2012年07月18日 『おいおい、こいつは家なんかじゃない――こいつは姿を変えたモールだ』 [長年日記]
§ [DnD][4e][Liber] ジェレミィ・クローフォード、スティーヴン・シューバート、マット・サーネット『モルデンカイネンの魔法大百貨』
『モルデンカイネンの魔法大百貨』はさまざまな魔法のアイテムに加え、新しい種類の防具や武器なども収録したアイテムについてのサプリメントですぅ。アイテムのサプリメントは既に『冒険者の宝物庫』、『冒険者の宝物庫II』があるけど、『モルデンカイネンの魔法大百貨』もほぼすべてが新規データで、しかも『ルールズ・コンペンディウム』でレアリティなどのルールが追加されてアップデートされた魔法のアイテムのルールにも対応してますぅ。
もちろん、アップデートされたルールを導入していない既存環境にもそのまま導入できるですぅ。
新しい装備と魔法のアイテム
新しい種類の武器はブロードソード、スパイクド・チェインなど『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』や『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォーゴトン・キングダムズ』に収録しきれなかったものが収録されていて、防具だとスタデッド・レザーやスプリント・メイルなどなつかしの装備が帰ってきているですぅ。
術者が使う装具も『プレイヤーズ・ハンドブックIII』で導入された、特技を修得することでちょっとした力を引き出すことができる上級装具が紹介されているですぅ。
これら新装備の項では、それらを活用するための特技も同時に紹介されていて、読みながらそれをどうPCに組み込むかの想像を広げやすくなっているのがこの本のいいところですぅ。
収録されている魔法のアイテムは264種と『冒険者の宝物庫』の894種、『冒険者の宝物庫II』の632種から見ると見劣りしているかもしれないけど、アイテムがひとつひとつその来歴を説明されていたり、レアリティの導入によって“壊れた”性能のアイテムがちりばめられているので、読んだりデータをチェックする楽しみは格段に大きくなっているですぅ。
収録アイテムの中にはフレイム・タン、フロスト・ブランド、ブーツ・オヴ・エルヴンカインド、リング・オヴ・Xレイ・ヴィジョンなどもあり、昔からプレイしていたり復帰した人ならニヤリとできることうけあいですぅ。
魔法のアイテムについてもうひとつ補足しておくと、矢弾や消費型アイテム(ポーション、エリクサーなど)も豊富に掲載されてるので、買い物に頭を悩ます楽しみを低レベルのうちから愉しめる助けになるのがこの本の偉いところですぅ。
DM向け要素
この本にはプレイヤのためだけではなく、DMにとって有用なアーティファクトとアイテムの呪い、物語アイテムも紹介されてますぅ。
『ダンジョン・マスターズ・ガイド』で紹介されている、彼らに好ましく思われる行動を取ったら信頼度が上がって能力が上がる自我を持った恋愛シミュレーションゲームっぽいアイテムがアーティファクトで、そのものがキャンペーンの核となりうるキャラクタ性を持っているですぅ。
アイテムの呪いは旧版にあった呪われたアイテムについてのルールで、条件が成立すると装備者が不利になる特性がアイテムに追加されるですぅ。呪いが発動したらその遭遇では経験点を追加することが推奨されているのは、困難に直面してもきちんと報いがある今時のデザインになっていて好感が持てたですぅ。
この呪いのルールはPCに課される戒律やゲッシュにも応用できそうですぅ。
物語アイテムはデーモンを封印する小箱、存在を支配する真名など、どちらかというと今までストーリィ上のギミックとして使われてきたものをアイテムの一種として再定義して、色々な種類のそれらを紹介しているですぅ。
そして……
武器や防具だけを紹介しているのではなく、防寒具や変装道具、そしてお馴染み10フィートの棒など細々とした冒険道具もきちんと使った時のデータや、DMへの運用を助言するコラムつきで紹介されているのは実にしっかりとしているですぅ。
この本ではまだまだ、Classicの『Companion Set』や3eの『Stronghold Builder's Guide』一部に大人気だった砦や塔など建造物の購入ルール、『冒険者の宝物庫』にも収録されていたPCが特技を修得して作成できるようになる錬金術アイテム、松明持ちや書記官から同行キャラクタのデータを持つ傭兵までさまざまな部下を抱えられるようになる雇い人ルールなど、これまでDnDに存在したアイテム関係の主だったルールを細かく拾って4eというシステムの上で花開かせているですぅ。
この本はアイテム関係での最初の一冊どころか、『プレイヤーズ・ハンドブック』や『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォールン・ランズ』や『ヒーローズ・オヴ・ザ・フォーゴトン・キングダムズ』の次に何を買えばいいのかと訊ねられればこれだと即答できるくらいよくできたサプリメントなので、買って損は無いですぅ。