2011年12月06日 リチャードにとって、こういったことすべてのはじまりは、ごく単純なものだった――当時の新発明、アップルIIホームコンピュータで実行される一五〇〇行のプログラムだ。 [長年日記]
§ [DnD][4e][LnL] 『ルールの適温(The Temperature of the Rules)』
伝説と伝承
私はマイク・ミアルズとサーモスタットの話をした。マイクは「適温は21度に設定してあります。もしあなたが暖めたり冷やしたりしたいときは、これにあなたが適温を調節するための方法が書いてあります」と書かれたサーモスタットの説明書が欲しいと言った。私は「あなたは適温を何度にでも設定でき、その方法はこれに書かれています。あなたが何もしないとき、初期設定は21度になっています」と書かれた説明書が欲しいと言った。
閑話休題。私たちは実際にサーモスタットの話をしていたわけではない。というより、私たちのサーモスタットについての議論は、DMに情報を提示する方法論の比喩だったのである。この場合の“適温”は、ルールを提供することと、状況にあわせ、DMである彼や彼女が適当だと考えるものに調整することである。
しかし議論でもっとも重要なのは最終的な裁定者であるDMの能力についてではなかった。私たちは双方それが重要だと認識している。しかし、議論はゲームの初期設定についてだった。
君は開始時の適温を調節することをどうDMに説明するか、あるいは君はどう彼に適温が21度だと説明するか、そして彼がそれを気に入らなかった場合、そこからどう調節させるのか? 他の言葉で説明するなら、君はどうDMにルールと必要ならそれを破る許可(と指針)を与えたり、DMが最初に調節することを推測する?
先週、私は君が1ラウンドで行なえることについて書いた。少しの間、君が自分のターンに1回のアクションと移動速度ぶん移動ができるゲームをプレイしたと仮定してほしい。そこで君は移動と攻撃、移動と呪文の発動、あるいは移動とその他のアクションが行なえる。それは当たり前のことでDMの裁定を必要としない。たとえばドアを開けるような、より一般的でないアクションがプレイに入るとそれは違ってくる。ある方法ではドアを開けることをルールで指定されたアクションとし、他では君が移動の代わりに行なえる、あるいはまったくアクションを必要としないとするかもしれないが、DMは状況に基づいてルールを変更する。他にはDMにたくさんの基本的な例示と、1ラウンドでできることや状況をまとめた裁定用の長々とした資料を与える方法もある。
どちらのやり方にも利点はある。最初の方法はDMに見通しのよい道を与えてひとつひとつ事例を明確にしていく。他のものはすぐに使える力をDMの手に与える。
第3版から第4版にかけて、ゲームは直接的で明確なルールを提供することに集中してきた。この方法はルールがはっきりと定義していない状況を裁定することをより簡単にした。だが、第3版以前の、“DMが決める”も完全に信頼できるものではなかったが、それもよくあるルールだった。これは時々DMの間違いによってルールと違った決定が行なわれるため、しばしば苦行だと認識されていた。そしてもちろん、ルールを重んじるプレイヤーはこのような裁定に異議をとなえたり、少なくとも疑問視する傾向がある。
君がほとんどの状況に対する具体的なルールを用意できるなら、君がめったに解釈を行なったり即興でルールを作る必要(難しくなりうる)がない限り、DMにとってゲームはより簡単なものになる。ルールが印刷された本になっているなら、それのバランスと一貫性にプレイヤーが疑問を挟まないようにするのはより楽になる。一方で、君がその代わりDMに公正で、冴えた、一貫した決定と判断をその場で行なう方法を教えようとするなら、君は本に載せるルールを厳選することでDMをより簡単にできる。権限を持ち賢明な裁定を行なえるDM以上にゲームをより速く動かせるものはない。
DMに権限を与えるのはシミュレーションを簡単にする。決められたルールだけであらゆる状況に対応できることはなく、DMはルールブックに書かれていない方法で素晴らしい再現を行なえる。君のターンをどれだけ扉を開けることに費やすかは、おそらく扉による。大きく重い金属製の扉は君がアクションを使う必要があるかもしれないし、簡素な木製の扉はアクションが必要ないかもしれない。他のドアはその中間かもしれない。このさほど重要ではない状況にあらゆる面から対応できるルールを君は望むだろうか?
より少ないルールはDMの権限を大きくし、1冊、あるいは2冊……10冊と本に相談して語りを遅らせないため、物語を重視したプレイを楽にする。DMには君のターンにできることとできないことなどの裁定を行なう権能が与えられ、プレイヤーのアクションはより自由なものになる。彼らはアクションの種別を心配する必要なく、今何をしたいか宣言できるようになる。プレイヤーの奇抜な計画は君が1ラウンドに何ができるか厳密に定義されたルールと相性が悪いかもしれないが、うまいDMはそれが合理的かどうか即興で素早く判断し、物語と活劇を動かし続けることができる。
DMはゲームを運営しなければならないが、彼らがルールを上書きする権利は“プランB”と“プランA”のどちらだろう? DMの裁定はルールを破ったものだろうか、それともそれ自体がルールなのだろうか?