2011年11月16日 大学生から他のコミュニティへと広がったガイギャックスの「ダンジョンズ&ドラゴンズ」は、その愛すべきファンタジー小説の登場人物を演じる手段を与えてくれた。 [長年日記]
§ [DnD][4e][BoVD] 『悪のキャンペーン(Evil Campaigns)』
『Book of Vile Darkness』プレビュー
バート・キャロルゲームでの悪
「余はまるで悪が善の光に対する闇であるかのように、悪とは善の不在であるなどという言説を耳にした。余は思う、それは救済を求める者たちの、いじらしい考えだと、余は汝に教えよう、このような考え方もできると汝の心に届くように。汝は魔鬼の目を覘き求めたときに悪は待ち受ける虚無やうつろを満たす徳などではないということを知る。悪は力なり。それは同じかおそらくそれより大きなものに対抗するための営み、宇宙の力である。一なる光とそれ以外の闇、これらふたつの陣営は果てしなく争う。汝は悪の行ないを不届きだと断じるかもしれぬが、しんから堕落せしものどもにとって、同様に善行は忌むべき行為である。そは救済にあらず、知れ、汝が仕えるべく生まれたものへの反逆を」
――アスモデウス、九層地獄の主
善をなす可能性と同じくらい、あらゆる知性あるクリーチャーに悪を受け入れる余地がある。ほとんどのクリーチャーはどちらかになる。暗い欲望と闘う徳の戦い、このふたつの陣営に分かれた宇宙的闘争のもっとも小規模な舞台がひとつの命である。個体が善性を持ち続ける限り、悪の行為を考えて手を染めても悪の個体は生まれない。真の悪とは、望まれる状態である善、善行、そして内なる悪との闘いを思い出すことができない状態だ。この悪への堕落は魂の汚染と表現することができ、悪の影響がもっとも純粋に姿を見せたものこそ――不浄なる邪悪である。
ある『Book of Vile Darkness』の筆者は善と悪が決して創世の根幹ではなかったと主張している。はじまりはただ、法と混沌の争いのみが存在した。そのうち、法はプライモーディアルが荒削りに作った世界へ安定と神格への信仰を持ち込んだ。タリズダンが宇宙のいやはてで暗黒のかけらをもぎ取るまで悪は生まれなかった。そしてそれに対抗し、善が生まれた。この異常な主張がこの冒涜的な大著には綴られているが、分別のある者はほとんどが拒絶する。
私たちが君たちのゲームで君が選びたくなるような悪のテーマや、君のプレイヤーたちの人生の始まりから九層地獄の運命を決める戦争まで――をたどるキャンペーンの大筋までを吟味したものが、今日見られる『Book of Vile Darkness』だ!
キャンペーンのテーマ
「私はもう役にたたなくなったこの世界を恐れる」
――混沌のエミリコル
悪のキャラクターに重点を置いたおよそより暗いテーマになるキャンペーンでは、支配、堕落、そして滅殺(第1章参照)の3つのうち1つが大きな悪を表現する力と結びつく。
以下のキャンペーンのテーマは新しいキャンペーンの骨子や既存のテーマに混ぜてより不吉な雰囲気と色合いを出すために使える。
征服
単純なキャンペーンのテーマの場合、征服は特定の属性に縛られない。征服キャンペーンで、キャラクターは支配するための力を望み、それを得る。彼らは現世の力に狙いを定め、新しい暗黒帝国を築くための世界大戦を行なうのか、あるいはより高い場所を望み、アストラル海へ、アビスへ、あるいは他の次元界を彼ら自身が切り取るために往く。
キャラクターは彼らに与えられた時間の多くで力を磨き、軍を編成し、そして隣人との戦に明け暮れる。彼らは領土を切り取りながら、他の敵との争いや他の土地や権力者との間に同盟を結ぶための武器や儀式を求めるだろう。キャンペーンは次元界へと広がり、冒険者は自然世界に巨大な組織を作り上げ、他の領域への一撃を援護させるためにそれを使うことができる。
