2012年12月26日 恐紙病 [長年日記]
§ [DnD][4e][HotEC] リチャード・ベイカー『元素の渾沌の勇者』
プレイヤーズ・オプションの第三弾『元素の渾沌の勇者』はPCたちの敵として立ちはだかることも多い元素の渾沌の力をPCが使えるようになるサプリメントですぅ。
データを抜きにした設定解説やプレイエイドとしても、4eで再定義された概念である元素の渾沌やプライモーディアルについて踏み込んで解説しているので価値が高いですぅ。
参考までに原書が出たときに私が和訳した諸々については[HotEC]から辿れますぅ。
以下このエントリでは章ごとの大まかな解説をするですぅ。
大渦の中へ
第一章はこのシリーズの既刊と同じように元素の渾沌やそこに生きるものたち、プライモーディアルとは何か解説する章ですぅ。元素の渾沌について詳説した『The Plane Below』が翻訳されていない日本語版では、『次元界の書』以来の踏み込んだ内容なのでDMにも非常に有用ですぅ。
特に諸種族と元素の渾沌との関係、プライモーディアルという存在の位置づけや各個体の情報はこれが一番詳しい資料になってるですぅ。
プライモーディアルのほとんどは復讐心にとらわれたり幽閉の中で狂気に陥ってはいるものの、一部の比較的無害なものについては辺境で神格のように信奉されているなどの情報はこのあたりが初出な気がするですぅ。
元素魔法についてはモルデンカイネンたちによる論争の歴史をひもといてゲーム世界でどう受け止められているかについての概説になっているので、PCにどういう認識を持たせるかの起点として使えるようになってますぅ。
キャラクター・テーマ
日本語版では『妖精郷の勇者』に続いて登場するキャラクター・テーマは、地の元素使いアースフォージャー、金属の元素使いアイアンロート、強力なジンの奴隷戦士イェニチェリ、風の元素使いウィンドロード、水の元素使いウォーターシェイパー、四大と心身を合一させる修行をするエレメンタル・イニシエイト、デーモンの堕とし仔デーモン・スポーン、火の元素使いファイアークラフター、プライモーディアルを信奉するプライモーディアル・アデプト、元素の領域で出生したモートボーンの十種類が追加されたですぅ。
どれもPCのキャラクタ性を強めに出すものだけど、金属使いのアイアンロートはなんとなく剣の切れ味がよくなる程度の認識でもよさそうなのであまり濃い味が好みでない向きでも使えると感じたですぅ。
クラス
『元素の渾沌の勇者』で追加要素のあるクラスはウィザード、ウォーロック、ソーサラー、ドルイド、モンクの五クラスですぅ。
ウィザード
ウィザードはパワーの他にもジンを使役して元素の渾沌から秘術の力を収穫させることで呪文を使うサブクラス、シャイルが紹介されているですぅ。
シャイルは呪文書や秘術装具体得、《儀式修得者》を失うかわりに使い魔として働くジンの従者を手に入れ、元素系キーワードへの抵抗も少し得られるようになってますぅ。この従者の利益で一日毎パワーを強化することで制御能力が強化される仕組みですぅ。
呪文書を失った分の柔軟性は、大休憩終了時に既存の一日毎攻撃パワーか汎用パワーをひとつそのレベル以下のものと交換できるようになってるですぅ。
もちろんウィザードは追加パワーも豊富で、プロテクション・フロム・ミサイルズやリヴァース・グラヴィティなど懐かしい呪文も帰ってきてるですぅ。
ウォーロック
通常ならば矮小な定命の者など歯牙にもかけないプライモーディアルとの契約は己の全存在を捧げてもなお彼らの力で人格を歪ませられるものだと解説されているウォーロックとヘクスブレードの追加要素は、いずれもプライモーディアルと契約する元素の契約(Elemental Pact)ですぅ。
ウォーロックの元素の契約はd10をロールして攻撃パワーのキーワードを書き換えて元素のそれにする元素との親和(Elemental Affinity)で、敵を倒したら凶運の伝染(Accursed Affinity)で元素との親和によって選ばれたキーワードへの脆弱性をウォーロックの呪いに乗せることができるですぅ。
へクスブレードは契約武器としてブレード・オヴ・ケイオスという習熟ボーナス+3でダメージ2d4、高クリティカルの重刀剣を得られますぅ。無限回攻撃パワーは[酸]、[電撃]、[火]、[雷鳴]、[冷気]からダメージのキーワードを選択できるアンラヴェリング・ストライクなので、比較的耐性に対して強いへクスブレードだと考えられるですぅ。サモン・ウォーロック・アライではアルコンやタイタンを召喚するですぅ。
追加パワーはプライモーディアルの力を使役するものが多いのでいい気になるにはもってこいですぅ。
ソーサラー
ソーサラーに追加されたのは新サブクラスのエレメンタリストですぅ。彼らは理論や共感ではなく純粋な意思で生の力を屈服させる者たちという設定に違わず、遭遇毎パワーと一日毎パワーを持たないでクラス特徴の無限回攻撃パワーとその強化に使う遭遇毎パワーを組み合わせる秘術の撃破役になっており、風、火、地、水の元素をひとつ選択しただけで攻撃パワーがほぼすべて決まるわかりやすい構成ですぅ。
この本一冊でエレメンタリストがプレイできるように汎用パワーも収録されているけど、これは普通のソーサラーでも修得可能ですぅ。
