2014年04月28日 [長年日記]
§ [DnD][DnDNext][LnL] 『兵法(The Art of War)』
ファンタジー小説や映画ではしばしば、善と悪の力を象徴するふたつの軍勢が世界の命運を賭けて激突する大戦争を最後に持ってくる。D&Dでは常に個々のキャラクターに焦点を合わせていたが、このゲームでも長い間いくつかの異なる方法で大規模戦闘のルール化を試みてきた。(事実、中世の戦争をミニチュアで戦う『Chainmail』のルールはオリジナルD&Dが生まれる鍵になるひらめきのひとつだった。)私たちがプレイヤーとD&D Nextに求めるオプションについて語らったときも、大規模戦闘のルールは多くのゲーマのほしいものリストで第一位だった。私たちの答えはD&Dで軍勢同士の戦いを行なうためのルール、Battlesystemだ。
D&D Nextのコア・システムのオプション部分にあるBattlesystemは、標準的なD&Dの戦闘システムをもとにしてミニチュアとマス目を利用したものである。それで使うモンスターとキャラクターのステータスにはほとんど変更がない。君がD&Dの戦闘ルールを知っているなら、すでにBattlesystemの90パーセントに慣れ親しんでいるということになる。
ルールの大きな変化は縮尺に絞られている。大人数の戦闘では少数の戦闘よりも多くの時間がかかるのが当然なので、Battlesystemの大規模会戦では1ラウンドが1分として扱われる。Battlesystemは正方形のマス目を縦横20フィートとして扱い、ひとつのミニチュアで多数のクリーチャーを表現する。Battlesystemで1体のミニチュアは“分隊”――ひとつの隊として戦う戦闘員の集まり――を意味する。10体の小型あるいは中型クリーチャー、また、5体の大型クリーチャーや2体の超大型クリーチャーはひとつの分隊を作る。プレイヤー・キャラクターと強力なモンスターを含むNPCは、1体のミニチュアで表現する武将として管理される。武将はそれだけでも戦えるし、大量の敵に囲まれて数で押されることを避けるために分隊へ参加することもできる。
ほとんどの分隊はより大規模な部隊の一部に組み込まれ、散兵か連隊として定義される。連隊は戦場へ対応するために、攻撃を撃退するための盾を構えた戦士の隊列、重装歩兵、重装騎兵、あるいはホブゴブリンの傭兵といった、異なった兵科の戦闘員を混合して組織だたせたものだ。対照的に、散兵はよりゆるい陣形の素早く行動的なものだ。軽装騎兵、斥候、エルフの弓兵、そして混沌なるノールの戦隊などが典型的な散兵の分類で、電撃作戦や戦場の大勢を見極めるための迅速な進軍に使われる。
Battlesystemでの移動は通常のD&Dルールより大規模になり、ミニチュアがマス目の中で陣形を組んで動く。移動困難地形、隠蔽、壁、その他の地形要素はコア・ルールと同じように機能する。戦闘はコア・ルールと同じように処理される。部隊が行動するとき、すべての分隊は通常通りに攻撃とダメージのロールで他の分隊を攻撃する。Battlesystemはお互いの規模を拡大し、両軍の戦闘員数名が1分間お互いに戦う様子を、戦闘員の戦闘ステータスを使って1回のダイス・ロールで再現する。
分隊が武将クリーチャーに攻撃した場合、1回の攻撃で分隊のクリーチャーすべての処理を行なう。武将はその悲惨なことになる危険がある攻撃を味方の分隊と隣接し、分隊のクリーチャーに防備を任せることで避けることができる。敵の分隊は武将を攻撃することはできるが、それは1回分の攻撃だけだ。
武将は分隊と同じように機能し、攻撃を行なってダメージを出すのはコア・ルールで行なう。武将が分隊に攻撃するときも、1ラウンドあたり1回の攻撃を行なう。しかし、2体の武将が戦うとき、彼らはBattlesystemの1分ラウンドの間に通常のD&Dルールを使用して10ラウンドの戦闘を行なう。彼らの軍勢が衝突する戦場の中心で、強大なレイスがラサンダーのクレリックと一騎討ちをすることもありうるのだ。処理速度を向上させたいのなら、君はそれぞれの武将のために10回の攻撃をロールしてダメージを算出してもいい。
士気は大きな戦いでその鍵を握る。部隊がその分隊の半分を失ったら、それは【判断力】のセーヴィング・スローに成功しなければ逃亡を始める。武将はそれら壊走している部隊をまとめ直すことができる。
Battlesystemのルールをさらに詳しく解説すると、勝利条件についてのガイドラインがある。戦場をデザインするとき、DMはそれぞれの軍勢に目標を決め(軍勢が彼らの指揮下にあるなら、プレイヤーの目標がそれになる)、それぞれの目標に勝利点を設定する。会戦の終了後、もっとも多くの勝利点を得ていた勢力が勝利となる。
Battlesystemルールの鍵となっている要素は、コア戦闘システムに依存していることだ。このデザインの決断によって、DMはNPCやプレイヤー・キャラクターも含めたゲームの中にいるどんなクリーチャーででも軍勢を構築できる。必要なのは最小の変換のみ――Battlesystemルールで唯一再計算する必要があるのは移動速度のみだ――で、大きな会戦を単純かつ楽にまとめることができるのだ。
マイク・ミアルス
マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。