2014年08月17日 [長年日記]
§ [TRR][Oni] リプレイ『鬼の話~オープニングフェイズ:シーン3』
オープニングフェイズ:シーン3・丁子屋の惨劇(貞親)
時は少し遡る。
三日月が丈から仕事を請けた日の早朝、日本橋にある廻船問屋の丁子屋には、客と奉公人の代わりに役人と野次馬がごったがえしていた。
店の者が皆殺しにされた押し込みの検分である。
「……酷いものだ」
惨劇の痕を被うむしろを捲くり、蘭学奉行は眉をしかめた。
GM/与力:「仏はこれで全部ですね。酷いもんです。記録と突き合わせましたが、女子どもまで皆殺しですよ」
貞親:「傷から見るに斬り、刺し、殴り、なんでもありのやり口か」
GM/与力:「ええ、数年前にも江戸を荒らした毘沙門組の手口です。こいつが蔵に貼られていたし、間違いはないかと」与力が差し出したのは、血で鬼の顔と“毘”の文字が大書された紙です。記録によれば、過去の毘沙門組も同じものを現場に残してます。
GM/与力:「盗まれたのは金子とかさばらない舶来の品。殺しだけではない、目も利きます」
貞親:「長く生き残れば目も利くだろう。欲をかけばすぐに追い込まれる。私の時まで問題は残っていないだろう。ならば目利きの腕利きだけが生き残る。毘沙門組はそういう連中、ということだ……」とん、とん、と額を叩きつつ。
GM/与力:「しかし、奴らの首領はもう二度も死罪にされたはず……そこが面妖です。ああいう連中は頭が潰れれば散じるはず」
貞親:「ああ、そこが解せない。不気味というよりむしろ不快だ。己の死だけを受け取らない、その男の存在が」
GM:そんなことを話していると表口がにわかに騒がしくなります。
貞親:「どうした?」そっちの方に向かいましょう。
表口から響くのは、馬のいななきや、見張りをしている同心や小物たちがもみ合う声。
「何をしている!」
珍しく貞親が声を荒げて向かうと、そこには火付盗賊改方の与力、中山昭孝が部下を連れて馬上から町方を睥睨していた。
貞親:いらっしゃいましたね、では。「……中山殿か」めんどくさそうに言います。
GM/中山:「これはこれは。いえね、押し込みは我々の領分でもありますので一応見に来たわけですよ。町方は、何かと制限もありましょう?」武装の貧弱さなどをあてこするような態度で続けます。「ゆえに、ここは火盗が預かったほうがそちらとしても楽なのではないかと」顔に『さっさと捜査結果渡して引っ込んでろ』と書いているように慇懃無礼な態度です。
貞親:「いやいや、それには及びませぬ。北町には優秀な人員が揃っておりますれば、荒事の前に事を片付けましょう」荒事前提にしてる時点でダメだっつーの、ぐらいの不機嫌顔です。
GM/中山:「そうですか。でしたら我々は町方の検分が終わるまで横で待たせていただくとしますか」
貞親:「ご随意になされい。それほど時間もかけずにお引き渡しする故」中山が来てから十分ぐらいで退散しましょう。ここで調べられることはあまり残っていないし。
火盗は馬を店の真正面につながせる、近くの飲食店に陣取って捜査をじろじろ見るなど威圧してきたが、北町の捜査は表面上つつがなく終わり、貞親は火盗ともその結果を共有するよう部下に申し送りながら、現場を辞した。
無駄な意地を張って問題解決の害になるようなことはしない。平賀貞親とはそんな男であった。
GM:帰り際に【宿星:毘沙門組の悪事を追う】を差し上げます。