2011年12月16日 お堅い学術研究向けとされているネットワークでゲームを発見し、それによってコンピュータ文化の奇妙な、また創造的な一面に初めて気づく――そんな経験をした人は少なくない。 編集
§ [TRR] 2011年08月14日『逢魔時』
朱春峰(男・300歳余・青龍4/白虎1/異邦人7):万の勝利を得るまで祖国へ戻らぬと誓い、日本へやってきた仙人。その正体はかつて鄭成功と轡を並べ清と戦った明帝室の一員。東方不敗と呼ばれたこともあるらしいが、本人は否定している。プレイヤは森聖氏。
“葛葉”土御門晴明(男・15歳?・朱雀2/陰陽師9/退魔僧1):表の顔は葛葉の号で浮世絵を描く少年絵師。しかし、その実体は肉体を乗り換え無窮の時を生きる高名な陰陽師。今回はついに蘆屋道満と数百年ぶりの再会、再戦を果たす。プレイヤは荒原の賢者氏。
伊藤伊吹(女・17歳・白虎3/玄武3/神職6):江戸市中のさる寺に勤める巫女。親の代からそういう仕事で、何事にも動じることなく淡々と“仕事”を行なう。理解できない物事はおおよそを異邦の文化習俗として納得するため、非常に順応性が高い。プレイヤは隠者氏。
古石屋の化け物騒動からしばらく経ったある日、春峰は田沼屋敷へ呼ばれた。庭先で彼を待っていた田沼は、近頃幕府を悩ます御落胤、天一坊についてひとくさり愚痴を述べた。
「闇から闇。とできるなら楽だが、後見の天満屋から金を借りている者たちも多くてのう」
「他意はないが天一坊とやらに興味がわいてきましたな」
「そうかそうか」
伊吹は引き続き赤川大膳について調べながら、飛び出そうとする半之助をはぐらかす日々を送っていた。彼の家から奪われた守り刀に何やら仔細ありそうなのだが、まだ材料が足りない。
それに、“カインの血”の行方も気になる。
葛葉はその寓居で、かつてその業を競い合っていた蘆屋道満のことを想っていた。古石屋の地下蔵に仕掛けてあった呪符は、確かに彼の手によるもの。ならば。
久しぶりに昔馴染みと遊べそうだと、彼は微笑んだ。
早々に合流した春峰と伊吹の調査により、将軍家御落胤を名乗る天一坊という少年は、上方に突如姿を現わして大坂町奉行や京都所司代といった幕府の要職と接見し、彼らから絶大な信頼を得て江戸へ向かうよう推挙されていることが判明した。
これには天満屋丹兵衛の顔、そして天一坊の右腕として働く山内伊賀亮なる浪人の政治手腕が大きく貢献しているらしい。さらに天一坊自身も天稟というべきか、魔物めいた魅力を備えており、俗人は接見した途端その高貴さにあてられてしまうという。
葛葉は葛葉で道満のことを占うと、彼が化成の世に復活していることまでは確定。天満屋丹兵衛という闇の元締めに雇われ、江戸を訪れていることまでが判った。
誰ともなく伊吹が勤めている寺近くの茶店に集まり相談をしていると、とりあえず某藩の抱屋敷へ忍び込み、将軍からの沙汰を待つ天一坊の顔を拝むということになる。
そっと屋敷へ侵入ると、蟲物の気配がちらほらと。中でも一番大きいのは、大食風の装束に身を包んでいる天一坊その人のものだった。どこぞの藩から来た使者に対し二言三言声をかけて微笑んだだけで、彼らがまったくの言いなりになっている。
「ありゃ間違いないな」
「ああ。だが、やつの中に命が視えない」
今襲撃しても奴の命は取れない。ということで、英傑たちは撤退した。葛葉が調べていたことと合わせれば、およその見当はつけられる。
かくして、葛葉こと安倍晴明は蘆屋道満がねぐらにしている荒れ寺へ向かった。今にも崩れ落ちそうな三門を潜ると一転。中には禁苑を思わせる雅な情景が広がり、和様の金堂に蓬髪僧形の青年が寝転んでいる。
「久しぶりだな、道満ちゃん」
「ちゃんはやめろ、ちゃんは」
言いながら道満はのそりとその場へ起き上がると晴明と久闊を叙し、話題は天満屋へと移っていく。
