ネコぶんこ


2012年02月08日 大西洋の向こうからメールを送ったのは、当時エセックス大学の学生だったロイ・トラブショーとリチャード・バートルだった。 [長年日記]

§ [DnD][4e][HotEC] 『混沌を形作る:クラスとテーマ(Designing Chaos: Classes and Themes)』

デザイン&デベロップメント

著者:ロバート・J・シュワルブ

元素の力とは何か、それをどうプレイヤーに使わせるのか? これらは去年のD&D Experienceで私に投げかけられ、私がPlayer's Option: Heroes of the Elemental Chaosの仕事をしている間つきまとっていた質問だった。既にゲームで一般的なクラス、さらにテーマ、特技の組み合わせ、さらにキャラクターをカスタマイズする他のルールの要素を考えると、収録するクラスに新しいパワー源を持ってくるという考えは難しかった。さらに難しい役目だったのは、元素の力は既にゲームで垣間見えていた要素だったことだ。君は混沌のソーサラー、ウィザードのパワー、さらに原始のクラスの中にそれを見ることができた。そして君が魔法のアイテム、伝説の道、さらなる方のオプションを探せば、君はゲーム全体に元素が“侵食”していることを見つけるだろう。キャラクターは既に一定、あるいは他の形で元素のエネルギーに触れられるため、元素のパワー源を新定義するのはできそうにもないことに思えた。

そしてある考えが私に一撃を喰らわせた。その鍵はキャラクターが元素の力を使う手段と目的だった。D&Dのキャラクターは他の手段で元素のエネルギーに触れることができる。混沌のソーサラーは下方次元界から秘術で生の力を導く。原始のキャラクターは原始精霊の導きにより元素の力を招来する。大地の領域のクレリックは信仰の助けを借りて土の元素を操る。どの事例でも、他の魔法様式によって元素のエネルギーに触れている。

この考えを念頭に置けば他のパワー源とのつながりも論理的に説明できるので、私はそれら既存の元素の力を体系づけた。他の冒険者は直接利用するための手段を持たないため、元素のエネルギーに触れるためには異なる形式の魔法に頼らざるをえない。この考えは私を元素のクリーチャーは専用の元素の力を持っているべきだという結論に至らせた。[元素]キーワードのパワーを拡張し、元素の純粋な部分を生まれつき顕現させられるようにする。

この極端な構想と奇妙な思いつき――それは元素魔法が形而下に現われて創造されたクリーチャーというものだった――は唯一であるべき元素の種族(ジェナシ)がその位置にあるためD&Dのプレイヤーに紹介するのは難しいということになった。だが私が企画の開始時に確認した問題の解決策として、それは意味をなした。私が求めていたのは既存のキャラクターをエレメンタルへと変成させるが、代償として特技を要求しない(これではかなり退屈になる)ものだった。我々は新種族の作成を検討したが、既存のキャラクターのプレイヤーもそれを使えるようにしたかったため、その方法を捨てた。そして我々は人気と柔軟性を持つ、キャラクター・テーマに目を向けた。私たちはキャラクター・シートを最低限書き換えるだけで変成の理由付けとなり、既存のキャラクターのパワー源に触れることができるテーマをいくつか作成できた。

この本に収録されているほとんどのテーマでは開始時特徴でクリーチャーの起源を変更し、それが起こった理由をいくつか提示している。たとえばデーモン・スポーン(このテーマは第1版のMonster Manual 2に収録されていたalu-demonからデザインの着想を得た)。このテーマを持つキャラクターは彼や彼女の体にデーモンの末裔を示すもの――角、翼の名残、尻尾のようなもの――を持っている。キャラクターは他の種族の一員かもしれないが、デーモンの血によってエレメンタルとして扱われる。他の、たとえばファイアクラフターのようなテーマは、彼らがプライモーディアルの欠片、元素の末裔であること、あるいは“元素の渾沌”にさらされることで、エレメンタルとして蒸留されたことを表現する。

元素の末裔の問題を解決し、我々は元素のエネルギーを既存のパワーとは異なる使い方をする元素のパワーをどう作るか模索した。テーマのパワーと利益は、テーマと関連する特定の要素に集中する傾向がある。たとえば、ウォーターシェイパーのテーマは君にバフェッティング・ウェーヴという敵に向かって崩れていく水の壁を作ることができるパワーを与える。テーマはその要素を強く反映して表現するテーマの利益を与える。水はしばしば交流、変転、そして癒しと結び付けられるため、ウォーターシェイパーは〈治療〉およひ〈看破〉を強化され、君と君の味方の精神を繋げるパワーや、君がその外見を変化させて長時間そのままで楽しめるパワーを用意した。

この本ではこれらの元素魔法が元素のクリーチャー天与のものだという考えを示しているが、例外がある。キャラクターは真の元素魔法を、元素の後援者に与えられて帯びることができる。イェニチェリのテーマは元素のパワーをジンニーの後援者から下賜される。イェニチェリが元素のパワーを使う時、彼や彼女はその力を直接その後援者から引き出している。

