2014年10月30日 [長年日記]
§ [TRR][Oni] リプレイ『鬼の話~エンディングフェイズ:シーン16』
エンディングフェイズ:シーン16・そして(十五郎)
蘭学奉行の尽力で、渡辺充の無実は証明されたらしい。
そのこともあり、十五郎はお倫から充の墓参に誘われていた。彼女の横には新太郎がおり、まだ少し複雑な顔でま新しい父の墓標に手を合わせている。
不器用な剣客はその様子を少し離れた場所から眺めていたが、それを見つけた新太郎が駆けてきた。
「おう、新太。とうちゃんにちゃんと手を合わせてきたか?」
「ありがとうな、十五郎のおじさん。母ちゃんも元気になったみたいだ」
新太郎が十五郎にそっと耳打ちする。
「そうか、そいつは何よりだ」
十五郎はぽん、と新太郎の頭に手を乗せた。
「新太、今日お前を墓に連れてきてくれたのは、たぶんな。お前が、少しは大人ンなって、ちゃんと話できるってお倫さんが認めたからだぜ。その気持ち、裏切るんじゃねえぞ」
「そうだったのか。やっとわかったよ」
男同士の話をしていると、少し遅れてお倫が歩いてくる。
「旦那には新太郎がすっかり迷惑をかけてたみたいで」
「や、ま。その、あはははは」
助兵衛心があったのは否定できず、それを隠すほど器用ではないのがこの男なのだ。お倫はそれを見ると微笑み、言葉を続ける。
「やっとあの人に新太を会わせることができました。本当にありがとうございます」
道の先へ走っていく新太郎を見やりつつ、十五郎は野に生きる剣豪の顔でお倫へと向き直る。
「そのうち、あんたと充さん、それと銀さんたちがどんなことしてたのか、聞かせてくれ。あんな連中と、やり合ってたんだろう?」
「あまり思い出したくはなかったけど、今度のことで少し整理がつきました。堅気の道には戻れませんが、よろしいんですか?」
心配するかつての英傑をよそに、新たな英傑の横顔はあくまでも明るかった。
「戦もないこの世の中で、こんなおもしろいこと見つけた。俺ぁいま、ようやく生きてるって気がしてる。足を洗ったあんたには、バカに見えるんだろうなぁ」
「いえ」
困ったような顔で首を振り、女は微苦笑した。
「あの人も、そんな目をしていましたから」