ネコぶんこ


2013年08月13日 既に六日と申しけるたそがれ時に、綱が宿所の門を敲く。 [長年日記]

§ [DnD][4e][Liber] 『ネヴァーウィンター・キャンペーン・セッティング

今回紹介するのは、日本語版の予約も開始されたネヴァーウィンター・キャンペーン・セッティングですぅ。この本は広大なフェイルーン全般を解説したフォーゴトン・レルム・キャンペーン・ガイドフォーゴトン・レルム・プレイヤーズ・ガイドとは趣向を変え、フォーゴトン・レルムの北方にある都市、ネヴァーウィンターとそこを舞台にした英雄級のキャンペーンに絞り、よりプレイの現場に沿った内容のキャンペーン・セッティングを構築しようとしていますぅ。

特徴のひとつを挙げれば、プレイヤにはPCが積極的にネヴァーウィンターと関わる動機づけを行なうことを助けるキャラクター・テーマを提供し、DMには“テーマと関連づける”というコラムをそこかしこに配置してそれをフィードバックさせるなど、プレイヤとDMの両方に働きかけるようになっている意欲作ですぅ。

以下ではその詳しい説明を行なっているですぅ。

第1章:北方の宝石

前書きとこの章では、プレイヤとDMの双方にネヴァーウィンター・キャンペーン・セッティングがどんなプレイを提示するかの解説をしていますぅ。その内容をかいつまめば、英雄級で遭遇しそうな脅威や組織を設定とデータの両面からフォローし、ネヴァーウィンターという一度亡んだ街を舞台にした、“君が”創造するキャンペーンというところですぅ。

4eのネヴァーウィンターや周辺の北方は呪文荒廃と大火で一度亡んで既存の勢力が基盤を失った空白地帯で、そこにウォーターディープやネザリル帝国、サーイなどの大勢力が干渉している混沌とした状況ですぅ。そのため、PCがネヴァーウィンターの領主として新勢力を建てることも充分考慮に入れられた設定やデータが紹介されているのがこの本の大きな特色ですぅ。

また、ネヴァーウィンターと北方地方の紹介を地図含めて4ページ、ネヴァーウィンターを中心にした歴史を2ページにまとめている解説があるので、キャンペーンを始めるときのサマリとしても有用ですぅ。

第2章:キャラクター・オプション

ネヴァーウィンター・キャンペーン・セッティング』で追加されるPC用データは、キャラクター・テーマ、代替種族、ウォープリーストの領域、ブレードシンガーの四種類ですぅ。

このうちウォープリーストの領域はヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ所収のウォープリースト用オプション、ブレードシンガーはこの本単体でも作成できるウィザードのサブクラスですぅ。もちろん、ウォープリーストのパワーは他のクレリックで、ブレードシンガーのパワーも他のウィザードで使用できるようになってますぅ。

キャラクター・テーマ

13種類収録されたキャラクター・テーマは、どれもがネヴァーウィンターで冒険を行なう目的、意味が強く与えられたものになっているですぅ。

また、己の腕と仲間だけを頼みに大望や巨悪へ立ち向かうのもすべてに共通したものになってますぅ。これはDM側もネヴァーウィンター・ノーブルの許に集ったレッド・ウィザードの過去を隠した魔法使いに過去からの刺客が放たれる……というふうにシナリオを作りやすいし、プレイヤも自然と壮大な物語をプレイしている感覚を得られるようになっているですぅ。

さらにサーイやネザリル帝国、(偉大なる先駆者のお陰で目立たないけど一応善の敵対勢力の)ドラウなど、通常なら敵対する陣営の出身者もテーマとして設定を持たせることで、テーブルのみんながお互いに安心してプレイできるようになってますぅ。

