2012年06月13日 我々は命の一族を誘惑し、切り離して、世界の中で我々とともに住まわせよう。 [長年日記]
§ [DnD][4e] 2011年10月23日『“あの御方”=カッパ?』
エスペランザ(エラドリンのメイジ/ブララニ・ウィンターソウル12):冷気を支配する力をより研ぎ澄ました秘術使い。トリガーハッピー。プレイヤは荒原の賢者氏。
グスタフ・トラップ(ヒューマンのシーフ/パラゴン・シーフ12):速くて痛い弓使い。装甲は心許ない。バックスタブ人生。プレイヤは森聖氏。
セヴン(ドワーフのウォーロード/キャプテン・オヴ・フォーチュン12):斧を偏愛するドワーフ。死狂い。キャプテンにしてジェネラルなのでまぎらわしい。プレイヤは隠者氏。
イド(ハーフエルフのパラディン/クエスティング・ナイト12):迷える騎士。ブレーキにならないcompanion。主人公。
声をかけてきた老人を怪しんだエスペランザが〈自然〉判定を行なうと、彼はリッチであることがわかった。しかし、パーティ全員が〈看破〉してみても敵意はないようだし、何より老人が言った通りにゾンビたちが復活し始めたため、彼らは急いで浜辺を離れた。
老人は秘術でリッチとなった後も秘術の研究を続け、世を捨て放浪している途中で“貪る大渦”に呑まれ、もはや出るのも大儀であるゆえにとどまり続けているという。彼は久しぶりに秘術の話ができるエスペランザの来訪にいたく気をよくし、外界の話と引き換えに冒険者たちを岬の上にある自分の小屋に招いた。
名もなきリッチはエスペランザから外界の秘術がもはや九つの階梯に分かれていないことを知らされると、天を仰ぐ。
「そうか。わしがここに来てから、最低でも一度は宇宙の法則が変わってしもうたか」
そんな話をしながら、リッチもこの島についての説明をパーティに行なった。
この島は次元界の中心で、“貪る大渦”が己が財貨として貪ったものどもが漂着していること。それらはただの財宝だけではなく、先ほど浜辺にいたノルマンディなる戦場で呑まれた兵士たちのような存在もいる。ダンノウラという場所で呑まれたふたつの氏族の戦士は島の東で何百年も戦い続けており、北側にはこの次元界に適応したサフアグンが棲みついているということ。
しかも、性質の悪いことにこの次元界は魂すら財貨として束縛するため、ここで死んだ定命の者はあの浜辺にいたゾンビのように、アンデッドとして復活させられてしまうということ。
“霞の瞳”はメルズが身一つで逃げ出した後、サフアグンたちが回収して島の地下深くに棲む島長へ献上されたということ。
「島長?」
「うむ。わしより古い時代からこの島に棲みついておるドラコリッチである」
とはいえ、島長はこの次元界に漂着する珍品奇物を愛でるのを好む枯れた心の持ち主であるため、しかるべき交渉を行なえば宝石のひとつくらいは分け与えてくれるだろう。とはリッチの弁。
「宝石などこの島では石ころも同じ。普通に生きていれば決して巡り逢えぬ、ありえざるモノ、ありえざる知識こそが一番の財である」
彼はそう言うと久しぶりに秘術のことを語り合えた礼だと続け、エスペランザに魔法の矢弾の製法が書かれた書物を渡した。
リッチに一旦別れを告げると、一行は小屋からしばらく歩いて島長の座所へ続く洞窟へ踏み込んだ。破壊された船の竜骨や巨大な継ぎ目のない金属塊などが絡み合ったごみの山の間を縫うように、地下への通路が続いている。
光も届かず、そこかしこに海水が溜まっている地下までやってきたところで、パーティは天井の異変に気づいた。獲物を狙ってクローカーがはりついている。しかも行く手からはクオトアがやってくる上に、闇の中で光条が走り出した。
「入室確認完了。転送シークエンス開始します。スキャン中です、スキャン中です」
「なにこれ」
「漂着した宇宙船の転送装置が誤作動してて、吸い込まれたらひどい目にあうDEATHゥ」
「このKuo-Toa Warderっていうのは雑魚?」
「見た感じそんなに強そうじゃなくて槍持ってるDEATHゥ」
「時給750円って感じだ。後ろの方で槍投げるのが仕事の雑魚だろう? 時給750円くらいだよ」
「待機任務が続くことを考えると時給750円をたくさん雇用したくないなあ」
「じゃあ歩合制だ。槍ひとつ投げたら1000円。槍の本数で雇用主が給料をコントロールできる」
というわけで戦闘開始となるが、自給750円軍団は範囲呪文で散らされたため、前に出てパーティと戦っている現場監督をやっつけ仕事で槍を投げながら撤退。クローカーはグスタフの弓を受けたところを転送装置に吸い込まれ、厭な臭いを出す物体として排出された。
「吸い込まれなくてよかった」
「一番の敵は見境の無い機械だ」
クオトアたちを追い散らして少し進むと、継ぎ目も傷もない金属の壁がパーティの眼前に現われた。天井から声が響いて名と目的を訊ねられたので、冒険者たちは素直に従って名乗りをあげると、壁が中心から割れて中へと誘われる。
