2013年02月24日 この時点ではそれほど認識していたわけではないけれど、この“一つの人形が一人の人間を表す”というルールは、結局のところ最初のロールプレイング・ゲームを作る原動力となった。 [長年日記]
§ [DnD] 『スポットライト・インタビュー:Unearthed Arcana(Spotlight Interview: Unearthed Arcana)』
“さて、読者諸君、”ゲイリー・ガイギャックスは『Unearthed Arcana』のまえがきにこう書いた“この『あとがき』は――終わりなどではなく、ここまでが最新だということだ。つまり、挑戦的で興奮できるAD&Dのゲームがこの本で紹介され、みんなが楽しんでかけがえのない時間を過ごせるように準備された本には、ふたつの表紙の間にあらゆる新発見と多数の明かされた秘密が詰め込まれている。前置きはここまでだ、これこそ『Unearthed Arcana』。これを手にした君が待っていたものだ。読み、そして君も私たちがやってきたのと同じくらい多くの楽しみを創造してほしい。”
今日は『Unearthed Arcana』復刻特装版の発売日なので、私たちはこの本について彼の考えや思い出を訊くため、ジェフ・グラブに質問をしてきた!
ウィザーズ・オブ・ザ・コースト:あなたはこの本の導入を書いていますが、『Unearthed Arcana』ではどんな役割と仕事を行なったのですか?
ジェフ・グラブ:私の公的な役職はデザイン・コンサルタントだった。つまり私は元記事とデザイン・ノートを集めて調整し、記述のあらを修正したり全体の文体を整える役割を担っていた。もし君たちがこれを気に入ってくれたら、それはすべて元記事のデザイナの才能によるものだ。そして君が気に入らなかった場合、それは私の失敗だ。
ウィザーズ:本にはあなたに(ゲイリー・ガイギャックスからの)献辞が捧げられていました。“ジェフ・グラブに。彼は私に多くのページについての質問と修正の提案を延々と投げかけてきた。私が彼を決して許さないと決心するくらいに。”好奇心からお訊きしますが、あなたこれらの質問や修正――あなたを煩わせた内容についてや、ゲイリーを煩わせた問いについて――何か覚えていることはありますか?
ジェフ:ああ。私が『Unearthed Arcana』の作業に承認を得たのは、その2年前にゲイリーと『Monster Manual II』の作業をしていたからだ。『UA』のデザインはTSRの歴史上でも“動乱期”の最中だったため、私とゲイリーの接触はこれらの質問を書いてドットマトリクスのプリンタで印刷して送りつけることしかできなかった。彼の机の上には数日おきに2ダースの質問がやってきた。
私が彼に行なったもっとも厳しい質問は、呪文やそれがどう動いているのかという法則や理由についてのことだったと思う。私はすべてに適用される物理法則を作ろうとしていたが、結局それは空がなぜ青いのか訊ねてくるしつこい6歳児のように受け取られることになったのだろうと確信している。これらが多すぎたために、彼は“それは魔法なんだよ!”と説明を書くことになり、私たちはそれくらいで勘弁することにした。
ウィザーズ:『Unearthed Arcana』の特徴は(他にもたくさんあるが)3つの新クラスです。キャヴァリアー、シーフアクロバット、バーバリアン。これらのクラスは最初期のDragon誌に掲載されたその初出と、UAでの最終的な決定版にある大きな違いはなんでしょう? これらはどのように進歩したのですか?
ジェフ:私がそれらと最初に出会ったのはDragon誌の記事(最初に名前が挙がったのはたぶん「Sorcerer's Scroll」のコラムだったと思うが間違っているかもしれない)だった。デベロップ全般で行なった大きな挑戦は、それぞれで大きく異なる方法論と提示のやり方を行なったということだ。シーフアクロバットの表は“重く”なることで本来のシーフ・クラスから離れた存在であることを表現した。キャヴァリアーは従うべき行動規範を決定する必要があるため、非常にキャンペーン寄りのものになった。バーバリアンには新しい能力と時間とともに切り詰められた制約が積み重なっている。そうそう、バーバリアンが持っていたd12のヒット・ダイスは悩みの種だった。
ウィザーズ:一般的なこともですが、印刷された雑誌と紙の手紙だけだった時代、どうやってフィードバックを集めたりこれらのクラスのプレイテストを行ないましたか? プレイヤーのフィードバックから生まれたエラッタで何か心に残っているものはありますか?
