2014年04月15日 [長年日記]
§ [Liber] 小関隆『近代都市とアソシエイション』
『近代都市とアソシエイション』は、19世紀後期のイギリス都市部で開花した労働者のクラブ文化に焦点をあて、アソシエイション(自発的な人間集団)がいかにして誕生し、それがどんな役割を果たしていたかを解説しているですぅ。
この本ではまず、上流階級が労働者を啓発して社会問題を解決すべく設立した労働者クラブに、さまざまな理由から金銭や時間に余裕を持っていた労働者が加入しつつ、自分たちが楽しめる娯楽を導入していき、金銭的にも自分たちで回転させられるようになっていくクラブ文化成立の経緯から説明されてますぅ。
こうして成立したクラブというアソシエイションは、仕事から私生活まで常につきまとわれる関係ではなく、クラブでの活動中だけ結びつく、すべてを要求されない軽い人間関係として都市に住む人々のニーズに合ったものであったと著者は書いているですぅ。
選挙法の改正で労働者も政治に関わることができるようになると、クラブの自治精神が市民としての意識であるシティズンシップを育みながら、政治活動の母体にもなっていく様子が、当時のイギリスで起こっていた労働者階級の再編成にも絡め、急進主義の台頭と衰退、そして地方政治への参加と時系列を追いながらまとめられているですぅ。
一方、未成年や女性、最貧困層、外国人など会員になれない人々はクラブ文化と縁がなく、もちろん彼らはクラブによる相互扶助などの恩恵にもあずかれなかったことなど、クラブが基本的に会員のみに向けた組織であることにも触れられていますぅ。
人々がどうやって都市ならではの人間関係を築くための基盤を作り、それがどうやって他の組織や地方政治や国政など、より大きなレベルの関係と接続していたかを重点的に解説しているので、山川のリブレット全般にいえることだけど単一テーマの読みやすい本だったですぅ。