2014年10月31日 [長年日記]
§ [TRR][Oni] リプレイ『鬼の話~エンディングフェイズ:シーン17』
エンディングフェイズ:シーン17・これから(銀次郎)
夕暮れどき、人気の無い墓地。銀次郎が充の墓へやってくると、先客の供えものが並べられていた。渡世人はそっと微笑むと、昔一緒に呑んでいた酒を墓前に捧げる。
「ずいぶん遅くなっちまったけど、全部ケリがつきやしたよ」
「ありがとう」
そう風が声を運んでくる。はっとして振り向くも、そこにはただ風が吹き抜けるだけ。それを一番よく知っているのは自分ではないか。そう銀次郎は自分にいい聞かせると、かぶりを振って立ち上がる。
顔を上げたとき、墓地から続く道のあたりにこの前助けた女、お倫が立っていた。
「おめぇさん……」
彼女は無言で男へ頭を下げる。
男も無言で会釈して、その隣を通り過ぎる。眼すら合わさず、風のように。
そのままふたりはすれ違う。
堅気と渡世の間には、それだけ深いものがあるのだ。