ネコぶんこ


2012年02月25日 ゲームのストーリー進行はシンプルでもかまわない(壮大な物語の大部分は単調なものだ)。 [長年日記]

§ [DnD][4e] シナリオ作成の要点(時間管理篇)

このエントリは私がシナリオ作成で意識していることの中でも時間管理を中心にまとめたものですぅ。

ここで私が説明の対象にしているシナリオは、1日のセッションで完結したプレイができるボリウム(中断してプレイ再開は考慮に入れない)の3遭遇程度で終わるデルヴ型シナリオなので、そのあたりはご留意していただきたいですぅ。

プレイ時間の見積もり

まず、プレイする日に確保できる時間全体から準備や雑談、休憩にかかる時間を引いた全体の60~70%を正味のプレイ時間として見積もるですぅ。少ないと思われるかもしれないけど、もろもろの進行に手間取ったときの予備時間とも共用するので、これくらい余裕があればまず間違いは無いというくらいに余裕を作っておくのが肝要ですぅ。

これは長いシナリオの途中で巻きを入れるよりは短くても円満にシナリオを終わらせ、余った時間で雑談などするほうが遊びに一日を費やして得られる満足感は大きいという私の経験に基づいた判断でもあるですぅ。

昼過ぎに集まって夕方6時ごろまで遊べるなら、プレイ時間は4時間程度とみてシナリオを練っていくですぅ。

プレイ時間の分割

プレイに費やせる時間をおおよそ求めたら、さらにそれを遭遇単位に分割するですぅ。実際の作業では遭遇の中身を検討しながら行ったり来たりすることになるけど、大雑把に枠組みを決めておけば遭遇の中身を思いつかなかった時に尺を持たせられることを基準にして敵を選べるので便利ですぅ。

私はこれといったギミックを仕込まない戦闘遭遇なら30分~1時間程度、技能チャレンジなら前後のロールプレイ部分なども含めて10分~30分を目安にタイムテーブルを切っていくですぅ。

ここで重要なのはそれぞれの遭遇にどれくらいの時間を振りたいかというペース配分を行なうことなので、あまり細かく気にしないで30分単位くらいで荒っぽく切っていったほうがいいですぅ。

遭遇で処理できるラウンド数の検討

それぞれの遭遇にかけられる時間を大雑把にとらえたら、次はその遭遇でPCはどれくらいの働きができるかを基準に遭遇内容を検討していくですぅ。

まずはプレイヤが思考し駒を進め判定を行なう1ターンあたりの占有時間を2~5分程度(グループの習熟度合いなどで適宜変更する)と仮定し、これをDMも含めた人数で乗算するですぅ。この時のポイントは、DMの思考時間は敵全員分なので2人分くらいを見積もることですぅ。

こうして出てきた数値で遭遇にかかる時間を割れば、それは遭遇で行なえるラウンド数になるですぅ。

わかりやすく遭遇にかかる時間をx、プレイヤの人数をy、1ターンのアクションにかかる時間をzとした式にすると
w=y(z+1)/z
となり、遭遇で処理できるラウンド数wが求められるですぅ。

ダメージの検討

遭遇の時間内に何ラウンド処理できるかをつかめたら敵データを検討する時のもうひとつ重要な要素、パーティが出せるダメージを見ていくですぅ。

既にPCのデータがあるなら、撃破役が毎ラウンド追加ダメージ条件を成立させて全員が遭遇毎攻撃パワーを使用した時に出る値を概算し、その60~70%を期待ダメージとして見積もるですぅ。これは常に最適行動を取れるわけではないことやミスの発生、戦闘が長引いて無限回パワーが使われることを考慮したものですぅ。

この時に重要なのはどこで使われるかわからない一日毎パワーを計算から外し、冗長性を二重に取っておくことですぅ。

PCのデータが無いときは、ホビージャパンの公式サイトにあるプレロールド・キャラクターからだいたいの値を見ることが可能ですぅ。

こうして1ラウンドあたりPCがどれくらいのダメージを出すかをつかめれば、自然と時間内に処理できる敵のhp総計も見えてくるですぅ。

遭遇の設計

これまで算出してきた遭遇で回せるラウンド数やパーティが出せるダメージを基準に、遭遇を組み立てていくですぅ。遭遇の作成については死せる詩人さんが「適正なバランスの戦闘の作り方」でかなり詳しく解説されているので、以下は私が特に意識していることがらを列挙しておくですぅ。

格上を出すなら精鋭が楽

ダンジョン・マスターズ・ガイド2以降のモンスター・マニュアル3などでは精鋭の作成法が変更されて防御値の+2が無くなり、同レベルのモンスタとほぼ同じ防御値になっているですぅ。このためPCが次々に攻撃をヒットさせてhpを削っていくことも簡単になり、経験点の面で等価な精鋭より4レベル上のモンスタを配置するよりプレイヤに爽快感を感じてもらいやすい遭遇を演出しやすいですぅ。

精鋭は複数目標への攻撃手段やアクション・ポイントを持っているので危機感を煽りやすく、リソースの投入で緩急を演出できるために時間管理の面でも優秀なモンスタになりうるですぅ。