「ああ、あれなら僕がやった。今の世は何かと金が要るからな」
「昔も公家のためにまじないやってたんだ。俺たちはどの時代でも変わらんよ。解除は?」
「はは、世知辛い。一番堅いのを頼まれたんで、軍荼利明王の法で僕の命と天一坊の命を繋いだ」
「するとお前を倒さないといけないわけか」
薄笑いして晴明が身構えると、道満も笑みを返して構える。
「そういうことだね。久しぶりに面白いことになってきた。ああ、それから」
お連れさんもまとめてかかって来て構わないよ。道満はそう宣言すると背中から翼を生やすと天狗へと変じ、真言を紡いで不動明王に従う矜羯羅童子を己の前に立たせる。
「あれだけ外法に手を染めるなって言ったのに」
「修行してたら勝手に成ったんだ。しょうがないだろう」
「呑まれるなよ」
晴明が打った式を飲み込まされた童子は一瞬で空へ散じたものの討ちかかる春峰の一撃を道満は耐えきり、攻勢に転じ大元帥明王の秘法を放つ、が。
「回避」
「回避」
「避けた」
「道満は《大元帥明王呪》のペナルティで倒れました」
道満がその場へ大の字に寝転ぶと、辺りの幻も晴れて元の荒れ寺が姿を現わす。
「大技志向全然変わってないな。出し惜しみしようよ」
「どうせ敗けるんだ。見せ技くらいはね。ともかく、これで天一なんとかの加護は解けたし、僕は金の分働いたぞ」
「えらく爽やかだなお前ら」
「物語にあるようなのは俺たちの間では挨拶くらいの意味だから」
「お蔭で合わせる顔がない人たちを大勢作ってしまった」
「帰りづらいよなあ」
そう言うと二人の悪友は笑い合う。
明日のあてはないが本気を出したのは愉しかった。そう言った道満に、晴明は声をかける。
「天海に口きこうか? あそこなら色々安心だろ」
「そいつは助かる。いいのかい?」
「あいつが困る顔はなかなか面白いからな」
天一坊にかけられたまじないも解けたが、彼の招待が判らない英傑たちは友誼のある者たちに聞きまわる。すると、意外な事実が浮かび上がった。
天一坊はサッスーン家が日本へと送り込んだ間諜だが、その正体は人ではない。
その正体はアラムートの山塞に築かれた
実体無き恐怖を司る閻羅王ゆえ、その実体もまた曖昧。それが喰らった者たちはその中に取り込まれ、ひとりひとりが“山の老人”でありその手駒でもある存在になりはてる。その中の一柱こそ、天一坊を名乗るあの妖異である。
「ははあアサマイト」
「さらにどこかで聞いた気もする」
「参考にしていないとは言わない」
天一坊の招待が判り、それが完膚なき悪だとしても世間に立てる理屈は要る。
「田沼殿の手前もあるし。何か要るんだ」
「そんなの作ればいいって。どうせ天満屋は色々やってるんだし、何か後ろ暗いものは出てくるから」
「そういえば、半之助の守り刀見つけないと」
「そいつ見つけて半之助を証人にすればいいか」
「近場だし御前さまからも裏取ってもらおう。それにしても南朝が出てこなくて助かった」
春峰が再び忍び込んで半之助の守り刀を取り戻すと、確かに三葉葵が刻まれていた。証拠も出たので、英傑たちは三度屋敷へ忍び込んだ。
葛葉と伊吹が正面から乗り込むと、死んだ瞳の侍たちがわらわらと出てきた。いずれも天一坊に魅了されて操られ、天一坊と山内伊賀亮、赤川大膳を護るように展開する
「カビルの血はすでに私の中にある。“山の老人”の呪縛を絶ち、今こそ我が法にならん」
「この地にはこの地の法がある。去ね」
天一坊が舞うと
「
ひとさしの法力比べが終わると、何かに思い当たった春峰が刃を抜き放つ。
「鉄の刃で死ぬまで殺すんだ」
「カインの血を吸収した天一坊は特技増えてます」
《生命力吸収※》 | |
タイミング:常時 | |
判定値:自動成功 | 難易度:なし |
対象:自身 | 射程:なし |