壁の中は一面が金属で覆われた部屋で、一段高くなっている場所に生気の感じられない暗い色の竜が気だるげに座っていた。周囲には用途のわからない装置や宝石、装飾品が乱雑に積まれている。
「久しぶりに世界が震えたと思ったら、新しい漂流者か」
「定住する気はありませんが。できることなら“霞の瞳”、あるいは代わりになりそうな宝石を譲っていただきたい」
眼前の冒険者たちを一瞥した時も光っていなかった竜の瞳が、その一言で輝きだした。
「そうか。私に頼みをしに来たというのか。だが、礼を欠くようだが諸君では私の相手にはならぬだろう」
「戦いたくはないですね」
「だが、ただ渡すだけというのも面白くなかろう。なにより私がな。ここは娯楽が少ない」
そして、私は公平なゲームが好きなのだ。竜が宣言して指を鳴らすと、地響きがして部屋の隅の壁が開いた。
「私の玩具で遊んでくれないか。娯しませてくれたなら、“霞の瞳”や、役に立ちそうな財宝を差し上げよう」
「相手は?」
「アルファ・コンプレックスとかいう地のコンピュータ……諸君の理解できる言葉で説明するなら、一種の人造である」
新しくできた壁の穴は中心に巨大な柱が屹立し、床が冷却水で満たされた半球状のドームへ続いていた。ドームの縁から柱に向かっては金網でできた通路が渡してあり、その上には全身をくまなく鎧で覆ったものが守護している。
島長の合図で戦いが始まった。グスタフは速攻をかけて鎧に矢を放つが、バックスタブを入れても決定打にはなっていなかったため元の位置へ戻る。鎧たちはそれを見逃さず、パーティが密集しているところにプラズマ球を投げつけ、中央の柱そのものであるコンピュータは浮遊砲台を射出し、パーティを狙い撃つ。
だが、パーティは密集陣形を解かなかった。
「お前らの飛び道具に数がないのは判ってる。二発目は捨て身の一撃、追い込まれるまでは撃てない」
「そこまで行ったら行動させずに殺してしまえばいいのだろう?」」
「さらに、お前らもコンピュータの傀儡に過ぎない」
だから、コンピュータを落とすまでにこちらが落とされない数だけ壊せばいい。この割り切りで、パーティはプラズマ球が切れたためパワー・ブレード・カタナを抜刀する機械兵たちと対峙した。
機械兵たちは次々背中のブースターに点火して突撃するが、グスタフはその場に落ちていた石を蹴飛ばし、機械兵の姿勢制御ユニットのセーフティを誤作動させてカウンターステップし、力場で鍔迫りができなくとも柄に衝撃を与えて軌道を逸らせるとスウィフト・パリィを決めてダメージを抑えていった。セヴンはその突撃を《一か八かの長柄武器》で迎撃し、エスペランザは浮遊砲台を呪文で叩き落す。
そして浮遊砲台を落として機械兵を最低限倒したところで、エスペランザは冷却水に飛び込み、マジック・ミサイルを連射。これが決め手となってコンピュータは沈黙した。
島長は大いに喜んでパーティに“霞の瞳”や他の財宝を譲った。さらにパーティはついでの依頼で洞窟のより深い場所を調査してスポーン・オヴ・キュスを発見したため、おまけの財宝として武器に力場を発生させるフィールド・ジェネレーターと、射出機構と鎖鋸がついたハルバードの穂、チェインズ・アンド・ディスチャージ・ヘッドを手に入れた。
パーティは島長に礼を言って洞窟を出たが、これで終わったわけではない。リッチにも別れを告げるとメルズが待つ銀髑髏号へ戻り、脱出の準備にかかった。
クラーケンの瞳を投げ入れれば次元界を騙して脱出のための導管を開くことはできる。しかし、そこで何が起こるかはわからない。まして、今回は財宝を盗んで帰るのだ。
意を決して世界の縁、轟音を立てて滝が落ちてくる付近でで瞳を投げ入れると、これまで落ちていた滝が空へと昇りはじめ、銀髑髏号はその流れに乗ろうとする。しかし。
天が哭いた。
無形の一撃が不埒者たちを打ち据え、天蓋からは半透明のぶよぶよとした腕が幾本も伸び、帆柱をつかんで離すまいとする。仄暗い水の底からはぬめりとした瞳が船に乗る者たちを見据え、狂気へと誘う。
これに対して船側はグスタフの矢が腕を撃ち払い、エスペランザはマジック・ミサイルが瞳を閉ざし、セヴンが指示を出して彼らを鼓舞する。そして帆柱一本を斬り倒して腕に持っていかせることで滝までたどり着くことに成功した。
気がつけば、そこは二日前に渦へ飛び込んだ海域だった。船乗りと冒険者たちは大いに喜び、母港へ急ぐ。
その途中で交わされるのは、いつか旅立つべき未来の冒険の話だった。
今回もコンピュータ関係では『Legion of Gold』が大活躍したですぅ。転送装置とかはテクスチャ変更、フィールド・ジェネレーターやチェインズ・アンド・ディスチャージ・ヘッドはオリジナルのアイテムですぅ。