2013年04月22日 そして魔法は使われると、そのキャラクターがもう一度おなじ魔法を学習して覚えないかぎり、これを使えないのである。 [長年日記]
§ [DnD][4e][LnL] 『今週のD&D(This Week in D&D)』
おお、我が特技と技能とオプションよ!
先週、私は特技とそれらを扱う私たちの哲学が変化したことを書いた。今週のこの時間は、特技、技能、クラス、そしてそれらの組み合わせについて話そう。
今年のはじめ、私はゲームのそれぞれの層について書いた。また、そこでふたつの基本的な目標も話した。以下のふたつだ。
- ゲームの核となる要素でも普遍のものを持ったD&Dの版を作成する。
- 単純なゲームから複雑なものへ円滑に移行できるルールを作成する。
特技、技能、そしてクラスすべての組み合わせによって、これらの目標に向かっていく。先週の記事にあるように、私たちは伝説の道と上級クラスを特技へと統合した。この変更は私が何度も語ったより管理が簡単なゲームを目指し、実現するものである。
特技、技能、そしてキャラクターのカスタマイズはD&Dに必要不可欠ではなかったというのは簡単だ。私たちはそれらをゲームのコアとすることを望まず、そうすることでキャラクターの作成をより簡単で速いものにしたい。これはDMが確認しなくてよいということでもある。これのもっとも簡単な解決案はそれらなしでプレイできるオプションを作成することだ。
一方で、システムを検討して彼らのキャラクターをカスタマイズしたい人たちもいる。彼らが望む複雑さもまた、さまざまなものである。もし特技と技能を完全に排除すれば、私たちは第二の目標を達成できないかもしれない。
かくて私たちはコア・デザインのど真ん中で問題に突き当たった。プレイヤーやグループ同士でとてもとても異なるゲームを同じゲームとして機能させるために、君たちならどうするだろうか? それがこれから提示するいくつかの段階を踏んだ質問だ。
複雑さを持たせる:特技
はじめに、ゲームの複雑さが変動することはできるだけ小さく抑える必要がある。私たちは特技ひとつの価値が能力値+1と等価であると定義したことから、特技の開発は始まった。能力値に+1することはとても単純な作業でいて、プレイヤーにとって有益なことだ。さらに、能力値へ+1することはキャラクターに大きな変更を加えないまま、プレイヤーには成長を感じさせるものでもある。
少し話は外れるが、私たちは可能な限り特技と同時に他の要素が成長するようにしている。たとえば、ローグの特技は急所攻撃のダメージが増えるときに修得できる。術者は呪文を得るときに特技を修得する。君たちがレベルを上昇させるときに得られるものすべてが特技に依存するわけではない。それらを他の利益が成長することと抱き合わせることで、複雑さを抑えることができる。
基本ルールで、プレイヤーは能力値の成長オプションだけを参照すればいい。このルールによって能力値はより強調される。それは同様に、これまで存在していたすべての受動的で単純な特技をすくい取ることにもなる。能力値の上昇にそれらが含まれるため、もはや攻撃ロール、ダメージ・ロール、あるいはセーヴへの+1ボーナスを与える必要がないのだ。
私たちはレベル上昇によって上昇する能力値についてどんな仮定も行ないたくない。これにはふたつの理由がある。ひとつ目は、それが能力値の上昇をある種の義務にしてしまうこと。ふたつ目は、誰もが攻撃のために【筋力】や【敏捷力】を最大値まで伸ばしたいわけではないことを忘れないためだ。近接戦キャラクターが物語の要請や個人的な好みで【魅力】や【耐久力】を強化しても、それに満足を感じられなければならない。たったひとつの正解が仮定されているのなら、選択は選択でなくなってしまう。
最後に、複雑さの調節を行なうときにこの方法論を使えば特技にそれを負わせることが可能になるのだ。パワー、特殊攻撃、ちょっとした呪文の発動、隠密行動や交渉関係への練達などは、特技の中で生かすことができる。この方法論によりプレイヤーは彼らが望むやり方を選んでキャラクターを構築し、プレイすることが可能になる。もっとも複雑なキャラクターを作りたい人と、もっとも簡単なキャラクターを作りたい人が一緒にプレイできることが可能なのだ。DMは彼や彼女がアドベンチャーを作成したりゲームを管理するうえで、特別な心配や変更を一切行なう必要がない。
これらをまとめれば、特技は複雑さを分離し、威力や効果について明確な定義を与え、そして選択可能な能力の非常に柔軟な集合体を作ることになる。上級クラス、伝説の道、あるいはどんなキャラクターでも選択可能であるべき他のオプションは、ここに収められる。特技から物語的な定義が欠落しているのは特徴であり、瑕疵ではない。
技能および背景:DMの道具として
次は技能に目を向ける番だ。特技が複雑さを担当するなら、技能はのけものになってしまうのだろうか?