効果:旧き吸血鬼の力で生命の根源を吸収する特技。 このエネミーの物理攻撃によって実ダメージを受けたキャラクターは、シナリオ終了時までキャラクターレベルを1D6下げる。この攻撃でキャラクターレベルが0以下になったキャラクターは即座に死亡する。 この効果による死亡を解除したキャラクターのキャラクターレベルは本来のものに戻る。 |
「あたらなければどうということはない」
葛葉の《地鎮祭》で地の利を得た英傑たちは、確かにあらゆる手段を使って攻撃を避けた。
春峰に至っては相手の関節を極めて破壊する天一坊得意の暗殺術を、攻撃を当てられてからも完全に相殺することで防ぎ、《生命力吸収※》を無効化する。
一方で、山内伊賀亮も《軍神の気》や《名将の指揮》で天一坊と大膳を補佐し、自らも《頭が高い!》で英傑たちを牽制して戦いを遅延させる。
そのせいもあり、傷が癒えず弱体化していた大膳が倒れた次は山内伊賀亮が討ち取られ、最後に残されたのは天一坊だけとなる。彼は起死回生を狙って伊吹にむしゃぶりついて血を啜るが、直後に九穴から炎を噴きだして悶絶した。
「この血は少し綺麗過ぎたようですね」
「麒麟児になった時取った《一蓮托生》忘れてた」
「それで死んだ」
ひとつかみの灰になるまで焼かれた天一坊は、吹き込んできた風に散らされ、跡形もなくなってしまう。
かくして天一坊は将軍との席捲直前に流行り病を得て身罷り、すべては闇の中に消えるのだった。
天一坊が滅んで数日後。街ではその真相を知りたい人々が読売をこぞって買い、版元は扇情的なネタを書き立てている。蔦屋も例外ではなく、葛葉から何か聞き出そうと彼の寓居を訪れていた。
「センセイもあの辺り調べてたらしいじゃないですか。何かないんですか」
「ころりか何かの流行り病だって。変なこと知ると死んじゃうよ」
などと問答を続けていると、蘆屋道満がやってくる。今から天海の依頼で小笠原島の探索に赴くという。彼も早速この時代に適応しているらしい。
それからさらに日が経って天一坊騒ぎも収束した頃、伊吹の寺をひとりの侍が訪れた。その周りでは、遊び人の金さんや町人姿の田沼などがひそかにその様子を見守っている。田沼の横に春峰が座り、それとなく話を振る。
「幕府の方はどうなりました」
「旗本徳田家の子息として養育し、折をみて適切な身分に遇する。ということになった」
「それはよい。もし何かあれば、まだ剣を振るうところだった」
しばらくすると、伊吹に連れられた半之助が侍の前に出てくる。侍は彼の顔をしげしげと眺めた後、感極まって落涙し、そのまましっかりと少年をかき抱いた。
黄昏をいふ百魅
の生ずる時なり
世俗小児を外
にいだす事を
禁む一説
に王莽時とかけり
これハ王莽前漢の代を
簒ひしかど程なく後漢
の代となりし故昼夜
のさかひを両漢の間に
比してかくいふなん
――『今昔画図続百鬼・雨』
『古戦場火』の続きで、真相の究明と証拠集めにスポットを当てた後編ですぅ。
葛葉がうまく引っ張ってくれたおかげでメモ程度にしか用意していなかった蘆屋道満が面白くなったり、伊吹の提案で旗本の徳田家と三男坊の徳田新之助がエンディングで登場したりと、大変プレイヤに助けられたセッションだったですぅ。
§ [Promiscuus] クリスマスプディング(仕込み)
材料
- 生地
- パン粉:150g
- 砂糖:150g
- ケンネ脂:150g
- 薄力粉:50g
- 卵:1個
- 具材
- ドライフルーツ各種(今年はクランベリー、プルーン、レーズン、レモンピールを使用):350g
- ラム:50ml
手順
久方ぶりにクリスマスプディングを仕込んだので覚書程度のレシピを残すものですぅ。冬らしくずしりと重いものになりそうですぅ。
買い物に出かけたら牛の脂とパンの耳をただでもらってしまったので、材料費は1000円以下でなんとかなってしまったですぅ。
