ネコぶんこ


2012年01月19日 「売ることを目的にゲームを作るなんて、考えたこともなかった。いつも、自分のしたことが売り物になっていただけなんだ」 [長年日記]

§ [DnD] 『RSD(ライアン・S・ダンシー)による第4回――『Escapist』補足コラム(4 Hours w/ RSD - Escapist Bonus Column)』

As many of you know, the Escapist has recently run a 3-part series on the past, current and future of Dungeons & Dragons. The ENWorld coverage begins here.

4 Hours w/ RSD - Escapist Bonus Column - EN World: Your Daily RPG Magazine

多くの読者がご存知の通り、『Escapist』は最近『ダンジョンズ&ドラゴンズ』の過去、現在、未来について3回の連載を行った。ENWorldでの紹介はここにある。

私はそのコラムでいくつかの意見を述べたが、これを機にこの話題についてより詳しい意見を表明したい。

私は誰でしょう?

私ことライアン・ダンシーは、最初期のオンライン通販ゲーム店、RPG Internationalのオペレータとして、1993年からゲーム出版に仕事として足を踏み入れた。私はRPG Internationalで仕事をしているうちにLegend of the Five Ringsを開発して著作権を持ち、後にFive Rings Publishing Groupとして独立し、1997年にウィザーズがTSRをそうしたように、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストに買収されるAlderac Entertainment Groupのチームと出会った。私はかつてウィザーズに在籍し、トレーディング・カード・ゲームのブランド・マネージャ、および『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のブランドとビジネス部門で指揮をし、2001年の始めに別会社を設立してオーガナイズド・プレイのサービスを立ち上げるために離れ、2003年にはそれを段階的に縮小し、CCPのチーフ・マーケティング・オフィサーとして2003年までコンサルタントを務めていた。現在の私は新世代のファンタジーMMOを開発するGoblinworksのCEOである。

以上の背景を最初に説明しておく(繰り返しになって申し訳ない。これはこの連載で最初にこのコラムを読む読者のためである)、これは私が長年この業界を間近で見てきたことを前提に、いくつかの考えを共有しておきたいと感じたからである。

テーブルトーク・ロールプレイング・ゲームという趣味の縮小

いくつか単純な数値から始めさせてほしい。

1995年、私はLegend of the Five RingsのCCGについて事業計画を作成した時、私は当時の常識に照らし、北米市場にはおよそ5000店の専業ゲーム店が存在すると仮定した。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストに就職した1997年、私はウィザーズが(あれほどの仕事をした後に)およそ2500店しか把握できていないことを知って驚いた。それに加えて、そこには2500~3000店のゲーム製品、D&Dを含むほとんどのTRPGを扱う書籍小売店があった。

現在、私に集めることができた最良の情報によれば、ゲーム専門店は1000店未満、低く見積もれば500店ほどである。

それらの書籍小売店のうち、B. Daltonは無くなった。Waldenbooksfは破産した。Bordersは破産手続き中。Barnes & Nobleも青息吐息だ。現在、それらの書籍小売店はわずか1000店(717店はBarnes & Nobleの店舗)しか残っていない。D&D事業は長い間その50%を書籍小売店で売っていたのでそれは意味深く、それらの店が失われたことはD&D(や他のTRPG)にかなりの直接的打撃を与えている。

1994年に私が初めてGenConに参加した時、ショーの参加者一覧には多くの企業名が並んでおり、それらのほとんど(あるいはすべて)がテーブルトークRPGを売っていて、1名以上のTRPGデザイナ/開発者を正社員を雇っていた。Atlas Games、Chaosium、Dream Pod Nine、FASA、Game Designers Workshop、Heartbreaker、Hero Games、Iron Crown Enterprises、Mayfair、Palladium、R. Talsorian、Steve Jackson Games、TSR、West End Games、White Wolf、これ以上にも残念ながら私が省略せざるをえなかった会社があると思う。

それらの会社に加え、ひとりかふたりでこれから仕事を始めようとした綺羅星のごとき小出版社、パートタイムでTRPGのデザイナや出版をしている人、そしてこれらの会社の周囲をにぎやかにする、TSRから来るデザインの仕事で収入の重要な部分を得ていた(百人はいただろう)フリーランサーたちもいた。