この部分で、私たちは技能を与える方法として背景を使っていた。しかし、状況へのボーナスとして技能を動かすにはいくつかの問題があると私たちは判断した。
- 静的な数値によるボーナスの増大はボーナスのインフレを抑止する考えに反するという異議。
- 技能を表にしてしまうとやっかいだ。「〈視認〉判定よろしく」などと技能名を挙げてくるDMもいる。熟練のプレイヤーはその意味を理解するが、新規プレイヤーはおいてけぼりになる。彼らのキャラクター・シートにはどこにも〈視認〉技能が書かれていないかもしれない。私たちは常に能力値判定だけを求めるDMを求めてきた。
- 技能ダイスのシステムはまったくもってどの問題点の解決にもなっていなかった。それはいくらかボーナスを抑制したが、技能好きな人はそれがじゅうぶんではないと感じる。DMもどんな判定をしたいのかはっきりさせたいので、それがテーブルでの処理をなめらかにする助けにならなかった。
背景の一部としての技能に本当に満足してもらえたことは、プレイテストのフィードバックで示された。それらの自由さと柔軟性が人気だともわかった。では、これをどう扱うべきか?
私たちはまず、技能を完全にオプションとした。それらは第3版および第4版のシステムを組み合わせたルール・モジュールで、DMがそれを望むならゲームに持ち込むことができる。技能システムを完全導入すれば、君たちは隠れているモンスターを見つけ出すために【判断力】判定ではなく〈知覚〉判定を使うようになるだろう。君たちが技能をどんどん成長させることに対し、静的ボーナスを与えることもできる。DMが技能システムの採用を決定すれば、彼や彼女はそれが難易度に影響を及ぼすことに留意しなければならない。DMは難易度を変更することもできるし、標準的なものをそのまま使ってキャラクターの成功率をより高くすることもできる。
背景は君たちが興味深い利益だと感じて受けがよかったいくつかのオプションを得るための重要な要素になる。それらはいくつかの種別に分類される:
地域知識はそこに関連する知識を思い出すために行なう君の【知力】判定に+10のボーナスを与える。このボーナスはレベルによって上昇しない。これをシステムに作りつけることで、私たちは能力値判定を求められたときに基本ルールへの例外としてDMに提示することができる。地域のリストはその管理を簡単にするためかなり限定的なものになる。
キャラクターが世界について知りえる知識、知っていらなければならない知識とプレイヤーのそれとは常に乖離があるため、私たちはここで基本的な技能の方法論から外れる例外を作っている。このシステムは私たちが直接発言することを許している。
たとえば、キャラクターがウォーターディープにやってきたとしよう。彼らがフォーゴトン・レルムの資料をあまり読んでいないため、プレイヤーはこの街について詳しくないかもしれない。だが、レルムの世界に住むすべてのキャラクターはウォーターディープについてある程度の知識を持っていると考えられる。地域知識のシステムは誰もが知っていること、および【知識】判定の難易度10、20、そして30で得られる情報と、ウォーターディープについての知識をリスト化している。それは一般的知識の共有についてDMがより楽になるとともに、よりなぞめいた知識を共有するためのよいガイドラインになる。このボーナスは適切な地域知識を持っているなら誰もが自動的に難易度10の知識を持っていて、難易度20についてもうまくいきそうだと示している。難易度30は難しいが高い【知力】を持つキャラクターならば可能だろう。
習熟は武器と鎧からさらに広がり、広範囲にわたるものとなる。君は盗賊道具、鍛治道具、操船、楽器演奏などに習熟できるようになる。単純な前提条件システムを能力値判定システムに組み合わせれば、たとえば剣を鍛えたり操船することが能力値判定のみで運用できる。
たとえば、キャラクターが湖の向こう側まで船を出したいと言ったとしよう。操船に習熟しているキャラクターだけが、船を操るために必要な【敏捷力】、【知力】、そして【筋力】などの判定を行なえる。私たちがそれを技能ではなく、君が何かのやり方を知っているかどうかを表現する単純な習熟で提供することができる。それはまた、どんな判定に特別な訓練が必要なのか技能システムをまったく使用せずに説明することが可能になったことも意味する。