2012年12月16日 任意の会話を、そこに知性的正確さが欠けているがゆえに、自意識過剰気味に楽しむこと。 編集
§ [Promiscuus] 同軸ケーブルとの戦い
アンテナを分岐する手伝いをしてきたけど、同軸ケーブルというやつはそう頻繁に扱わないのに専用工具があったら便利そうと思わせてくれるくらい剥くのが手間ですぅ。
2013年12月16日 編集
§ [DnD][4e][LnL] 『君には見えるか?(Can You Feel It?)』
先週、私はRPGにおける“感覚”の考えと、それがダンジョンズ&ドラゴンズのデザインで意味するものについて紹介した。今週は、デザインに対する特別な方法論によってゲームの感覚を特徴づけることに目を向けていこう。
D&Dの魔法システムはデザインがゲームにどういった特別な感覚をもたらせるかというわかりやすい例だ。これはまた、君のゲームへ第一にもたらされるべき特別な感覚を選択するとき陥りやすい大きな陥穽のひとつでもある。D&Dでの呪文発動はその特有な性質のためにとても熱気をはらむ部分だ。ここでわずかでも知るべきことがあるとするなら、ひとつの顕著な例外――D&D独自の呪文発動システムに影響を与えたジャック・ヴァンスの小説、『終末期の赤い地球』――を除き、魔法は多くのファンタジー小説やゲームで描写されるような特徴を持っているということだ。その結果、呪文を準備してスロットを消費することをマーリンやザターナのような創作上の魔法使いの行動と照らし合わせて解釈することができる。
その一方で、D&Dの魔法システムはとてもゲーム的な感覚をもたらす。前回のコラムで、君のプレイヤーとしての思考回路、思考、そして決断と君のキャラクターの思考回路、思考、そして決断をすり合わせることが感覚の品質だと定義した。マインド・フレイヤーがそこの角を曲がってくるとき、君と君の3レベル・ウィザードはいずれも恐れを感じながら逃げ出す算段を立てていなくてはならない。6匹のコボルドが君の12レベル・ファイターに殺到したとき、君と君のキャラクターは勝利を確信していなければならない。
同じように、D&Dの呪文発動は君が慎重にどの呪文を発動させたいのか、君自身のキャラクターそのものであるかのように考えることを要求してくる。バルダーズ・ゲートに潜入しているゼンタリムの諜報員を追跡しているとき、君は疑り深い地元民を説得するためにチャーム・パースンを準備するだろうか? あるいは発見されて戦いになったときに備えたマジック・ミサイルだろうか? 怪我をせず街の警備兵を怒らせないためにも、スリープがうまい選択だろうか? 君のキャラクターは君がプレイヤーとして呪文を選択する際に行なうのと同じ過程をたどる。この選択がプレイヤーが彼らのキャラクターの個性を表現する大きな機会になれば、もっといい。慎重なクレリックはおとなしい魔法を選ぶだろうし、ゼントを殺すと誓ったメイジは被害を無視して破壊的な呪文を選ぶかもしれない。
君はここで君自身のキャラクターの思考回路と呪文への態度をルールの言葉で的確に記述することもできる。君が3レベル呪文をひとつだけしか発動できない状況なら、それは君のキャラクターに「私は休んで力を回復させる前に、あと一回だけファイアーボールかフライを使えるぞ」と語らせるための意味を持つ。君のキャラクターに知覚できる方法でシステムが世界を記述しているのだ。
もちろん、D&Dへやってくる人たちの多くは沢山の本を読み、多くのファンタジー映画を観ている。彼らが魔法に抱いている概念はD&Dが描写しているそれとおそらく合致しない。そのため、ゲームにある魔法の感覚は彼らの求めるものと違うかもしれない。しかし、私たちはわれらが信念を通し、伝統的な呪文発動システムを通してD&Dの個性であるゲームの感覚を保ち、また他のプレイヤーが抱き求める夢も――たとえば、ゲームで呪文ポイントを使いたいグループのためにオプションを作成するなどして――尊重せねばならない。
