ネコぶんこ


2014年08月15日 [長年日記]

§ [TRR][Oni] リプレイ『鬼の話~オープニングフェイズ:シーン1』

オープニングフェイズ:シーン1・分かれ道(銀次郎)

ときは今より数年前。ところは甲州街道、下諏訪の宿。

一里塚に寄り添うよう植えられた欅の前で、ふたりの男が互いの道へ進もうとしていた。

いずれも堅気とは言い難い出で立ち。片方の立ち居振る舞いにどこか武家の面影がある一本差しが三度笠に歩み寄り、頭を下げた。

「すまんな、またお前を巻き込んでしまった」

「水くせぇ、よしておくんなさいよ。お互い様ってヤツでさぁ」

銀次郎はそれを制して頭を上げさせる。

「お互い様、か。そう言ってもらえるとありがたい」

爽やかな笑みを浮かべて顔を上げる一本差し。名を、渡辺充という。

「妖異に苦しめられている者は多いが、すべてに手を差し伸べられるほど俺たち鬼神衆の手は多くない」

GM/充:「だから、お前みたいな奴には世話になりっぱなしだ」彼はそう言うと旅装を担ぎ直す。

銀次郎:「おや、もうお行きなさるんで?」

GM/充:「ちょっと、江戸でな。大きな山が動いたらしい」

銀次郎:「ほう。そいつぁ剣呑な」

GM/充:「仲間たちも集結している、うまくやるさ。お前も落ち着いたら江戸に来い。俺もしばらくは向こうにいるからな」

銀次郎:「できればお手伝いしたいところですが、生憎こちらも別件がありやしてね。ご武運をお祈りしやすぜ」

GM/充:「ああ、また会おう!」

銀次郎:「おたっしゃで!」

しかし、銀次郎にとってはそれが彼、鬼神衆の渡辺充と最後に交わした言葉となった。

数ヵ月後に彼が旅の空で耳にしたのは、江戸を荒らしていた凶賊、毘沙門組の首領、渡辺充が死罪になり、その首は浅草の刑場で獄門にかけられた。という噂だった。