2011年11月02日 ここでは皆が同じ言葉でしゃべっていた。 [長年日記]
§ [DnD][4e] Rob Heinsoo『The Plane Above』
D&Dの多元宇宙でも、無限に広がる銀色のアストラル海を扱ったサプリメントが、この『The Plane Above』ですぅ。
まさに“敵地”である元素の渾沌を扱った『The Plane Below』とは違い、無属性や善の神格の領界も点在するアストラル海を扱う『The Plane Above』では、領界ごとの特色や勢力の思惑を紹介し、それをどうシナリオに取り入れるかをより詳しく解説しているですぅ。
データ量は『The Plane Below』と比べても少ない部類だけど、シナリオを自作するDMにとっては、遭遇の例やアイデアが随所にちりばめられたあると便利なサプリメントになっていると思うですぅ。
Chapter 1: Astral Adventuring
「Chapter 1: Astral Adventuring」ではアストラル海とは何か、宇宙の中ではどんな位置づけでどんな場所があり、どういうテーマがふさわしいか、そしてそこをどう旅するかという、おおまかな説明がされていますぅ。
ここの説明をざっと読めば、アストラル海は神々の住まう場所で、魂となった定命の者が行きつく場所であるとともに、そこに原住する定命の者もいて、それぞれの領界ごとにまったく異なる様相を呈する、多島海のような次元界であることがわかってくるですぅ。
キャンペーンのテーマについては、無限に広がる海を舞台に冒険や海賊との戦い、神々の戦いなどの神話的なものが並んでいるけど、アストラル海に浮かぶ島をダンジョンにしてそれを探検することも立派なアストラル海での冒険だと書かれているですぅ。
アストラル海の主な移動手段は海だけにやはり船で、データの紹介や海戦に使えそうな技能の例にはかなりのページ数が費やされているですぅ。特に技能の例は、その技能をどうやって航海や海戦に活かすかがシチュエーションごとに書かれていて、これを組み合わせれば技能チャレンジを楽に作れるようになってますぅ。
また、アルヴァンドールやセレスティア、グルームシュに九層地獄など大きな勢力が擁する軍戦、Dominion Shipについても説明されていて、特別な利益や命名法則が紹介されているですぅ。
Dominion Shipの命名法則は九層地獄だと動力になっている拷問の名前を取った“目玉えぐり”や“串刺し四人組”、ティアマトの配下は彼女の愛人の名前(ただし船は難破することもあるのでティアマトの名前はつけない)と、どれも個性的で面白いですぅ。
Chapter 2: Divine Dominions
「Chapter 2: Divine Dominions」では、神格やエグザルフ、エンジェル、Exalted、Outsider、領界とBorder Islandsという基礎用語の説明をして、アルヴァンドール、セレスティア、チェルノガーリ、ヘスタヴァール、九層地獄、タイテリオンという6つの領界が紹介されていますぅ。
ここではバハムートとティアマトのような不倶戴天の仇敵同士でも、プライモーディアルや“彼方の領域”のように宇宙そのものを乱す敵には共闘するという、神格とプライモーディアルの決定的な違いが解説されているですぅ。つまり、悪の神格でも目指すところは自分がすべてを支配することなので、宇宙の破壊は望まないということですぅ。ただし、タリズダンとロルスは混沌の神格なので次の戦が起こった場合はプライモーディアル側になるかもしれないことが紹介されているですぅ。また、グルームシュも混沌だけど、彼は対混沌になる確率が高いらしいですぅ。
領界の紹介では、それぞれ数ページをかけて住人や主要な地勢、遭遇などが紹介されているですぅ。ここで感心したのは、チェルノガーリに戦争を行なう技能チャレンジが書かれているのはもちろんのこととして、アルヴァンドールでコアロンとセイハニーンがアボミネーションを狩るために行なうGlorious Hunt、セレスティアでモラディンとバハムート、コードの配下たちが行なう試合、Game of Mountainsなど、善の領界にも冒険になる題材を準備して、色々な冒険の余地を設けているところですぅ。
この章には九層地獄の項に「Hell's Bonds」という12レベル用のデルヴが収録されているですぅ。
Chapter 3: The Deep Astral Sea
「Chapter 3: The Deep Astral Sea」では、神格やそれに仕える者たち以外の独立種族や、主が死ぬか去るかして荒廃した領界(Shattered Dominions)が紹介され、最後にシナリオのネタになりそうなMotes in the Astral Seaがまとめられているですぅ。
ここで紹介される種族は、アストラル海を回遊して悪と戦うコアトル、アストラル海の海賊種族ギスヤンキ、神々が偏りなき裁定者として創造したMaruts、砕かれた自分たちの神格を復活させるために宇宙を旅するQuomという4種族ですぅ。
中でもギスヤンキについてはChapter 4にVlaakith CLVIIのデータが載っていることもあり詳しく、Tu'narathへの定住を拒んでアストラル海の深淵を航海するFar Travelers、他の世界をマインド・フレイヤーの拠点にされないよう侵略することに重きを置いたGul'othranという2つの非主流派が紹介されているですぅ。
荒廃した領界は神格ですら破壊できなかった存在を幽閉するカルケリ、高さ百マイルもある石化したプライモーディアルがそびえるErishani、デーモンに殺された神格アモス(『次元界の書』参照)の領界でアストラル海のあらゆる種族が集う闘技場があるカランデュレン、死せる神を崇拝するアンデッドたちが住むパンデモニウム、滅びたイルーミアンたちの遺産を狙う者たちがうろつくショームと、神々の領界よりも尖ったものが揃ってますぅ。
この章には神話級用の「The Monolith Stirs」というErishaniでの遭遇例、伝説級用の「Purifiers of Shom」というショームでの遭遇例が収録されているですぅ。
Chapter 4: Astral Denizens
「Chapter 4: Astral Denizens」は新モンスタで、4レベルの雑魚ひとつを例外としてすべて伝説級〜神話級のデータになっているですぅ。
内訳はアボミネーション、ベインの軍勢を構成するBanesworn、新しいデヴィル、Exalted of ErathisとExalted of Kordというモンスター・テーマ2つ、Vlaakith CLVIIを筆頭としたギスヤンキ、神話級オークや神話級オーガで構成されたグルームシュの軍勢、Quomとなっていますぅ。
ちなみに、グルームシュのエグザルフはLuthicなど1stの『Unearthed Arcana』にいた懐かしい名前が連なっているけど、グルームシュそのものは“グルームシュは世界に溢れる小さき英雄ごときに興味を示さない。彼は自らの剛勇にふさわしい敵との戦いに忙しいのだ。”という理由でデータ化されていないですぅ。
というように、ここまで紹介してきた『The Plane Above』は純粋なデータ量は少ない部類に入るですぅ。ただ、実際にプレイを続けていると技能の使用例や冒険のネタがなかなか使える事に気づく、じわじわ利いてくるタイプのサプリメントになってますぅ。