この挑戦はプレイ中にキャラクターが直面させられる決断と思考を模倣するルールを創造してゲームの雰囲気を導き出す過程にある。それにもっとも有用なみっつの方法論がここにある。
選択と結果
君が誰かに決断を迫るとき、感覚はきらめく光を放つ。あらゆる決断を迫る選択はプレイヤーとキャラクターの両方に受け止められるものでなくてはならない。君のキャラクター――ゲーム内世界の知識で動いている――と君――世界とルールの双方の知識で動いている――は、同じ原因、利益、代償、そして危険の重さを持って決断に臨まなければならない。
武器と鎧は簡単な例である。グレートソードは君により強い一撃を提供するが、ロングソードを選ぶと君は盾を持って防御を強化することができる。プレイヤーとしての君とキャラクターとしての君はこの選択に、同様の基本的な選択肢と期待される結果をもって臨むことになる。君のキャラクターは盾が攻撃を受け流す助けになることを知っている。君は盾がACを+2することを知っている。これらのふたつは同じものを意味している。これはシステムがゲーム内世界で起こることを記述しているからだ。
プレイヤーとキャラクターのお互いにとって等価な選択と結果は、デザイナがゲームの感覚に生命を与えて生きたものへとするためのもっとも基本的な道具である。
複雑な戦略、単純な戦術
戦闘中、君のキャラクターが決断をするための時間はほんの1、2秒しかない。1ラウンドの長さは6秒だが、君には実際に行動してそれを終わらせるまでの時間も必要だ。ゲーム内世界であっという間に起こることについて扱うルールの複雑度を調整するなどの行為で、感覚を阻害せずゲームへの没入を醒めさせないようにできる。
一方で、キャラクターが合理的な決断をするために時間をかけられるようなら、複雑さは許容される。ひとつの“ラウンド”で領地では数ヶ月から数年のゲーム内時間が経過するかもしれないので、王国を経営するためのルールは戦闘ルールよりも複雑にすることができる。テーブルを囲んでの語らいは議論は、参事、外交官、そして貴族たちが近くにあるドワーフの要塞と平和条約を締結するべきか、あるいはホブゴブリンの城砦を急襲すべきかの議論を模倣する。
戦闘のように展開が速い状況では、どのような決断をうながすシステムも、キャラクターがその決断を固めるまでと同じくらいの時間で決断できるようにしなければならない。そうすることで、アクションをしようとしたらプレイヤーが必要なルールを探し求めてゲームを停滞させることを避けるのだ。他の状況ならば、君はより細かな差異や演出を加えることができる。
物語的一貫性
プレイヤーが直面する決断と結果を生きたものにするのが物語的一貫性だ。それはキャラクターが生きる世界についての理解を与える。それはゲームをするため友人のロドニーとテーブルについている男であるマイクと、破壊と混乱をまき散らす混沌のウィザード、ケル・ケンディーンの間にある溝を埋めるのだ。
物語的一貫性とは単純にいってしまうと世界で起こっていることの説明だ。ほとんどの場合、それには疑問の余地がなく私たちはそれに注意を払わない。プレート・アーマーはレザーよりも防御力が高い。ジャイアントはオークより強い。しかし、システムを構築するときにゲーム内世界で起こることを見失ってしまうのはいともたやすい。君がキャンペーンのそれらしさにあまりにも多く注意を払うのなら、ルールが制御不能な量に膨れ上がるのもまたたやすい。抽象化するとき極大と微小のあわいにある中庸を見つけることは、RPGデザインの大いなる挑戦のひとつだ。
