2014年08月19日 [長年日記]
§ [TRR][Oni] リプレイ『鬼の話~オープニングフェイズ:シーン4』
オープニングフェイズ:シーン4・新太郎の頼み(十五郎)
丁子屋の事件から数日が過ぎた。物騒な事件をよそに、明星十五郎は今日も今日とて猫の蚤取りにいそしんでいた。
すると、開け放していた戸口に人の気配がした。気配を隠す様子がない。背中を見せていてもわかる。
軽い足音に、幼さとお天道様の匂い。目が使えなくとも、彼にはそれが近所に住む新太郎であることが、手に取るようにわかるのだ。
ならば。体をずらし、強烈な屁をひとつ。
これが彼流のあいさつだった。
「はっはあ、今日も良い屁だ! 新太郎、音のねえ屁をするようなちんけな男にはなるなよ」
「くせえ! これだから明星の先生は嫁の来てがねえんだよ」
その言葉に、やもめの三十男は嘆息する。
「嫁は、むりだろうなあ」
GM/新太郎:「まったく……。見世物小屋の大猿のほうがまだ客に気を遣えるぜ」
十五郎:「あの大ザルは屁したって、みんな見料はらうじゃねえか。俺の屁を嗅いで金払うんなら、もすこし気を使ってやらあ」
GM/新太郎:「って、違う違う。今日は先生に頼みがあって来たんだ」何かを思い出したように首を振りながら、改まって座ります。
十五郎:「なんだ、お倫さんに一緒に謝って欲しいことでもあんのか?」お倫さんと聞いたら、まともに話を聞こう。
GM/新太郎:「違うよ、母ちゃんには内緒の話だ」
十五郎:「内緒だァ……」話を聞こう。
GM/新太郎:「ここんとこ母ちゃんを迎えに行くとき、変な奴らがつけてきてる気がするんだ」
十五郎:「そりゃあ、あの色気じゃなあ……」と本音を呟き、慌てて口をつぐむ。
GM/新太郎:「母ちゃんはそんなことないって言うんだけど、心配でさ」
十五郎:「よしわかった、飲み込んだ」
GM/新太郎:「わかったか!」
十五郎:「俺が、お倫さん、もとい、お前のお袋さんの行き帰りを護ってやる。行き帰りだけじゃなくてももちろんいいぞ」
GM/新太郎:「……いくらかかる?」巾着袋から銭を取り出そうとします。
十五郎:「……なんでェ、本気か?」
「本気さ」
決意を滲ます少年の声を聞き、男は大きく頷いた。
「……そうだなァ。まずはこの部屋掃除して、お倫さんの手料理でも何か喰わしてくれ」
猫を放し、万年床の上に立ち上がる。
「金の方は、殴って出てきそうな方から取ることにすらァ」「わかったよ。ありがとな、先生」
目が合った十五郎と新太郎はにっこり笑いあう。
「こっちこそ、退屈が紛れそうだぜ」
明星十五郎、子どもと猫にはめっぽう懐かれる男である。
GM:【宿星:お倫の様子を見守る】をどうぞ。