この業界に関わる人の多くが、1994年から1999年にかけてTRPGが非常な苦境に立たされていたことは知っているだろう。コレクタブル・カード・ゲームとゲームズワークショップというふたつの趣味が台頭し、TRPGからデザイナと売り上げが吸収されていたように見えた。この問題でもっとも大きな兆候はTSRのビジネスが破綻し、1997年にウィザーズ・オブ・ザ・コーストに取得されたことである。

私はその苦境をもたらした原因の大部分は単に大量の製品が出版されすぎたことに因るものだと考える。ゲーム、背景世界、そして“統一規格”の激増で、TRPG市場は全体的な収益がほぼ一定だったにもかかわらず、製品や会社ごとが挙げていた収益はより細かく(製品と会社に)再分配され、利益率は落ちた。

第2の主因は卸売業者の整理統合だった。私が1996年にLegend of the Five Ringsを売り込んでいた頃、最初は北米の卸売業者50社ほどを収めたリストを我々は持っていた。10年後、そのリストは1ダースほどに縮小した。事実、市場のあらゆる卸売業者は1990年から1999年にかけて売却されたか廃業し――TRPGの卸売販売網を築いた人々はそこから離れてCCGビジネスで再起した。

この動きはTRPG出版社に予想外の影響を与えた。1990年代初頭以前はあらゆる卸売業者は多忙で、いつもTRPG出版社へ大量の製品を発注して倉庫に在庫を準備して小売業者からの発表を待っていた。業界の慣例では卸売業者が出版社への支払いを行なうのは商品受領の30日後だった。この金銭の動きは――彼らが印刷した本すべてが売れるまで待たなくても、彼らはすぐに売り上げを得て、売れるまでに時間がかかる危険は卸売業者が負うことになり――出版社を支えた。さらに、すべての卸売業者は予期しないヒットへの保険として、彼らが実際に売りさばくより10%ほど多く発注する傾向があった。卸売業者が整理統合された時、出版社は突然売り上げと現金を相当な量失った。10%×50社分、本は水増しされていた。そして残った卸売業者は在庫に対する先払いを廃止して“委託販売”への切り替え――つまり、彼らは製品が売れてから支払いをし、危険を出版社に戻したかった――求めるなど、財務体制を強く引き締めた。

1997年末にウィザーズ・オブ・ザ・コーストでTRPGのブランド&ビジネス部門を掌握した時、私はリサ・スティーヴンスに業界の歴史で本当は何があり、我々は我々(すべて)が落ちていることに気づいた深い穴にどう落ち込んだのかを知ることができる市場調査を行なうよう依頼した。

彼女の調査で2つの基本的な答えが明らかになった。

1つは業界が作り出していた製品が高くつくようになりすぎたということだ。ボックス・セットは特に大きな問題だった。ボックス・セットとハードカヴァの本の価格差は、パーセントどころかしばしば倍になっていた。ハードカヴァとソフトカヴァの本も相当な価格差だった。事実、私たちはいくつかの目立ったD&D製品に希望小売価格よりも会社が高額を費やしている商品を見つけた! この問題は、多くの出版社がTSRと競争して“ついて行く”と意識した時から、業界の至るところに根を張っていた。しかしTSRは理性的ではなく、出版して利益を挙げるために要求されるものではなく、市場が払いそうなところを見て小売価格を決めていた。

この分野で、我々は“5のルール”と呼ばれている簡易的な価格設定の仕組みをしばしば使う。このルールで、君は製品の原価に5をかけることで、おおよその製品の価格を決定する。業界が使う3段階の流通制度を考慮に入れると、その結果は最終的に小売価格が以下の配分になることを示唆している。

  • 20%:製品の原価(生産の生産に関わる費用に加え、仕事をした人々に払う賃金やライセンス、ロイヤリティ)。
  • 20%:出版社の粗利(つまり、月給のような追加費用、マーケティング、賃料を差し引く前の利益)。
  • 20%:卸売業者の取り分(卸売業者が得る粗利)。
  • 40%:小売の取り分(小売業者が得る粗利)。

これは原価が1ドル上がるごとに小売価格が5ドル上がることを意味する。TSRがやっていたことのひとつとして、製品原価に10ドルを加えても――50ドルを小売価格に反映させなければいけないのに――簡単にそれらの製品の多くを100ドル以内に抑え込んでいた。その代わり、TSRはこれらの製品が1つ売れるごとに赤字を増やしていた。そしてその情報はTSRの機能不全を起こした経営情報システムによって隠され、それらの製品を製造していた人々は知るよしもなかった。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストにより取得されて“現実の数字”を見るまで、彼らは何が起こっているか理解していなかったのだ。

