2013年07月22日 とはいえ、ゲームマスターが膨大な情報を創造しなければならないようなゲームは、他の参加者(プレイヤー)にはあまり喜ばれる存在ではない。 [長年日記]
§ [DnD][4e][LnL] 『D&D Nextのロールプレイ(Roleplaying in D&D Next)』
D&Dがロールプレイング・ゲームから始まったのは誰が見ても明らかである。それは玩具、小説、漫画、ビデオ・ゲーム、そしてボード・ゲームも含むようになった。しかし、D&Dの中心にはRPGがある。
ならば、D&DがRPGたりえるため、ルールは君が君のキャラクターをロールプレイすることを支援するために何をする必要があるだろうか? D&Dのルール・デザインでは多くのものが気が進まないことや、プレイヤーが彼ら自身のものとは異なる人格を演じさせることの間で答えを導くことにある。
まず、私はプレイヤーが自分とまるで異なるキャラクターの決め台詞、特徴、そして目標を設定するとき、D&Dがより楽しいものになってほしい。ひとりのDMとして、私はプレイヤーがキャラクターと設定の間に意味のある関連づけを行なうことが好きだ。
たとえば、私が今やっているキャンペーンのローグはかつて公爵の密偵の一員だった。彼は昔の同僚たちの反逆を告発して処刑するための証拠を提出している。密偵のひとりは逮捕を逃れてローグを殺すことを誓った。こうして私のキャンペーンにはうってつけの悪役がやってきた。それはまた、プレイヤー・キャラクターは密偵が恐怖政治を張りめぐらした町や村を訪れたとき、背中に気をつけるべきだということになる。
私は現在のキャラクター、ウィザードのケル・ケンディーンをその人柄と決め台詞で楽しんでいる。彼はウィザードとしての能力を反映した決め台詞で、私が愛してもいるファイアーボールの呪文を投げつけディスガイズ・セルフの呪文を使うが、5年前の彼はより無法で、混沌として、そして無礼だった。彼は楽しむためにディスガイズ・セルフの呪文を発動してはいなかった。彼は徹底的な無政府主義者で、ディスガイズ・セルフの呪文で小役人になりすまして階級的な組織を蚕食することを楽しみにしていた。
私たちにキャンペーンの中でルールが道具として与えられるなら、それらの道具を使ってキャラクターの個性をどう表現すべきか提示されるべきだ。この層がなければ、D&DはRPGとはいえば単なるファンタジー世界のシミュレータや戦術級の戦闘ゲームになってしまう。それらはあまり多くの仕事をしないが、他の種類のゲームにはない良さをゲームに吹き込むことができるプレイの層である。
当然、それぞれのグループには異なるロールプレイの基準がある。私たちの目標は君にキャラクターのロールプレイを喚起させるアイデアと刺激に加えて説得力ある背景物語、そしてゲームを実現させるために軽く取り回せるシステムを提供することだ。君たちがキャラクターのロールプレイを強いられることなくできるものが理想である。
現在のゲームの草稿では、キャラクター作成の一部として属性以外にも少しの肉付けがされる。君のキャラクターはそれと関係した世界、人々、場所、あるいはキャラクターにとって意味があるものと結ばれている。君の欠点がキャラクターの弱点である一方、君の理想はキャラクターが最悪の事態に陥ったときに長所を活用してそれを切り抜けることだろう。
要約するなら、これらの考えは属性によって提供されるものを起点に肉付けしている。それらを抽象的な思想から行動、もの、そしてキャンペーンの世界に基づいた信条へと変換するのだ。
それをより簡単にするため、現在の草案では背景に君のキャラクターを世界に結びつけ生き生きとしたものにできる表を載せている。追加の表では属性を基準にして長所と短所を定義している。たとえば、君が職人ギルドの一員だったなら君をギルドの会員に推薦し後援してくれる貴族の家に忠誠を誓うかもしれない。反面、君はギルドを分裂させようとする犯罪結社を敵に回している。DMはキャラクターの出発点として年月と傾向をあらかじめ彼らのテーブルに準備できる。君はもちろん、表に心惹かれるものがなかったならこれまで通りに自作してもいいし、単純にロールしてその結果を使ってもいい。
最後の表は君のキャラクターが冒険の旅に出るきっかけと、さしあたって解決すべき重要な問題や問いかけを提供する。君はおそらく自分が容疑者であることを示す状況証拠が揃っている状況で主人が殺されたためにギルドを離れた。もしかしたら、君はギルドに手を伸ばしてきた結社への潜入捜査員になっているのかもしれない。DMは君の考えを元にキャンペーンを作ることができるし、君は自分だけで完結させることもできる。
その仕組み、私たちが考えているわかりやすく簡単なシステムは“ひらめき(inspiration)”と呼ばれている。君が自分のキャラクターの個性、目的、あるいは信条を反映した行動をキャラクターに取らせるとき、DMは君に“ひらめき”を報酬として与えることができる。重要なのは君が奇策を描写する、君のキャラクターが言葉を発する、あるいは君がプレイの中でゲームに命を吹き込むような冴えた行動をした場合ということだ。ゲーム内の出来事が君のキャラクターの目的や信条にとって重大なことを証明することで、君はキャラクターが勝利を勝ち取るための後押しをする力と決意を引き出せるのだ。
君は“ひらめき”で判定、セーヴィング・スロー、あるいは君のアクションによる攻撃への有利を得られる。また、君は遭遇や場面のあいだに発生するロールのためにそれを持っておくこともできる。さらに、君はその場面の間なら別のキャラクターに“ひらめき”を与えることもできる。この場合、君のキャラクターが思いついた“ひらめき”がパーティの仲間を助けることになる。君が一度に持てるのはひとつの“ひらめき”だけだ。
“ひらめき”を得られるかどうかはDM次第だが、経験的にプレイヤーは重要な場面や大切な戦闘で一度は得られるはずだ。“ひらめき”はすぐになくなるので、君はそれを失うまでのゲーム内時間数分で使わなければならない。
DMが“ひらめき”を与える決断をするとき、DMはなぜ“ひらめき”を与えるかの決断もしている。先ほども書いたように、君はそれを自分のグループがゲームに命を吹き込もうとする別のことや、行動に対する保険、あるいはその他の全員がよりゲームを楽しむために使うことができる。
DMが持つさまざまなものと同じように、“ひらめき”は厳密で杓子定規な適用よりもより手腕や芸術性を要求される道具だ。よいDMは“ひらめき”をテーブルの全員にとってよりよいゲームを後押しするために使う。これは経験点にするほどではないが、よいプレイに対するちょっとした報酬と考えてほしい。
“ひらめき”システムは君のキャラクターをロールプレイすることによって得られるより深い報酬への入り口だ。グループがより物語性の強いゲームを望むなら、“ひらめき”の報酬はより自由に他の用途に適用できる。君はプレイヤーに対し、他のプレイヤーがよいロールプレイをした瞬間に与えることにだけ使える“ひらめき”数点を与えることすらできる。より詳細なルールを提供するためにも、私たちにはゲームのコアに“ひらめき”を焼きつけた基本構造が必要なのだ。
マイク・ミアルス
マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。