ネコぶんこ


2014年03月17日 [長年日記]

§ [DnD][4e][LnL] 『それは誰のための物語?(Whose Story Is It, Anyway?)』

マイク・ミアルス

この数週間、私たちはD&D Nextのキャラクター・クラスを見てきた。今週、私はゲームの別側面から見たモンスターと、君にどうやってアップデートされたそれらを提示していくのかを解説したい。

ダンジョンズ&ドラゴンズのデザイナは常に自然で緊張感のある文章を書こうとしている。一方でロールプレイング・ゲームとしてのD&Dは、創造性と物語りを可能にすることがすべてだ。プレイヤーとDMが彼らなりの流儀をそこへ加えるまで、ゲームには命が吹き込まれていない。

その一方で、作家兼デザイナである私たちが取り出す物語には目的がある。私たちは追い詰められたDMにひらめきを与えたり、役立つもの、あるいは読んで楽しいものにしたい。さらにまた、さまざまなキャンペーンとプレイ・スタイルでD&Dをプレイしている多くの人たちには、頼るべき一貫した物語と背景が必要になる。

これらふたつの問題を解決することは難しいことではないが、私たちが最近どれだけのことをしたかは知られていない。私たちは前進しながら変わってきた。私たちはモンスターに想像力を刺激する、面白い物語を与えたい。だが同時に、君のゲームのためになるとき以外、君が私たちの作成した詳細な情報を使うことを強いられないようにもしたい。

モンスターの作業を行なうにあたり、私たちは過去のものより多く詳細で特別な物語を彼らの解説に加えている。第4版の『Monster Vault』と第2版の『Monstrous Compendium』を手がかりにして、モンスターの性格、生態、目標、そして世界での位置づけといった詳細な情報を加えていった。より重要なこととしては、異なるモンスター同士のつながりを描くことだ。たとえば、私たちは他のクリーチャーに仕えたり彼らと同盟する悪しきフェイの大きなつながりの中にハグを位置づけた。彼らはアニメイテッド・スケアクロウを作成し、恐るべき呪いで人々をレッドキャップに差し出し、さらに真実恐るべき敵を相手にするときはユーゴロスの傭兵を雇う。

この方法はクリーチャーをより結束力があり彼らの異なる個性を表面化させる。いくつかのクリーチャーについては、過去に言及された異なるものをえり分け、ひとつの統合された記事に再編集する必要もある。他のクリーチャーの場合、この工程にはより多くの発明が必要とされる。ジャッカルワーの項を一部引用した例を挙げよう。

欺く者にしてうそつき。デーモン・ロードのグラズトは彼の忠実なしもべであるラミアたちのために、ジャッカルワーを創造した。アビスの外に手を伸ばし、彼はジャッカルに言葉と人型になれる能力を与えた。ジャッカルワーは嘘をつくために生まれ、勘のいいクリーチャーならば彼らが本当のことを話すときに痛みに苦しんでいる様子に気づくかもしれない。彼ら自身でも戦闘をすることはできるが、ジャッカルや他の味方と並んで戦うことを好む。ジャッカルワーが支配する群れは強敵からは逃げ出し、不意討ちを繰り返したり彼らが眠っているところを殺すのみである。

君がこの記事から理解できるように、私たちはジャッカルワーをグラズトとラミアに関連付けた。しかし、グラズトが君のキャンペーンには存在せず、特定の遭遇ではラミアとの関連も必要ないかもしれないということも理解している。そういうわけでシステムのデザインについて、私たちはこれらの詳しい物語がクリーチャーの特殊能力やルールに影響することを許していない。もしも君がジャッカルワーを使っている古いAD&Dのアドベンチャーをコンバートしようとしても、彼らのステータスはアドベンチャー内でのクリーチャーの役割を再発明するよう君に要求することなく、きちんとした形で使うことができる。

同じことは君だけのキャンペーンやアドベンチャーにもいえる。私たちはジャッカルワーの背後にある物語を変えたが、クリーチャーのシステム面はかつての版と一致したままだ。ジャッカルワーはいくつかの特徴的な特殊能力(クリーチャーをなだめて眠らせる視線、変身能力)を持ち、一貫性を確実なものとしている。私たちはそれらの能力をグラズトやラミア、あるいは他の物語要素と関係させなかった。それらの主題は調和している――ジャッカルワーの魔法的能力はラミアの理想的な従者になれるだろう――が、彼らはテーブルの上でどんな不協和音を奏でることもなく分かたれることができる。

私たちがモンスターに加えた新たな解説は、ふたつの目的にかなっている。まず、それらはDMがそのクリーチャーを使うための――過去のクリーチャー解説からしばしば抜け落ちていた――物語上の手がかりとアイデアを提供する。それらはまたゲームの中でクリーチャーの様子を描写するロールプレイングの手がかりも与え、DMはモンスターが世界の中でどういうもので、戦闘以外でやっていそうなことを感覚としてとらえることができる。

同時に、新たな物語の構成要素は既存の特殊能力やシステムを置き換えるものというより支えるためのもので、ふたつは相互依存していない。君は彼らのゲーム・ステータスを再デザインする必要なく、ジャッカルワーについて君だけの物語を簡単に創造することができる。

結局、私たちがD&D Nextのモンスターをデザインする上で目標にしていたのは、面白い物語でDMにひらめきを与えることと、発明と創造の大量生産の中に隙間を残すことの快適な釣り合いを見つけることだった。ゲームというものは常に私たちの物語と君のためにさまざまな空間を持たなければならないのだ。

マイク・ミアルス

マイク・ミアルスはD&Dのリサーチ&デザイン・チームのシニア・マネージャだ。彼はレイヴンロフトのボードゲームやD&D RPGのサプリメント何冊かを手がけている。