リサのデータが我々に明らかにした第2の問題は、我々がD&Dの第3版を市場に問う時に我々が行なうあらゆる決定を形作った、TRPGビジネスについての考えを前進させるものだった。

我々はネットワークを作る効果があるものが特級のTRPG製品とサービスになると理解した。我々の場合、もっとも影響を受けた大きな衝撃は、ネットワーク性の概念だった。TRPGの場合、君が買う書籍やボックスに“適正価格”は存在しない。君がゲームをプレイできるかどうかは、君が所属する社会的な繋がりのネットワークに依存する。その社会的ネットワークを抜きにすると、ゲームの価値は非常に低下する(それは文芸になり、それらをもっぱら読むだけでTRPGのコンテンツをプレイすることのない人々の小さな市場は存在する)。

我々は市場をある製品シリーズの(コア・ルールを頂点に、時が経つにつれ出版されるサポート製品によって裾野が広がる)ピラミッドから、互いにつながっている人間関係の網として市場を見始めた。それらの網が強固なところで、製品は成功していた。それらが弱かったところで、製品は失敗していた。TRPG市場の成長と強度を規定する因子は小売店や店の占有度ではなく、これらのゲームに参加しあうことができる頭数だった。

全体を覆う社会的ネットワークが弱かったため、多くの場合その頭数は分割されていた。あらゆる新しいゲーム・システム、そしてそのシステムへの新しい選択ルールは、さらにそのネットワークを分断し、弱くした。1993年から1999年にかけて、TRPGプレイヤーの社会的ネットワークは恐ろしくすり減らされた。それは君が『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のネットワークを見たとしても影響を感じられるだろう。人々はプレイするグループをBasic D&D、第1版、第2版、そして第2版にさまざまなキャンペーン・セッティングを足して彼らだけの別ゲームと化したものと、自分たちで分断していった。市場に対する影響は、開発と発売にかかる費用をまかなえるだけの充分なレイヤーを確保できず、作成や販売がどんどん難しくなるというものだった。

私たちは業界を広く見て成功したように見える会社がすべて実質的に同じ問題を抱えていることを知った。ホワイト・ウルフはわずかに異なるワールド・オブ・ダークネスのゲームを5つ抱え、その周囲にストーリーテラー・システムと関連はあるが互換性を持たないより多くのゲームを持っていた。FASAは4つのゲームを持ち、どれも共有するものを持っていなかった。PalladiumとSteve Jackson Gamesはいずれもあらゆる製品ラインで使おうとした“統一規格”を持っていたが、彼らはTRRを苦しめていた“キャンペーン・セッティング”問題に追い詰められていた。これらのゲームの強みだった選択ルールはコアのDNAが共通していたにも関わらず、独立したゲームのネットワークを作り上げていた。そして我々はそれらの会社がすべて、内部では我々が見ていたものと同じ財務諸表を見ていたことを知っていた。あらゆる新作の売り上げは少なく、少ししか刷られず、それに応じて会社は単位ごとの利益を上げるのではなく、次々と発売して1作ごとの利益でなんとかしようと計画を立てていた。それによってみんな死んでいった。

我々の分析はこの罠から逃れなければならず、D&Dは最低限でもただ1つの誰もが許容できるルール環境のもとにプレイヤー・コミュニティを統合しなければならないという結論に達した。さらに我々は1作ごとの収益性を上げるため、出版していた書籍の点数を大幅に削減しなければならなかった。1作が7冊売れるのは、2作で5冊売れるよりも文字通り望ましい。

その過程は我々がオープン・ゲーミング・ライセンスを助けて強化する刺激を与えるものとして、ゲーム・システムを一般的なコアとすることに繋がり、出版社が素晴らしい世界やクールなソースブックを最初に彼ら独自の自社製RPG(そしてそれは市場を分断化する)を作らなくても作成できるようにし、その結果、2000年の市場では創造力と収益による大変面白い大爆発が発生するのを見ることができた。

