2012年03月13日 それどころか、彼は本作をコンピュータではなくタイプライターで執筆し、物語の舞台であるデジタル空間については、特定のテクノロジーを参考にすることもなく、彼自身の想像で描写したのだという。 [長年日記]
§ [DnD][4e][Liber] マイク・ミアルス、ビル・スラヴィセック、ロドニー・トンプソン『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』
Amazon.co.jpのほうで『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』の予約が始まってもう結構経っているから出遅れた感があるけど、収録されているクラスなどを大雑把に紹介するですぅ。
クラス
『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』で紹介されているクラスはウィザード、クレリック、ファイター、ローグという赤箱からの定番4クラスですぅ。これらのクラスにはこれまでにも存在した作成オプション、伝説の道などを発展的に再定義したサブクラスという概念が導入され、そのクラスらしい物語や設定に合った能力を提供しているですぅ。
最初から全部決めるのではなくレベルが上がるごとにクラス特徴で能力が増えていくから、プレイヤの慣れとPCの成長を両立できるような工夫もされているですぅ。ただ、後から得られる能力で参照する能力値を考えずにPCを作ってしまうこともあるので、DMは柔軟に能力値の入れ替えや再作成を認めたほうがいいかもしれないですぅ。
ここでは、それぞれのクラスをざっと紹介するですぅ。
ウィザード(メイジ)
ウィザードは幻術、心術、力術といった得意な術の系統を選び、そのクラス特徴でキーワードのついたパワーを強化して得意分野を表現する制御役、メイジのサブクラスが紹介されているですぅ。たとえば力術だと1レベルで[力術]によるダメージ・ロールの出目1を振りなおし、5レベルで攻撃的な呪文を操ったり生の力に慣れることで〈威圧〉および〈持久力〉に+2のボーナス、10レベルで攻撃呪文を極めることでダメージ種別に対する抵抗を無効化すると、一芸に特化していく様子が表現されていますぅ。
また、メイジはマジック・ミサイルのパワーを自動修得するので、無限回パワーの選択も少し余裕があるですぅ。
メイジの伝説の道、エニグマティック・メイジは特化した系統に従って得られる特徴が変わるもので、自然とその道に特化していけるようになっているですぅ。
メイジは呪文書に呪文(パワー)を記録する“メイジの呪文書”というクラス特徴でパワーのレパートリィがとにかく増え続けるので、幅広い呪文を使えるようにも特化するようにもできる、やり込みがいがあるクラスになっているですぅ。
クレリック(ウォープリースト)
クレリックのサブクラスは指揮役のウォープリーストで、信仰に合わせた領域を選択することで遭遇毎パワーやヒーリング・ワードの付加効果など、成長の方向性がほぼ決定されるようになっているですぅ。領域は敵への妨害で味方を支援する嵐の領域、味方への直接的な支援が多めの太陽の領域と、対照的なものがふたつ収録されているですぅ。
伝説の道のデヴォート・ウォープリーストもエニグマティック・メイジと同じように選択した領域で得られる特徴が変わるものになっていて、無限回パワーの底上げなどが得られるですぅ。指揮役はパワーを的確なところで使うために繋ぎとして無限回パワーを使う機会も多いので、これはうれしい特典といえるですぅ。
ウォープリーストは領域を選択することですべての遭遇毎攻撃パワーが埋まり、成長で選択するのは一日毎攻撃パワーと汎用パワー(『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』収録のものはすべて一日毎)というスタイルになっているですぅ。これは、信仰する領域の特典はほぼ一本道で呪文は任意に選択できる旧版のクレリックの感覚と似た部分があり、よく練られているデザインだと感じましたぁ。
また、病気の治癒などを行なうホーリィ・クレンジング、死者の蘇生を行なうリザレクションはクラス特徴として自動修得するパワーなので、パワーを選べる時は気兼ねなく好きなパワーを選べるのもうまい作りですぅ。
ファイター(スレイヤー、ナイト)