  • ネヴァーウィンター・ノーヴル:27年前にネヴァーウィンターが焼亡して以来、かの地は復興に手を貸したウォーターディープの公開ロードたちが権利を主張している。だが、このテーマを持つPCこそがまことに資格を持つ領主の裔である。
  • オグマズ・フェイスフル:知識神オグマから幻視を授かり、ネヴァーウィンター復興を命じられた者。かつて世界中の美と技が集った“北方の宝石”に再び輝きを取り戻すため、人々を取り持つのがこのテーマを持つPCの使命である。
  • ハーパー・エージェント:善の勢力を広めるため人知れず戦う秘密結社の一員。ネヴァーウィンターではネザリル帝国の侵略と戦っている。得られる特徴がハーパー・ピンのみの変則的データ。
  • デッド・ラット・ディゼレイター:ソード・コーストのラスカンで秘密主義と非情、狡猾さで悪名を馳せる死鼠団(Dead Rats)から脱走し、ネヴァーウィンターに流れ着いたならず者。入団時にワーラットの血を受けている。
  • イリヤンブルーエン・ガーディアン:フェイワイルドからやってきたエラドリン。かつての都シャランダーを荒らした者を捜す者や、物質界に残る同胞を捜す者などがいる。ネヴァーウィンターの森には彼らの拠点がある。
  • ウスガルド・バーバリアン:テンパスのエグザルフ、ウスガルを祖に持つバーバリアン。本来は高森に住んでいるが、祖先が眠るモルグルの塚を穢された氏族はその怒りが悲しみに変わるまで故郷に戻らないことを宣言した。
  • パック・アウトキャスト:年々凶暴性を増し、さらにはネザリル帝国の走狗に成り果てた灰狼氏族から脱走したワーウルフ。パーティを仮の群れとし、ネザリルと戦いながら氏族が呑まれた闇の正体を探る。
  • ヘアー・オヴ・デルズーン:千年前のゴーストから“目覚めつつある獣”の復活阻止と、伝説の地下都市ゴーントルグリム探索の使命を伝えられ、一族からは頭がおかしくなったのではないかと疑われる中で冒険の旅に出たドワーフ。
  • レネゲイド・レッド・ウィザード:自らが行なった実験に恐怖し、サーイを逃げ出したレッド・ウィザード。逃れた先のソード・コーストでもサーイ人が暗躍していたため、新たな故郷を守るためにサーイの刺客と戦う。
  • サイオン・オヴ・シャドウ:地上の“奪還した”地域へ派遣されたネザリル帝国の士官。しかし、太陽の暖かさと人々を観察するうちに感じた喜びにより別の心が芽生え、ネザリルの野望を阻止することが目的になった。
  • デヴィルズ・ポーン:軽い気持ちでデヴィルの崇拝に参加した結果、アスモデウスの印を刻まれてウォーターディープを逃げ出した結社員。その刻印が何を意味するかも理解できないまま、ウォーターディープへやって来た。
  • スペルスカード・ハービンジャー:呪文荒廃ですべてを失い、その呪いを受けたせいで百年以上経つ今日まで生きながらえた者。ネヴァーウィンター近郊のヘルムズ・ホールドでは、そうした者たちを受け入れている。
  • ブレガン・ダエルス・スパイ:没落した生家に栄光を取り戻すために傭兵団、ブレガン・ダエルスに加入したドラウ。現在では混乱で富が少なくなったため、傭兵団はこのテーマを持つPCなどわずかな人員のみを北方に配備している。

これらがデータとして重い場合、背景にコンヴァージョンしてプレイするためのガイドラインも書かれているのも親切ですぅ。

代替種族

この本には追加種族のかわりに既存種族の種族特徴を入れ替えてフェイルーンのさまざまな支族を表現する代替種族ルールが収録されてますぅ。

代替種族は、ドワーフがゴールド・ドワーフとシールド・ドワーフ、エラドリンがムーン・エルフとサン・エルフ、エルフがワイルド・エルフとウッド・エルフで、それぞれに背景もついているですぅ。

ウォープリーストの領域

ウォープリーストの領域は、様々な神格が世界を彩るフェイルーンのクレリックを表現するために、コアロン、オグマ、セルーネイ、トームを信仰するウォープリースト用の領域データが追加されているですぅ。

これらを使えば、コアロンに祈りを捧げて弓を放つエルフ、【知力】基準の技能を【判断力】で判定するオグマの学僧、月光で敵の目をくらませるセルーネイのウォープリースト、堅忍不抜の精神を持つトームの修道士といったPCを手軽に作成できますぅ。

ブレードシンガー(ウィザード)

ブレードシンガーはウィザードのサブクラスだけど、積極的に動き回って敵をかき回す前衛型の制御役になっているですぅ。【知力】で剣を扱う上に装具として使え、膂力を魔力で補って攻撃したり、機会攻撃を受けずに至近距離から呪文をぶつけるなど、剣と呪文の両方を扱う魔法戦士をやるのにはぴったりのクラスですぅ。

ただし、剣と秘術の両方をたしなむせいなのか通常のウィザードでは遭遇毎パワーになっているパワーを一日毎パワーとして修得する(遭遇毎パワーは持てない)ので、一手で敵に致命傷を与えることは難しいですぅ。その分、レベルアップするにつれ手数を稼げるようになるので、他のウィザード系サブクラスとはかなり違った動きを楽しめる仕上がりになってますぅ。