君が1994年のGenConで活発だった会社のリストを手に入れていても、君が2001、2年のGenConへ行くなら君はさまざまな新しい名前を加えなければならない。Alderac Entertainment Group、Decipher、Eden Studios、Fantasy Flight Games、Goodman Games、Green Ronin、Guardians of Order、Holistic Design、Kenzer & Co、Malhavoc Press、Mongoose、Necromancer、Pagan Publishing、Pinnacle Entertainment Group、まだまだ私が意図せざるに省略している幾多の名前がある。もちろんこれらの会社の多くはOGL/D20時代以前も活発で、D20製品を出版しなかったところも多いが、これらのすべてはD&Dの復活によって利益を得た。

さらにこれらの中にはロン・エドワーズ、ルーク・クレイン、そしてヴィンス・ベイカーのような専業のデザイナや出版側の人物が1~2人で行なっているいくつかの“インディーズ”RPG会社もあった。インディーズRPGという部分はどうやれば経済的に立ち行くかという問題に対して良質の助言や学習をForgeや他の小部数出版についてのサイトから受けていた――こうした動きは今日まで続き、大量生産される大作TRPGが決して狙えないニッチを狙った小規模なTRPGの独立出版を助けてきた。

こうした活動を担う中核となっていたのはいずれも1990年代に活動していたフリーランサーである――D20システムはこれが無ければ決して彼らのアイデアで金銭を得るための商業的なデザインに手を出さなかったであろう人々にそれを可能とさせ、彼らは既にフリーランスとして有名な出版社で創作活動をしている人々と歩調を合わせた。

GenCon 2003でTRPGは最高潮に達し、ウィザーズが第3.5版のD&Dを発売した。その直後にドミノは崩れ始めた。3.0と3.5の間にある非互換性は店に並べられた在庫の多くが“時代遅れ”になると顧客に思わせ、大幅な売り上げ低下と小売店が在庫を処分するための投げ売りという結果を招いた。売り上げの低下は新商品の発注現象を招き――小売店は彼らに多大な頭痛をもたらした市場により多くの金銭を投資することに臆病となった。

こうして当然の帰結として底を打った時、それでも第3.5版のプラットホームで業界を再編できる可能性はあった。

残念だが、それがその可能性へたどりつくことはありえなかった。

2004年末、Blizzardは『World of Warcraft』を発売した。テーブルトークRPG業界から面白い新参者と考えられていたMMO市場は突如爆発した。これまでもっとも成功していたゲーム(『Everquest』)が絶頂期に約40万の課金アカウントを擁していたのに対し、『World of Warcraft』は12ヶ月たらずでプレイヤー数100万人を上回った。2007年末までに、それは合衆国とヨーロッパで500万人以上のプレイヤーを集めた。すぐさま他社もその周りに集まり、急いでWarcraftの標準的なファンタジー以外のスーパーヒーローもの、サイエンス・フィクションもの、サイバーパンクもの、そして歴史軍事ものを提供し始め、新興市場は『World of Warcraft』の周囲で急速に成長した。それらはまさにTRPG市場が基盤としていたものだった。

さらに(TRPG市場にとって)悪いことにMMOも若年層を求め、TRPGとは違う方法で彼らを引き寄せた。特にClub Penguinは若年層をゲームに引き寄せることが巧みで、ディズニーは7億ドルでそれを買収し、発表によればそれを3000万人以上の子どもたちがプレイしている。

TRPG業界は突然2つの痛手を受けた。ネットワークがとらえていた多くの人々がTRPGのグループを去ってMMOに集中した。そして毎年新規プレイヤーを生み出す獲得機構に代わって、若年層は小さな頃からTRPG製品よりもMMOに親しみ、おそらく彼らが成人してからも持続ふるプレイの形式を確立している。

現在、TRPG市場への影響は目に見えるものになっている。GenCon 2011で、TRPGゲーム・デザイナやデベロッパを常勤で抱える会社のリストは短くなった。Alderac Entertainment、Kenzer & Co.、Fantasy Flight Games、Margaret Weiss Productions、Mongoose、Palladium、Paizo、Steve Jackson Games、White Wolf、Wizards of the Coastそして、ひとつふたつの小規模な“インディーズ”出版社である。リストから消えたのは1994年と2001、2年で成功していた会社の多くで――業界からはそれらの会社がフリーランサーを養っていた仕事も失われていった。

