ネコぶんこ


2012年11月04日 雇用主は、めったにこの意図を知らされない。 [長年日記]

§ [DnD][4e][Liber] ロドニー・トンプソン妖精郷の勇者

プレイヤーズ・オプションの第二弾になる妖精郷の勇者影の勇者とはうってかわって明るい雰囲気のフェイワイルドへスポットを当て、関係の深い種族やクラスなどを紹介するサプリメントですぅ。

この本はさまざまな逸話を紹介する詩人の語りや本に挟まった押し葉のような挿絵など雰囲気を伝えるためのコラムやアートワークに力が入れられているのも特徴で、それがいい雰囲気をかもし出すとともにシナリオのネタやセッション中に引用する物語としても使えるようになっているですぅ。

こうした本の造りや挿話への注力にはInsiderに登録すればデータを見られる分、本にも付加価値をつけようという意気込みを感じましたぁ。

ここから先は章ごとに内容を軽く紹介するですぅ。

燦美の中へ

最初の章ではまずフェイワイルドとはどのような場所なのかという解説から始まり、恐怖の島やフォモーリアンの都市群、ゴブリン王国ナハターなどの名所を案内しているですぅ。フェイワイルドは子どもたちが親しむ物語に出てくるような美しい魔法の地ではあるけれど、その美は訪れたものの心を奪い、陽気さは戯れに命や心をもてあそぶことだということも解説されてますぅ。また、昔話のハグやゴブリンたちもフェイワイルドの脅威として紹介されているですぅ。

種族

妖精郷の勇者で追加された種族は、牡羊の角と山羊の下半身を持つ陽気で騒がしい男性しかいない種族のサテュロス、たおやかな美女の相と力強い木の化身の相を持つ女性しかいないハマドライアド、1フィートほどの大きさでトンボや蝶のように美しい翼を持ったピクシーのみっつですぅ。

いずれも妖精郷ならではの独特な種族なので解説は『影の勇者』同様にそれぞれ6ページが割かれていて種族汎用パワーも掲載されているですぅ。

クラス

追加されたクラスはウィッチ、プロテクター、スカルド、バーサーカーで、さらにバードのクラス特徴に追加が行なわれてますぅ。

ウィッチ

宗教や儀式などあらゆる不思議が渾然一体だった時代に力を求めて月に吼え、定命の者には許されざる力だった秘術を“授かった”ものの流れを汲む体系化されざる秘術を行使するウィザードのサブクラスにして秘術の制御役がウィッチですぅ。彼らは他のウィザードとは違って呪文書を持たずに授かりものを仲介する使い魔を持っており、大休憩後に一日毎攻撃パワーか汎用パワーひとつをそのレベル以下のパワーと交換できるようになってますぅ。

また、ウィッチはその秘術への姿勢によって闇や恐怖を操る新月の魔女団(Dark Moon Coven)か愛や生の躍動を祝福する満月の魔女団(Full Moon Coven)のいずれかを選択することになるですぅ。

収録されているパワーのレパートリィは対単体用で対“意思”のヒットしたりセーヴに失敗すると相手の動きをかなり制限できるものが多めで、敵を蛙にしてしまうフォエ・トゥ・フロッグなどの昔話によくありそうなものもちらほらとあるのが特徴ですぅ。

プロテクター

修行したドルイド団(Druid Circle)を離れて世界を守護するたびに出るプロテクターはドルイドのサブクラスでプレイヤーズ・ハンドブック2のドルイドと同じ原始の制御役だけど、一日毎パワーのサモン・ナチュラル・アライで原始の守護者を召喚できるようになっているのが大きな違いですぅ。この守護者は本能(Instinctive Effect)を持っており、召喚者の指令がなかったターンにはジャイアント・コブラの場合もっとも近くて隣接できる敵まで移動して攻撃するなど自律行動を取るので手数を増やせるですぅ。

移動困難地形を作成するクラス特徴のネイチャーズ・グロウスと強制移動パワーを組み合わせればかなり効率よく敵の足回りを混乱させられるので、近づいて殴ることが主な敵とは相性がいい制御能力ですぅ。

