2013年08月14日 綱は鬼に手を取返されて、七日の斎破るといふとも、仁王経の力に依て別の子細なかりけり。 [長年日記]
§ [Ludus] 『Numenera』発売
去年Kickstarterで出資を募っていたモンテ・クックの新作RPG『Numenera』の通常版が、今日発売されましたぁ。
『Numenera』は高度に発達した科学技術を持つ文明が何度も滅びた遠未来の地球を舞台に、古代文明の“魔法”を探索するゲームで、物語ることに重きを置いたシステムになっているですぅ。
判定システムはd20を使い、NPCや障害に設定されている1~10までの難易度(Difficulty)を3倍した目標値(Target Number)以上の出目で成功、ただし修正で目標値を0以下まで落とせば判定なしに成功するルールですぅ。目標値には技能や装備、状況でペナルティを与えられるけど、これらはどれも-2までしかできず、劇的な変化を得るにはPCの【余力】(Pool)を消費して難易度そのものを削ることが重要になってくるですぅ。
難易度を削るときに重要なのは【キレ】(Edge)という能力値で、[要求される余力-キレ]で最終的な消費余力が決定されるですぅ。余力には【肉体】(Might)、【敏捷】(Speed)、【精神】(Intellect)の3つがあり、役割ごとに最初に得られる【余力】と【キレ】が違うので得意分野を分担するようになってますぅ。
判定は“敵に攻撃する”や“敵からの攻撃をかわす”など、PCがどう動くかの文法で記述され、GMは状況の説明や難易度と目標値の提示、あるいはランダム表をロールしたり選んだりする(ロールしても選んでもよいとルールブックに明記されている)のが主な仕事になっているですぅ。
これだと目標値を【余力】で削りきればいいとなるかもしれないけど、ダイスをロールすれば出目17~18で本来の行動に加えて少しいい影響を受けられる小クリティカル、19~20で本来の行動に加えてさらに幸運な出来事が起こる大クリティカルが発生すると、本来より20%の確率で“想定以上の結果”を得られ、さらに消費した余力が戻ってきたり支払いを踏み倒せるようになっているですぅ。
もちろん、出目1が出ると悪いことが起こり、GMは本来PCに経験点を与えないと使えない“運命の悪戯”(GM Intrusion)を行使し、ちょっと悪い結果をPCに押しつけることができるですぅ。
この判定システムの面白さは、目標値削りによる判定踏み倒しのシステムを実装しつつ口の巧みなプレイヤが行なう演出によるボーナスを一定値に押さえて判定の重要性を確保し、ダイスをロールすれば20%で“テーブルの誰もが予想もしなかった”華々しい成果を得られることですぅ。ここがデザイナのプレイングノウハウをシステムに落とし込んだシステムの要に感じられましたぁ。
PC作成は“私は[背景]な[役割]で、[分野]が得意”という文章で表現できる3つのパック化されたデータを取得し、いくつかの自由割り振り点を振り分けるシステムですぅ。
基本的な役割分担は【余力】と【キレ】を決定するGlaives(戦士)、Nanos(魔法使い)、Jacks(盗賊)の[役割]で行ない、あとはそれを補強する技能(Skill)や異能(Special Abilitiy)、装備で表現するので、コンボを考えれば強さの幅はあるけど最低限役割の仕事はこなせるようになってますぅ。
と、まだぱっと見ただけだけど『Numenera』はDnD Nextとお互いに影響されあっているような部分も散見されるものの、モンテ・クックが志向する“強いやつが強いやつと戦う”ゲームへとより深く斬り込んだシステムになっているように見えたですぅ。