それらの会社のいくつかは彼らの親会社の副業として出版を続けている。Green RoninとPinnacle Entertainment Groupはその代表例だ。しかし私にとってそれは――失敗(あるいは事故)が許される範囲は、カミソリの刃のように狭い――非常に不安定な立ち位置に見える。

そして、縮小は続いている。ウィザーズ・オブ・ザ・コーストやホワイト・ウルフは、数人のデザイナを解雇した。Hero Gamesは常勤社員がいなくなったと発表した。カタリストの問題は彼らがFASAから受け継いだTRPG事業の維持に手間をかけられないことを示している。

我々には原因がわかっている。MMOの隆盛、小売店の崩壊、そして卸売業者の統合。そして我々は影響を見た――失業、会社の閉鎖、そして多数の顧客を率いて新規参入する出版社がほとんど失われる。

どう結論づける?

私の見解はこのゲーム業界が非常に小規模なニッチ向けビジネスに変化しつつあるというものだ。それは主にTRPGを彼ら生涯の趣味とする老化していくグループの欲求を満たす。それらのプレイヤーが年を取ると、彼らは商業的に発売された製品によるサポートがどんどん必要になくなっていく。彼らはその代わり、彼らを常に直接結びつける社会的ネットワークは擦り切れ、趣味を続けるのを助けるためにコミュニティを支える道具を求めるようになるだろう。

『Escapist』の記事では、私がこの仮定を鉄道模型趣味の展開のようだと語ったと伝えられている。私がよりはっきりとこの変化について表明できるのは(鉄道模型の場合のように)高価格化はないが、その代わり効果的にTRPGへ新規プレイヤーを獲得する仕組みが無く、MMOという要因もあり、継続的にTRPGの社会的ネットワークは減少傾向になるということだ。

これらの問題はいずれもTRPG業界の構造的問題ではなく、外的要因によって引き起こされるもので、直接それらに対して行なえることはわずかしかない。

将来の道

デジタル

この趣味の将来について多くの人々が抱く展望は、ヴァーチャル・テーブル(VTT)である。これは明らかなことで――MMOがTRPGの社会的ネットワークを破壊しているなら、反撃する方法はMMOの領域でTRPGを行なって分散型のオンラインプレイを可能にすればよい。

問題はVTTが既に存在し、それらが成功していないことだ。君が人々にVTTとMMOを選ばせるなら、彼らはMMOを選ぶだろう。MMOの遊びは以前のTRPGの社会的ネットワークよりかなりよいものであるため、VTTは根本解決とはなりえない。私にいわせてもらえば、成功して広く使われているVTTはそれを成長させるのにどれだけの努力を注げばいいのかわからない蜃気楼のようなものだ。

これはTRPGの未来にデジタルの出番が無いといっているのではない。思うに、TRPGの流通を電子製品にしてしまうのは、ありうる進化の方向だ。これは印刷した本をPDF化することではなく――iPodのような技術で卓上の遊びを強化するためのデジタル製品を作るという考えで私は語っている。

家庭向けゲームへの転換

私はゲーム趣味を持つ人が実は実際のプレイよりも(少なくとも1人で)準備する時間を多く費やしていると定義している。TRPGの場合それは主にGMだが、しばしばプレイヤーもそうなる。この“ゲーム外での時間”はTRPGという環境が競争力を持つために克服すべき最大の障害となる場合がある。

私は将来の商業的に成功するTRPGはより家庭向けゲーム――箱を開け、すぐに覚えられ、予習無しにプレイできる――のように作られたものだと思う。これらのゲームは人々に“ロールプレイング”と同質の楽しさの多くと物語の操作を今日のゲーム趣味としてのTRPGよりわずかな時間的投資で与えている。ウィザーズやFantasy Flight Gamesは、既にこうした形のものを実験している。それは有益な投資で、かなり有望なビジネスが延長線上にあるようだ。

Pathfinder

私はPathfinderとそれが市場で果たすべき役割について書いて筆を置こうと思う。

OGLとD20計画の目標の1つに、1社では『ダンジョンズ&ドラゴンズ』を殺せないことを確実にすることがあった。TSRはその寸前まで達した。滅びる直前、それは借金の抵当としてD&D関係の著作権と商標を担保に入れた。TSRは遠からず破綻し、銀行がTSRの死体をめぐって争うおそらくとても長い間、誰もその知的財産を使うことはできなかっただろう。