ファイターには撃破役のスレイヤー、防衛役のナイトとそれぞれ異なる役割が割り振られたふたつのサブクラスがあるですぅ。どちらもさまざまな構えを取って攻撃を強化し、レベルに応じて使用回数が増える遭遇毎パワーのパワー・ストライクで渾身の一撃を振るい、レベルアップするにしたがってクラス特徴でダメージやできることが増えるという、武器を駆使して戦う戦士というクラスに与えられた物語、設定を直感的にとらえられるデータでクラスが構成されているですぅ。
また、修得できる汎用パワーも修得済みの技能を前提条件にしたも のが多く、より深く技能を学ぶといった演出と選択肢を絞っていくシステム面での効果を両立させているですぅ。
スレイヤーは軽快に動いて敵の隙を見つけたり位置取りを工夫してより大きなダメージを与えることができる撃破役で、両手持ちのアックス類か刀剣類で戦うことを得意としているですぅ。あらゆる武器に適用される攻撃ロールやダメージ・ロールを強化する能力は【敏捷力】を参照するので、遠隔武器でも結構戦える戦士になっているですぅ。
伝説の道のミシック・スレイヤーでは、一度敵を倒したらその勢いで遭遇終了までダメージが増加したり、パワー・ストライクで敵を押しやるなど、より力強い部分が強調されていくですぅ。
またスレイヤーは機動性も強力で、伝説級で機会攻撃で受けるダメージへの抵抗を得て、神話級になると減速状態に完全耐性や鎧による移動速度へのペナルティ無視などを得るので、多少の攻撃や足止めはものともせずに敵の中を駆け抜けられるようになっているですぅ。
ナイトはディフェンダー・オーラのパワーで敵の移動や攻撃を阻害する防衛役で、片手持ちの刀剣類かハンマー類と盾を組み合わせた戦い方が得意ですぅ。また、汎用パワーでは味方に支持を出して移動や回復の手助けを行なうなど、指揮役めいたことも若干行なえるようになっているのが特徴ですぅ。
伝説の道はストールワート・ナイトで、戦闘が始まって最初のターンに移動力とダメージを強化したり、パワー・ストライクで敵を横滑りさせて有利な場所に追い込んでいくなど、位置取りの妙で味方を助ける戦術家としての要素も強化されていくですぅ。
ナイトは英雄級で修得するシールド・ブロックのパワーでダメージを軽減したり、伝説級では重傷状態であらゆるダメージへの抵抗を得て、神話級になると底力で回復力を2回分使えるなど、とにかく頑丈になって敵を攻撃を受け止めながら戦えるので余裕を持ってプレイできると思うですぅ。
ローグ(シーフ)
ローグのサブクラスは撃破役のシーフで、同じく魔法の力に頼らない武勇のクラスであるファイターと同じように、一日毎パワーを持たずに“トリック”と名前がついたさまざまな移動用パワーとレベルに応じて使用回数が増える遭遇毎パワーのバックスタブ、そして急所攻撃で戦うクラスになっているですぅ。
この“トリック”の名前がついた移動用のパワーはもっとも特徴的なシーフのメカニズムで、これらのパワーで敵に隙を作って戦術的優位を得たり、攻撃がヒットしたら伏せ状態にさせるなど、彼らが得意とするトリッキィな戦い方を再現しているですぅ。
伝説の道のマスター・シーフでは、ターンに1回しか使えない急所攻撃をアクション・ポイントを使用して得たアクションでも使用可能にする、隠れ身した状態で攻撃してまた隠れ身をする、急所攻撃で1の出目が出たダイスを振りなおすなど、より鋭い一撃を加えられるようになるですぅ。
他にもシーフは即応アクションでの移動を行なう汎用パワーや神話級で得られる技能を2回ロールして高い結果を使う能力などで、目端が利き確実に仕事をこなすプロとしてのかっこよさを十二分に表現できるクラスに仕上がっているですぅ。
神話の運命:インドミタブル・チャンピオン
『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』には、21レベル以降のどんなPCでも恩恵を受けられるようにデザインされたインドミタブル・チャンピオンという神話の運命が収録されているですぅ。
任意の能力値上昇、追加ヒット・ポイントおよび防御値へのボーナス、ヒット・ポイントが0になったところで回復するエピック・ティナシティ、自分への攻撃のダイス目を1にするアンマッチド・ディフェンスの一日毎パワーふたつと、汎用的な特徴でまとめられていて運用も楽になってますぅ。
種族
『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』に収録されている種族はエラドリン、エルフ、ドワーフ、ハーフリング、ヒューマンとなっていて、かつてのエルフのうち魔法使い成分がエラドリン、戦士成分がエルフに細分化されたのを除けば、赤箱を再現していることにもなる定番種族が紹介されているですぅ。