選択肢として雑魚を使う

遭遇の初期配置で3~4体ほど密集させた雑魚を出すと開幕で制御役が焼きに来ることも多いけど、制御役に見せ場を提供しつつ、パーティに主力モンスタか雑魚かという戦術の択一を迫る手段としては悪くないですぅ。

遭遇の序盤が滞りやすい原因のひとつにどれを叩けばいいかわからないというのは確実にあるので、雑魚に限らずプレイヤへ選択肢を提示する配置(左右にそれぞれ別種の攻撃を行なうモンスタがいるなど)を心がけるとそれを解消しやすいですぅ。

前述したダメージ算出に関係する補足をしておくと、雑魚はひとかたまりごとに制御役が1ターンを費やすと認識するといいですぅ。

格下も重要

人間遊びが無いとそれはそれで息が詰まってしまうので、出目の多寡で命中に一喜一憂できるようなPCのレベルより低いモンスタも積極的に活用したいですぅ。

PCのレベル-2以下のモンスタでも複数体で挟撃などの戦術的優位を積極的に取る戦い方をすることで、機会攻撃による回転率の上昇や制御役への見せ場提供、敵の攻撃がミスしたことでプレイヤがいい気分になれるなどの効果が見込めるですぅ。

貧弱で心許ない場合はダンジョン・マスターズ・ガイド2Dark Sun Creature CatalogBook of Vile Darknessなどに収録されたモンスター・テーマを使うことで、パワーやオーラを追加して脅威を増すことができるですぅ。

アクセントは休憩を意識する

1時間で1遭遇を消化するといっても休憩無しでやるのはかなりきついので30分前後を目安にプレイヤの小休止を挟むと、思考も落ち着くのでケアレスミスを避けられるですぅ。

遭遇を設計するときに心に留めるといいのは、敵の増援到着やボスの変身などアクセントになるイベントは休憩前後のタイミングに仕込むのが効果的だということですぅ。たとえばプレイヤ5人でラウンドあたり思考時間がひとり2~3分だとすれば30分で2ラウンドほど消化できる計算になるので、3ラウンド目の最初に増援が出現するようにすると、増援が出てから休憩すれば後半戦へ繋げる引き、休憩を終えてから増援が出現した場合でも緊張感を高めて再びゲームへ集中させる効果が期待できるですぅ。

勝利条件を設定する

これまでは遭遇を時間内に終わらせるための敵配置に焦点を置いていたけど、いつもいつも時間を気にしながらモンスタと危険要因を配置して敵を全滅させる条件で綾のある遭遇を作れというのもそれはそれで難しい話なので、“敵の全滅”以外にも遭遇を成功させるための勝利条件を作ることも重要ですぅ。

これは“マップのある場所にたどりつく”、“敵の指揮官を倒す”、“技能チャレンジを成功させる”、“nラウンド全滅しない”など、敵を全滅させなくても条件を満たした時点で遭遇を成功させる、大幅に戦力を削って遭遇が楽になるというものですぅ。これを設定することで望ましい敵のhp総計なども崩せるので、プレイヤを飽きさせないための刺激にもなるですぅ。

ここで重要なポイントは以下の3つですぅ。

勝利条件はあからさまに
これは“敵の指揮官を倒す”タイプに重要なことで、この設定をして一番痛いのは無視されてパーティにとっての悪条件で戦闘が続くことなので、遭遇開始前に嫌々戦っているゴブリンをみせしめとしてメイスで叩き潰すバグベアの政治将校のように、多少あからさまなくらいに“これを潰せば勝てる”ということをアピールするのが重要ですぅ。
徹底対策しない
これは“マップのある場所にたどりつく”タイプで重要になることで、毎ラウンド減速や動けない状態をばらまいてくるような敵が大量にいるとプレイヤの勝利条件達成で遭遇を成功させようというモチベーションが著しく下がる問題ですぅ。勝利条件の達成を阻害するモンスタや危険要因を出す場合はそれらをPCのレベルより下にして、片手間で排除できるような相手にするのが重要ですぅ。
クエストで提示
ミもフタもない話ではあるけど勝利条件設定の要諦は勝利条件探しゲームをやることではないので、クエストとしてプレイヤに直接選択肢を提示するのは基本にして究極の勝利条件つき遭遇を成功に導く鍵ですぅ。
気前よく
これは前項のクエストとも共通する部分があるけど、勝利条件の達成で遭遇を成功させた場合、モンスタや危険要因による経験点はすべて与えた上でクエスト達成の経験点を与えるくらいでちょうどいいですぅ。パーティがいつもとは違う方法で遭遇を成功させたことを意識させるのに報酬は非常に大きな要素なので、ここでケチる理由は無いですぅ。

結局4つだったですぅ。

私がシナリオを書くとき時間管理で意識するのはおおむねこんなところですぅ。参考になれば幸いですぅ。Twitterでblogにまとめることを助言してくださった、ivninさんには感謝ですぅ。