁のように迫っている。

多くの旅人は都市国家に入城するため東の隊商門(Caravan Gate)を通る。この建物はひと組の大理石造りの扉で、どちらも20フィートの高さと同じくらいの幅を持ち、貴重な鉄のちょうつがいで止められている。中に入れば、隊商通り(Caravan Way)として知られる大通りが隊商区(Caravan District)を抜けて都市の中心に続き、商業区(Merchant District)がそびえたつカラクのジッグラトの下に広がる。対になる貴族街(Noble District)を形作るゆったりとした石造りの豪邸は隊商区の南北に伸びていて、周囲にある日干しレンガ造りの建物で構成される地区と簡単に区別できる。

一般人と解放奴隷は、ジッグラトから少し離れた北側で無秩序に広がる無計画な建物の寄せ集め、兎穴街(Warrens)で肩を寄せ合って生きている。犯罪組織は兎穴街をうろつき、弱者から略奪している。最近解放された奴隷によって建造された緊急避難所がジッグラトの北側にある職人街(Artisan District)に出現している。安全と水の便は職人街ほど確実ではないが、何人かの人々が毎朝兎穴街からここに訪れる。この地区は現在ティアの闘技場で開かれる不定期戦への出場を待ちながら訓練をする剣闘士たちによって倍の人口になっている。

闘技場はカラクのジッグラトと黄金塔の間にある。新体制のもと、彼らのひいきの選手を求めて喚声をあげる観客の声はちょうど毎月10日に聞こえる。残りの期間、闘技場には無秩序な市がなだれ込んで露天、天幕、そしてじゅうたんの上ではみ出し者の商人が無数の商品やサービスを扱っている。

ティアはずっとふたつの顔を持つひとつの街だった。一般人、(今は開放された)奴隷、そして貴族からなる、大きな街、そして黄金塔がしろしめすきらびやかな王の庭園に囲まれた小さな黄金都市(Golden City)。多くの市民の建物は塔を囲み、それに加えて穀物、鉄の鋳塊、水、そして武器を納める巨大な倉庫がある。さらに、黄金都市には高級官僚と神殿騎士が住んでいる。

黄金塔、ティアで最も荘厳な建造物は、珍しい金色の御影石で造られらせん状の通路で結ばれた何十もの部屋を持つ。近くには中心の塔を小さくしたような監視塔が建ち、急角度の橋でふたつの建物を繋いでいる。噂によれば、穢しの魔法で古代の精霊を黄金塔に縛り、攻撃を受けたときの備えとしたクリーチャーが残っているという。カラク王が倒れて以来、塔に入ろうとする試みはすべて失敗している。

最後に、都市の地下には下ティア、地下墓地をはじめとした2千年以上におよぶ都市建設史の残滓が地上と同じだけ広がっている。埋まった通り、つぶれた中庭、そして砕けた遺跡がティアの地下の闇に広がっている。地上の建物にある秘密の地下室はこの地下道と忘れられた街からなる危険な領域への通路となる。

ティアの闘技場

ティアの闘技場は黄金都市の壁とカラクのジッグラトの間にある。黄金都市の城壁の中ほどに、王と上位の神殿騎士のためにしつらえられた叡覧席がある。闘技場の反対側には、試合場からジッグラトの頂上まで続く大階段がある。カラクを戦神として描いたモザイク画が闘技場側の階段を飾っている。

観客席の下にある空間は牢と通路で繋がれた迷宮で闘技場で試合場に出ることを予定された囚人とモンスターを閉じ込めている。闘技場の北側から市壁の闘技場門(Stadium Gate)までは大通りが延びている。この門には大きく口を開いた竜のような彫刻が施され、試合場で戦うまで牢に閉じ込められる山や砂漠で捕獲されたモンスターを搬入するのに用いられている。

試合の興行主は高位の聖堂騎士で、毎月10日と祝祭日に試合を行なう。試合への参加は自由だが、実際はほとんどの参加者が、剣闘士を後援する貴族や商家といった資金源を持っているか費用を自弁する本職である。闘技場で戦わせるために奴隷が使われることはもはやない。死はカラクが支配していた頃よりはるかに珍しく、今ではほとんどの試合は剣闘士が降参するか試合が続行できないほど傷ついたら終わる。どんな剣闘士でも倒れた相手にとどめの一撃を行なえばティアから追放される。だが、砂漠のモンスターとの戦いや野生の敵との戦いでは常に死の危険がある。

試合がない日、闘技場は即席の市場として雑多な露天、革の天幕、そしてじゅうたんが並んで商人が商品とサービスを売る場所として利用される。売り手は彼らの並べるものが荷車2台分より広さを取らなければ場所代を払う必要がない。ティチアン王は解放奴隷たちの圧力によって元奴隷たちが負債を抱えることなくサービスを提供できるようこの布告を行なった。

闘技場での戦い

プレイヤー・キャラクターは1試合ごとに参加費の25gpを支払えば闘技場の試合に参加することができる。彼らは戦闘、競争、もしくは障害走の個人戦か団体戦に参加できる。君は闘技場の試合を通常の遭遇とまったく同じように、クリーチャーとその他脅威のレベルをパーティのレベルの4レベル以内にして作成する。試合に勝って得られる賞品は通常の遭遇を解決して得られる財宝より2レベル低いものになる。

月曜日の予告:『かすかなそよ風が積もった銀の砂を舞わせて表面を霧のようにする。たちこめた塵と空の間がわからなくなり塵の水底となる。風がより強く吹くとき、しばしば泥砂海は沸騰する塵の雲海となり、そのへりは深紅の太陽に染められる』

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