テーマはパワー源について多くの役割を果たしたが、我々はクラスを拡張する時も、そのクラスが元素のエネルギーを使っているかもしれないパワーと歴史的にどう関わっているのかを示した。拡張されるクラスを選ぶのは簡単な仕事ではなかったが、テーマに助けられて我々はいくつかのクラスをふるいにかけた。我々は“元素のファイター”を作成しなかったが、それには理由が無いわけではない。君が元素の雰囲気を持ったファイターをプレイしたいなら、君は元素のテーマを選ぶだけでそうなれるからだ。いくつかのアイテム、特技、伝説の道、そしてその他メカニクスの塊を集めれば、君はファイターと他のクラスの境界線をぼやけさせること無く元素との繋がりを表現できる。

そして、我々は5クラスを拡張することにした。ウィザード、ウォーロック、ソーサラー、ドルイド、そしてモンク。私たちはどれについても、新しいサブクラスを作るか既存のクラスに新しい作成オプションで拡張するか(いくつかはサブクラスをデザインした後にも)検討した。ソーサラーを除き、我々はそれら新しいものを作成する代わりにクラスを拡張することにした。理由? これを読んでいる君は、既にキャラクターを持っているだろう。君に新しいキャラクターを作成させたり大幅に既存のキャラクターを修正させるより、我々は君にできるだけ少ない修正でこれらを使えるようにしたかった。この場合、君がプレイヤーズ・ハンドブックのウォーロックをプレイしていても、君は契約を変更する、異なるパワーを選ぶなどでよく、どちらにせよ君は基本的なキャラクターの構想をそのままにしておける。

Dark Sun Campaign Settingのファンならクラスの章の類似点を多く見出せるだろうが、これはこれら元素のキャラクターが既存のゲーム(例示したものの場合、他のキャンペーン・セッティング)へ簡単に導入できるようにするためである。センチネルのドルイドは荒野のドルイドに砂漠の世界にぴったりの、元素魔法を操り世界の荒野を守護するという新たな選択肢を与える。

この本にはDark Sunと相通じる部分もあるが、我々はまた第2版のセッティングAl-Qadimも呼び起こした。私は常々シャイルのキットが興味深くて魅力だと考え、その旧版に取り残されていた素晴らしい構想をウィザードの作成オプションとして復活させようとくわだてた。シャイルの作成オプションを選ぶと、君はジンのしもべを手に入れ、彼らは突然消えると“元素の渾沌”の諸侯から君のために呪文をもらってくる。君の同盟者であるこの小さなエレメンタルで君はハリー・ポッターから思いついたウォータリィ・スフィアから、たとえばメルフズ・ミニチュア・メテオスディグリバース・グラヴィティなどの古典的呪文まで、広く元素のパワーに触れることができる。君がシャイルの作成オプションを選ばなくても、新しいウィザードのパワーは、君がプレイしているさまざまなウィザードの冴えた新呪文としてすべてのウィザードに開放されている。

我々はウォーロックとモンクについてもウィザードとドルイドのデザインと同じようにパターンとメカニクスの拡張を行ない、ソーサラーのためには新しいサブクラスを作成することにした。単純化された戦士のスレイヤーのように、プレイが楽な呪文使いを作成することについては多くの議論があった。エレメンタリストは“元素の渾沌”から直接力を引き出し、作成時に選んだ専門分野で個性付けられる。エレメンタリストはエレメンタル・ボルトを投射するか、サブクラス独自の元素のパワーを使用できる。クラスの専門分野によってエレメンタル・ボルトのパワーはダメージ種別や強化のオプションに修正を受ける。エレメンタリストは一日毎攻撃パワーを修得しないため、クラスの無限回パワーがより強力な傾向がある。その結果、誰でもプレイできていい時間を過ごせる影響力と決定力を持った撃破役に仕上がった。

Player's Option: Heroes of the Elemental Chaosはリッチ・ベイカーと私がなじみ深く新しいゲームの領域を探り始めた時から、面白い企画だった。多くの要素を旧版の内方次元界から呼び戻して“元素の渾沌”と関係した新しいクラスやテーマに結びつける。さらに、この本のオプションによって君がどれくらい深く元素の力を受け入れるかを決定することができる。君は元素の遺物を発見してその力を引き出すかもしれないし、生の混沌のエネルギーを吸収して真に“元素の渾沌”の英雄になるかもしれない。元素の力は君の命令に従い、それらにできないことはほとんど無い。

著者について

ロバート・J・シュワルブはダンジョンズ&ドラゴンズウォーハンマー・ファンタジー・ロールプレイ氷と炎の歌RPGスター・ウォーズRPG、そしてd20システムをはじめとしたおよそ200作品のデザインやデベロップに貢献している。彼が最近ウィザーズ・オブ・ザ・コーストで行なった仕事の一部は、Book of Vile Darkness『Spiral of Tharizdun』のfortune card、そして小説Death Markである。ロブは『Dragon』『Dungeon』への常連寄稿者でもある。著者に関するより詳しい情報は、彼のウェブサイトwww.robertjschwalb.comか、彼をTwitterでフォロー(@rjschwalb)することで得られる。