ここで例に取るのは奇襲攻撃だ。第3版で、さまざまな種類のクリーチャーはそれを無効化していた。奇襲攻撃はローグの能力で、肉体の構造を見極めてクリーチャーの急所を一突きにするものと定義されていた。ゴーレム、エレメンタル、そしてアンデッドなどのモンスターは、よく知られた肉体構造ではない、目標になる急所を持たなかった。同様に、後から明確化されたルールによってジャイアントの腕や脚にしか触れられないなら、君は急所攻撃を行なうことができないようになった。
そして、ゲームのそれらしさに迫ったことによってローグを際立たせるはずだった大きな要素の急所攻撃を曇らせることになった。ローグとして、君は戦闘中に危険をおかしつつも、機会を逃さず飛び出して致命打を与えることができる。ダンジョンを探検しているあいだ、君は静かに先行偵察を行ない、奇襲の準備をし、警報を鳴らす前に番兵を静かにさせることができる。だが、そうした没入も番兵がエレメンタルやアンデッドだとわかってしまえばあっというまで徹底的に粉砕されてしまう。急所攻撃がローグの解剖学的知識に結びついているとする考えは、キャラクターの根幹に関わる感覚を破壊してしまう。ローグとしての君の考えは全否定される。
私たちは後の版で、急所攻撃の定義をより柔軟なものにするための変更を行なった。その鍵はローグが卑怯であることだ。彼らは奇襲、裏技、そして思いがけない攻撃を好む。ローグが真正面から戦うのは、他のあらゆる手を封じられたときだけだ。ローグは生粋の戦士でも解剖学者でもなく――彼らは卑怯な日和見主義者で裏切り者なのだ。そういうわけで、ローグは敵の番兵を効果的に倒すためのさまざまな方法を知っている。君のローグはストーン・ゴーレムの脚にあるひびや、ファイアー・エレメンタルの中でまたたく精髄を見つけることも、彼や彼女が生きた敵の弱点を貫くのと同じくらい簡単にできなければならない。
たとえ君がゲームのルールで考え、君のキャラクターは状況を“現実”的な言葉で説明されて理解するのみであっても、物語的一貫性は君と君のキャラクターがある状況で同じように思考することを可能にする。その状況を説明するのに充分な詳しさと、充分なあそびを持ち速く処理するために必要なだけの抽象化された使いやすいルール一式の中庸を求めるとき、物語的一貫性はもっともよく作用するのである。
これらの方法論に頼っても、感覚は科学的というよりとても芸術的なものだ。デザイナのとても巨大な挑戦は、私たちの目指している感覚がゲームにとって正しいかを確認することだ。先週も話題にしたように、私たちのプレイテストでもっとも有益だったのはD&Dプレイヤーとの対話を始めることにより、彼らがゲームについて考えていたことを学ぶことだった。17500人以上のプレイヤーが参加したプレイテストで、R&Dチームとより幅広い範囲のD&Dプレイヤーがゲームの感覚について考えるときに同じ意見を持っていたことを確認できたのだ。
マイク・ミアルス
マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。
2014年12月16日 編集
§ [Promiscuus] 水玉螢之丞さんの訃報に触れ
水玉螢之丞さんの体調が優れないという話は聞いていたけど、まさかこんな日が来るとはという気持ちがぬぐいきれないですぅ。
とんがり耳萌え他受けた影響は数知れないし、私が水玉螢之丞さんの作品に出逢ったのは家に閉じ込められて数冊のファミ通とゲームくらいが娯楽だった時期、そこから別の場所へ移されて軟禁生活を送っていた頃になんとか買えていた雑誌、そして開放されてたどり着いたPC書籍売り場での単行本と、まさに人生が迷走していた時期に、ものごとを楽しげなイラストにして背中で語りながら楽しいことに引き込んでくれた標のような方で、ただただ呆然としながら『こんなもんいかがっすかぁ』を眺めていたですぅ。
それはそうと、この方の描く氷雨閑丸ほど色気がある閑丸くんはいないと確信しているですぅ。