また、クラス特徴として蔦を操りロープのように使うヴァイン・ロープや精霊を召喚してちょっとした作業を行なわせるコール・ザ・スピリッツなどの演出に使えるパワーもあるのがいい感じですぅ。

バード

どのような共同体からも敬意をもって遇されるバードは新しいクラス特徴である信義の証(Signs of Influence)によって立ち寄った村や町で手伝いをしてくれる人を見つけたり、滞在中の安全を保障してもらえることができるようになったですぅ。これは既存のクラス特徴にある何かを置き換えるものではないので、雰囲気を出すにはいい能力ですぅ。

スカルド

秘術および武勇の指揮役のスカルドはただ歴史を語るだけではなくみずから剣もて戦い、その秘術の領域まで高められた言葉と武器のわざで英雄たちを鼓舞し、歴史の分岐点で運命を開拓するバードのサブクラスですぅ。

指揮役としての回復能力は朗唱や唄で味方を鼓舞するスカルズ・オーラ内の味方はマイナー・アクションで回復力を消費して回復できるようになる少々変則的なものですぅ。他の支援能力も無限回パワーをはじめスカルズ・オーラの範囲内に影響を及ぼすものが多いのでパーティの陣形をどうするかが重要なクラスですぅ。

秘術魔法の能力は基礎攻撃がヒットしたことをトリガーに発動させる小技のように表現されているので魔法戦士を表現するのにもいいクラスですぅ。

バーサーカー

文明の地から離れた場所に住む戦士の中でも特に動物の精霊をその身に宿した者こそ、バーバリアンのサブクラスであるバーサーカーですぅ。文明から離れた場所をクラス特徴の故郷(Heartland)で表現し、不毛の沙漠や大氷原の出身であることを選ぶことで利益も得られるはからいはなかなか心憎いものがあるですぅ。

武勇および原始の防衛役および撃破役という二面性が強調されるこのクラスは普段だとディフェンダー・オーラで周りの敵にペナルティをばらまきつつ、オーラ内で敵がシフトしたりバーサーカーを目標にしない攻撃を行なったときにヴェンジフル・ガーディアンで追加ダメージつきの攻撃を行なうナイトに似た防衛役ですぅ。そして[原始]の攻撃パワーを使うか重傷時にマイナー・アクションを使うことでバーサーカーの狂乱(Berserker's Fury)へと突入し、遭遇の終了まで防衛役の能力を失う代わりに無限回パワーに追加効果がつき、基礎攻撃に追加ダメージがつく撃破役へと変貌を遂げますぅ。

撃破役として強化されるのが無限回パワーと近接基礎攻撃だけなので、遭遇毎と一日毎の攻撃パワーをどう配分するかがビルドの妙になってますぅ。そのためか、それらのパワーは[武勇]の場合ファイターのようにコントロール要素高めのパワー、[原始]の場合は非実体無視や[力場]ダメージを出すなどダメージを通すことを重視したパワーが多めですぅ。

クラスとして命中を強化できず特技や支援による補完が望まれる上に役割もハイブリッドなものだから、最初からガンガン狂乱してもっぱら撃破役として動くのか敵を一通り片付けてから後始末として撃破役化するのかなど、どういう動きをしたいのかを他のプレイヤと共有するのが重要になってくるクラスですぅ。

キャラクター・オプション

キャラクター・オプションにはおなじみの伝説の道、神話の運命、特技、装備の他に日本語版ではこれがお披露目になるキャラクター・テーマが収録されてますぅ。

キャラクター・テーマ

種族とクラスに続くキャラクターが何者であるかを定義する第三の要素がキャラクター・テーマで、そのキャラクターが持つ特別な力や宿命を1、5、10レベルで得られる特徴と汎用パワーで表現しているですぅ。これはより軽く背景としても運用することができ、そのガイドラインも同時に収録されていますぅ。