ドルイド
ドルイドはクラス特徴に重装鎧を装備していない間攻撃ロールに+1のボーナスを得られる原始の相、原始の怒り(Primal Wrath)が追加されましたぁ。
また、『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォーゴトン・キングダムズ』のセンチネル用には生きたそよ風のリヴィング・ゼファーを従える荒野のドルイド(Druid of the Wastes)があるですぅ。
もちろんパワーも追加され、既存のドルイドもより攻撃的な自然の雰囲気をまとえるようになっているですぅ。
荒野の原始精霊と心を通わせるドルイドは生命があふれる場所の守護者とは異なり、荒々しい彼らを鎮めることが主な役目であることがコラムで触れられているけど、こうしたありようの違いはいい雰囲気作りになってますぅ。
モンク
モンクは自らを宇宙を流転する純粋な力へと昇華させることを目的とした思想、至元の道(The Sublime Way)が紹介され、これに関連した修道門派がふたつ、そしてパワーが収録されているですぅ。
有為転変(Eternal Tide)の門派は元素の渾沌へ逃れたギスゼライたちが周辺の環境を制御することを精神の制御へと応用した【敏捷力】と【筋力】を重視するもので、自分が受ける強制移動を減らしつつ敵の移動に干渉する能力を持ったものですぅ。
熱砂旋風(Desert Wind)の門派はアルコシア帝国の崩壊後に沙漠へと逃れたドラゴンボーンが興した【敏捷力】と【魅力】で旋回と火炎を使いこなすもので、[火]ダメージを与えるデザート・ウィンド・フラリー・オヴ・ブロウズを使い[火]への抵抗を得る門派ですぅ。抵抗されやすい弱みはあるけど、キーワードのおかげでダメージはちょっと上げやすいですぅ。
パワーは[元素]キーワードのついたものが多く、モンクがその肉体を火や風などの宇宙に渦巻く力へと変貌させていく様子を再現したものになってますぅ。
また、コラムでは隠された元素系門派として金剛心(Diamond Mind)や石龍(Stone Dragon)など懐かしい名前が並んでいたですぅ。
元素のオプション
伝説の道
ここで紹介される伝説の道は収録されているキャラクター・テーマやクラスに関係あるものが十種類ですぅ。
概要を簡単に説明すると[元素]の攻撃パワーを持つ者が文明社会から離れてその道を追求するエレメンタル・アンカライト、エレメンタリストをより強化するエレメンタル・サヴァント、神々からプライモーディアルの監視を任されたゴッド・ウォーダー、元素の渾沌の秘密を探る学会の一員であるスピーカー・オヴ・ザオス、強くアビスの力を受けたデーモンバウンド、錆びついた神々のくびきと戦うドゥームロード、元素の諸侯から実力を認められ従者を強化したフェイヴァード・シャイル、幽閉されたジンと取引して開放するために力を借りているプリンス・オヴ・ジンニーズ、プライモーディアルの一柱から力を授けられたヘラルド・オヴ・ヴィーズヴウ、元素起源の存在としての力をより高めるリフォージド・ソウルですぅ。
神話の運命
神話の運命は二種類で、プライモーディアルの残滓を内包してその力を使いこなすことができるエマージェント・プライモーディアル、かつて元素の渾沌で創造を楽しんでいた美を愛する種族レイガ(Reigar)の遺産である魔法の武具シャクティ(shakti)を受け継いだ創造の魔法使いロード・オヴ・ケイオスですぅ。
それにしても原書で一番のサプライズだったロード・オヴ・ケイオスがついに和訳されるのは感慨もひとしおですぅ。
特技
特技は元素の渾沌と関係ある生まれであることを表現する《Born of the Elements》を起点にちょっとした便利効果を得るシリーズと、伝説級で特定キーワードのダメージ・ロールに+3と特殊効果をつけるもの、そして誰でも修得できて使い魔のように扱える《Elemental Companion》が主ですぅ。
練達系では《気印練達》、《トーテム練達》、《トウム練達》が収録されているですぅ。
元素の相棒
オートマトンやシルフ、マグミンなど《Elemental Companion》で得ることができるさまざまな相棒を紹介しているですぅ。hp1だけど使い魔と同じように恒常的利益もあるですぅ。
元素の報酬
鎧、武器、装具(気印とトウム)、新しいアイテムのプライモーディアルの欠片(Primordial Shard)、代替的報酬の元素の賜物(Elemental Gift)が紹介されているですぅ。
このうちプライモーディアルの欠片は暁の戦で砕かれたプライモーディアルの遺産で、装備した使用者は元素起源になってさまざまな力を授かる強力なレア・アイテムですぅ。
まとめ
今回もテーマやクラスなどのデータが冒険へ出る動機やクエストのフックになるよう作られていたのは流石だったですぅ。また、エレメンタリストは一芸をさまざまに応用して戦う術者の動きをクラスのデザインとして再現しているのが面白かったですぅ。
4eで再定義されてはいいけど解説はすっぽ抜けていたきらいが否めなかった元素の渾沌、特にプライモーディアルまわりについてはちょっと遅かったという感触だけど、詳述されてより共通認識を取りやすくなったのは確かですぅ。