2014年06月09日 [長年日記]
§ [DnD][5e][LnL] 『はじめに(Getting Started)』
これから何週間か、この場所は来たるべきダンジョンズ&ドラゴンズ第5版の『Starter Set』を見ることができる最前列の席になる。はじめに、セットのデザインを始めたときのことを見ていこう。
『Starter Set』の目標はかなり率直なものだった。それは新たなDMがこの趣味に入るためのとば口として使われ、プレイヤー用の資料はオンラインに存在する『ベーシックD&D』で構築される必要があった。第二の目標として、『Starter Set』は長持ちするものでなければならない。かつてのRPGの入門セットはしばしば、余分な部分のないアドベンチャー・シナリオと、プレイヤーが完全版のゲームに移ったら無意味になってしまう限定版ルールに注力していた。私たちはこの新しいセットを君が本棚に置き、将来また使えるものにしたかった。
私たちは始めの頃から、一度しか使えないものはセットから取り除かれるか、最小限にしなければならないと決断した。ひとつの例は、事前に準備されたアドベンチャーを使ってルールを教えるチュートリアルだ。そしてそういうチュートリアルを私たちがいらないと判断したのは、そういうものは――オンライン動画のような――他のメディアのほうがより適していると考えたからだ。私たちはプレイヤーに一切の金銭を必要とせずゲームについて学ぶ機会を開放している(その一環として『ベーシックD&D』をフリーでダウンロードできるようにした)し、新規プレイヤーはルールをダウンロードして動画のチュートリアルを利用することでD&Dとは何なのか最良の体験をすることができる。この方法論はすべての『Starter Set』にクリス・パーキンスのような熟練のDMを同梱する思想だ。
避けるべきものについての考えを固めたら、私たちは含むべきものに集中した。『国境の城塞』は1981年の『D&Dベーシック・セット』に同梱された古典のアドベンチャーだ。その場所とそのアドベンチャーが導入する遭遇シナリオは時の試練に耐え、今日もゲームを行なっているDMから利用されている。この要素を強く頭に入れ、私たちは『Starter Set』の重要な構成要素であるアドベンチャーを作成しようと決めた。良いアドベンチャーは何度も利用されるのだ。
さらに、私たちは『国境の城塞』と似ているが、もう少し新たなDMがキャンペーンを立ち上げるのを支援することに注力したアドベンチャーがほしかった。オリジナルの『城塞』はほぼ完全に開かれたものだったが、プレイテスト中のフィードバックでは若干の新たなDMが開かれたアドベンチャーを正確に理解しようとして迷ってしまったと話してくれた。私たちはわずかな助言でキャンペーンを始めつつ、その手がかりを伝いながら数回のゲーム・セッションの後でプレイ・グループがより開かれた方法論へそのまま移行できるアドベンチャーを望んだ。
その結果が『Lost Mine of Phandelver』である。64ページの厚さ、そしてそれはキャラクターが5レベルまで成長するのに充分なものをもっている。アドベンチャーの最初の部分は、キャラクターがゴブリンのねぐらへ救出作戦を仕掛けるうちにDMが基本的な判定とセーヴィング・スローを求めるようになっている。冒険者がゴブリンをなんとかしたら、彼らはファンダリン村の周辺地域を自由に動き回って探検できるようになる。初心者DMにはさらに3つのダンジョンとその他の冒険できる場所が、数ヶ月間キャンペーンを維持できるたくさんの材料と一緒に提供される。さらに地域を拡大して行動し続けたいDMのために必要な道具として、『ベーシックD&D』は自然な次の段階として存在する。
私たちは来週、『Lost Mine of Phandelver』についてより詳しく解説する。アドベンチャーの作者、リッチ・ベイカーはそれを作る途中のことについていくつかの質問に答えると快く同意してくれた。
『Lost Mine of Phandelver』に加え、『Starter Set』にはルールブックも入っている。これはプレイに必要な基本的ルール、作成済みキャラクターとNPCが使える呪文の説明、そして冒険で見つけられる魔法のアイテムを提供している。これに加え、これは装備や戦闘ルールのようなものの便利な卓上索引にもなるし、私たちはDMが『ベーシックD&D』やコア・ルールブック3冊に移行する前にプレイ中の追加資源として『Starter Set』のルールブックを使い続けると予想している。
このアドベンチャーは5体の作成済みキャラクター――ドワーフのクレリック、ヒューマンのファイターふたり、エルフのウィザード、そしてハーフリングのローグ――と共にやってくる。ファイターのひとりは大きな斧と重装鎧を使う。もうひとりはレザー・アーマーを着た射手だ。単純にファイターがもっとも人気のあるクラスなので、私たちは第五のキャラクター・クラスより彼らをふたりにすることを選んだ。この方法論もまた、プレイヤーが作成済みキャラクターを『ベーシックD&D』で改造しやすくし、5レベル以上まで彼らを成長させることを簡単にしている。
最後に、『Starter Set』には5個の――マーブル・ブルーに白の数字が刻印された――多面体ダイスのセットも入っている。私はこれらを3セットダイス入れに持っている――工場から送られてきた初期の見本だ。君が私たちの配信したゲームを見たなら、それが使われるのを見たかもしれない。
これが『Starter Set』の概要だ。この記事が公開されているとき――2014年6月9日――『Player's Handbook』は印刷所に入稿されている。この2年間かかっていたプロジェクトの仕事が終わったとにわかには信じがたい。私たちは『Player's Handbook』を乗り越え、次に注意を『Monster Manual』、そして『Dungeon Master's Guide』と『The Rise of Tiamat』のさらなるデザインと編集へと向けている。
マイク・ミアルス
マイク・ミアルスはD&Dリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はD&D第5版のデザインを主導している。彼が他に名前を出している仕事は『キャッスル・レイヴンロフト』ボードゲーム、第4版『モンスター・マニュアル3』、そして第3版『プレイヤーズ・ハンドブック2』だ。