この本に収録されているキャラクター・テーマは、フェイワイルドの影に潜み世界から光を消し去ろうとする闇のフェイと契約してその影の力を授かったアンシーリー・エージェント、フェイの名家に生まれフェイワイルドを支配するものの証たる魔力を振るえるシー・ロード、かつてあまねく世界を征服しその果てにフェイワイルドへと消えた危うい情熱と美しさを持つヒューマンの偉大な種族“トゥアハ”の裔たるトゥアハン、古代のフェイによってこの世界にもたらされた野獣を従わせる王の力を強く発現させブリンク・ドッグやディスプレイサー・ビーストを従えることができるフェイ・ビースト・テイマーの四種類ですぅ。

どれもアーサー王伝説など昔話によく出てくるさまざまな英雄の出自を元ネタにしつつきちんとDnDナイズされているのがさすがとうならされるところですぅ。

伝説の道

ここで紹介される伝説の道は動植物と会話できるようになり嵐を喚ぶことができるまで成長したプロテクター専用のインナー・サークル・イニシエイト、人間を殺す八つどころか千の方法を身につけたはいいけど攻撃をミスした時次の攻撃に【筋力】修正値分の追加ダメージが入る特徴はしまらないバーサーカー専用のデッドリィ・バーサーカー、次元界にとどろく名声を得て攻撃ロールのダイスをふたつロールできるデス・マーチを命令できるようになったスカルド専用のマスター・スカルド、選んだ魔女団によってナイトメアとユニコーンのどちらかに変身できるようになるウィッチ専用レジンダリィ・ウィッチのよっつですぅ。

神話の運命

神話の運命は力と使い魔と自身のせめぎあいを克服してフェイワイルドの権力を操る側に立つウィザード用のウィッチ・クイーン(ウィッチ・キング)、星の宮廷を統べる“夏の女王”ティアンドラに祝福された悪以外の属性用シラディ・チャンピオン、エラドリンの宮廷を離れた暗雲たちこめる荒野でフィルボルグたちが行なう“荒ぶる狩”の首領であり裏切り者と誓言を違えたものを狩るワイルド・ハンターの三種類が紹介されてますぅ。

特技

特技は種族やクラス専用のものが主だけど、エラドリンやエルフ、ノームにワイルデンといったこの本にはデータが掲載されていないフェイ起源種族用のものも収録されてますぅ。遮蔽や視認困難を無視する《トーテム練達》や突撃時のダメージを上げる《両手武器練達》もこの本が初出(《両手武器練達》は再録なし)ですぅ。

他にはウィッチが使い魔を持つので秘術の書から使い魔関係の特技が少し再録されているですぅ。

装備

フェイが得意な瞬間移動を阻害する冷たい鉄の枷や眠っているものをたちどころに起こす暁の花など、フェイワイルドの魔法を反映したものやそれに対抗するため冒険用具が多数紹介されてますぅ。

魔法のアイテムも、プロテクターが使うトーテムとその他の魔法のアイテムのほかにもフェイの魔法の贈り物が代替的報酬として紹介されているのも物語に華を添えるですぅ。

君の物語を作ろう

この章はデータではなく作成したPCが冒険者になるまではどんな生き方をしているのかを決定するためのゲームブック形式の物語になっているですぅ。好きな項目を選ぶなりダイスをロールしていくとそれっぽい物語が作られて背景も決定されるので、割と特殊な舞台であるフェイワイルドと関係が深いPCを作るときには助けになりそうですぅ。

まとめ

4eで大きく手を入れられたフェイ周りの設定を掘り下げてフェイワイルドをより詳しく解説しているという点ではプレイヤだけではなくDMにも有用なサプリメントですぅ。

収録されているクラスも非常に雰囲気がよい仕上がりになってはいるですぅ。ただ、後発だけにデータはアクが強く例外処理も多めになっている部分があるのは否定できないところですぅ。

日本語版にあたり特記することといえば、DnDの和訳は昔話調の語り口でこの本の雰囲気と合いそうだから英語版を買って使っている人も訳で楽しめる部分があると思いますぅ。