神殺し
神を殺すのは容易なことではなく、邪悪なキャラクターでそれを行なう動機があるのは冒険者だけではない。悪の神には、たとえば世界を破壊したり、それに取り返しのつかない打撃を与えることを計画させることができる。悪の冒険者が神の力を盗もうとしたり、計画の裏をかくよりはそれらを強引に破壊することを目標にすることで、そのようなキャンペーンに無法なひとひねりを加えることができる。神はゲームでもっとも強い存在の1つだ。彼らはその力で、自分たちに対する脅威を相手にする準備ができている。
キャラクターはその活動のほとんどを神の御使いとの戦いに費やし、彼らの力を高めるために闇の勢力と取引を行ない、彼らが選んだ仇敵と戦うためにゲームでもっとも危険な場所へ赴く。キャンペーンの終わりに、冒険者は領界で孤独にたたずむ彼らの敵である彼あるいは彼女と対峙するかもしれないし、彼らの台頭という脅威を終わらせるために手を組んだ神々と対峙するかもしれない。
世界の破壊
多くのキャンペーンでは大破壊から世界を救うことが目的となる。だが、このキャンペーンでは、冒険者がその破滅の運び手となる。キャラクターは世界を終わらせるための仕組み――ある神を他の神々と敵対させる、プライモーディアルを復活させる、あるいは旧き邪悪の力を呼び起こす――を動かすかもしれないし、彼らは狂える神が創世を引き裂いて遊ぶための駒かもしれない。
彼らの役割に関係なく、キャラクターは孤独と、善と悪の勢力が彼らを妨害しようとする敵意に満ちた世界を相手にする。それとは対照的に、冒険する駒たちはある種のクリーチャーが彼らを助けることに驚かされるかもしれない。最終的に、キャラクターは死か、彼らの仕事をまっとうするか、彼らへの情にほだされて破滅の訪れを止めるほうに鞍替えするかだ。
悪と戦う悪
このキャンペーンは悪の冒険者が悪の敵と戦う。悪の本質は破壊的なので、それそのものが拡大できなくなればそれ自体を攻撃する。おそらく悪は既に勝利しており、世界最後の希望は失われている。悪にも関わらず、キャラクターは滅殺に対する最後の希望だ。あるいは、冒険者は闇の力の工作員や暗黒神の下僕で彼らの主人の敵を倒す命を受けているのかもしれない。いずれにせよ、彼らはアンチヒーローで、彼らの働きを通し、世界の生き死にが決まる。
善と戦う悪
キャラクターは光を倒すことが望まれる悪だ。おそらく善は最近の戦いで闇を打ち払い、今のキャラクターは均衡を回復しなければならないのだろう。あるいはプレイヤーたちは凶悪な冒険者をやり、どんな力が彼らを止めようとしても災厄と苦痛をばらまきたいのかもしれない。
このキャンペーンの導入では、キャラクターが邪悪な計画を準備したり、善の砦を弱体化させる大変悪い行為に加担しようとするはずだ。悪の冒険者が力を得れば、彼らを探して手ごわい敵が彼らを狙い、信仰の御使いたる強力な冒険者が派遣される。キャラクターが善の巨大で権威ある力に立ち向かって倒すことで、このキャンペーンは終わりを迎えるだろう。
キャンペーンの大筋
「あなたはあの汚物まみれのできそこない、なめくじ大公のでぶから何を吹き込まれたの? もしそうなら、私はあなたに提案するわ――あなたはもっとうまくやれる」
――グラシア
不浄なる暗黒という要素をもっともよく活用できるのは、既存のキャンペーンにそれらをちりばめ、絶対悪によって冒険に大風呂敷を広げることだ。戦闘遭遇での常軌を逸した行動、不吉な地形、あるいは致命的な病気は、すべて屋上屋を架すことなく悪をもっとも純粋な形で伝えることに効果がある。不浄なる暗黒という概念をうまく取り入れてそれらを利用することで、脅威を強調して物語の主要な構成要素を効果的なものにする。このように使われる時、不浄なる暗黒はその力を保ち、プレイヤーに彼らが何と戦っているのか正確に思い起こさせられる。
