2012年09月11日 「それは良さそうだけどさ、ダグ、ロケットが水中に落ちて、プルトニウムが沈んじゃったらどうする」 [長年日記]
§ [DnD][4e] 『メンゾベランザンへようこそ(Welcome to Menzoberranzan)』
デザイン&デベロップメント
8月に発売された『Menzoberranzan: City of Intrigue』は、さまざまな面で未来を感じさせる――少なくとも今の私たちが考えている未来を示すソースブックになった。この本で私たちは設定という素材について、これらの本をより使いやすくより面白くする新しい方法を調査し、少し新しいやり方を使ってみた。
ルール? ルールってなんだ?
『Menzoberranzan』のページをめくった君がまず気づくのは、ルールについての記述がほとんどないことだ。君は第4版のパワー、モンスター、あるいはトラップのステータス・ブロックを見つけられない。君はこの本に収録されたいくつかの独立したルールのモジュールによって、キャラクターの派閥での立ち位置や、キャラクターのドラウ社会全体における身分の指針を得ることができる。しかし、そうしたルールの光はどんなゲーム・システムや版からも独立し、雰囲気の占める割合が重いものだ。
雰囲気が重くのしかかるやり方こそ、私たちがこの本でやりたかったことだ。私たちはメンゾベランザンに住むドラウの陰謀と裏切りで彩られた社会からアンダーダークの裏街道の雰囲気を伝え、君がロルスの道をうまく歩めるようにと多大な努力をした。この世界へと没入する感覚は、君に街の門を守っているドラウの警備兵がどれくらいヒット・ポイントを持っているか伝えるよりも――そうした情報は君が選んだモンスターの本から簡単に選ぶことができる――重要だ。
また、こうした雰囲気を強調するやり方は、私たちからのメンゾベランザン周辺でキャンペーンを行なうことについての助言にも及んでいる。事実、一番最初になる第1章は『キャンペーンの雰囲気』という章題で、君にこの陰謀の都で繰り広げられる人生のどこに着目してドラウを中心にしたキャンペーンを行なえばいいのかを説いている。君は政治の陰謀に集中したい? 思想的な企て? 地上への侵攻や、それとも他のアンダーダーク住民との戦いがいい? それらの幅広い分野にはとても多くの可能性があり、私たちは君がそれらのオプションについて考えるのを助けるためにそれぞれ見開きを用意した。
私たちはまた本の後のほうでもプレイヤーへの素材として同じ体裁をとった。ドラウのテーマや伝説の道(私たちはこれらを他の媒体で補った)を半ダース準備するよりはむしろ、私たちは君にドラウはどんな存在なのか理解してもらうことに集中した。ドラウの奮い立たせるものは何か? 君はどんな秘密を仲間に隠しているのだろう? 君はなぜ冒険の仲間を信用できないのだろう? 君たち全員が異なる家の者だったら? ドラウ社会での君の立ち位置は? これらの質問(とこの本のこの章にあるガイダンス)はどんなルールのオプションより、君がプレイするドラウの魂に入り込むことを助けるだろう。
呪文荒廃? 呪文荒廃ってなんだ?