私たちは出版するアドベンチャーに特殊な習熟を要求する判定があることを書けば、それらを明快にすることができる。習熟はまた非常に広い範囲を表現する。たとえば、操船への習熟は小型から大型の船までを扱える。
利益(この名称はまだ仮名だが)は君の背景が君に与えるその他のものすべてを表現する。貴族は権力者と会見でき、快適な宿をとることができる。賢者は彼や彼女が頭の中から思い出せなかった情報についてどこで調べればいいかを了解している。商人はいくつかの言語を話せ、安売りされている一般アイテムを発見できる。
これらの能力は戦闘以外の状況に対処するとき君たちのキャラクターにより多くのやり方を与えることを助ける味わい深い追加要素だ。これらの人脈、関係、そして小技は君たちが冒険者になる前に得たものだ。
クラス
トリを飾るのはわれらがクラスだ。私たちはクラスを君たちが特技に替えて能力値ボーナスを使い、技能を使わないことを前提にデザインしている。したがって、それらは自己完結している必要がある。ボーナス特技はクラスが得るコア能力に代替できない。
ほとんどのクラスは、主に表面だけや君たちが知っているものの単純な再構成で変化は終わる。ファイターとローグは彼らに提示されて選択できるオプションが強化され、よりクラス独自の特徴が加わった。さらに、それらはいずれもウィザードの系統やクレリックの神格のような選択制の特徴を持つ。以前もこれらはあったが、現在のそれらはより多くの牙が与えられている。
たとえば、ファイターはナイトかグラディエイターを選択できる。ナイトは重装鎧の扱い、上品な作法、そして騎乗戦闘に長けている。この頼もしいファイターはイニシアチブをつかみ取り、味方を危険から守ることができる。グラディエイターはさまざまな特殊武器の訓練を受け、敵の弱点や失態を目ざとく利用することに長けている。
ローグとファイターが伝統を単純なオプションとして提示したことで、私たちは基本ゲームのために使いやすさと明確に理解できる特徴に狙いを定めたものを簡単に選んで作成することができる。
この考えの裏にはファイターとローグが目立つような能力と独自性を作成できていることを確認する目的があった。これらのクラスはD&Dの歴史の中で実に多くの要素を内包してきた。私たちはその手触りを――ファイターとローグは他のクラスより多く能力値や特技を成長させ、その柔軟性を高めることで――少しでも残したいが、もちろん彼らが軽視されることがないようにすることも忘れてはいない。
まとめ
ご覧の通り、私たちの作業工程は随分と複雑でいくつかのデザインを並行して行なっている。時にそれらはぐちゃぐちゃで混乱しているようにも見えるが、大目標を見失わないようあらゆる工程へ慎重に目を光らせている。私は計画が適切で、ふたつの大目標をゲームにもたらすことができると確信している。
今回のコラムは長かったので、ここでは能力値、特技、技能、そして背景について私が語ってきた目標のまとめを行なおう:
- すべてのキャラクターはクラスで定義されたさまざまなレベルで選択した能力値に+1のボーナスを得る。
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グループが特技を導入しているなら君は能力値への+1ボーナスを特技に交換できる。
- いいかえれば、特技はオプションであり基本ゲームには導入されない。
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技能はDMが使いたいなら使えるオプション・システムだ。
- 技能はオプションであり基本ゲームには導入されない。
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背景は地域知識、道具や物品に対しての習熟、そして特殊な利益を組み合わせて提供する。
- 地域知識はある状況での【知力】判定に対する+10のボーナスである。
- 習熟は君がアイテムの使用方法を知っていることを表現する。
- 独自の利益は社会的な人脈、小技、あるいはその他の能力だ。
マイク・ミアルス
マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。