2014年08月31日 [長年日記]
§ [Liber] 宇月原晴明『かがやく月の宮』
作品名にもなっている『かがやく月の宮』は『竹取物語』の異本の名前で、それを“女”が読み解いていく体裁で進んでいく物語ですぅ。
『かがやく月の宮』の大筋は一般に知られる『竹取物語』とまったく同じものだけど、そこに込められたディティールはより露骨で精緻になり、意味づけは歪み、むなしさの中で余人には理解しがたい矜持だけを抱いて破滅へ向かう貴公子たちの物語が綴られることになりますぅ。
宇月原作品ではおなじみになっている洋の東西、時空を飛び回る奇想を今回はまだしも常識の範囲内に収め、廃れ者の美学をより多様に描いた感が強いのも、平安の世で既に幻想に近くなっていた時代の話にはふさわしいのかもしれないですぅ。