君がやってみたいドラウのキャンペーンを作っていくのを助けるのと同じ精神で、私たちはメンゾベランザンという都市を、その歴史のある一部分だけ紹介するよりはむしろ、いつとは限らない存在にしようとした。この本で『キャンペーンの雰囲気』の次に続くのは『キャンペーンの時代』の章で、ここでは都市の歴史を紹介してそれぞれの時代でプレイすることを提案している。君はこの都市でキャンペーンを行いたいかもしれないが、長年にわたって小説とゲームのソースブックで展開されてきた名家と事件の膨大な量に束縛されると感じたことはないだろうか? キャンペーンの舞台は創設の時代(長い歴史の闇に覆われている都市が創設された、R・A・サルヴァトーレのダーク・エルフ三部作から見て5千年以上昔のできごと)のようなその時代の資料が本当に少ない時代も含め、あらゆる求めに応じなければならない。“蜘蛛の女王の戦争”、“災厄の時”、“呪文荒廃”そして今も進んでいるロルスが魔法の女神となるための計画(“魔織”)のすべてがここで紹介され、さらに私たちは本の別な場所でも紹介するので゛、君はどんな情報がどの時代のものなのかを把握できる。
たとえば、君は巻末にあるすばらしい都市の地図――マイク・スライによる――を調べて気になった場所の記号を見れば、君はそのナルボンデリューン地区に建つバリソン・デルアームゴ家の屋敷が――呪文荒廃の時代、家人衆の兵舎だったと知ることができる。そして“ぼろぼろのビホルダー”について読めば、それはイーストマイアにあるさまざまな武器を扱う店で、君はそこの所有者が蜘蛛の女王の戦争の直後に都市を訪れ、呪文荒廃の時代からずっとそこにいるということを知ることができる。
私たちは主だったドラウの名家についても、それぞれの家について一般的に知られている情報とその真相を時代ごとに解説している。そして私たちはある時代のその家に訪れる運命について1つ2つ言及し、そこを利用してその家で特に力を持った人物、その時代における家格、そしてその家の目標と挑戦についても話している。たとえばゾララリン家は著名で不思議なウィザードをどの時代ででも輩出する魅力的な一家だが、呪文荒廃の時代――特に魔織を想像しようとしているとき――彼らは特別な重要性を持つ。
もちろん、この項にはこのことだけではなく、呪文荒廃の時代以外、蜘蛛の女王の戦争などフォーゴトン・レルムの小説やゲーム製品で触れられてきた時代についても無視していない。だが、メンゾベランザンでの変化は考えられているよりも少ないため、変わらなかったものに焦点をあてるのは比較的簡単なことだった。
建築素材
これは素材を準備する新たな方法ではなく、君はすでに『Neverwinter Campaign Setting』で同じ方法を経験している。『Menzoberranzan』が目指した目標の1つは、君がやりたいキャンペーンを構築するためのさまざまな方法に対応できる素材を君に提供することだった。君のキャンペーンの雰囲気と時代に加え、この本に詳細が記された17の派閥(あるいは君が作成した他の派閥)からいくつかを選ぶことで、都市に渦巻く陰謀とたくらみの雰囲気を君がとらえることを、この本は助ける。君がおよそ3つの派閥に焦点を絞り、キャンペーンで重要だとプレイヤーに告げ、彼らをこれらの3家との関係による立ち位置に集中させることで、これら3派閥の間で変化する関係と競争を前へ押し出すことができる。残りは都市の舞台裏へ潜ませておき、君が物事に変化が起きる時だと決断したときだけ前に出てくる。
これらの派閥は主にドラウ社会の輪郭を形成する背信と陰謀の雰囲気を強めるため、蜘蛛の都を舞台にしたキャンペーンでもっとも重要な建築素材だ。しかしこの、大きな力を持つ存在に注目し、彼らと他との関係に光を当てる方法は私たちが『Neverwinter』で行なった方法と非常に似ている。君が派閥を選んで彼らの興味を調べれば、冒険のアイデアはすぐ心に飛び込んでくるだろう。
当然、君がこの本で発見できる建築素材がこれらだけであるということもない。都市や周辺のアンダーダークで重要な場所は、安全地帯にしろ死と隣り合わせの冒険の舞台にしろ、君のキャンペーンで印象深い場所として使うことができる。もっとも個人的なものでは、君のプレイヤーがそのキャラクターの過去に隠された悪徳や犯罪を決める助けになる一覧もある。
これら3つの方向は、私たちが将来セッティングの資料を発表するときにやってみたい方向を示している。『Menzoberranzan: City of Intrigue』(そして『Neverwinter Campaign Setting』)はその方向への第一歩だが、私たちは未来の製品でより洗練されたものにして、君のゲームでそれがもっとよく使われるようになることを望んでいる。
ジェームズ・ワイアット
ジェームズ・ワイアットはウィザーズ・オブ・ザ・コースト、ダンジョンズ&ドラゴンズのR&Dでクリエイティヴ・マネージャを勤めている。彼はダンジョンズ&ドラゴンズ第4版リード・デザイナの1人で『ダンジョン・マスターズ・ガイド第4版』の主要な著者だった。彼はまた『エベロン・キャンペーン・ガイド』に協力し、エベロンの世界を舞台としたダンジョンズ&ドラゴンズの小説も何冊かものしている。