これらはどれも1種族あたり6ページがあてられ、ゲーム用のデータに加えて身体的特徴、精神性、その種族はどんな共同体に住んでいるのか、典型的冒険者、ロールプレイの指針といった紹介がまとめられているですぅ。
技能
技能の章では技能の使いみちや難易度などがまとめられていて、プレイするときはこれ一冊でもだいたい把握できるようになっているですぅ。
特技
『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』に収録されている特技は前提条件の無いものや能力値を前提にしたものばかりなので1レベルのPCでも最初からたくさん選択肢がある上、武器や装具の種別に応じて攻撃ロールへのボーナスに加えて特典が得られる練達シリーズなど、PCの個性化にも有効なものがそろっているですぅ。○○に加えて△△という特技が多いので、特技の利益を得たと感じる時が多いのもいいところですぅ。
装備と武器
『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』には鎧、武器、そして冒険で使うための装備も一通り紹介されているですぅ。魔法のアイテムについても価格や扱い方などの基本的なルールと、店で買うことも可能なコモンのものがいくつか紹介されているですぅ。
日本語版独自要素
『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』日本語版には、付録としてWotCの公式サイトで『プレイヤーズ・ハンドブック』のクラスを新書式でサブクラスとして紹介していたClass Compendiumなど、プレイエイド記事の和訳が掲載されるそうですぅ。
『プレイヤーズ・ハンドブック』のウィザード、クレリック、ファイター、ローグはそれぞれアーケイニスト、テンプラー、ウェポンマスター、スカンドレルで、どれもクラス特徴の他にふたつの無限回パワーと、それぞれひとつづつ遭遇毎パワー、一日毎パワーを持ち、多彩な技で戦うクラスになっているですぅ。
どこまで訳されるかはわからないけど、クラス・コンペンディウム記事には『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』のサブクラスとこれら既存サブクラスの間でパワーを融通する特技などもあるので、そこまで訳されていれば、ちょっと小技を持っているスレイヤーやナイト、シーフなどがプレイできるですぅ。
既存ユーザ向け要素
サブクラスはあくまでもクラスの成長などをより詳しく定義するための構造なので、“ウィザード/攻撃/1”のようなパワー右上に書かれた“クラス/種別/レベル”部分が共通していれば、『PHB』などで作成したPCでも『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』のパワーを修得することは可能で、逆もまたしかりですぅ。
ここで面白くなってくるのはヒロイック・エフォートを得ずにボーナス無限回パワーを選択したヒューマンで、ナイトにブラッシュ・ストライク(『武勇の書』)を修得させておいてちょっとダメージを稼いでおくなど、小技を仕込むことができるですぅ。
また、伝説の道で得られる特徴にはきちんと注記がしてあり他にビジョンがあるならその伝説の道を選ぶことも可能なので、互換性は充分取られているですぅ。
まとめ
こうして『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』を見てきたけど、紹介されているクラスや種族はどれもベーシックDnDの赤箱に収録されていたものから構成されているですぅ。これをあざといと感じる向きはあるかもしれないけど、新規プレイヤにはこれがDnDだと提示できるだけの力があり、旧版でプレイした経験があるプレイヤには“そうそうこれこれ”と思わせ故きを温ねて新しきを知ることができる最大公約数としての要素になっているですぅ。
そのままPCを作るだけでも充分プレイできるし、パワーと特技によるコンボも色々と仕込まれている(日本語版ならおそらくもっと増える)ので、とりあえずプレイヤとして新しくゲームを始めるならこれを買っておけば間違いは無いと断言できる佳品になってますぅ。