以下のキャンペーンの大筋は不浄なるキャンペーンの基礎として使うことができる。それぞれの欄では起こる事件の詳細な記述より、起こるべき事件を幅広く説明している。君だけの物語を作る枠組みとして、これらの大筋を使って欲しい。
地獄戦争
アークデヴィルのバールゼブルは、彼のへつらいと忠誠の掟によってアスモデウスの呪いを受けている。もちろん、これは彼が応報の乱を起こし、アスモデウスに対抗したアークデヴィルであることが由来だ。裏切り者のゲリュオンがいなければ、バールゼブルは九層地獄の最高支配者を追い出したかもしれない。だが、彼はなめくじのような姿を強いられている。
なめくじ大公は彼の権威を取り戻し、はるか昔に始めた彼の事業を復活させるために力をたくわえ、デーモン・ロードとの同盟を築くことに年月を費やしてきた。
英雄級:上は下の如し
このキャンペーンはある殺人から始まる。被害者が重要人物(たとえば貴族、商人、神官、あるいは魔法使い)だったので、キャラクターは調査するために呼び出される。より多くの殺人が最初のものに続く。それぞれの事件で、目標となったのは有力な人物だった。その調査の結果、冒険者は被害者がひそかにアスモデウスを信仰しており、デーモン・ロードのグラズトを崇めるカルト、六本指の手が殺人を行なっていたことを知る。
キャラクターが“手”の一部を倒した直後、より多くの狂信者がデーモンを開放して暴れさせ、地方全域を恐怖に陥れる。この脅威を終息させると、冒険者たちはグラズトの信奉者がアスモデウスに影響されている土地の絶滅を企てていると知る。キャラクターは冒険の合間にいくつかの実現されそうな不快な計画をくわしく探り、六本指の手がルエルという名の悪魔研究者と繋がっていることを見つける。
ルエルを見つけ出すのは容易な仕事ではない。最終的に冒険者は彼が廃城にたびたび出没することを知る。冒険者は城に乗り込みモンスターや危険と戦いながら、激戦の中でルエルと対峙する。ルエルは死の間際、なめくじ大公に助けを求めて叫ぶ。この言葉によってアークデヴィルが黒幕だと判明して九層地獄で何か事件が起こることをほのめかす。
伝説級:暗黒の深淵へ
キャラクターがしでかしたことは気づかれないわけがなかった。グラシアは彼女の父に迫る危険を、彼女自身が昇進する機会だと感じる。このアークデヴィルは冒険者たちを勧誘するため、アイウーンの尼僧、アシャリという姿を持たせた彼女のアスペクトを遣わせる。アシャリは彼女の仕える女神が九層地獄の動乱を恐れていると話す。彼女はキャラクターにシギルへと向かい調査と彼女が提供した魔法のアイテムを使った報告を行なうよう依頼する。アシャリは冒険者に、危険だが有力な人脈を持ったラーヴァスタ(『次元界の書』、136ページ)の略奪者シーメシュカと会見すれば彼女が必要としている情報があると薦める。
シギルに到着すると、キャラクターはシーメシュカが簡単に見つかりそうにもないことに気づくが、困難はそうでもない。とらえどころのないフィーンドへ近づくたびに彼らは決まっていたずらに巻き込まれたり、横道によって注意をそらされる。シギルで彼らが冒険している間に、キャラクターは戦のためにデーモンの群れがアビスに集結していることや、グラズトが関係しているかもしれないこと、そしてアークデヴィルのベルが地獄の都市ディスを包囲したことを知る。
冒険者が最後にシーメシュカを見つけた時、それはアスモデウスから玉座を簒奪する計画を明かし、状況はより悪化する。それが成功すれば、次元界がばらばらに引き裂かれることさえありうる。ラーヴァスタはアスモデウスしか彼の紅玉の王笏に封じられた暗黒を御することができないと説明する。そしてその遺産が間違った者の手に落ちたなら、それは“暁の戦”を再始動させることになる。最後に、シーメシュカは――もちろん、適切な報酬が必要だが――ゲリュオンがグラシアを殺して彼女の領域を奪おうとしていることを明らかにする。こうした行為はネッソスの主を十分に弱体化させ、彼の敵が彼を追放する行為に代わるかもしれない。
