ネコぶんこ


2012年04月20日 リチャード・ギャリオットやジョン・カーマックは「ダンジョンズ&ドラゴンズ」の文化から飛び出した世代だ。 [長年日記]

§ [DnD][4e] 『“奈落の疫病”と次の大きな物語(The Abyssal Plague and Other Big Stories)』

ジェームズ・ワイアット

今月は疫病とデーモンに彩られた“奈落の疫病”三部作の最後を飾る、ドン・バッシングスウェイトのThe Eye of the Chained Godの発売を控えている。D&Dエンカウンターズのファンは『旧き元素の目』のシーズンをプレイすることで、まずは奈落の疫病とその効果を地元の仲間と味わったことだろう。

私は以前、奈落の疫病についてこのサイトで語り、ブルース・コーデルは奈落の疫病が彼の小説Sword of the Godsで、フェイルーン(フォーゴトン・レルムの世界)に感染することを論じた。疫病の終わりは、そう、私たちが何を、なぜ最初に行いたかったのか、私たちが次に何をするかを振り返る良い機会だろう。

奈落の疫病の目論見

私が去年話したように、奈落の疫病は異なる小説のシリーズを越境させること、そして小説読者とRPGプレイヤーの間に共通体験を作ろうという、2つの目的を達成するためのイベントとして考えられた。

1つめは主に商業的な要請だったが、私たちはどうすれば世界それぞれの個性に忠実なまま、D&Dの世界群に波乱を巻き起こすイベントを創造できるのか? という面白い創造的活動にもなった。私たちは異なる世界から有名なキャラクターを集めたもの(ドリッズトとハーフエルフのタニスの邂逅! エルミンスターとレイストリンの対決!)はもちろん、ある世界から他へとキャラクターが飛び回る物語を作りたくはなかった。私が思うに、このようなクロスオーバーはお互いの世界の個性を薄め、それらが特別な存在であることを損ない始める。私たちは結局ポータルを使ってキャラクターが世界を行き来するのではなく、どの世界でもない場所から伝染の代行者が送られる導入を選んだ。

2つめは主に創造的な目的だった。私たちの小説を読む人たちと私たちのゲームをプレイする人たちの間には多くの共通項があるが、この共通項は完全ではない。私たちはこのベン図の集合部分にいない人――D&Dが行なっている表現法1つのファンである人――に彼らがどの表現法を好いているかに関わらず、向こう岸のD&Dファンと語り合える何かを提供したかった。言い換えれば、私たちは小説のファンとRPGのファンが語り合える何かを提供したかった。そこで奈落の疫病が関わる7本の小説に加え、私たちは疫病とプラーグ・デーモンをMonster Vault: Threats to the Nentir Valeや、2回に渡る『Creature Incarnations』の記事(1つでは伝説級のデーモンを取り上げ、もう1つでは神話級の脅威を提示し、さらにもちろんD&Dエンカウンターズの今シーズンでも)で取り上げた。

そして君がD&Dの小説ファンなら、フォーゴトン・レルムの小説、ダーク・サンの小説、あるいはD&Dエンカウンターズや君の友達とのキャンペーンのプレイヤーとなることで、君は奈落の疫病についてより深く知るための材料を持つことになる。

過去と展望

“奈落の疫病”は私たちにとって小説とゲームの製品にまたがる“大きな物語”を作る最初の試みではなかった。10年前、私たちはR・A・サルヴァトーレのWar of the Spider Queenという小説シリーズを立ち上げ、ロルス突然の沈黙とメンゾベランザンのドラウが受けた影響という神話的物語を描くためにフォーゴトン・レルム作家の精鋭6名(リチャード・リー・ベイヤーズ、トーマス・M・リード、リチャード・ベイカー、リサ・スメドマン、フィリップ・アセンス、そしてポール・S・ケンプ)をまとめた。同時に、私は同じ出発点を使ったが“ロルスの沈黙”に影響されたドラウの他の都市を描くD&Dのアドベンチャー、City of the Spider Queenを書いた。私たちはまた、このアドベンチャーのキャラクターを表現した金属製ミニチュアのセットを発売した。War of the Spider Queenは大成功し、City of the Spider Queenもキャラクターが恐るべき死を迎えたプレイヤーの間でさえ、非常に人気がある――毎年Gen Conで私にこのことを話してくれる人たちがいるのでこう判断する――アドベンチャーとなった。これから数ヶ月のうちに、私たちはこれらの小説シリーズ6本を集めて10周年記念のコレクターズ版として2冊のぶ厚い大型ペーパーバックにする。

その物語は私たちの次の大きな目標への出発点で、それは5月のD&Dエンカウンターズ『Web of the Spider Queen』で正式に開幕し、6月に発売されるSword of the Gods: Spinner of Liesへと続く。(面白いことに、この小説でデマスカスは私の知る限り、これだけの規模の大きな物語2つに登場したただ1人の小説キャラクターになる。)それからも年間を通し、君はこの物語の側面それぞれを5本の小説、いくつかのコンベンションでのゲーム・イベント(その1つは先週末のPAX Eastだ)、3シーズンに渡るD&Dエンカウンターズ、2回のD&D Lair Assaultイベントなどで目撃することになる。

この種明かしは多くの独立した物語の集合体へと分解できる“大きな物語”――それは宇宙的規模のイベントを世界のさまざまな場所で多くの小さな物語としてプレイしようというものだ。これはロルスの沈黙のイベントとそう変わらなず、あの時もWar of the Spider Queenはメンゾベランザンとまったく異なる連続したイベントをマエリミュドラ(Maerimydra)で展開した。

君は“アンダーダークの隆盛(Rise of the Underdark)”を先月、先週のうちに知っているだろう。今のところ話せるのは、ロルスはその沈黙をもって始めた形質変化をまだ終わらせておらず、彼女の民はその意志を実行するため骨を折っているということだ。いつものように、ドラウがロルスの意志を実行しようとすることは彼らの内紛を意味し、それは地上世界の混乱にも繋がる。

小説、RPG製品、そしてそのどちらでもないところで、これから9ヶ月間、君は多くのものを見るだろう。事実、君は今すぐにアンダーダークの隆盛のハブであらすじと構成に目を通すことができる。

ジェームズ・ワイアット

ジェームズ・ワイアットはウィザーズ・オブ・ザ・コーストのダンジョンズ&ドラゴンズのR&Dでクリエイティヴ・マネージャを務めている。彼はダンジョンズ&ドラゴンズ第4版リード・デザイナの1人で第4版ダンジョン・マスターズ・ガイドの主要な著者だった。彼はまたエベロン・キャンペーン・ガイド、およびエベロンの世界を舞台としたいくつかのダンジョンズ&ドラゴンズの小説も手がけている。

以前も訳した、“奈落の疫病”について、企画意図を総括する内容の記事を訳したですぅ。

意図のひとつでこれまでも繰り返しアピールされてきた小説とRPGの相互交流という狙いは、DnDの製品展開に占めている小説の分量を考えるとかなり納得できるものですぅ。また、全体を見なくても楽しめるメタプロット展開も、DnDに限らずWoDなどの先行企画に学んでいるところが大きいように感じられるですぅ。