ネコぶんこ


2013年01月07日 無限の選択の余地を与えられたとき、選択しない傾向。 [長年日記]

§ [DnD][4e][LnL] 『D&D Nextの目標、その1(D&D Next Goals, Part One)』

伝説と伝承

マイク・ミアルス

新年は私たちのいるところと私たちが向かうところをじっくりと考えるよい機会だ。はじめに、私は君たちにD&D Nextが目指す目標の基礎を見せていきたい。今回のコラムからこの先何回か、私たちの行なっている作業の裏に隠された目標に光を当てていく。

まず、私たちを導くふたつの原理がこれだ。私たちはすべてをこの考えに基づき行なっている。

  1. ゲームの核となる要素でも普遍のものを持ったD&Dの版を作成する。
  2. 単純なゲームから複雑なものへ円滑に移行できるルールを作成する。

ではこれらは具体的に何を意味するのだろう?よろしい、では読んでいただこう。

D&Dの核となる要素

D&Dという会話型RPGは長い年月をかけ、いくつかの劇的な改訂を経てきた。今日のゲームのルールと6年前のゲーム、15年前のゲーム、25年前のゲームとの共通点はほんの少ししかない。それは会話型ゲームの世界で例外的なことである。多くのゲームは新たなコンテンツ、たとえばTCGでは新しいカードのセットを出しミニチュア・ゲームでは新たなユニットを出すが、ほとんどのゲームは最後まで基本ルールの再構築を行なわない。

ゲームの基幹部分であるルールを変更することは、君たちの共同体に亀裂を生じさせる。新たな版をプレイする人と古いものにこだわる人の間には明白な溝が生まれるが、より潜在的な作業上の問題もある。10年前に君のゲームから抜けた誰かが帰ってこようとしたら、最初からやり直さなければならないのだ。君は慣れ親しんだはずのゲームがそうでなくなっていたとして、戻りたくなるだろうか?

だからこそ、最初に掲げる大目標として特徴的なゲームの要素を継承したD&Dの版を作成することにしたのだ。かつて、数十年前にD&Dをプレイした人でさえ、D&D Nextには簡単に復帰できなければならない。D&D NextはこれまでD&Dがたどってきた歴史で提示されてきたさまざまなプレイ・スタイルに、ルール面などD&Dプレイヤーが認知し理解できる形で居場所を提供しなければならない。それが意味するものについては第2回で説明するが、D&D Nextはデザインの結果としてそれぞれの版がテーブルにもたらす一番の強みを届けなければならないということだ。ある版に何かの美点があるなら、D&D Nextはそれを提供するためにきちんと仕事をしなければならない。

円滑な移行のために

D&Dと複雑さについての話をするとき、私たちはまず新規プレイヤーについて考えることからはじめる必要がある。毎年多くの人がD&Dを試そうとする?その通り。事実、それは君が考えているよりおそらくはるかに多くの人々を惹きつけている。新たなプレイヤーを引き寄せるものこそ、D&Dが常に持っていた真実の力だ。しかし私たちが数年前に気づいたのは、入門用製品を探していた人でもプレイヤーズ・ハンドブックダンジョン・マスターズ・ガイド、そしてモンスター・マニュアルといったより深いところへ移行するプレイヤーはほんのわずかだったということだ。

1980年代の初期、ゲームのルールはとっつきやすく多くのアドベンチャーによってプレイは支えられていた。それ以来、ゲームはどんどん複雑になってきた。新たな版ではより多くのルール、より多くのオプション、そしてより多くの設定が加わった。たとえゲームのある部分が単純化されても、別の部分がよりわかりづらくなった。私たちはその傾向を逆転させ、新たなプレイヤーが簡単に盛り上がれ、既存のプレイヤーは世界規模の膨大なアドベンチャーの資産を活用してプレイし続けられるD&Dの版を作成しなければならない。

これは第2の大目標に私たちを導くものだ。私たちは『ダンジョンズ&ドラゴンズ』と題されたRPG製品を作る予定だ。それは試供品やキャラクター作成と単発のアドベンチャーをやってみるようなものではない『ダンジョンズ&ドラゴンズ』のゲームである。君が買えるD&Dは、会話型RPGの完全なキャンペーンをプレイできる。経験に関係なく、君はプレイを始めることができ、望むなら続きのために他の製品を簡単に見つけることができる。

既存のD&Dプレイヤーには、これがモジュール制の導入だと説明できる。単純なゲームができ、さまざまな方向へ拡張できる強い基礎を持ち、オプションと複雑さを連携させられるものを作りたい。私たちが新たなクラスだろうが登攀の詳細なルールだろうが、それらによってゲームの基礎を後付けのオプションに対応させるために改変することがないように。君がどんどんルールを導入しても基礎は変わることがないようにしなければならない。それが達成できれば、私たちは新たなプレイヤーに完全なゲームを提供でき、より経験豊かなプレイヤーを満足させるためにはオプションと複雑性を重層的に追加することができる。

第2回:常に、すべての版を

こうして見てきたふたつの基礎により、原理は導かれる。次回、私はこの2点がさまざまなD&Dの版のファンに意味するものをより深く追求しよう。

マイク・ミアルス

マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。