伝説級は冒険者が九層地獄へ急行し、ゲリュオンの攻撃からグラシアを助けるところで締めくくられる。キャラクターは無数のデヴィルと戦い、そしてゲリュオンと彼の暗殺者であるユーゴロスが罠を仕掛けたアークデヴィルの宮殿へ潜入せねばならない。冒険者がゲリュオンを破ったまさにその時、彼らにデーモンがアヴェルヌスへ攻め込んだと報せが入る。
神話級:バートル戦役
九層地獄の戦争が神話級の中心で、冒険者はどちらにつくか決めなければならない。神話級が始まるとき、グラズトと配下のデーモン・ロードたちは暗黒八魔将(ピット・フィーンドの盟約)を叩きつぶし、不意討ちでベルの軍勢を潰走させた。ディスパテルは彼の守護者たちを呼び寄せた。しかし彼らはベルに包囲され、絶望的なまでに弱体化している。
グラシアの生死に関わらず、バールゼブルは彼女の死をいともたやすく、かつてアスモデウスの妻、ベンソジアを殺害したレヴィストスの仕業だとすることに成功する。アスモデウスは怒りに駆られ、メフィストフェレスにレヴィストスを滅ぼす命令を下し、ベールゼブルとマモンにディスの援軍へ向かうよう命令する。
一方、ベリアルはデーモンの主人たちが内部へ浸透できるよう都市への抜け道を明らかにする。かくして、ディスは援軍の到着を待たずに陥落する。バールゼブルが到着すると、彼、ベリアル、そしてグラズトの軍は合流し、マモンに行動を共にするよう強要すると、彼らは九層地獄の主を倒すべく進軍する。
これらの計画が進行しているる間も冒険者は暇ではない。彼らにはグラシア、アスモデウス、あるいはバールゼブルという潜在的な後ろ盾がいる。彼らが誰と手を組んでも、冒険者は自分たちが計画の一部になっていると気づく。彼らが戦うのはディスを征服するためか守るためか、デーモンの群れが九層地獄の中枢に到達してしまうかもしれないし、バールゼブルが手繰る裏切りを暴露するかもしれない。
冒険者が見ることのできる理想的な結果は不埒者たちを追い返して九層地獄の法を回復させるためにレヴィストスとメフィストフェレス(九層地獄でもっとも寒い階層の主たち)を共闘させることだ。しかし、キャラクターがあまりにも多くのあやまちを犯すなら、アスモデウスは廃されて新たな権力者が彼の地位に登極するだろう。これらの事件の結果を決定するのは、君に任せられている。
バート・キャロル
バート・キャロルは1980年からのD&Dプレイヤー(そしてイラストに色を塗った第1版の『Monster Manual』が好きだった)で、2004年からウィザーズ・オヴ・ザ・コーストで働いている。彼は現在D&Dのウェブサイトのプロデューサで、ヒーローとモンスターについてのブログをhttp://ourheroesjourney.wordpress.comで書いている。君は彼をツイッターで見つけることもできる(@wotc_bart)。
4eの『Book of Vile Darkness』がプレビュー公開されていたので訳しましたぁ。
4eの『BoVD』は、設定を扱った本と、悪のPCを使ったキャンペーンを運営するためのサンプルの遭遇やシナリオフック、技能チャレンジ、儀式、悪のプレイヤー・オプションが入っている本の分冊になっていて、よりプレイの現場に近い内容になってるみたいですぅ。
『Heroes of Shadow』と組み合わせても面白そうですぅ。
Grazie sempre DEATHゥ。<br>3.5版のときの"あの書"のようなもんか、とたかをくくっておりましたが、なかなか4版色のしっかりしたサプリメントのようDEATHゥね。<br>"魔界大戦争"といえる3-tierキャンペーン構想はさらっと読んでもゾクゾクさせるものがあったDEATHゥ。