ジェフ:インターネット時代以前、プレイテストのフィードバックは緊張したものだった。たしか私たちの部門には電話回線がひとつあり、コンピュサーブへアクセスするのに使われていた。『UA』の作業では、私は元記事に届いた漠然としたものから細かいものまでフィードバックに目を通すことから始めた。多くのプレイテストは私たちがデザインで行き詰ったそのとき、私が夕方参加するゲーム・グループで行なわれるか、可能ならば私たちが職場で済ませた(木曜日の午後はプレイテストの日になっていたが、ご存知のように〆切は待ってくれないからね)。
私はバーバリアンの12面体ヒット・ダイスについて大きな戦いがあり、キャンペーンの場合では制限が利点とつりあうか議論されたのを覚えている。
ウィザーズ:あなたはこの3クラスで特別好きなものはありますか? あなたが気に入った何かがゲームに影響を与えたことは? ダンジョンズ&ドラゴンズのアニメ(これらのすべてが出てきている)にもっとも影響を及ぼしたものは?
ジェフ:君は驚くかもしれないが、私はこれらがD&Dのアニメでキャラクターになったことを知ったのは、私が作業を終えてからのことだった。アニメに関わっていた西海岸グループはウィスコンシン州のレイク・ジェニバという国の向こう側にいて、私がデザインの仕事へ入る前に彼らは自分たちの仕事を仕上げていた。私がもっと早く知っていれば、バーバリアンは10レベルでユニコーンを相棒にできただろうね(冗談だよ!)。
特にバーバリアンで多くの技能が姿を見せ(〈応急手当〉、〈生存〉、〈疾走〉)、これらは後に他のクラスのためにもゲーム全体に取り入れられた。だから私はバーバリアンが3つの中でもっとも影響があると答えよう。
ウィザーズ:あなたは『Unearthed Arcana』がD&Dの分野全体にどんな影響を与えたと感じていますか? 大小さまざまな要素や概念のうち、あなたがゲームに加えてよかったと感じたものはありますか? その中でも特に注目すべきものは? あるいはあまりにも強力だったり、変わっていたり、はたまた好みではなかったため、あなたが現在いらないと感じているものがありますか?
ジェフ:『UA』はとても実験的な本だった。呪文や魔法のアイテムのように、いくつかはみんなのキャンペーンにきちんと受け入れられた。キャヴァリアーとバーバリアン(後者のようなウィザードを憎むコナンのような存在を再現するために、みんなは初期のゲームでシーフ/パラディンを作成するように精力的な努力をしてきた)のように、もう少し手間がかかるものもあった。
私はロジャー・ムーアによる非ヒューマンのパンテオンが本当に好みだったので、それらを組み込むように働きかけた。そのころ、私たちは無数のヒューマンのパンテオンについて『Gods, Demigods, and Heroes』の本を出していたが、他の種族については存在していなかった。私はロジャーが種族のパンテオンを発表することに偉大な仕事をしてくれると思っていたが、はたしてそれは今日まで生き残っている。
とりわけ定番になったものはフル・プレートとエルフィン・チェイン・メイルなどで、それは将来の版にも残り続けた。私がもっとも好きなものは自分でゲームのために作成して「Appendix Q」に収録された簡易素手戦闘システムだ。もっとも好みでないものは【外見(Comeliness)】だろう――それは私がすべてを導入したゲームで取り込んだシステム(高い【魅力】が美形であるという文脈を破壊しようと試みた)だが、プレイテストでもその後も、それで誰も盛り上げることはできなかったからだ。
ウィザーズ:最後になりますが、『Unearthed Arcana』は棹状武器についての詳細な補遺もあり、私たちはしばらく前にそれをクイズにしました。あなたが挑戦した結果を教えてもらえますか?
ジェフ:22問中19問正解だったよ。私はバルディッシュをポール・アクス、アウルパイクをパイク、グレイヴギザームをグレイヴと答えてしまった。しかし、アウルパイクはまだパイクの仲間だし、少しかすっていることについては認めてもらわなければね。
そして最後になるが――私はこの本についてすべての責任を負っている。(Dragonの元記事を再販する意義があるかゲイリーは確信できていなかったが、私はそれがイカしたものだと確信していたよ。この本でボヘミアの耳かきにありあまるほどの深みを与えられたのだからね。
『Unearthed Arcana』の再販にあわせて公開された、当時の責任者だったジェフ・グラブへのインタビューですぅ。文中でもネタになっているけど、棹状武器へのなみなみならぬこだわりは凄いものがある本ですぅ。