ネコぶんこ


2013年06月03日 ロールプレイング・ゲームは社交的な遊びであり、楽しく遊ぶことができなくなれば、プレイは行なわれなくなり、グループも解散してしまう。 [長年日記]

§ [DnD][4e][LnL] 『ヒット・マイ・ポイント(Hit My Points)』

マイク・ミアルス

D&D Nextのプレイテストによって、私たちはヒット・ポイントがD&Dでジャンル再現を行なうためのシステムでもあることを認識した。ジャンル再現とは、ロールプレイング・ゲームである種の物語を作り出すためにシステムの一部を利用しようという考え方だ。

たとえば、『レイヴンロフト』セッティングはゴシック・ホラーを基調としたものだ。それはD&Dのキャラクターに恐怖と正気を数値として導入した。それらのルールはホラーRPGによくあるもので、『レイヴンロフト』の雰囲気にも適したものだ。一方、これらのルールは『フォーゴトン・レルム』のような英雄的な世界では意味をなさない。『レイヴンロフト』では、恐ろしいヴァンパイアは高レベルのファイターの精神を恐怖で破壊したり、恐怖のあまりキャラクターを逃げ出させることができる。『レルム』では、高レベルのファイターは剣を抜き放って化け物へ飛びかかる。

それがそれぞれのキャラクター、特に高レベルのものがより弱い存在を殺す攻撃に耐えられるかどうかの指標になるため、ヒット・ポイントはD&Dのジャンル再現システムになる。英雄がなみいる雑兵を一度に蹴散らせるなら、D&Dのキャラクターはキャラクター・レベルを上昇させることでより厳しい危険を生き残ることができるようになる。ヒット・ポイントはそれを可能にする大きなものだ。

私たちはしばしば、なぜそれらはすぐに回復するのかなど、ヒット・ポイントの表現について異なる意見を見てきた。これらのコメントを読んでいくと、私たちは重なりあうさまざまなジャンルの主題が見えてきた。君たちのキャンペーンのキャラクターは壮大な物語の主役なのだろうか?それなら君たちはヒット・ポイントを回復させる簡単な方法を望むだろう。君たちのキャンペーンはいちどの間違った決定が破滅へと繋がる、適者生存の原理で動いているのだろうか?それなら君たちはヒット・ポイントの回復に長い時間がかかったほうがよいだろう。

D&DというRPGはその中にいくつかのジャンルを内包するようになった。君たちはみんながゲームをどう語るかでこれを知ることができる。いくつかのグループは世界が激動する事件の中心に彼らのキャラクターを置いた複雑な物語を動かしていく。他のグループはただ長いあいだ冒険をしているありふれた集団のひとつであるキャラクターをプレイし、財宝を求めて遺跡へ踏み込み、命の危険をダイスの気まぐれに賭ける。君がロールプレイング・ゲームと言うとき、それはロールプレイングとゲームのどちらを強調するだろうか?

ここに正しい解答はなく、そのために私たちはヒット・ポイントをDMがカスタマイズできるようにする考えを許容した。それはつまり、私たちがどこかを基準にしなければいけないということだ。そして基準はここにある。

  • ヒット・ポイントは疲労や怪我などを含んだ肉体の耐久度を表現する要素だ。より多くのダメージを受けているときは、より大きな傷を負っている。
  • ヒット・ポイントを回復するためには、たとえば回復呪文をかけてもらう、ポーションを飲む、あるいは長時間の休憩を取るなど、それらの傷を癒すための論理的な行動を取らなければならない。現在、私たちはダンジョンや野外での休憩は最大ヒット・ポイントの半分まで回復させられるようにしようとしている。最大ヒット・ポイントまで回復させたいなら、君は宿屋やその他の文明圏の快適な場所で宿をとり、数日をかけなければならない。
  • また、この宿を取る考えはDMとプレイヤーへダンジョンに滞在していない間の交流について考えることを促進させることにも繋がるため、私たちは好ましいと考えている。町で休んでいる間、君は商売を始めることも、貴族たちと過ごすことも、武器職人に弟子入りすることもできる。こうした間隙を物語で埋める行為はキャンペーンでの交流と関係性をよりゲームの中で目立ったものにできる。コア・システムの範囲内で町に面白そうなことを置けば、冒険者の生活すべてを内包するゲームを作成することができる。下水道の調査や神出鬼没のワーラットと戦うことも市街地の冒険の特徴ではあるが、この場合は代表的な交流に重きを置いた冒険にすることもできる。

現在多くのDMが歯ぎしりをしながらこれらの箇条書きに対してこぶしを振り上げる準備ができていることを私が了解していることは頭の片隅に置いていただきたい。これはまさに出発点――卓上RPGを始めようとしている人が最初に触れるところ――であることを思い出してほしい。テーブル間での互換性を最大にするためにはヒット・ポイントの最大値よりも回復のほうが調整しやすいのだ。君はヒット・ポイントのためにどんなオプションがあるか予想できるだろうか?

  • 英雄的プレイを可能にするため、速くヒット・ポイントを回復させられるオプションも君のゲームに導入できる。
  • 君は魔法が希少な、あるいは存在しないキャンペーンのために、魔法を使わない回復のオプションを使うこともできる。このオプションを使えばクレリック、ドルイド、バードなどの回復役クラスなしでプレイすることもできる。
  • 君のゲームに宿命点を導入すれば、そのシステムでキャラクターの死は避けられるが物語上の困難に巻き込むことができるようになる。
  • 地味なキャンペーンのために、君は継続的な負傷を再現することもできる。

このやり方の趣旨は、異なるプレイ・スタイルとジャンルを好む人それぞれがD&Dを楽しめるようにすることだ。『レイヴンロフト』『ドラゴンランス』、そして『ダーク・サン』のそれぞれがよりその世界の雰囲気を表現するための異なったヒット・ポイントを導入できると考えてほしい。

次週、セーヴか死のシステムにも関連して私はこの話題をもう少し書いていく。

マイク・ミアルス

マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。