第3章:派閥と敵

この章では、ネヴァーウィンターを取り巻くさまざまな勢力が紹介されていますぅ。ネヴァレンバー卿の扱いなど、プレイグループに委ねるとメタ情報が書かれているのはフォーゴトン・レルムの設定では新しいですぅ。

大きく紹介されているのは以下の4派閥ですぅ。

  • 新生ネヴァーウィンター:ウォーターディープ出身のネヴァレンバー卿(7レベル)を中心にネヴァーウィンターを復興している集団。ネヴァレンバーは領主ではなく護民卿を名乗り、治安維持のため傭兵を募ったり、自らの正統性について宣伝活動を行なっている。ネヴァレンバーが真の忠義者なのか奸物であるのかはプレイグループに委ねられている。
  • アボレス王国:呪文荒廃によってアイビアからやってきたアボレスの地下組織。かつてネヴァーウィンターの四分の一を焼いた火山の噴火をプライモーディアルの開放によって引き起こした黒幕でもある。彼らは呪痕クリーチャーを集める一方で、一見善良に見える端末をネヴァーウィンターに送り込んでいる。
  • アシュマダイ:アスモデウスを信仰するデヴィルの教団。ネヴァーウィンターのさまざまな場所に浸透しているが、胸にアスモデウスの印を刻まれているのが共通した特徴。ネヴァーウィンターを支配するのは自分たちだと確信しているため、アボレスとは激しく敵対している。
  • サーイ人:ネヴァーウィンターではザス・タムの配下、ヴァリンドラが暗躍している。彼女はドラゴンのカルトを半ば支配するなどして、死霊術を駆使したアンデッドの部下を従えながら北方地方に眠るさまざまな魔法の遺産を発掘してサーイの力にしようとしている。
  • ネザリル人:シャドウフェルから物質界への帰還を果たしたネザリル帝国は十二プリンスのひとり、クラリブルーヌス・タンフルがネヴァーウィンターの森に墜落した“最初の空中都市”の発掘やそれを動かすミサルの再構築、魔法のアイテムの発掘を行なっている。彼らは最終的にサーイと地上の覇権を争うことになるとみている。

また、ラスカンを中心に悪名を馳せる死鼠団、アラゴンダー家の末裔のみがネヴァーウィンターの君主になる権利を持つと主張して過激な行動も辞さないアラゴンダーの息子たち、ネヴァーウィンターの復興を願いながらもアラゴンダーの息子たちとの共闘に失敗して壊滅的被害を受けたハーパー、力への渇望を様々な組織から利用されている指揮官のヴァンシに率いられネヴァーウィンターの時計塔に本拠を構えたメニーアローズのオーク、わずかな密偵のみがネヴァーウィンターを監視するブレガン・ダエルスも都市で蠢く派閥として紹介されているですぅ。

そしてネヴァーウィンターの森では、ネザリルに降ったウスガルドの流れを汲むワーウルフ氏族ウスガルドの灰狼、シャランダーの遺跡を荒らすものを狩るイリヤンブルーエンのフェイ、文明から離れてドラゴンに捧げものをするドラゴンのカルトなどが暗躍しているですぅ。

アンダーダークに眠るゴーントルグリムの住民も、突然変異したダイア・コービー、呪文荒廃の影響を受けてでアボレスに支配されたマインド・フレイヤー、アスモデウスの神託によって発掘を続けるドゥエルガル、メンゾベランザンに匹敵する都市としてゴーントルグリムを支配しようとするドラウのゾーラーリン家、プライモーディアルの復活によって活性化した元素のクリーチャーたち下なる炎がそれぞれ紹介され、英雄級のPCとも戦えるように丸められたデータも収められているですぅ。

第4章:地誌

この章では、呪文荒廃以降のプライモーディアルの覚醒と火山の噴火による焼失を経たネヴァーウィンターとその周辺の“現在”を紹介しているですぅ。ネヴァーウィンターの街も区画ごとに丁寧な紹介とイラスト、シナリオのネタになりそうなコラムで彩られ、実際のセッションに使えそうな内容になってますぅ。

また、伝説の地下都市ゴーントルグリムと、シャドウフェルにあるネヴァーウィンターの投影都市、エヴァーナイトの紹介もあり、英雄級から物語をさらに広げる手がかりにもなってますぅ。