2023年12月16日 編集
§ [DnD][5e] アドベンチャー:襲撃者(1レベル)
今週の小冒険は1レベルのキャラクター4人用ですぅ。
データ関係はOGLのものを使ってるので、そちらの参考にもどうぞですぅ。
冒険の概要
この冒険は1レベルのキャラクター用の短時間で終わるアドベンチャーである。このアドベンチャーは『アドベンチャー:街道の盗賊(1レベル)』を終わらせたキャラクターたちが行なうものとしてデザインされている。
行方不明になっていたアリアンヌ姫が救出された。しかし、彼女の存在を狙う者たちがいるため、王の使者は護衛として冒険者のキャラクターたちを雇う。
キャラクターたちが護衛をしていたら、襲撃が行なわれる。これに対処すれば冒険は終了である。
冒険への導入
キャラクターたちが滞在している街に王家のアリアンヌ姫が滞在することになった。ついてはそれの護衛を頼みたいと、冒険者たちに声がかかった。
仕事の内容は姫が滞在する屋敷の夜間警備である。日当は1人あたり10gp、食事などもついてくる。
1.依頼を受ける
依頼を受けると、姫が滞在している屋敷の中に案内される。2階建てだが、姫の滞在するのは1階で、2階の客間には囮役として兵士を配置するのが、姫の守役であるディルトン翁の計画である。キャラクターたちは姫の滞在している部屋が面している庭を守るよう依頼される。
キャラクターたちがこの計画に意見をして、自分たちの話を受け入れてもらうには、難易度13の【魅力】〈説得〉判定が必要になる。前回の冒険で姫を助けているなら、この判定に有利を得られる。
2.警備
打ち合わせが終わったら実際の警備である。1d4日目までは何も起こらない。その次の日に襲撃が発生する。「3.襲撃!」へ進むこと。
3.襲撃!
キャラクターたちが警備をしている夜中、屋敷が襲撃される。襲撃者たちは2人の斥候だ。
襲撃者たちは忍び込んでくるため、難易度16の【判断力】〈知覚〉判定に成功しなければ不意討ちを受けてしまう。
同時に、屋敷のあちこちで叫び声や剣の打ち合う音が聞こえる。どうやら大規模な襲撃が始まったようだ。
全滅した場合、襲撃者たちはキャラクターたちにはとどめを刺さず目的を果たして撤退する。アリアンヌ姫はさらわれてしまう。
斥候
中型・人型生物(任意の種族)、任意の属性
AC:13(レザー)
hp:16(3d8+3)
移動速度:9m(30フィート)
【筋】 | 【敏】 | 【耐】 | 【知】 | 【判】 | 【魅】 |
---|---|---|---|---|---|
11(+0) | 14(+2) | 12(+1) | 11(+0) | 13(+1) | 11(+0) |
技能:〈隠密〉+6、〈自然〉+4、〈生存〉+5、〈知覚〉+5
感覚:受動〈知覚〉15
言語:任意の言語1つ(普通は共通語)
脅威度:1/2(100XP)
鋭敏視覚・聴覚:斥候は視覚、聴覚に関わる【判断力】〈知覚〉判定に有利を得る。
アクション
複数回攻撃:斥候は2回の近接攻撃か、2回の遠隔攻撃を行なう。
ショートソード:近接武器攻撃:攻撃+4、間合い1.5m(5フィート)、目標1体。ヒット:5(1d6+2)[刺突]ダメージ。
ロングボウ:遠隔武器攻撃:攻撃+4、射程45/180m(150/600フィート)、目標1体。ヒット:6(1d8+2)[刺突]ダメージ。
結末
襲撃を撃退した場合、キャラクターたちはアリアンヌ姫とディルトン翁にいたく感謝され、300gpの追加報酬を得る。
撃退に失敗してアリアンヌ姫がさらわれた場合、屋敷の中は大騒ぎになる。キャラクターたちはディルトン翁から姫の捜索にかかるので協力するよう命令される。
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