2014年02月17日 [長年日記]
§ [DnD][4e][LnL] 『経験点とレベル(Experience Points and Levels)』
私は多くのDMとプレイヤーが既にテーブルで運用されているものに即してルールを改変することを好ましく思っている。
数週間前、私は職場でプレイテスト用キャンペーンのセッションを行なっていた。キャラクターたちはモンスターの巣を掃討し、囚われの騎士を救出し、悪漢の隠れ家がどこにあるかを知った。私はこの2セッションで行なったことの経験点報酬を計算するよりも、全員が次のセッションでキャラクターのレベルを上昇させようと提案した。
多くのゲームは同じように簡略化しても成立することを、私たちは知っている。コンベンションやオンラインに関わらず、多くのDMは経験点報酬を一旦脇におき、キャンペーンが一区切りついた後でプレイヤーにレベルを上げるよう指示する。それは新しいことではない。特定のDMがやり方を発明したわけでもない。これはたくさんある非公式ルールのひとつで、D&Dという集合意識の中で育まれてきたシステムだ。
経験点を記録し、それらを使ってレベルを上昇させることは、プレイヤーが好きな場所で決断でき、彼らに与えられた特別な挑戦に取り組み、そしてキャンペーンの目標を自分自身で決めるというように、終わりを明確にしていないゲームでは多くの意味をなしていた。こうしたゲームの場合、プレイヤーがブルー・ドラゴンのねぐらを襲撃しようと決めた時、彼らの主たる目的はそれを倒して得られる財宝と経験点である。
しかし、より物語性の高いキャンペーンでは、そのねぐらを襲撃することにより深い目的を持つことがある。キャラクターは優秀な工作員の幹部や王の密偵であるかもしれない。ブルー・ドラゴンは王位についての陰謀を企てる重要な悪漢かもしれない。ドラゴンを倒すことは領邦の危機を救い、キャンペーンの物語を次へ進める鍵になる事件なのかもしれない。こうした種類のキャンペーンの場合、キャラクターの目的として財宝と経験点は二番目、ドラゴンの物語上の重要性に次いだものとなる。
どちらのキャンペーンでも同じモンスター、マップ、そして財宝を使うが、彼らはとても異なる方法でそれらを使うのだ。前者のキャンペーンでは、ブルー・ドラゴンを倒すこと自体が報酬であり、それは財宝と経験点によって反映される。経験点でキャラクターのレベルが上昇することもあるだろうが、そうでない時もある。後者のキャンペーンでは、ブルー・ドラゴンを倒すことはより大きな物語の流れに沿ったひとつの段階である。報酬は王国を守ったことと任務を達成したことに関連付けられ、分捕り品を奪う必要性はなくなる。ドラゴンを倒して得られた経験点で足りなくても、キャンペーンに区切りをつけたことへのお祝いとしてレベル上昇が最高の手段になるかもしれない。
ゲーム・デザインの観点では、これらの異なる方法論は出版するアドベンチャーでどういう形の報酬を実装するのが適切か考えさせられる重要なものになる。かつて、私たちは経験点の報酬を扱ううえで常に義務を怠ってしまっていた。だが、シリーズもののように物語を中心にしたアドベンチャーの場合、このやり方が厄介だとわかるだろう。デザイナはPCが一定のペースでレベルを上昇させられるように、“正しい”数の戦闘遭遇を設定しなければならない。こうしてアドベンチャーのデザインは、経験点が正常に与えられるテンポとあらすじをすりあわせていく作業になる。そうでなければ、キャラクターが期待された速度でレベルを上昇させられず、シリーズものではそこから先の章があまりに難しいかあまりに簡単なものになってしまう。
公式を押しつけるよりよい方法としては、デザイナが両方のオプションを提示し、DMがどうやってアドベンチャーを使うか決められるようにすることだ。D&Dに最初期から存在していた経験点システムへ施されたこの単純な変化は、D&D Nextのデザインを貫く重大な原理原則を示すことを助けてくれる。ゲームは異なるプレイのスタイルを示すとき、必ずオプションを提示すべし――特に基本の方法が多くのDMにとって彼らのゲームを扱う方法にもはや適合していない時には、だ。
マイク・ミアルス
マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。