OGL/D20計画は将来どんなD&Dの新版が開発されても、D&Dの第3版は存在し続けることを確実にした。未来に生まれるD&Dはこれを基準に評価され、市場が新版への変化を拒めば、旧版への商業的サポートがすべて終わるこれまでの世代とは違い、市場は彼らが望む版をサポートし続けることができるだろう。それはD&Dの将来の版に対する高い基準――人々が環境を自発的に変えるくらい、それは第3版よりよくなければならない――だ。

Pathfinderは多くのプレイヤーにとって(明らかに)第3版の衣鉢を継ぐゲームで、ウィザーズが見込んだよりも少数だった第4版への自発的移行が少なかったという事実から利益を得ている。

市場が縮小する時はいつでも、“大樹の陰”と呼ばれる現象が見られる。これは縮小する市場に残る人々が市場でもっとも成功したものの周りに集まり、彼らのビジネスを行なって崩壊を乗り切り、将来の拡大期に希望を繋ぐというものだ。これは今Pathfinderに起こっていることだ。D20システムが繋げた社会的ネットワークはPathfinderが継いだ。残りの市場がどんどん縮小する中、残りすべての人々を引きつけるTRPGのフォーマットであるため、Pathfinderはより拡大している。

Paizoはそのために、再出発に使えるエンジンを試している。今年(2011年)発売された『Beginner Box』は、TRPG市場がこの10年(おそらく20年)で目にする最高の入門用製品である。私はクリスマスにそれを手に入れ、今ごろは最初のTRPGを経験している子どもがいることを確信している。よくすればそうした子どもはゲームの時間の一部をMMOの仮想世界よりも卓上で過ごすことを決めるだろう。時間だけが答えを出す。

私はPathfinderが社会的ネットワークを修復不可能なまでに破壊しないようにするための、長く遊ぶ趣味人を乗せた方舟であると直感している。充分な人々が地域やヴァーチャルでそれをプレイして交流すれば、たとえ最悪の状況が訪れても(Barnes & Nobleが破綻し、ゲーム専門店が無くなっても)それそのものを支えるだけの勢いがあると私は考える。Paizoはそのコミュニティの形成に妥当なことをして統一市場を作ったが、これは統制できない群れに対する素晴らしい保険である。

D&Dはどこへ向かう?

私はより詳しくこのことについて話したい。残念ながら、私は現在それを不可能にする秘密の情報を持っている。私は読者全員と同じものを見ている――モンテ・クックがウィザーズ・オブ・ザ・コーストに帰還し、市場では第4版が商業的に思わしくなかったと考えられている。私は2012年にD&Dについてより多くのことを語らねばならないと思うが、それは将来のコラムを待つことになる。今のところ最後に私がいえるのは、私はD&Dが強いブランドとして返り咲くのはこの趣味全体にとってよいことなので、ウィザーズ・オブ・ザ・コーストで軌道修正しようと努力する人々を心から応援するということである。

――RSD/アトランタ、2011年12月

ダンジョンズ&ドラゴンズ興亡記:未来に意見を寄せていたライアン・ダンシーが、それを補足するものとしてENWorldにボーナスとして寄稿したコラムを翻訳しましたぁ。

大意は連載時のものに要約されているけどそこに至るまで体験したことや思考の経緯について、かなり詳しく説明がなされているですぅ。

§ [DnD] 1st Edition特別再販

Gygax Memorial Fundを支援するため、WotCから4月17日に1st Edition Premium Player's Handbook($34.95)、1st Edition Premium Dungeon Master's Guide($44.95)、1st Edition Premium Monster Manual($34.95)の三冊が発売されるですぅ(小売店向けリリース)。

本文、挿絵は当時のままで表紙のみ記念仕様(後日発表、現在のガイギャックスがゴブリンと戦ってる絵は彼を顕彰する本の表紙)となり、売り上げはGygax Memorial Fundがレイク・ジェネヴァに建造する“Father of Roleplaying Games”像の資金になるそうですぅ。

ただ、この限定版は北米のホビー流通限定商品になるから日本在住で手に入れたい人は向こうのショップからの通販が必要になりますぅ。

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§ Tirthika (2012年01月19日 23:19)

素晴らしい翻訳です。誠にありがとう。お疲れ様でした。

§ mizNepemicy (2012年05月03日 19:35)

Today is ethical ill, isn't it?